外伝2『太平洋戦争編』
四十七話『宇宙艦隊』


――自衛隊がウィッチ世界に大規模に部隊を送る中、亡命リベリオンと同位国のアメリカ合衆国は静観を決め込んでいた。当時の政権が平和主義的論調を展開していた事、日本に火中の栗を拾わせようとする考えがあり、亡命リベリオンへの物的援助に留めていた。これは地球連邦の主導権が自らに来ない未来を知った事による反発も含まれていたので、国防総省からは派遣要請が繰り返し、具申されていた。アメリカ合衆国が衰退しつつある21世紀当時、中東の占領政策の失敗と、テロの頻発化により、アメリカ合衆国の権威そのものが衰え始めた時代、国防総省は大義名分が容易に得られるであろう『ウィッチ世界への派兵』を求めた――

――2013年 日本の防衛省――

「なぜ、アメリカは奴さんの世界への派兵を渋るのだ?」

「アメリカの財政難と、前の共和党政権の失敗で及び腰なのさ。それと、日本に火中の栗を拾わせる気なのさ。それと、連邦の時代には、アメリカ合衆国の地域は衰退しているらしいからな。おまけにデラーズ・フリートのおかげで穀倉地帯が吹き飛んで、スラム化してるそうな」

「ああ、あいつらはやっぱりやったか。それでティターンズが生まれ、エゥーゴが生まれるんだろ?その辺は不気味なくらいに同じだな」

「俺達の上の世代は、『ガミラスが来て、白色彗星帝国がきた〜!』って盛り上がってたぞ」

「宇宙戦艦ヤマト、か。あれも実物が出来て、地球連邦軍のシンボルになるなんて、今の50、60くらいの連中には嬉しいだろうな」

「俺達の世代からすりゃ、『ご都合主義的展開でファンが離れたシリーズ』だけど、あの年代にとっちゃ『ガチのSF大作』だったしな」

「で、波動エンジンが量産されて、連邦の宇宙艦隊は日本海軍の艦の名を持つ宇宙戦艦だらけと来てる。そりゃアメリカは怒るわ」

――23世紀地球連邦軍の主力艦隊の有力艦の多くは、旧日本海軍の主力艦、あるいはそうなるはずであった船の名を持つ。しかも、地球連邦軍の有力艦(マクロス級は別枠)ベスト10の大半は日本海軍主力艦の後継者である。この事実に怒るアメリカ合衆国海軍関係者も多いが、これはティターンズ主力艦隊に欧米系の艦名が多かった反省により、エゥーゴの主力を担っていた旧・日本国に所属司令部があったエゥーゴ残存艦隊がその後の宇宙軍の中枢とされた影響によるものだ。そのため、ヤマトを筆頭に、『金剛』、『比叡』、『瑞鶴』などの波動エンジン搭載艦が主力艦隊に在籍している。また、『ラ號』と『まほろば』も在籍しているので、主力艦隊の過半は『日本海軍』である状態である。そのため、波動エンジン搭載艦の独自開発艦を生み出すのが、23世紀の地球連邦軍のトレンドであった。最も、その多くはヤマトと同時期の移民船であったモノを宇宙戦艦に直したものだったりするので、ロシアの『ノーウィック』が最も旧式の発進方を使っている。

「でもよ、地球連邦軍の船って、どういう区分なんだ?ガンダムの艦艇と宇宙戦艦ヤマトの艦艇とじゃ性能差があるぞ?」

「大まかに外宇宙航行能力の有無で『沿岸用』と『外洋用』を区分分けしてるみたいだ。だから、それを多く持つ日本地区の艦隊が強力だそうだ。あ、それと。ブリタニアから、新戦艦の建造支援の要請が来てると、大臣に言っておいてくれ」

「何、戦艦?チャーチル卿、ライオン級あるのに、まだ戦艦を作ってるのか?」

「扶桑は艦砲射撃の目的も兼ねて、旧型の代替の大和ファミリーを揃えてるから、それへの対抗だろう。多分、チャーチル卿、下手すると首相のクビ飛ぶんじゃないか?」

「空母閥の恨みも買ってるだろうしな。いくら賠償金が行くと言っても、戦艦を三隻以上作れば……」

「チャーチル卿は欲しいんだろ。ブリタニアの威光を知らしめるモノが。それが戦艦と解釈したんだろう。核兵器がない以上、戦艦は抑止力になると思ってるんだろう。時代的には空母だが……」

彼らは、ブリタニア連邦の首相『ウィンストン・チャーチル』が大艦巨砲主義者な事を揶揄した。チャーチルは戦艦戦力の維持を望んでおり、ライオン級/セント・ジョージ級に次ぐ戦艦の登場を切望した。これは戦前期の軍備整備計画『新標準艦隊』の通りであったが、ブリタニアでは戦艦よりも空母の整備を望む勢力が拡大しており、戦艦枠を空母枠に置き換えろという勢力の勢いが強まっていた。それへの対抗措置に『CVA-01級航空母艦』の建造を約束したものの、空母を妥協しまくって、戦艦を増加させた意義は『見栄』と断じられている。因みに、戦前期の計画では『主力艦を20隻整備する』という事になっていた。旧型含めての数字だが、現在の財政的に、戦艦20隻の維持など不可能である。そのため、現在では15隻が理想なのだが、旧型戦艦はロマーニャ決戦で少なからず消耗しており、新戦艦の割合増加が望ましいと、チャーチルは考えた。戦前期の構想では『戦艦20隻、航空母艦15隻』であったが、空母の高額化と戦艦の高性能化による費用増大により、それは露と消えつつある。特に、セント・ジョージ級は扶桑の援助を得られたが、更なる新戦艦は下手すれば、独力で作らざるを得なくなる。そのため、チャーチルは節約のため、セント・ジョージの砲の原型となった、N3級戦艦用の砲塔を引っ張り出すように命令を出した。幸いにも砲は健在であったが、砲塔に改良を加える必要が生じたため、建造が遅延した。扶桑が連邦と日本の工業力を借りて、超大和型戦艦の建造を迅速に進めているのとは対照的である。この時に実用化済みの『最新式の46cm砲』を載せなかったことがチャーチルの誤算となった。最新式の主砲でなく、N3級用を流用するに当たり、負仰装置の設計と後座スペースの調整の問題があったのだ。また、経年劣化で砲塔の床板が腐食していた事による修繕費もかかる始末だった。その結果、アイアン・デュークの建造は遅れに遅れ、連邦と日本に泣きつく有様であった。同時に起工された『ヴァンガード』は南洋島で起工されたのが幸いした事、空輸の都合上、砲塔が軽量化されている最新式に変えられた事もあり、竣工順で一番になった。そのこともあり、アイアン・デュークは『曾祖母の剣を携えた戦時急造艦』の評判を得た。これは史実ヴァンガードと同じような評判であり、物笑いのタネにされた。が、ヴァンガードとその妹艦(当初はマールバラの予定だったが、三番艦のヴィクトリアスが空母に転用されそうなので、4番艦に回された)ヴィクトリアスは主砲がセント・ジョージ級と同等のものであり、隊列を組む上では好まれたという。




――1948年 前線

なのはの活躍により、ウィッチ部隊は形無しだった。なのは一人でウィッチを翻弄し、圧倒するので、護衛ウィッチがいらなくなるほどだった。これは航空魔導師の最上位級に位置していたなのはと、他の者の差と言えた。実際、ウィッチのストライカーでは、なのはの機動に追従できない場合が多く、更になのはが遠近に強い事もあり、コルセアにあるまじき『虐殺』に等しい戦闘だった。

「あらよっと!」

なのはのレイジングハートの作り出す刃は、たいていのウィッチの魔力で作り出せるシールドを薄紙の如く切り裂ける。元々、膨大な魔力を持つなのはの魔力をカートリッジで更に増大させているので、その威力は抜群。ハルバードモードで『F4U』の飛行魔法発生部をズバーンと叩き斬り、離脱する。なのは一人で複数を相手取れる辺り、さすがと言うべきだろう。



――別の戦場でも、似たような様相を呈していた。それは。



『サンダーブレーク!!』

グンドュラ・ラルは、奪取した量産型グレートマジンガーの全能力再現型を駆り、意外な奮戦を見せていた。これはラルの能力がグレートマジンガーの能力と合致したためであったが、彼女としては存外、上手く扱えていると安堵していた。特にサンダーブレークがしっくり来たらしく、先程からサンダーブレークを活用して、敵を倒している。妙にしっくりきたのか、叫びも熟れている。サンダーブレークは連発すると、エネルギー消費が早い。が、悠長に戦闘している暇はない。『攻撃力・防御力の強化に、サンダーブレークを鎧のように纏えばいい』と考えつく。そしてサンダーブレークの電撃をグレートマジンガーそのものへ落とし、その電気エネルギーを鎧の如く纏う。ただし、それは継戦能力を削る荒業でもある。そのため、フィールドを胸の当たりに集中させ、その他のエネルギーはマジンガーブレードをコンデンサ代わりに高圧充電する。

『荒業だが……名付けるなら、サンダーフィールド&サンダーブレード!!』

ラルにしては荒業を使った。剣鉄也ほど剣技に自信があるわけではなく、グレートマジンガーの性能頼りな事も自覚している。それ故、一気呵成にカタをつけるつもりらしい。すぐに量産型ゲッタードラゴンを奪取したエディータ・ロスマンへ通信を入れる。

「ロスマン、仮面ライダーJをカバーしろ。私は雑魚どもを一気呵成に片付ける!」

「隊長、何を!?」

「勇者を悪魔に変えた礼をしてやるのさ!」

ラルはリウィッチ化で声色が高めになっている&いつになくノリノリらしく、声色が完全に御坂美琴と同じものになっていた。そのため、ダウナー系で知られた彼女とは思えないほどに熱血していた(スーパーロボットに乗ると、何故か、どんな者でも気分が高揚するという効果があるらしい)

『食らえ!!サンダーブレード!!』

ラルは肉体年齢が14歳に戻ったため、以前より気が若くなったらしく、空軍総監と思えないほどに、ノリノリでグレートマジンガーの技名を叫ぶ。これは元々、スーパーロボットの武器の音声入力は一定以上の声量が必要なためだが、ストレス発散になるようで、ノリノリだった。サンダーブレークを纏わせたブレードを勢い良く投げ、グレートマジンガー軍団を沈黙させる。それを見届けた仮面ライダーJも跳躍し、一気に成層圏にまで跳躍し、そこからライダーキックを放った。凄まじい威力なので、その射線にいたゲッタードラゴン軍団は消滅するか、原型を留めないレベルで破壊される。量産型の合成鋼Gの強度はオリジナルより低いため、破壊度数は高く、無事なドラゴンが、ズタボロになった個体に肩を貸している。そして、量産型ドラゴンの内、指揮官仕様の高性能機に乗るロスマンも、落ちていたダブルトマホークを両手に持ち、暴れる。ロスマンは戦闘においては、普段は接近戦を行わないが、スーパーロボットに乗っている時は必要に駆られて行った。そのため、ダブルトマホークをメッチャクチャに振り回しており、完全にドシロウトだった。グレートマジンガーのラルも同様だが、ラルは『7人の侍』宜しく、二、三機をブレードで切る。すると、ブレードが折れるので、別の敵のブレードを拾ったり、地面から引き抜いて使う。グレートマジンガーのブレードは継ぎ目があるので、熟達していないと折れやすい。これがカイザーブレードやゴッドブレードとの差であった。

『うおぉ!?し、しまった!』

ラルはドリルプレッシャーパンチを自機の脇腹に受けてしまい、バランスを崩す。そして、敵機に羽交い締めされてしまう。そして、ブレストバーンを浴びそうになるが。

『グレートトルネード!』

竜巻状の暴風が自機と敵機をまとめて吹き飛ばす。ラルはスクランブルダッシュでその場を離脱するが、他は地面に叩きつけられる。

『ほう。なかなか頑張ってるじゃないか。君が量産型グレートを動かすとはな』

『その声は……剣鉄也か!?』

『ああ。加勢に来たぜ、この『偉大な皇』、グレートマジンカイザーがな』

『せっかく、アトミックパンチで背後の奴の頭を潰そうとしたのにな。まぁ、その、なんだ。ありがとう』

『なあに、グレートマジンガーが悪用されているのなら、俺が出張らんわけにもいかんからな』

鉄也がオリジナルの後身『グレートマジンカイザー』を引っさげて現れた。オリジナル機のパイロットの身としては出張らないはずがない。Gカイザーはグレートマジンガーよりも5m近く大柄であり、体形もより筋肉質なマッシブなものになっている。皇帝になった事を示すように、胸のV字型放熱板の形状も変わっている。

『ブレードが破損しているのなら、カイザーのショルダースライサーを使え』

鉄也は、カイザーの肩に収容されているショルダースライサーを取り出し、ラルのグレートに貸す。

『お、おい。いいのか?』

『俺にはディバインソードがあるんでな』

鉄也は、機体の放熱板を剣の柄に変形させ、ソードを取り出す。カイザーブレードと同等以上の大剣だ。

『さて、グレートを悪魔にしてくれたお礼参りと行くか。ラルちゃん、ショルダースライサーはニューZα製だ。荒く使えるぞ』

『ラルちゃんとはなんだ、ラルちゃんとは!これでも空軍総監なんだぞ』

『今の見かけでは信じないと思うぞ、多分』

『ぐぬぬ……』

ラルは膨れるが、鉄也は軽く流す。ラルは若返った事で、子供時代の素が出たらしく、見かけ相応の可愛い面を見せた。鉄也は兄貴風を吹かしている。彼は老け顔なので、初対面の時は10代の終わりから20代前半に見られなかったのが玉にキズだ。

『さて、剣術の手本を見せてやろう!」

『あ、先に行くなよなー!』

言動も見かけ相応に可愛くなったらしく、時たま素が出るラル。それにロスマンは『クスッ』と笑うが、自分もそうは言ってられない。

『あ、えーと!ゲッタ―ーァビィィィム!』

ゲッタードラゴンの操縦に四苦八苦する。幸いにも、量産型ゲッタードラゴンの操縦系はレバーだらけだが、武器使用時はそのレバーが手前に来るので、なんとか扱えていた。

「ん、もう!なんでレバーだらけなのよ〜!」

大いに愚痴る。量産型ドラゴンはオリジナルゲッタードラゴンのように操縦系が簡便化されてはいないので、その辺が不便といえる。が、体格がマッシブなのが幸いし、当たり負けすることは少ない。

『だから、音声入力がキモよ、大尉』

『え!?ケイ大佐、宇宙にいるんじゃ!?』

『どこでもドア使って、新型ゲッターを受け取りに行ったついで!行くぞ〜!チェェェェンジ!ゲッターァァァ烈火ぁ!』

ニューゲットマシンを上回る速度で飛翔する、新型ゲットマシン。それは黒江が真に欲した新型ゲッターロボ。圭子がそれを聞きつけ、ドラゴン改から乗り換えて、一号機のシートを強引に奪った(?)機体。その名も。

『ゲッターロボ斬、見ッ参!!』

『し、新型!?』

『そう!ゲッターロボ斬!!忍者テイスト満載の新型よ!食らえ、合わせ風車!』

斬は斧ではなく、長刀を持つ。それを組み合わせたブーメランを『合わせ風車』と呼称する。それを行った後、圭子は斬のスピードならでばの技を使う。

『花乱舞!!』

斬はスピード重視の体術を使う事が出来る。正拳突きを食らわせて、怯ませた後、相手の顎を回転蹴りで連続で蹴り上げる『花乱舞』もその一つ。そこからゲッタービームに当たる『斬魔光』に繋げる。

『斬・魔・光!!』

リアル系もいいが、スーパーロボットに乗るとストレス発散になるらしく、圭子は熱い叫びを披露する。むしろスーパーロボットの方が生き生きとしている。

『ハッ、量産型ドラゴンごとき、このゲッター斬の敵じゃないな!』

一応、斬のテストパイロット扱いのスリーレイブンズ。斬チームの育成が完全ではないため、その間隙を突く形でテストパイロットにねじ込んだ三人だが、スピード面でドラゴン以上、號(ネオ)と同等以上の斬に乗るにはそれなりの慣熟訓練を行う必要があった。それと女性用に設計していたのもあり、テストパイロットに女性が必要であるというルールを突く形で、真ゲッターへ機種転換任務中の橘翔の代理という形で、斬のテストパイロットとなり、データを収集している。今回の出撃はそれが名目だ。

『ヒガシ、私に代われ。行くぞ、チェェェンジ!ゲッターァァ紫電!』

ゲッター2相当の紫電になる。パイロットは黒江である。スピードはネオゲッター2と同等、ゲッターライガーを上回る。そのため、ゲッタービジョンに当たる『ゲッター影分身』もマッハスペシャル以上の速度だ。

『喰らいやがれ、千極針!』

ゲッター紫電のドリルは細身だが、威力はネオゲッター2をも上回る。そのため、量産型ドラゴンに風穴を開け、ライガーのドリルを真っ向から砕く。

『疾風針!!』

ゲッター影分身で、まとめて数体を滅多打ちにする。ライガー、ドラゴンを。

『螺旋光!』

ドリルから光弾を撃てるのが紫電の特徴であり、それで先程打ち上げた連中を始末する。

『おし、あとはポセイドンだ!智子、いやだろーが、やれよ〜』

『ポセイドンじゃないでしょー、金剛』

『あ、そうだった』

『くぅぅ、なんであたしがゲッター3なのよ、ゲッター3!あたしのポジじゃないわ、あたしは主人公だっつーの〜!』

と、愚痴りつつ、智子はゲッター金剛を操縦し、、ポセイドン以上のパワーで、残ったポセイドン軍団を蹂躙する。

『修羅爆雷!吹っ飛べ〜!』

取り出した巨大な爆弾を力一杯ぶん投げ、ポセイドン軍団の頭上で大爆発を起こさせる。

『ふう。圭子、今度は変わりなさいよね、烈火の操縦!』

『あ、次は黒江ちゃんがもう予約済みよ』

『なぁ!?』

と、智子が面食らう。が、依然としてグレートマジンガー軍団との戦闘は続いている。鉄也のGカイザーの参陣で、グレートマジンガー軍団はまるで雑兵と成り果てていく。

『バーニングブラスター!!』

複数のブレストバーンを真っ向から押し返す威力のバーニングブラスター。オリジナル機の進化は伊達ではない。超合金ニューZすら一瞬で溶解せしめ、陽炎が立つ。根本的に性能が違うのだ。Gカイザーはマジンカイザーに勝るとも劣らぬ基本性能と、より攻撃的な武装を持つ。『まるで、全身が鋭利な武器だ。いつの間にか僕のより凄い事になったね』とは、宇門大介=デューク・フリードの談。マジンカイザーが攻撃と防御に長けるのに対し、Gカイザーは攻撃とスピードにパラメータを割り振っている。そのため、マジンカイザーに比べて機体重量が軽く、体当たり攻撃に不向きである。そのため、鉄也はディバインソード(カイザーソードの新名称)を構え、量産型グレートマジンガーを蹴散らす。ラルも、ショルダースライサーで斬りまくる。段々と剣の扱いに慣れてきたようだ。そして、鉄也はディバインソードを天に掲げ、ゴッドサンダーを招雷する。

『さて、この子の量産型はエネルギーがそろそろキツイだろう。甲児くんの技だが……トールハンマーブレイカー!!』

トールハンマーブレイカーを放ち、戦いにケリをつける。それと同時に量産型グレートマジンガーのエネルギーがレッドゾーンになり、片膝をつく。

『サンダーブレークの使いすぎだ。グレートマジンガーはカイザーみたいにエネルギー上限がないわけじゃないから、やりくりせんとな』

『スーパーロボットもそういうことは考えるんだな……』

『ああ。肩を貸そう。スクランブルダッシュで飛べないんなら、俺が運ぼう』

『頼む』

鉄也は量産型グレートマジンガーをGカイザーで運び、スリーレイブンズ、仮面ライダーJ、ロスマンと合流する。スリーレイブンズは道中、基地に戻ったら、どこでもドアととりよせバッグと、スモールライトで宇宙に機体を運んでいくと告げる。

『私達は帰還したら、宇宙に戻ります。総監はそのまま指揮を』

『うむ。いや、どうも慣れない機体で醜態を晒してしまった』

『私達も似たようなもんですから、ご安心を。鉄也さん、地上は頼みますよ』

『任せておけ。それが君の国との盟約だからな』

ラルは今や『中将』であり、空軍総監である。スリーレイブンズより階級が上になるため、スリーレイブンズは数年前と打って変わって、ラルに敬語を使っている。ラルは一晩で、先輩方との上下関係が逆転した事をつくづく実感する。ガランドの置き土産は意外に大きい。ガランドの義娘『クイント』が秘書であったり、ガランドの親友『メルダース』が協力してくれている。ラルは、腹心と思われた部下と対立したガランドと違い、周囲の環境に恵まれていた。ガランドはミーナと対立した反省から、自らの後任には『調整役的なトップ』が相応しいと考えており、ラルはうってつけの人材だった。ガランドは敵を増やすタイプだったので、ハルトマンがその仲介に奔走した。それはラルの代になっても、先任をぶっ飛ばしてのラルの就任に反対する者は多く、役目は変わらず、今やハルトマンは調整役もこなせる、カールスラントきっての俊英と名高い。そのハルトマンは何をしているかと言うと。



――最前線の別空域――


『各機、敵機を深追いするな。撃退できればいい!』

ハルトマンは、ストライカーもISもオーバーホール中であったところに救援要請が届き、コスモタイガーを借りて出撃し、そのまま、扶桑空軍のF-86部隊を指揮する羽目となり、ヒットアンドアウェイを徹底させていた。敵はFJ-4であり、空軍機の86は速度で優るからだ。また、巴戦をこなせ、更に圧倒出来るのは自分だけであり、サイドワインダーがあるので、まだミサイル配備が進んでいない扶桑空軍一般部隊には荷が重い。そこでなるべく自分がその前に撃破する事を心がけていた。何せ23世紀の現用機であるので、ミサイルの射程、機銃がパルスレーザーであるという絶対的優位にある。


――初期のジェット機らしい風体のF-86の血統達に比して、コスモタイガーは第4世代機に通じる流麗なフォルムを持つ。ブラックタイガーの血統が、ステルス性を意識した平べったい形状であるのとは対照的に、コスモタイガーはその流麗なフォルムから、人気が高い。基本構成はそれほど変わりないが、アクティブステルスの発展で、機体形状の縛りが緩くなったため、コスモタイガーは第4世代ジェット戦闘機のような流麗な姿を持つ。ただし大気圏内では翼面荷重の都合、重戦闘機的運用が主になる。ハルトマンは元々、重戦闘機の扱いに長けているため、コスモタイガーの特性を瞬時に把握し、基本は一撃離脱戦法で敵機を落としていく。


――ただし、コスモタイガーの後継機はこの『大気圏内での運動性改善』が課題とされている。コスモタイガーは火力が評価されているが、大気圏内では運動性が幾分か落ちる。そのため、『コスモパルサー』ではその改善も求められている。

「よっしゃ、もらったぁ!」

ハルトマンは第一世代機相手にパルスレーザーを掃射する。パルスレーザーは一瞬でも、物凄い速度で放たれるので、この時代の如何な航空機関砲を圧倒的に上回る。しかも、ハルトマン機は『パルスレーザー全面搭載』の後期型仕様、俗に言う新コスモタイガーである。そのため、18門のパルスレーザーがいっぺんにFJ-4に浴びせられる。もちろん、インテグラルタンクを持ち、防弾が薄いフューリーは一瞬で火達磨となり、爆発する。ハルトマンはパルスレーザーを収束させて撃つ事を好んでおり、一撃離脱戦法を徹底していた。そのため、コスモタイガーの高速の真価を発揮しており、ミサイルを使わせる前に撃墜する。

「えーと、こいつらは海軍?それとも海兵隊かな?未来の記録だと、主にマリーンの連中が使ってるはずだけど」

フューリーは未来の記録では、海兵隊が戦闘機型を主に使用したという。この世界においては分からないが、レシプロは姿を消しつつあるのは実感した。ただし、もうF3H、F-11すら現れているので、普及機の位置づけなのだろうか。それは分からない。扶桑統合参謀本部も、日々、現れる機種がバラバラで、頭を抱えている。タカオからの報告で『F-4』の試験に到達しつつあるという報も伝えられていたので、『あらゆる機種のデータ取りでもしているのか?』と疑心暗鬼だ。扶桑軍は海軍航空隊にクルセイダーの普及を急がせる一方、F-4Eの艦載運用に航空自衛隊と米海軍の協力を仰ぐなど、苦労を重ねている。特にスーパーキャリアの建造・運用ノウハウが有る米海軍は艦載機構成をアドバイスする一方、大戦型改装の旧式空母の活用を教える。大戦型、それも翔鶴・大鳳などの日本型空母の改装には限界がある。F-8を積む事により、艦載機数はだいぶ減るので、その活用法をアドバイスした。そのため、連邦の進言もあり、旧式空母はひと固まりの運用編成が固定され、翔鶴〜大鳳の三隻は『ウィッチ用設備の撤去』が行われた後、バルジ装着と艦尾延長などがミッド動乱を大義名分に行い、48年時点では『ジェット戦闘機運用空母』と生まれ変わった。なお、ウィッチの運用は基本、雲龍型改装の強襲揚陸艦に委ねらねるようになり、多くの空母ウィッチは雲龍型へ異動となった。これに反発する者も多かったが、前年、異動に反発し、サボタージュを行った空母航空ウィッチ隊が寄港地で降ろされ、代わりに64F主力を乗せて作戦を遂行したという事例により、スムーズに進んだ。空軍部隊でありながら、空母着艦もバッチリ。64Fの評判が海軍でも固まったのは、この事件が大きい。今では、『海兵隊まがいの任務をこなす』傭兵のような使いっ走りをさせられており、将来的に『宇宙軍』の母体にしようかなんて、気が早い話まで持ち上がっている。それほど、宇宙戦艦の運用は先進的だったからだ。


「ティターンズの侵攻対策で、『義勇兵』かぁ。なんか『昔』にちゅーごくがやった手だよね、これ。まぁ。ティターンズを迎え撃てる準備出来てないから、外交的言い訳って奴か」

ハルトマンが言った『義勇兵』とは、カールスラントが太平洋戦争に参戦するに当たっての時間稼ぎも兼ねて、『義勇兵』という名目で、現地に滞在していた将兵に任務を与えたのを指している。カールスラントは兵器の更新の途上であり、三軍共に、防衛準備すら整っていない。そのため、南洋島に滞在していた将兵を『義勇兵』という名目で、戦争に参加させ、カールスラント本国はしらばっくれるという古典的な手段を使った。朝鮮戦争で中国が使った手だ。ティターンズも二正面作戦は愚策であるのを知っているため、カールスラントを敢えて追求せず、カールスラントはその間に防衛体制を整えていく。幸いにも、カールスラントには欧州随一を誇った生産能力があるため、すぐに新兵器が部隊に行き渡り、現地ウィッチは扶桑とブリタニアなどを介して、武器を受け取り、戦う。そのため、ルーデル達は64Fの『魔弾隊』として戦っている。

「こちらハルトマン。敵は撤退したよ、これから帰投する」

「了解」

(はぁ〜…。義勇兵、か。こんな調子で二年も時間稼げるのかなぁ?まぁ、二正面作戦はよほどの余裕がないと愚策だし、それにティターンズが『ジャブロー攻略戦』知ってるのが幸いしたな。これで一年半は少なくとも稼げる。問題は……)


ハルトマンは周りの調整役をしている内に『大人』になり、こういう戦略眼も身についていた。これは芳佳のことになると、すぐに暴走しがちのトゥルーデ。ニュータイプ化したためか、近頃は熱くなりがちのマルセイユ、ウォーモンガーなルーデル、貴族の義務に囚われ、視野狭窄になるハインリーケの板挟みに遭っているため、近頃はシャーリーと仲がいい。そのため、戦略会議に参加しては、意外と的確な意見を言う。そのため、バルクホルンBは目が点であったりしている。

(そいや、あたしが少佐になってるの、向こうの『先生』に言ったら、すごく腰抜かしてたっけ。んなに驚くことかな?まぁ、『若い時』は伯爵に感化されたけどさ。向こうは菅野とかが抜けた影響で、歴史に影響出てるんだよな。フェイトいるから、極端なピンチにはならないだろうけど)

その言葉の通り、定時連絡でニパBと『伯爵』B、それと『雁斑孝美』(B世界では、名字が一字違う)が出て、『フェイトはバケモノか』と唸っていた。話によると、ニパ、伯爵、孝美の順で模擬戦をしたら、圧倒し返され、訳が分からぬ間に地面にいたとの事だ。孝美は秘技の絶対魔眼を使ったのにも関わらず、更に認識出来ぬ速さを見せつけられ、ライトニングファング→ライトニングボルトの連撃で昏倒させられている。その様子は以下の通り。

――B世界――

「絶対魔眼、か。模擬戦だというのに、無茶をするものだ」

フェイトは絶対魔眼にも表情を変えない。むしろ、予定通りという雰囲気だった。そして。絶対魔眼発動状態の孝美が『!?』と驚愕した。『消えたのだ』。視界から。

『な!?絶対魔眼で視認出来ない速……!?』

『私はここだ』

真後ろに立つフェイト。一瞬で真後ろに回るなど、普通ではありえない。が、フェイトは出来る。それが黄金聖闘士である。

『真後ろに立たれたのが、そんなに驚くことか?孝美』

フェイトは『雁渕』とは、大人になってからちゃんとした面識を持った都合、なのはと違い、タメ口で接している。そのため、B世界の雁斑には年上として接している。

『お前の絶対魔眼は確かに強力だが、体への負担もかかる。それを考慮に入れるんだな』

『……!?』

『今、お前の首に一撃を当てた。これで普通なら落ちるが、どうやら、絶対魔眼を使っていると、シールド能力が落ちるが、身体能力そのものは強化されているようだな』

そう言われた瞬間、雁斑の首元に鋭い痛みが走る。フェイトが当て身をしたのだ。が、絶対魔眼発動状態だと、体が一種の興奮状態になるらしく、感じる痛みは大きくはない。が、そのつけは通常に戻った時に来る。それを知っているので、相当に手加減している。

『その絶対魔眼は負担が大きい。だから、次の連撃で終わりにさせてもらう!』

『私は……扶桑の皆やひかりの期待を背負っている……だから、あの子の前で……醜態を見せるわけには!』

『……いいだろう。ならば聞け、獅子の咆哮を!!』

フェイトは雁渕へ『戦士の礼儀』と言わんばかりの連撃を見せた。それは。

『ライトニングファング!!』

電撃の奔流を右拳から放ち、瞬時に大ダメージを与え、次に得意技を決める。

『ライトニングプラズマァ!!』

雁斑は認識すら叶わぬ攻撃を食らい、昏倒する。光速拳を一億発食らったので、当然の事だ。聖闘士でも、ライトニングプラズマはよほどの素養がなければ、初見で軌跡すら視認すらできない。無論、本気ではない。そのため、雁斑には『獅子の幻影と、光が広がる光景』しか見えなかった。絶対魔眼の状態でも、だ。雁斑孝美でさえ、全く歯が立たない力。その正体が第7感であると判明したのは、その直後だった。

「第7感!?んなの聞いたことないよ!?」

「お前らも持つ魔力は第6感だが、私はそれを超える『第7感』に到達している。だから、光速に瞬時に加速できるし、その速さの闘技を放つ事ができる。そういうことだ、ニパ」

「キミのような『闘士』は皆、それが身についてるのかい?」

「いや、第7感に到達しているからこそ、聖闘士の最上位である黄金聖闘士に任じられる。セブンセンシズに到達していない中級の『白銀聖闘士』で最大マッハ6、最下級の青銅聖闘士で音速程度の動きと闘技を放つ。最も、最下級から黄金に昇格する者もいるから、目安でしかないが。下克上もままあるしな」

伯爵に答える。白銀聖闘士の当代はよってかかって、星矢達に一蹴されるような実力の者が多く、鷲星座の魔鈴、蛇使い座のシャイナと言った実力者を除き、聖戦に参加した者は一握りだ。白銀聖闘士は、極稀に黄金聖闘士レベルの実力者、教皇も輩出するが、星矢達の影に隠れている。星矢達は『次代の黄金聖闘士』たる実力を備えていて、神殺しすら成功させた猛者である。そのため、現在は本来、実戦部隊の白銀聖闘士が全滅に近いこともあり、本来は直属の精鋭であるはずの黄金聖闘士が戦線に出向く事が多くなっている。フェイトや箒、黒江が聖域に控えている事が少ないのがその証明である。そのため、フェイト、箒が任じられた当初の守護星座の聖衣を纏って、アテナに謁見する様子を捉えた写真は少ない。『繋ぎ』であったため、二人の在任期間は比較的短く、後に二人の守護星座が変わった(箒は一回、フェイトは二回)ためだ。

「私は恒久的に今の星座に任じられてはいない繋ぎの立場だが、黄金聖闘士だ。それでいて、ウィッチでもある。ただし、君らと違い、恒久的に魔力を持つがな」

「それって反則じゃないのかい?ウィッチなのに、大人になっても力を失わない。こんな羨ましい事はない。それなのに、神の闘士になるなんて」

「上には上があるのだ、伯爵よ。ウィッチも神ではない。私達が戦っている『敵』を例に挙げるとキリがない。わかりやすく言うと、敵対的な宇宙人に、この星が滅ぼされかけた事も多々ある。それがその写真だ」

それは未来世界の地球が複数の宇宙人の猛攻で、赤茶けた『死の星』になっていた時期の宇宙からの写真である。時空管理局が発見し、『無人世界』と誤認したのも、この時期の事だ。辛うじて地球と判別可能な『日本列島と大陸の形が見える』風景。それはまるで、火星のようであり、ここまで追い詰められておきながら、宇宙戦艦ヤマトで起死回生した事も告げた。

「で、追い詰められて、別の宇宙人のおかげで起死回生に成功。地球は元の姿に戻ってるし、火星だって青いぞ」

「火星だって!?」

「後の時代の言葉で言うなら、数十年から100年近く『テラフォーミング』したおかげだ」

太陽系内では、月の次に、火星が一番近い『お隣』で、次に木星、次に木星の衛星群と、過去の戦いで『爆弾』に転用した木星の跡地に添えられたヱルトリウム級の外郭。土星の衛星の『タイタン』。23世紀での太陽系は意外に広い。冥王星以降も惑星が増え、その内の一個は戦闘で出来た小ブラックホールに飲み込まれつつあるが、新たに一個増えたので、相対的に数は減っていない。その結果、意外に太陽系は広いという事になる。

「で、そんな宇宙を征く船が……」

「……ん?これ、扶桑の戦艦大和に似てない」

「それだよ、大和を宇宙戦艦に改造したんだよ、これは」

「え!?」

宇宙戦艦ヤマトは戦艦大和の後身であるという世界線が主流である。23世紀のヤマトも、ご多分に漏れず、大日本帝国海軍の戦艦『大和』を再利用して『移民船』としていたのを、途中で原型通りの軍艦と仕立てたものだ。建造当初当時、宇宙戦艦としては主流から外れつつあった『水上艦』型であったが、ヤマトの成功後、地球連邦軍軍艦の主流は水上艦型の宇宙戦艦である。そのため、地球連邦軍の宇宙戦艦はヱルトリウムのような宇宙・空中運用特化型と、着水可能の水上艦型に分かれる。前者はコストも高く、軍縮の際にヱクセリヲン級の派生型のドックが廃棄された事もあり、新規建造はなされていない。軍再建の折には、既存の港湾に接岸可能である後者が重宝された事もあり、現在では銀河中心殴り込み艦隊でもなければ、前者の型は装備していない。

「な、なんであれを宇宙戦艦に!?」

「時間が無かったから、沈没船を再利用したりしたんだ。完成状態なのが大和だけだったから、それが希望になっただけだ。最も、損傷が比較的小さかったからな」

23世紀世界では、大和は他の世界と違い、当たりどころが良く、沈没後も比較的、原型を残したので、再生利用が可能だった。士官候補生時代の古代進と島大介が見たのは、改造後の偽装された姿だが、その皮を偽装に使ったのである。そのため、沈没時に失われたモノが存在していたりする。(マストや電探の骨組み、砲塔など)本物を再利用した偽装なので、ガミラスすら『大昔に沈んだ軍艦の残骸』としか認識していなかった。大和と同時期に作られていた移民船は複数であったが、多くは察知され、破壊されている。沈没船に偽装したヤマトと、地下で作っていたノーウィックのみが難を逃れ、その後、宇宙戦艦として就役している。ちなみにコスモリバースシステムの副産物として、二人の人物が黄泉から舞い戻ってきている。大日本帝国海軍の元第二艦隊司令長官『伊藤整一』中将、大和の最後の艦長『有賀幸作』大佐である。コスモリバースシステムの副作用で蘇り、記憶を失った状態で連邦軍に保護された。数年ほどは隠棲生活を送っていたが、ある日、宇宙戦艦ヤマトを見たのを引き金に、『生前の記憶』を取り戻し、以後は連邦軍に協力する形で、彼ら曰く、『余生』を送っている。また、扶桑軍人を説得する際のネゴシエーターとしての仕事をしており、山本五十六を懐柔するに当っては、有賀大佐が交渉を引き受けている。そのため、山本五十六がすんなりと連邦軍に協力したのである。これは山本が有賀大佐の操艦の手腕を高く買っていた事で、彼に好感を抱いていたためだ。また、扶桑皇国の軍令部の説得には、軍令部次長の経歴を持つ伊藤中将が赴き、これも成功した。また、扶桑がVT信管→CIWSの実用化に邁進したのは、坊ノ岬沖海戦という地獄から舞い戻ってきた二人の説得によるものも含まれていた。艦政本部は両名からもたらされた情報に愕然とした。何せ『制空権もなにもあったもんじゃない戦場にたった10隻で送り込まれ、嬲り殺しに遭う』という、連邦軍の情報を決定づける事を告げたのだ。ミッドチルダ動乱中、大和型戦艦へのFARMへの反発が急に消えたのは、両名が関係者の前に現れ、交渉を行ったのが関係している。

(ああ、山本大臣言ってたっけ。『坊ノ岬沖海戦を体験しとる、あの二人の説得がなければ、俺とてFARMの急激な進捗には反対しておった』と。確かに、得体の知れないものに反発は当然だよな。伊藤中将が現地で大和型の連中を説得したから、反発が収まったっけ)

『飛行機に人の感覚だけで命中させるのはまぐれ以外は無理だよ。特にメリケン共は物量でも推してくるから厄介だしね。未来で見た自動機関砲や近接信管は有効だよ。高角砲一発で上手くやれば複数機を落とせるからね』

と、伊藤は扶桑の艦艇人員を説得して回った。特に末端の機銃要員ほど『俺達の訓練は無駄だったのか!?』と反発する傾向にあったが、扶桑側では『海軍大学校長』であった威光が兵たちを沈黙させていった。

『今までの訓練が否定される訳では無い、その技を踏まえ、次の段階に進化する時が来たのだ。 近接信管だって撃ち込む狙いが悪ければ炸裂せん。針の穴を通す実力が有ってこそ有効な兵器なのだ』

とも説得して、兵たちをなだめた。こうした伊藤整一中将と有賀幸作大佐の説得は、艦政本部には思い切り効いた。『用兵側が船を想定外の戦場で無駄死にさせた』からだ。(大和型戦艦は制空権下の艦隊決戦用の戦艦として作られている)そのショックが艦政本部を既存主力艦のFARMへ邁進させるきっかけとなり、新型の防御力を過剰に上げた要因である。

――話は戻って――


「で、その宇宙戦艦ヤマトは地球の勝利と抵抗の象徴になって、今じゃ宇宙艦隊を率いている。君らもその一端を間もなく見る事になるだろう」

「なっ…!?」

「基地の上空に、見たこともない飛行機……いえ、船……!?……が現れました!」

「来たか」

「来たって、何が!?」

「私が来た世界の友軍だよ、定子」

下原Bが血相を変えて、執務室に駆け込んでくるが、フェイトは涼しい顔でそう返した。地球連邦宇宙軍の水雷戦隊がやってきたのだ。もちろん、全艦が波動エンジン搭載の最新型だ。これまでのものより大型化しており、生存率もアップし、巡洋艦は『拡大波動砲』を有する。二隻の巡洋艦の名は『能代』と『神通』であり、日本の軍艦の名を持つ。駆逐艦は世界各国の寄せ集めの艦名だが、最新鋭である。どれも全長は有に200mを超えるので、巡洋艦だが、この世界の基準では戦艦と呼べる大きさを持つ。代表して、旗艦の能代が着地し、艦隊司令官が幕僚を伴って現れる。ラルBは制帽をかぶり、ロスマンを伴い、急いで出迎えを行うのだった。



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