外伝その279『ガンダム開発計画の残光』


――次元世界では、プリキュアは人が得た可能性の一つにすぎない。仮面ライダーやスーパー戦隊とは違う可能性を求めた女子の願望の具現化である。未来世界では、メルトランディがいるためにある種の恐ろしさが身にしみているように、女性のエースパイロットも多い。――


「それ、パライザーの掛け声変えただけだろ?」

「ちゃー、バレたか」

「まあ、原理は似てるし、光子力の行使ではあるからいいけどよ。ん?」

――戦場で戦う彼女らの頭上を、あるマシンがフライ・パスする。ミノフスキークラフトを搭載して、大気圏内運用に適応させた『RX-78GP03D』デンドロビウムだ。

「デンドロビウムか!何と戦うつもりだ?」

「ティターンズのモビルアーマーだろ?ティターンズはジオンのモビルアーマーも研究用に接収してたからなー。秘匿も解けたし、使わない手はないさ」

「あのさ、あれってガンダムよね?どうして花の名前を?」

ルージュが追いついて、疑問を口にする。

「そっか、ルージュは実家が花屋だったな。そういう開発コードネームなんだよ。モビルスーツが最初に使われた戦争での名機だったガンダムの後継機を生み出すために生み出された五体の内の一体。ガンダム試作三号機。オーパーツと言わしめたほどの性能があるバケモンさ」

「元々は宇宙空間の要塞防衛用に試作されてたオプション装備をつけてるガンダムなんだけど、技術の発展で大気圏内でも飛ばせるようになったから使ってるんだよ。ビームを弾けるバリア、装甲自体も高純度で耐弾性能に優れるチタン系の合金持ちのバケモンだけど、宇宙戦艦なみの維持費がいるってんで、後継機も派生も開発されなかった機体だ。あの宇宙戦艦みたいな外部ユニットがほとんど本体みたいなもんだし、」

復元されたデンドロビウムは波動エンジンをオーキスのメインエンジンにしており、性能向上を果たしている。波動エンジンをメインエンジンにしたため、運用コストは上がっているが、この時代では『下手に戦艦を作るよりは安い』と見做されている。その恩恵により、メガビーム砲はショックカノンにパワーアップしており、ヤマト型宇宙戦艦並のパワーを持つ。動く弾薬庫である事は変化していないため、その点では地球連邦正規軍が運用した機体では最高レベルの火力を未だに持つ。

「えーと、0号機がブロッサム、一号機がゼフィランサス、二号機がサイサリス、今の三号機がデンドロビウム、四号機がガーベラだっけ?」

「開発チームの遊び心ってやつだが、二号機は曰く付きなんだよなー」

「え?」

「サイサリスの花言葉を考えてみろ、ルージュ」

「えーと……『偽り』…?」

「うん。二号機は核攻撃用に開発されたガンダムなんだ。一年戦争は終わってたからってんで造られたが、ジオン残党はそれを北米を荒廃させるコロニー落としの口実にした。だから、あいつらは過激派扱いなんだよ。なーにが星の屑だ」

キュアメロディはシャーリーとして、ジオン残党狩りに参加してきたため、ジオン残党には苛烈な面がある。シャーリーとしての故郷である北米を荒廃させたからだろう。(穀倉地帯を壊滅させ、北米大陸のスラム化を招いた。コスモリバースシステムでも完全には癒えなかった傷だ)

「メロディ、あんた。言うことが中々、すごいわね」

「これでも、お前らより先に転生して、未来世界でも戦ってきたからな。この世界のサンフランシスコとサンディエゴはそのガンダムの核攻撃でこの世から消えちまってるのもあるかもな」

「あ、今年の7月くらいだっけ?」

ドリームが言う。

「8月初めだ。それから連中が欧州に攻撃するまでに時間はかけなかった。皮肉なもんだけど、戦時動員されてた部隊を督戦付きで送り込んだんだろうさ。この世界じゃ、軍隊本来の目的に対して、ウィッチ部隊はサボタージュするから、なにかかしらの督戦はしてるだろう。そうでないと動かないはずだ」

ウィッチ部隊のサボタージュは敵味方ともに大いに悩まされる問題であり、連合軍は64に扶桑が有していた有効な人的資源を集中させる事を公的に認め、実質的に501との統合運用でローテーションを回していた。地球連邦軍のロンド・ベルへの多大な投資を真似したのである。この後、軍部は加速度的にウィッチの軍事利用への興味を失っていく。結局、Gウィッチはウィッチの組織化の維持の観点から、現役に留まることが求められ、元帥位が各国で約束されるに至る。この時に64に自主的に転属した層がウィッチ組織の中枢を長らく担うのは、日本からの個人主義・反戦風潮の持ち込みによる厭戦の風潮が広まったからで、二代目レイブンズが如何に期待されていたかが分かる。

「旧ソ連じゃないが、政治将校置いてそうだしな、ティターンズ」

「憲兵が肥大化したのがあいつらだしな。元々はバスク・オムの配下のゲリラ狩り部隊と憲兵を統合して、特殊部隊の体裁で存在してたからな」

ティターンズは憲兵の機能も持っていたが、その理由は元々が憲兵部隊とゲリラ狩り部隊を統合したからであり、極初期はエリート部隊の体裁を整えていた事もあり、存在していた時代では特権階級であった。

「ティターンズが政治将校の集団みたいなもんさ。憲兵と通常の戦闘部隊を兼任なんて、普通じゃないし。スペースノイドには不当逮捕当たり前、普通の軍人は奴隷扱いだものな」

「そんな、武装SSとかゲシュタポまがいのことが許されてたの!?」

「正規軍の軍人の子弟でも無きゃ、喧嘩売っておいてテロリスト扱いで逮捕、軍の関係者と判ったらあっさり釈放とか、いい加減な事してたよ、カミーユ・ビダンの件が有名だし」

「そんな連中だから、コロニーの1500万の住民を平然と糜爛性の毒ガスで殺すし、月面にコロニー落とそうとするわ、負けそうになると、地球全土を核で焼こうとした。そんな気が狂ってる連中が相手なんだ、ルージュ」

ティターンズの残虐行為の数々は戦後に断罪されたが、構成員であっても残虐行為を知らない者がおり、真面目に任務に取り組んでいた良心的な層は正規軍に戻れ、ロンド・ベルにも入れる者が出たものの、大多数は田舎のトリントン基地で飼い殺しという因果応報の目にあった。何割かはジオンに魂を売るという本末転倒の顛末を辿った。今のネオ・ジオンの構成員の1割は元・ティターンズ残党である。そのため、シャアは自分がかつて、叩くだけ叩いたティターンズの残党を都合のい手駒にしていると言ってよく、歴史の皮肉(ティターンズは23世紀初頭時点では『極右の反連邦運動』扱いである)であった。

「Zガンダムが戦った戦争が終わった後、ティターンズは反連邦運動ということで、闇に葬る事に政府が認定した。生え抜きの軍歴は認めない方向で。その抗議運動が肥大化し、ある時の次元の歪みで、生き残ってた地上軍の最大勢力をこの世界に呼び寄せた」

「23世紀の世界の連中がモビルスーツとかを活用すれば、この世界のミリタリー・バランスは容易く崩れる。ティターンズの生き残りはその第一歩に核兵器を使った。それもレーザー核融合弾頭で」

「えーと、つまり?」

「お前たちの生前にあった列強の最強クラスの核兵器より遥かに強くて、残留放射能が殆ど出ない『キレイな水爆』だよ、ドリーム」

ティターンズの持つ『RX-78GP02A』のアトミックバズーカは恫喝に使われ、サンフランシスコ、サンディエゴを吹き飛ばした。波動エンジン艦には通じないものだが、町を吹き飛ばすには抜群の効果であり、リベリオン本国では『グラウンド・ゼロ』という名で両都市の跡地はクレーターになっている。そのため、ウィッチ世界での核開発はこの時点でほぼ停滞し、ミノフスキー式反応炉の開発という名目で、扶桑のみが細々と地下で研究するだけになる。

「出ないってわけじゃないが、被爆したもんが放射性物質化するから、その放射能は出る。ガミラス戦でミサイルに仕込まれて、相当数が撃たれてたから、一時より旧型核兵器は減ってるって聞いてる」

ガミラス人は放射能では死ぬことはないため、地球連邦軍も波動エンジンを得る前には積極的に水雷戦隊の武器として使用し、地球本土だけは制海権を維持していた。

「宇宙戦争だと、核兵器もただのミサイル感覚なんだなあ」

「黒江さん曰く、バジュラは甲殻を二重にすることで反応弾までは無効化してたって言うから、23世紀じゃ旧型の兵器扱いだそうだ」

反応弾に変わり、次元兵器が大量破壊兵器に認定されたが、ある意味ではタキオン波動砲もそう見なせるとはサレザーイスカンダルの談。次元波動爆縮放射器とタキオン波動収束砲。双方は似て非なるものだ。サレザーイスカンダルはアースに指摘され、内政干渉じみた忠告こそやめたが、波動砲を護衛艦に至るまで装備させている事は快く思っていない。また、アースは時空融合の影響で、次元波動爆縮放射器は重力に弱く、白色彗星帝国の同位体の猛攻に抗するには、いささか力不足である事を知っている上、タキオン波動砲でさえも白色彗星帝国のガスを取り除くので精一杯だったという戦訓があるため、波動砲に自惚れず、マクロスキャノン、光子魚雷、光子力ビーム、ゲッタービームなどの超兵器を開発し続けているのだ。

「うへぇ。未来世界って、どういう世界なのよ」

「ドラえもんの世界が直後の戦争で変質して、更に近隣次元とくっついて成立した世界だ。言うなら、ドラえもん世界が、そこから近い座標にあったパラレルワールドを取り込んで出来た世界だ。ドラえもんの時代のもっと未来だから、便宜的にそう呼んでるんだ」

「22世紀より先なの?」

「23世紀の初頭、ドラえもんの時代より80年位先の時間軸だ。技術体系は変質したけど、一応、宇宙移民は出来た世界。だけど、移民と地球居住者で戦争の繰り返しなんだよ。しかも、最近は移民船団同士で戦争してるんだから、人間は数百年くらいじゃ変わんないんだよな」

正確に言えば、ハト派の手で同胞に向ける銃を無くすために、軍隊を一旦解体する方向になったものの、異星人との宇宙戦争の時代になったために、それが棚上げにされ、危機を乗り越えるために政府の再編と軍の再建が選ばれたのである。つまり、地球人類はゲッター線の意思により、『互いを食い合い、殺し合うことで進化する』宿命を背負わされているがために、誰もがなにかかしらの形で戦い合うことが運命づけられた種族なのである。

「ゲッター線はあたしらに闘争を求めてるかんなー。それを捨てることは許されない。そういう風に地球人類の運命は決められてるんだよ、いろいろな形で。それを鑑みれば、見方変わるぜ?」

「ゲッター線?」

「ゲッターロボのエネルギーなんだが、人類に進化を促すために生まれた存在なんだよ。そのせいもあって、いろいろアブナイ面も目立つんだ。昔の核エネルギーよりは安全なんだがね」

「核エネルギーは初期の原子炉だと、被爆事故が結構起きてるんだよね。被爆した人間の肉体を心臓以外の全部を放射性物質に変異させた事故もあったくらいだし」

「放射線を防ぐ手立てがなかったしな、初期の原子炉の段階だと。23世紀は放射線を遮断する仕組みが確立されてるんだが、核融合炉の小型化しすぎで核爆発する危険が高まったから、また大型化に戻ったしな」

「つまり、機械もエンジンも小型にしすぎても?」

「そ。ガンダムも一時は15m以下にまでダウンサイジング化されたんだけど、エンジンが被弾で爆発した時の危険性とか、機体強度とかの兼ね合いで初期の20m級に戻り始めてる。安全性もあるけど、大型機の性能が小型機に追いついて、多くを積めるほうが有利になったからなぁ」

ガイちゃんの言う通り、小型機は小型核融合炉に潜む危険性が判明した事、銀河大航海時代には『大型機のほうが有利』と技術革新でかつての優位性が一部の高級機でもないと崩れた事、VFの普及でMSを過度にダウンサイジングさせる意義も薄れた事などから、MSは初期のサイズに回帰しつつある。小型機はF91のように、『マルチプル・コンストラクション・アーマー』などの高度な製造技術を要するため、V系でもない限りは大量生産が以前よりハードルが高い問題も生じた。一方のネオ・ジオンも、その他の問題がある。シャアが暴走の危険があるモビルアーマー『ネオジオング』の計画を『ナンセンスで、時代錯誤だ』として却下し、製造に要する資源をより安全で、アンチファンネルシステムを積むクイン・マンサの直接の発展型『グラン・ジオング』を推進させ、火星独立ジオン軍のRFシリーズをギラ・ズールに代わる主力に選定するなど、総帥としての体裁を保っているが、実際のところ、ネオ・ジオンの命脈は自分とミネバ・ザビが運営から手を引けば絶たれるにすぎないほど基盤の脆い存在であると自覚している。アンチファンネルシステムは連邦に横流しされたが、元はジオンの技術であるので、自分達で作れないわけではないので、グラン・ジオングは平行世界での『ネオジオング』の危険性を認識したシャアがジオン系技術者をなだめるために、クイン・マンサの発展型を自分で提案して採択した機体であったりする。(もっとも、ネオジオングであろうと、神のレベルに達している真ゲッターロボやマジンカイザーには無力だが、シャアは強化人間搭乗時の暴走を危惧し、フェイルセーフとして、MSとして造らせた)

「ジオン、連邦がRGM系にビームシールド積み始めてんの知ってんの?」

「アナハイムから情報は行ってるだろ?ただ、伝わった時のアナハイムの技術力とステルス性との兼ね合いで積んでないだけだろうな。残党の残党の残党にゃ大層な装備でもあるしな、あれ。連邦ですら全軍には行き渡ってねぇし」


「あのぉ、専門用語連発で分かんないんだけど」

「帰ったら、未来世界の戦史の口座をとっとけ、ルージュ。これからの仕事で知識は必要だしな。ドリームは素体の記憶を受け継いでるから、わかったようだぜ?」

「うん、だいたい。錦ちゃんが職業軍人で良かったよ。学生時代に三日で演劇部を退部させられた事あったけど、錦ちゃんの記憶のおかげで改善されたし」

「三日かよ、のび太なみだな。中学の頃まで帰宅部で、高校一年の夏頃に射撃部入るまで、いくつか出されたり入ったりだったし」

のび太が最初から射撃部に入れなかった理由はいくつかあり、一つは射撃部の入部条項が厳し目であった事、射撃に必要な機材を揃えるのに、のび太の両親が金銭面で難色を示した事などが作用してのものだったが、いくつかの部活を追い出されたりした後、しずかがガランドに頼み込み、ライフルなどを都合してもらい、のび太に提供したことで入部できたのである。のび太の才能はこの時にゴルゴと同レベルにまで高められ、大会では三年間、個人での最高得点をマークし続け、30代前半時には東京オリンピックに出場、金メダルを取っているなど、表社会でも一定の名声を得るに至る。

「え、のび太君、射撃部だったの?」

「高校と大学で。スナイプはそこで鍛え直したとか言ってたぜ。30代の頃からオリンピックに出るぜ、あいつ」

20代の頃は表向きの仕事の習熟、生まれた子供(ノビスケ)が幼少かつ、裏稼業で一定の名声を得るために邁進してたので、スポーツ競技としての射撃をする時間がなかったが、30代を迎えた後には環境的に一定の余裕ができたので、競技射撃に精を出し始める。のび太が子供の頃の特技を活かした楽しみを見出し、官僚ながら、オリンピック選手としても名を馳せていくのだ。

「なんで30代からなの」

「そりゃお前、カミさんとガキを養わないといけないだろ、あいつは。おまけに年老いていく両親の面倒もある」

余談だが、50代半ばと、老境に差し掛かった時代ののび太曰く、のび助と玉子はその時代でも未だ健在だが、すっかり年老いてしまったと嘆いている。80代に差し替える頃には、母親の玉子の足腰は、よる年波に押され、弱まり始めていることが分かる。また、その頃にはのび太に料理を奮う機会も激減しているらしい発言もあることから、のび助と玉子はのび太の結婚後は隠居し、別居していることが分かる。歴史的には、調とはーちゃんに家を任せて隠居したのであるが、息子ののび太が老境に差し掛かり、孫のノビスケが結婚するような時代になると、特に玉子が『年老いた』のが目に見えてきたらしい。

「そう言えば……」

「のび太は一人っ子で、しかも嫡子だからな。おふくろさんが子供の頃に心配性から、教育ママになるのも無理はないさ。本当は優しいって話だし。あいつは大器晩成型で、でかくなってから潜在能力が開花するタイプだから、子供の頃にダメダメでも仕方がないんだ。だから、ドラえもんや調、はたまたはーちゃんの居候を許したんだろう。父親の代と違って、のび太には従兄弟(従姉妹)は大勢いても、実の兄弟はいないからな。それを気にしてる節あったからな、おふくろさん」

のび太は父母に兄弟が多い(玉子に二人、のび助に四人)ため、歳の離れた従兄弟(従姉妹)が多くいるが、全員と交流があるわけではないし、のび太の遠縁の親戚に『のび太郎』というほぼ瓜二つな人物もいたりするが、のび太の実の兄弟姉妹はいない。元々、野比家が長らく借地に住んでいたため、子供を二人以上儲ける余裕がのび助の頃にはなかったためである。それが一人息子の成長に影響しているのではないか、と気にしていたので、ドラえもんや調、はーちゃんの居候をのび助と玉子が許したのである。

「それで居候を?」

「たぶんな。そのおかげで、あたし達は20世紀最末期から21世紀の暮らしを満喫できてるわけだが。困るのはお前だよ、ドリーム。お前、それじゃ天姫の前に姿見せられないだろ」

「天姫もそうだけど、小鷹お姉ちゃんや疾風にどうやって言い訳しようかなあ…。まさか、存在自体が別人化したなんて言える?言えないよねぇ…」

肩を落とすキュアドリーム。厳密に言えば、自分は『夢原のぞみ』であって、『中島錦』ではない。夢原のぞみとしては、演劇部を三日でクビになった記憶があるため、彼女自身も、幼馴染のキュアルージュ(夏木りん)も頭を抱える。

「かと言って、演劇部を三日でクビになったアンタに演技力は期待出来ないしねぇ……」

「うぅ〜、どうしよう〜」

かなり真剣に悩むキュアドリーム。と、そこへ。

「うわっ!な、何!?」

「ゼフィランサス!レプリカ作ってたとか言ってたな、ニナさん。あの動きだと、黒江さんか?」

黒江が乗っていると思われる、RX-78GP01『ゼフィランサス』(レプリカ)が逃げるマラサイを追尾しながら飛来した。ちなみに、有名なフルバーニアンは、元々はゼフィランサスの状態で宇宙戦闘に対応できるという触れ込みであったが、コウ・ウラキのミスや機体テスト不足などで大破した後に修復のついでに強化した機体である。(この時の修復のノウハウが後のZガンダムの脚部設計に生かされたという) また、フルバーニアン化した状態で地上戦ができるか、という疑問はフルバーニアンが短時間で大破、喪失したこともあり、より後の世代のMSが現れた時代でも結論は出ていない。一応、いつでも換装可能なオプションとしてフルバーニアンのパーツは再生産されていたが、とりあえずゼフィランサスの状態でのテストが先としたニナ・パープルトンの意向もあり、ゼフィランサスの状態で運用されていた。より後の世代であるマラサイに追いつき、ビームサーベルで斬り裂くゼフィランサス。射撃武器に頼らず、接近戦用武装(グリプス戦役の頃は射撃優位の時代であったが、Fシリーズ登場後はビームシールドの存在もあり、射撃武器はよほどの出力でないと突破出来ないため、接近戦の意義が見直された。一時は『エースパイロットでもない限り、MS同士のチャンバラは起きない』とさえ言われ、ティターンズのMS教官らもその認識であった)で戦うのは華がある。

『ふう。お前ら、敵は一旦引いたみたいだ。退け、飯時だぞ』

「はーい。黒江さん、今日はゼフィランサスで出たのな」

『ものはついでで頼まれたんだよ。クラスターを戻したら、ニナさんにゼフィランサスの試験のやり残しを消化してくれって』

「あれ、コウさんが試験してたんじゃ?」

『アフリカの環境とオーストラリアの大地でしか試験してなかったから、市街地戦のデータはないらしいんだ。それにティターンズ派の台頭で再生産からの試験も出来なくなった上、コウさんの集めたデータもほとんど散逸したらしくてよ。それに、中の駆動系を駆動系をジェガン互換にしたからテストやり直しだとよ』

コウ・ウラキの搭乗していたオリジナルと違い、左肩のエンブレムがロンド・ベル隊のエンブレムになっていたり、持っているライフルがZ系用のロングライフルになっているが、ゼフィランサスである。黒江の操縦技術の賜物か、人間くさい動作を見せる。

「先輩、サーベルで落としましたよね?ライフル使わなかったんですか」

『ライフルはドッグファイトに入ると使わないさ。昨今はビームシールドが出てきてるから、サーベル戦が重視されてるし、技術革新で、大型機でも小型機に立ち向かえるようになったしな』

「本当にガンダムだ……。実物大だと、こんな大きさなんだ……」

『こいつは小さいほうだ、ルージュ。火力偏重の時代に造られたSガンダムやZZは20m級だしな』

ゼフィランサスは一年戦争の数年後に試作されたモデルであるので、ガンダムタイプとしては型落ちのモデルだ。相対的に第4世代機や第5世代機より小型であるが、一年戦争当時のスタンダードな大きさである。別世界の住人であったキュアルージュには大きく見えるが、SガンダムやZZガンダムのロールアウト後から見れば、むしろ小柄なのだ。

「先輩、Z系のロングライフルを使ってますね?」

『製造時の初代のブラッシュアップタイプは旧型になったし、弾倉も現行のEパック式と規格が違うしな。出力がいいから、こいつを持たせた』

ファーストガンダムの面影が濃いRX-78GPシリーズが、Zガンダム系統のロングライフルを持つのはアンバランスなようだが、リゼルの採用に合わせて本格生産が整ったため、エースパイロットの好むライフルとされる。そのため、オリジナル機の製造時に採用されていたビーム・ライフルが旧式化していたゼフィランサスに持たせるのは不自然ではない。

「ジェガンのライフルは持たないんですね」

『あれはショートバレルで射程が短いし、ジオンやティターンズの型落ちには効くが、機械獣やベガ獣には効かねぇんだよ』

ジェガンのビーム・ライフルはこの時代でも使用されているが、ショートバレルな事、強化型でもビームシールドを貫通できないなどの不満点が噴出しており、ジオン系以外を敵にする場合はロングライフルが必須である。特に機械獣や戦闘獣、ベガ獣(円盤獣)などの装甲がMSより厚めの敵には、ジェガンの標準装備のショートバレル式ビームライフルでは役不足なのである。

「やたら人間くさく動くんですね、このガンダム」

『コア・ファイター式とは言え、完全にムーバブルフレームタイプに変わってるからな。オリジナルと同じなのは外観だけさ』

基本的にムーバブルフレーム(可動骨格)がグリプス戦役後のMSのフレーム構造になっている都合上、GPシリーズもムーバブルフレームを持つレプリカが製造されている。強力な小型機が普及せずに問題になったのは、V系とガンイージ系を除く大半がセミモノコック構造とフレーム構造の折衷的構造であるが故に、複雑な製造工程を要する事と、現場の整備に手間がかかる点である。(大型で独立した骨格を持つ機体は製造が比較的容易で、整備性が高い)ムーバブルフレームは小型機の登場で消えるかと思いきや、宇宙戦争時代とガンダムファイトによって利点が見直され、なんだかんだで生き残ったのである。(F91以降の小型MSに採用例の多かった『マルチプル・コンストラクション・アーマー』は利点も多いものの、整備性の悪化と製造工程の複雑化から、現場では嫌われていた)

「ムーバブルフレームぅ?」

『英語でMORVABUL F-LAME、だったかな。可動する骨組みって意味さ。未来世界のMSは大半がこの構造さ。このガンダムが造られた計画だった『ガンダム開発計画』が礎になって確立した技術だな』

機体の外部スピーカーで一同と会話を交わす黒江。なんとも面白い光景だが、人型機動兵器ではスーパーロボットに至るまで標準装備である。これは軍用MSなどは通信が出来なくなった場合などの保険、スーパーロボットは音声入力や音声認識との兼ね合いである。こうして、プリキュア達は少しづつ、未来世界の驚異を体感していくのである。1945年当時にモビルスーツを持ち込んで使うことはどうか、…という意見が21世紀の防衛官僚などにはあるが、ティターンズがモビルドールをも用いているため、その種の議論は不毛なものである。こうして、プリキュアをガンダムが援護するという光景は21世紀の政府関係者や官僚達に平行世界の驚異を実感させるものであった。



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