外伝その302『統合参謀本部の憂鬱』


――戦いは長期化し、鏡面世界の構築だけでは追いつかなくなり、実世界も戦場となってしまった。当初の短期決戦計画が破綻したからで、日本の背広組と外務官僚はこの決定的失敗で発言権を失い、細々と行っていた富嶽系戦略爆撃機によるリベリオン本土(東海岸)への攻撃を大規模化した。史実と立場が逆になったわけで、ウィッチ閥の発言力低下の表れでもあった。




――連合軍 統合参謀本部『サンダーボール』――

扶桑本土に設置された統合参謀本部では、英雄的活躍の501統合戦闘航空団が年齢的に高齢のGウィッチに統率されている事を『皮肉なものだ』と皮肉る論調が出ていた。カールスラント系の将官が連合軍を主導している事に危機感を覚えたアメリカの手で、自由リベリオン系の将軍/提督がかなり参加し、日本の統合幕僚長も『連邦軍総司令官』の名目で参加した。ある日の会議では、Gウィッチの先駆者である黒江達を迫害した扶桑の将軍/提督がかなり責め立てられ、『前任者の決定で、私達は何ら関わってないのに、なんで今更、国際規模で槍玉に挙げられて、これでもかと非難されるのよ〜!』と女々しく泣き喚く将軍/提督が続出した。だが、既に数年間の施策の弊害が現場で生じ、長門や陸奥からクーデターの準備が進められている事が報告され、ますます顔面蒼白に陥った。結果、扶桑ウィッチ閥の主導権はGウィッチに理解があった陸軍系が握る事になる。海軍系は改革派である坂本/西沢らに靡けば、まだ芽が出たと思われるが、海軍は『保守的』な論調が強かったため、みなみ(竹井)の融和努力にも関わらず、『対立』を選んでしまう。その選択が海軍航空冬の時代の幕開けを招いてしまうと後世に記録された。


「やれやれ。前任者のおかげで、我々が裁かれるとは…」

「聖上もお冠であられるのだ。退役した前任者を当時の罪で今更は裁けん。ダモクレスの剣というべきだな…。我々が泥を被り、東條閣下の国外追放と併せての処分を決めなくてはならん。関係部署のな。ウィッチ連中の考えなど、意に介してもいられん。今は促成教育よりも、きちんと教育をする事が求められるからな」

促成教育組は菅野の前後世代が当てはまるが、菅野は比較的に現場で教育を受けたとされ、更に、Gウィッチである事でそれを免れた。彼らが持つのは、赤松/若松〜芳佳の世代にまたがるGウィッチの『分布表』であり、プリキュア化した錦も載っている。幅広い層に存在し、しかも特に強力な力を持つ者はウィッチの域を超えた能力を持つ。戦力の中核に彼女らを添え、今後の模範にするという構想は昭和天皇たっての願いであった。統合参謀本部の幕僚達は現場で行われるGウィッチの迫害を様々な手段で止める事を始め、『聖上のご意思』という錦の御旗を振りかざし、厳罰を含めての手段で扶桑ウィッチの統制を図っていく。だが、それを自分達の都合のいいように解釈し、クーデターを起こすため、海軍航空の分解作業はかなり綿密で、再建に時間がかかったのも仕方なかった。



こちらは…。

「ジェネラル・ヤマシタ。今後、貴国のウィッチの統制は困難を極めるだろう。その見解は如何に?」

「Gウィッチ達は通常のウィッチと区別して扱います。陛下は彼女たちを偉く気に入っておいでなのです。ルメイ将軍。彼女らを見出したのは小生でして」

山下大将は航空関係者であり、64Fの現時点での編成の最上位者である。空軍移籍予定でもあり、64の後ろ盾を自認していた。黒江の後ろ盾を引き受けていた事もあり、昭和天皇から再評価され、ライバルの東條の失脚もあって、機甲部隊の地位が固まり次第、空軍へ移籍予定である。カーチス・ルメイは同位体の業績もあり、戦略爆撃の権威と目され、扶桑の戦略爆撃部隊の育ての父となる。

「ふむ。貴国の戦略爆撃機部隊は戦術が未熟だ。私が鍛え上げてよろしいですな?」

「今後の戦争は機甲と航空戦力が中核を担う。ここは一つ」

「わかりました」

扶桑は戦略爆撃機は富嶽系統を用いる。B-36レベルの性能である。それをジェット化した飛天も配備中であり、戦略爆撃を兼ねてより研究していたカーチス・ルメイには渡りに船である。弾道ミサイルなど影も形もない世界においては、戦略爆撃機が戦略的火力投射に用いられる。核兵器による相互確証破壊よりは『クリーン』とされ、空軍大国の証とみなされるようになったという。




――一方、扶桑陸軍は航空戦力の独立と暁部隊の海軍移管に伴う予算の使い道を部隊の機械化に定め、急速に部隊の機械化と弾薬供給力の増強を進めていく。陸自から大量に89式小銃が供与された事もあり、急速に近代化が進み、装備面では資金力の違いもあり、陸自よりもむしろ充実していた。また、64がこの時点では陸軍所属であった関係で豊富に予算がもらえたため、黒江達が自前のルートで装備を調達したことで予算が思いっきり余り、その分を機甲部隊や軍隊インフラ整備に使用した。また、地球連邦軍から提供された装備を本土で試験する名目で、諏訪天姫を呼び戻すなど、色々と画策していた。そのオブザーバーが現在はプリキュア化したラウラ・ボーデヴィッヒであり、彼女は扶桑陸軍の近代化に貢献していた―



――2010年代の野比家――

「やれやれ。お前のISの稼働テストとはな。イギリスもかなりねじ込んだな」

IS世界から、セシリア・オルコットも小型化改良されたISの稼働テストのために送り込まれていた。装備はかさ張らない『ストライクガンナー』で、MS方式のバックパック方式に更に改修されており、マンションのリビングで寛ぐ、プリキュア姿のなお(ラウラ)、IS姿のシャル、セシリアと、かなりシュールな光景であった。

「本国の要請とは言え、箒さんがお世話になっている方の家を守ることになるなんて…」

「仕方ないだろう。イギリスもISの改良に躍起になっているのだ。小型化改修のテストケースでもある。篠ノ之博士は閣下らの手中にあるから、いつでも改良はしてもらえる」

「パワードスーツの研究がより進んだ世界の技術でここまで小型にできるなんて。ほとんど服を着てるのと変わらない感覚ですわ」

「お前は早期にプリキュアでないのは分かっているから、私も声はかけなかった。だが、これなら、学園都市のパワードスーツよりは強いだろう」

アーマー部と装備の小型化により、室内戦が可能になり、より細かい動きが可能になったIS。他世界と違い、メタルヒーローの技術が入ったため、小型化に成功したのである。ちなみに、なお(ラウラ)はプリキュアになったほうがISで戦うよりも戦闘力を出せるため、プリキュアの姿である。

「私が戦力外とは、どういう事ですの〜!」

「お前はオールレンジ攻撃を掻い潜られたら終わりだからだ。接近戦に持ち込まれれば無力に等しい。箒に扮した閣下と戦った時もそうだろう?」

なお(ラウラ)の言う通り、黒江が箒の代理でIS世界を訪れた時、千冬以外に黒江の正体がバレていない段階で、セシリアは模擬戦を行い、ものの見事に圧倒されている。それを指摘され、押し黙る。

「皆さん、麦茶をお持ちしました」

「ああ。すまんな、はーちゃん。机においてくれ」

なんともシュールな光景だが、2010年代末の時点では、学園都市の秩序が解体に向かっていた頃にあたり、行き場を失った暗部部隊などによる、野比家周辺へのテロリズムが幾度となく試みられていた。のび太は28歳からは裏稼業と地球連邦軍の作戦への参加で多忙を極めており、家を留守にすることが多く、その留守番をプリキュアやIS勢が担うことが多かった。今回もそのケースである。もっとも、ワンオフとカスタム型の強力なISが二機、少なくとも、常に二名以上のプリキュアが番を張る家に押し入る者は滅多にいないが…。

「はい」

「では、いただきますわ」

「ありがとう」

「頂こう」

麦茶を飲み干す三人。この時代の野比家はマンションのワンフロアまるごとに及ぶため、武器庫なども設置されている。その上階にはG機関の21世紀支部が設置されているため、学園都市の暗部部隊以外にガードは突破できないし、突破したとしても、プリキュアとISが待ち受けている。この時代では、日本銀行の金庫室や国会議事堂、防衛省よりも安全であると言える。

「でも、私に声が似ているという、その方は何者なんですの?」

「初代プリキュアの一人で、キュアホワイト。名は雪城ほのか。その戦闘能力は全ての代のプリキュアでも上位を誇る強者だ。お前は一時はその転生者の候補にリストアップされていたのだが、割と早い段階で外した」

なおが語る通り、雪城ほのかの転生候補にセシリア・オルコットがリストアップされていたのは事実だ。なお自身が黒江に『ないだろう』と言ったことで外されたが、セシリアとしては『弱い』と認定されて屈辱なのか、悔しそうだ。

「ぐぬぬ……」

「仕方あるまい。お前の狙撃には上位互換が多い。それに、オールレンジ攻撃くらいで勝てたら、格闘のデータはいらん。ガンダムファイトでもあったからな」

見かけと能力はキュアマーチだが、中身はラウラ・ボーデヴィッヒであるため、一夏の事以外では優秀な軍人である。黒江と箒に頼まれ、ダイ・アナザー・デイではオブザーバー的役回りで動いており、野比家の留守番も引き受けている。また、軍人である事から、箒や調の軍事訓練の教育係も引き受けており、職業軍人らしさを見せつつ、プリキュアに復帰している。

「でもさ、ラウラ。なんでラウラはISを使わないの」

「私のは小型化しても嵩張るからな。カノンをつけたら尚更だ。それと、プリキュアになったほうがメリットが多い」

ラウラ・ボーデヴィッヒとしてのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』はその装備の関係上、どうしても室内戦向けでないので、キュアマーチになっているほうが効率がいいし、防御力もそれを上回るからだ。部分展開で武装だけ展開した方が便利だからでもあるが。

「こうして、ISが小型化されて、それを動かしていると、以前と感覚が違いますわ」

「宇宙刑事のコンバットスーツの技術が使われたから、使用感覚が以前と根本的に違う。打鉄弐式やミステリアス・レイディとも一線を画するからな」

IS世界は根本的に他の世界と違う方向へ派生し、篠ノ之束が、彼女とも異次元の強さと言える先代黄金聖闘士に監視されている事で、既存のISの改良はスムーズに進んだ。箒以外の代表候補生の機体は改良され、装甲部が小型化され、宇宙刑事のコンバットスーツに近い印象を与えるものに変貌していた。それに伴い、IS世界以外では使用制限が無いことから、データ収集の意味合いでの使用が推奨されている。これは調のシンフォギアと同じ理由である。(傍から見れば、フレームアームズ・ガールや、艤装付き艦娘に似た印象を与えているが)因みに、箒のものは聖衣とのキメラになったため、小型化されたISというよりは、黄金聖衣の機械化に近い。そのため、ポテンシャルは聖衣のそれで、力を高めると、聖衣寄りの性質を発揮。セブンセンシズに覚醒した箒に追従可能であり、神聖衣化も可能である。本質的には聖衣であると言えるが、元々はISであるので、便宜的にそのまま分類されているに過ぎない。


「強いて言えば、この時代の人々はフレームアームズ・ガールか、艦娘を連想するだろう。セシリア、お前のビットはサイコミュシステムを積まんことには、『ファンネル』ほどには機敏に動かせん。それを頭に入れておけ」

「あの方から送られてきた映像は見ましたわ。技術の差を痛感しましたわ…。」

「偏向射撃も原理上の限界がある。格闘戦を行う事が増えるから、せめて最低限度はできるようにはしておけ」

「この世界は、戦争に関する技術が異常発達するとは言え、この時点だと、僕たちの世界と、大して変わらないね」

「技術発展はこれからだ。22世紀初頭にその絶頂を迎えるが、戦争で技術後退が起こり、発展の方向性が変化してしまうのだ」

なお(ラウラ)は、ドラえもん世界の技術発展と後退からの変化で戦乱の時代を迎える様をそう表現する。ドラえもんの時代までは科学の発展が『人の未来のため』の方向性であったのが、戦乱期には『宇宙戦争を生き延びるため』に変化しており、科学発展の方向を統合戦争以前の方向性に回帰させようとする動きを、過激なジオニストが妨害してくるのが23世紀のテロニズムである。ジオン共和国はその責任を取る形で、国ごとの移民船化を極秘裏に始めている。イルミダスの情報が伝えられたことが地球連邦の政府機能の宇宙への分散を促進させたというのは、地球連邦政府の官僚の腐敗が槍玉に挙げられる状況では、大いに皮肉られたという。


「なおさん。学園都市の暗部のはぐれ部隊への対応は?」

「一時よりは減ったとは言え、行き場を失った連中が来る可能性はまだ残っている。警戒は怠るなよ、はーちゃん。野比のび太氏の不在を狙う輩は、表裏を問わずいるからな」

「はい」

この頃になると、はーちゃんは精神的に成長しており、言葉づかいでフェリーチェ時との差異はほぼ無くなっていた。また、みらいとリコの蘇生作業が思いの外早く進み、ダイ・アナザー・デイがルシタニア攻略の検討段階に入る頃には、最終から三個前のシークエンスに突入しており、蘇生の目処も立ちつつあったので、精神的に落ち着きつつあった。また、まだ6歳前後ののび太の実子で、幼い『ノビスケ』を白昼堂々と狙う輩も多いため、はーちゃんはその守りで実戦経験を積んでいる。特筆すべき事項は、ノビスケが幼稚園を卒園する前後の幼稚園バスへの襲撃だろう。大勢を巻き込んだ身勝手な犯行は、温厚なはーちゃんを激怒させるに足る事態であり、はーちゃんが明確に怒りを顕にした出来事であった。その時は偶々、はーちゃんの様子を見に来ていたダイ・アナザー・デイに従軍中のりん/キュアルージュとIS世界から召集されたばかりであったキュアマーチ/なお(ラウラ・ボーデヴィッヒ)と共闘し、三人で学園都市暗部の能力者のグループを叩き潰している。相手は平均でレベル4の能力者であったが、歴戦の雄である三人に勝てるはずもなく、三人の必殺技でノックアウトされている。(芳佳/キュアハッピーの証人喚問で、プリキュアの存在が認知された前後の出来事であり、警察が手を拱く内に、プリキュアが解決してしまい、警視庁は泣いたとか)その時に、弟のように可愛がっているノビスケを泣かせたという事で、フェリーチェとして始めて、燃え上がる激情を見せ、ルージュとマーチも目が点になる勢いで固まった。おそらく、みらいとリコが見れば、我が目を疑うだろう。代の違う三人の共闘という珍しい光景に、幼稚園児達は大喜びであったが、はーちゃん(フェリーチェ)が某レッドバロンのローリングサンダーを怒りに燃えてぶちかまし、ルージュとマーチを固ませた。事後の警察の事情聴取で、幼いノビスケが『ウチのお姉ちゃん達が助けてくれたのー!』と証言したことで身バレし、三人は警視総監賞にありつけたものの、当時は老境を迎えていた玉子に怒られたが、しずかの仲立ちで事なきを得たという。

「前、野比氏の子息の乗った幼稚園バスがジャックされてな。はーちゃんがローリングサンダーをかましたんだ。あの時は先輩のキュアルージュ共々、流石に固まったぞ、シャル…」

「ま、マニアック…。つか、レッドバロンって、実写のほうが…」

「それだと『エレクトリッガー』だろう…」

妙に渋いチョイスの会話だが、はーちゃんがなぜ、日本の『知る人ぞ知る』のアニメの必殺技を使ったのか。当時、りんとなおが頭を必死に捻って考えるテーマであった。(後に、ヒッチハイク旅行の帰りに野比家に寄った、のび太の母方の従兄弟『五郎』が置いていったVHSビデオのせいであると判明したとのこと)

「あ、あの……?」

「おっと、いかん。お前がいたんだった」

すっかり置いてけぼりのセシリア。不満げな顔だが、この時点ではISのスペックに頼っていると自覚があり、なんとも言えない状況である。

「おっと、そろそろ定時連絡の時刻だ。ああ、そのままで構わんよ」

『あたしよ、ラウラ』

『穴拭閣下でしたか』

『こちらから連絡事項があるわ。ペリーヌ・クロステルマンが紅城トワ……キュアスカーレットに覚醒したわ』

『なんですと!?』

『お久しぶりですわね、マーチ。私ですわ」

『まさか、生まれ変わっても、また共に戦う事になるとはな。どこでどうなるか分からんものだな』

『…確かに』

映像通信越しに笑い合うスカーレットとマーチの二人。代は違えど、同じプリキュアである者。プリキュア同士で分かり合える、通じ合う物があるのだ。ちょっぴり寂しそうなシャル、キャラが被りそうなため、アイデンティティの危機を感じるセシリア。この時、セシリアは自分がプリキュアの生まれ変わりでないことが、妙に悔しく感じられたという。歴代プリキュアは、その性格の定型がある程度は確立されているが、青のプリキュアの異端児である『キュアマリン』のように、ギャグポジションを担う者もいる。なお、のぞみは出身世界では、キュアマリンこと、来海えりかと大学が同じ(学科は違った)であった。その時に、個人的に改めて交友関係を持ち、『まさか、アンタが教師を目指してるなんて〜。ないわー』と冗談交じりに言われていた事が、なおからりんへ伝えられている。(のぞみも『青のプリキュアでギャグ出来るの、えりかだけだって』と返しているが)そのエピソードから、緑川なお(ラウラ・ボーデヴィッヒ)はのぞみと同じ世界からIS世界へ転生したらしい事が分かる。

『お前も覚醒めたということは、他のプリキュアも、広い次元世界を探せば、あちらこちらに散らばっている証明だな。…のぞみの奴のことだが、気づいているか?』

『ええ。どこか影が差していますわ。あなたは知っているのですか?マーチ』

『あいつの事は晩年期に面倒を見るよう、出身世界のりんに頼まれていたからな。あいつは自分の娘に疎んじられていたんだよ、スカーレット。上の娘だったか。下の娘は奴の生き写しに育ったが…、上が捻くれてしまったんだ』

『すると、あの方は…二人の娘さんの内の片方に?』

『そういうことだ…。私も流石に、物事の理不尽さに憤ったよ。私は兄弟が多かったから、奴の手助けに殆どなれなかったがな…。』

なお(マーチ)は出身世界のりんが何らかの太病を老年期に患い、あっけなく亡くなった後、同じく、キュアアクアであった水無月かれんが天寿を全うして死期を迎え、その今際の際の頼みを引き受ける形で、のぞみを彼女が亡くなるまで世話をしていた。その関係で、のぞみの二人の娘の内、折り合いの悪かった長女が邪険に扱うのを咎めた事があると、トワ(スカーレット)に告げる。

『あいつは恐らく、自分が数ある『自分』の中でも、一、二番に不幸な後半生を味わった事に気づいているはずだ。その事と、自分の子供を制御できなかったり、仕事で若い頃の『夢』を捨てざるを得なかった経緯を考えるに、『強さ』に憧れと執着があるはずだ。心の強さだ。野比のび太氏の持つような形のものを特に、な。それとなくカバーしてやってくれないか?ドリーム……、いや、のぞみを。出身世界のりんが私に言い残し、かれんさんが懇願した事でもあるんだ』

『わかりましたわ…。やってみます』

『恩に着る…。プリキュアとしては、奴と同じ世界の出身なんだ。本来なら私がやるべきだが…、今は自分からは動けんのだ』


なおは出身世界のプリキュア5のメンバーが息を引き取る時に、最後まで生き残る形になってしまったのぞみのことを案じ、その場に居合わせた自分に、彼女を託していった事をトワに告げる。その際、どこか哀しげな雰囲気である事から、のぞみの晩年期は一言でいうなら、敵の呪いを受けたかのように、『絵に描いたように不幸が連続し、それに打ちのめされていた』のがハッキリした。また、子供が10代半ばを迎えた壮年期から表面化した、『長女との確執』がその後のすべての歯車を狂わせたとも言い、のぞみの『闇』を手短に説明した。プリキュアとして、のぞみの後を誰が継いだのか。少なくとも、若き日ののぞみに生き写しに育っていた次女の子(つまりはのぞみの孫娘)が継いでくれただろうとは告げた。そのあたりは坂本が前史で辿った後半生に似ていた。黒江が『坂本に相談してみろ』とのぞみに言ったのは、そのあたりを見抜いていたからだろう。

「……わかりました。こちらもなんとか対策を考えてみますわ。えりかが見つかればいいのだけど…」

来海えりか。キュアマリンの事であり、のぞみと同じ大学に通っていたとは、なおの談であり、のぞみが青年期に苦労した時期を知っている人間であると推測されている。かつて、キュアマリンはプリキュアオールスターズのツッコミ役と清涼剤であったため、のぞみの心の闇を知っている者は彼女を探し求めている。

『ギャグ枠不在って奴ね。主人公格が病んじゃうと、ギャグ枠いないと、たいていはグループの空気悪くなるのよね』

智子も困った顔だが、ギャグ枠に入る人員の不在はパーティーには重大な打撃になり得る。三人は来海えりかの捜索に人員を割くことを決意する。アリシア・テスタロッサ(花咲つぼみ)も捜索に乗り気であり、この後、それなりの費用が注ぎ込まれたという。









――統合参謀本部は扶桑への内政干渉に近い日本防衛省の一部や日本警察庁、国土交通省の横槍を一蹴(警察系勢力の横槍)し、攻勢作戦の決定、軍から海援隊へのエクスウィッチの再就職の規制は『数ヶ月のインターバルを開ければいい』(雇用保険の手続きなどの都合)とし、第二海軍化で公営組織にする事がこの時点で決定される。海援隊は民間軍事会社であり、日本がどうこうできるものでもないはずだが、警察庁や海保が『傭兵』を嫌い、あからさまに海援隊を敵視していたため、いっその事、公営組織化させたほうが組織を守れると踏んだのだ。(組織の長は海運協会理事会の選任という名目での絶対条件がついたが)また、民間軍事会社ではなく、本式の軍隊にしたほうが『装備を横流ししている』という批判を躱せる(日本がその事を『明治時代からの慣習であり、坂本龍馬の存命中に交わされし契約である』と知ったのは、ダイ・アナザー・デイに入ってからのことである。日本が先走って廃棄した艦隊型駆逐艦の代替に護衛艦を譲渡することも決められ、建造中の海保用の大型巡視船を海援隊の前弩級戦艦/準弩級戦艦の代替として割り振る事も決められた。(これは問題を起こした海保への懲罰も含めた日本連邦評議会の決定であった)海保は長官が敵対心を顕にしたことで、現場がえらい目にあったというべきであり、中国の台頭が起こった2000年代後半〜2010年代までの政治的情勢も重なり、海保は学園都市とロシアの戦争で被った被害からの再建と、国民の信頼回復には長い時間をかけることになってしまう。ちょうど日本国内でも、『扶桑に自らの法や風習をいたずらに押し付けるのは、近代国家としてどうか?』という世論が芽生えており、その後押しで扶桑の自主性を尊重すべしという考えのもと、軍ウィッチの権利保証などの福利厚生政策が評議会と統合参謀本部で決められ、連合軍もそれを後押しした。しかし、扶桑軍がGウィッチを迫害していた事での現場の弊害は甚だしいレベルであり、それを結果として助長したとされた江藤は、Gウィッチ化でだいぶ罪状は軽くなったが、訓告と昇進速度のしばしの鈍化という形の罰を受けた。(同期の生き残り達も同時に何かしらの罰を受けた)結果を見るなら、扶桑が同位国にせっつかれるのを恐れ、性急に当時の関係者かつ、未だ現役の軍人のウィッチ出身者、当時の高官、またはその後任を適当に、それらしい理由をつけて裁いたという批判も出たが、Gウィッチへの迫害は軍事的不利益をあまりにも生みすぎていた。扶桑がGウィッチを保護する方向に動いたのは、レイブンズが昭和天皇の寵愛を受けた存在であるのを差し引いても、当時のウィッチ全体の益になると判断されたからである。また、軍事科学の急激な発展に、ウィッチの今までの考えではついてこれなくなることが危ぶまれた事から、既に良質な士官教育を終えているGウィッチは重宝されていく。もっとも、これはウィッチは儚い高嶺の花という認識が部内でも強かったが故の迫害が裏目に出た結果であり、源田実、山下奉文などの航空閥の軍人はそれを乗り越えるための試練と考えていた。実階級の調整は実戦経験があり、実績が多く、特殊技能があれば、不問とされる場合がある。歴代三羽烏やプリキュア勢、戦車道経験者がそれだ。この場合、芳佳は双方に当てはまり、なおかつ主人公格なので、階級は却って上がる予定である。(宮藤芳佳というウィッチ世界のキーとなる存在がプリキュアである事での調整で、その箔で希望通りのコースを歩めるが、戦士の性が、前線に居続ける。また、坂本の顔を立てるためか、1946年までは海軍に在籍するとは言っている)ウィッチとして、錦は日本では知名度が低すぎたが、のぞみとして、プリキュア戦士としては初代に次ぐ人気があるのと、明確に最初にプリキュアへ戻った戦士であるため、階級が維持された層に入る。ウィッチとしても、戦間期にそこそこは鳴らした手練であるが、如何せん、明確なエピソードもないのがまずかった。そのため、プリキュアとしての自分を押し出す事になり、ウィッチとして戦う機会は減ったという。一方、シャーリーは複数の属性を敢えて押し出した事で、日本でも人気者である。元々、芳佳の同僚で、ルッキーニの母親代わりという事で知名度があったところに、北条響でもあり、紅月カレンの転生体である事で注目され、64/501の軍資金集めに貢献している。(紅月カレンとしてのゼロ・レクイエムへの心境を口にし、ルルーシュとスザクの共謀を『共犯者にして欲しかったのに』と愚痴っているのも、日本受けしたらしい)階級は少佐になり、実情は扶桑への義勇兵になるため、以前より紅月カレンとしてのガサツさ、激しさを出しているという。引き続き、ルッキーニの保護者だが、ルッキーニがクロエ・フォン・アインツベルンになったため、以前ほどはべったりではなくなった事で安心したとおもいきや、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの面倒も見ることになり、エイラが嫉妬するなど、却って気苦労が増えたという。ハインリーケはアルトリアとの融合を選択し、次第に消えていく運命にあったが、最後に日本への旅行中はアルトリアが体の主導権を一時的に戻し、子供のび太らと旅行を楽しむことを提案。それを冥土への土産とし、アルトリアに体を明け渡すが、意外にも、ハインリーケの要素は多く残り、アルトリアが生きる上での補助になったという。(黒田との腐れ縁も引き継いだが)その一方で、二重属性になったペリーヌ・クロステルマンはモードレッドの人格と上手く共存しつつ、以前ほどは自己を顧みない姿勢をやめ、キュアスカーレットとして戦うことを決意。偽名を前世での『紅城トワ』に定め、モードレッドと共存していく。なお、南洋島に住居をトワ名義でこの頃には購入しており、その関係と、モードレッドの入れ知恵で太平洋戦線にはペリーヌ・クロステルマン名義を止め、キュアスカーレットとして参戦したという。(招来に政治家になりたいんなら、太平洋ではプリキュアとして戦っておけよ、という入れ知恵であった。最も、アルトリアと会うと恥ずかしいという理由であったが、ペリーヌの提案で、ある時に対面して話し合い、精神的意味での和解をしたという)そんなGウィッチの選択であった。







――のび太の包容力の高さには定評があり、フー子、ピー助、キー坊、イチの事例で証明がなされている。その包容力こそ、彼の父方の祖母の遺した遺産と言える。しかし、その穏やかさが、受験戦争が激しかった時代に生きた母の玉子の危惧を生んだのも事実であり、玉子は良くも悪くも教育ママであった。のび太は成人後、母親に危惧された包容力がいい方向に作用した。職場やプライベートの場、更には、戦場でも多くの者に慕われた。のぞみはかつての恋人『ココ』の面影をのび太に見出し、前世で歳を取るごとに忘れていったものを取り戻そうとしている。はーちゃんもみらいとリコを殺された悲しみに打ちのめされていたのだが、長年の間、のび太と触れ合う内に癒やされていき、のび太が息子のノビスケを儲けてからは、ノビスケに姉代わりとして接する事も増え、みらいとリコの苦労を理解した。のび太は裏仕事でも、色々な都合で常に誰かしらのGウィッチを引き連れており、その点では、一匹狼と目されるデューク東郷と一線を画する。また、戦闘機の操縦センスも高いものがあり、コスモタイガーで戦果を挙げていた。デューク東郷も戦闘機の操縦を得意としているので、戦闘機操縦技術は裏世界のトップには必須であった――


「さあて、時代がかったジェットをコスモタイガーで落とすのは気が引けるが、悪く思わないでくれよ」

ある日、のび太の照準に捉えられたのは、P-80。当時に登場済みの直線翼ジェット戦闘機である。F-86の実質的な前型で、当時のレシプロ機には優勢に立ち回れるとされる。だが、宇宙戦争時代でも『名機』と言われるコスモタイガーから逃れられる道理はない。その時代に破格の火力で鳴らすコスモタイガーにP-80程度が耐えられるはずはなく、パルスレーザーが掠っただけで主翼の片方が折れ、派手に炎上して落ちていく。

「レシプロの戦場に、君達(シューティングスター)は無粋なんだ。退場してね」

コスモタイガーの頃になっても、空戦の基本は第二次世界大戦のそれと変化はあまりない。M粒子が出て、ミサイル戦の信頼性が下がったため、こうしたドッグファイトの機会が増加した事も、VF-19系列が熟練者に人気がある理由である。のび太は上昇して逃れようとする敵機を追撃し、そこから反転しようとしたタイミングを狙い撃つ。

「大気圏での縦方向の空戦で、コスモタイガーに勝てると思うほうが間違いだね」

落ちてゆくP-80。コスモタイガーは大気圏では縦方向の空戦に強い。翼形状の都合でF-104に近い乗り回しが推奨されるので、その点では前任のブラックタイガーより『癖が強い』と言える。通常戦闘機では、コスモタイガーそのものの遠い子孫に当たる『コスモシンデン』を除けば、ナンバーワンの推力を持つため、緊急性の高い重爆迎撃に持って来いである。

「お、重爆だ。帰るついでに落としていこう。古いなぁ、あれ」


この時期、もっとも敵軍で配備数が多い重爆であるのがB-17であった。史実と違い、B-29ですら本格的な配備が1947年以降と見積もられていたリベリオン本国軍にとって、もっとも手頃な値段と使い勝手のいい爆撃機がこの型式で、同時代としては高性能に入る。しかし、富嶽の登場以後は旧式化が否めず、ましてや相手がコスモタイガーでは、動く模擬標的同然であり、ヒットエンドランを徹底したのび太の前に、無残に空の塵になる運命のB-17中隊であった。しかし、最後尾の機が爆弾倉を開き…。

「おっと、最後尾はパラサイト・ファイター搭載型ならぬ、パラサイトウィッチ搭載型だったのかぁ。とりあえず、上昇して振り切ろう」

この頃になると、航空ウィッチは単独での長距離移動行動が、敵味方を問わずのスタンドオフ兵器の応酬で難しくなり、重爆にパラサイトし、空域で戦闘を行う運用が見られるようになった。のび太がその光景を見て、パラサイト・ファイターとして試作されていた『ゴブリン』戦闘機を連想した。それが司令部に伝えられた事で、パラサイト・ウィッチという単語が普及していくのである。パラサイト・ウィッチは空中給油がウィッチの行動時間延伸にあまり寄与できないことが判明した事もあり、以前からの輸送方法を発達させて生み出された。この時代以降、敵味方を問わず、航空ウィッチの普遍的な運用法となっていく。のび太はレシプロストライカーの過給器の能力限界である高度12000を超える程度まで機体を上昇させる。(この時代、最も高々度の飛行ができるP-51や震電でも、飛行限界高度近くでは、まともな戦闘は不可能である)すると、下方でエンジンがアップアップになり、浮いているので精一杯のウィッチ達が悔しがっているのが見える。(レシプロエンジンでは、高度10000も行けば、通常はアップアップである)


「ウィッチをパラサイトさせて、翼端援護に使いだしたかぁ。空中給油はあまり有効でないしな、奴さん。基地に帰ったら、綾香さんに報告しようっと」

のび太は近隣の基地に機体を着陸させたが、その基地は黒江が視察に訪れていた飛行場でもあり、目的は早々に果たされた。ちょうど、黒江が自衛隊の副官に『扶桑の主要高射砲をコストのかかる三式12cm高射砲、五式十五糎高射砲と定めたから、現場がパニックになっている』と報告されていたところだった。

「だー!内勤連中はなにかにつけて、B公、B公だ。うっせーの。八八式7.5cm野戦高射砲や九九式八糎高射砲だって、高練度の人員が弾幕はりゃ、B公以外には効くんだぞ。五式四十粍高射機関砲と合わせりゃ、この時代としちゃ最高峰の防空網だ。21世紀の携帯式対空ミサイルで全てが代替できるもんかよ。内勤の野郎共は野戦防空をまったく考えちゃいねぇ」

「B公は戦闘機で未然に迎撃できますからな、統括官」

「まったくだ、AEW様様だな」

黒江の言う通り、野戦防空のため、扶桑製の高射砲は多くが前線の嘆願で回収されず、前線で使い倒された個体が多く、戦後の現存数は少なくなってしまったという。前線では、リベリオンのM1 120mm高射砲がその主要代替品とされ、M1 90mm高射砲と共に、前線の防空に多くが供された。カールスラントの最新鋭の陣地高射砲とされた『12.8cm FlaK 40 Zwilling』、『12.8cm FlaK 40』はその複雑さと、弾丸口径の関係から、儀礼的に前線基地に置かれるのみになっており、カールスラント製品が多かった連合軍の主要器材は三週間で、弾薬と部品調達が鹵獲でも可能で、カールスラント製品より簡便な操作ができ、詳細な整備マニュアルがある米国(リベリオン)製のものに切り替えられつつあった。カールスラント製品が駆逐されてしまう点で、カールスラントの軍事的凋落の政治的シンボルと扱われてしまう屈辱を味わったという。そのため、敵味方が同じ高射砲を使うこともザラになり、カールスラントが起死回生をかけて、レーヴェ戦車の完成に躍起になったのも無理からぬ事であった。


「戦闘機には無理に追わせるな、高射砲のキルゾーンに誘導すればいいと徹底させろ。VT信管がついてるアメリカの戦後仕様のものも増えてきたしな」

「ハッ」

「上手く誘導した編隊は共同撃墜スコアやるから無理して直撃狙わんで良いぞ」

「通達しておきます。陸の連中のことですかが」

「ああ、陸か。カールスラントも苦労してるよな。メンツ丸つぶれだしな。ティーガーはUが配備間もないのに、90ミリ砲配備を理由に旧式の烙印を押された(実際はティーガーUはこの時期の標準の徹甲弾では、150ミリの傾斜した正面装甲を撃ち貫けないのだが)しな。ティーガーUは砲弾を強化すりゃ、パーシングと初期のパットンは撃ち抜けるんだがな…。」

「我が国とドイツの内勤連中はカタログスペックってものを鵜呑みにしますからな。この時点のカールスラントにティーガーUを改良するだけの技術はないし、史実のペーパープランを実行するだけの余力はないはずです」

「陸自にいる、防大同期に聞いたが、Eシリーズだろ?今の戦車群を更新するための規格統一計画」

「ええ。E50、E75、E100が少なくとも計画されていますが、今のカールスラントの立地的に、その完遂は不可能と思われます」

「既存の戦車の生産ライン維持さえ危ういからな。ったく、ドイツのシロアリ連中めが…。うちの警察系や左派の政治屋よりマシなのは救いだな」

黒江がシロアリと罵るのは、ドイツの政治勢力のことで、カールスラント軍の弱体化を自ら促進させている事から、日本の左派以上に嫌っている。最も、バダンの起源はドイツ第三帝国の生き残りであるため、ドイツにしてみれば、ものすごく傍迷惑であるのだが、ドイツの政治勢力は日本の左派程は身勝手でないので、その辺りだけはマシであるが。日本の左派と警察系は自分の都合を押し付け、問題になると、途端に逃げ腰になり、現場に責任を押し付ける事から、連邦評議会の安全保障会議のメンバーから外され、オブザーバー的に米軍が会議に加わる始末である。そのため、この時点での日本連邦の安全保障分野には、米軍の意向も絡んでいると言える。

「川崎とG機関に要請して、MAN、ヘンシェル、クラウス&マッファイ、マウザーの株式を乗っ取らせよう。武器の部品が足りんと現場から要請がある。野郎どもにもそれをわからせんといかん」

「米軍との折衝はいかがなされます」

「海兵隊のレガシーの増援がほしいな。米軍も扶桑に兵器を売りたいだろうし、送ってくれるだろう」

この時期になると、米海兵隊のF/A-18も参加しており、既にエースになった者もいる。年式は古いが、米軍は兵器には太っ腹であり、扶桑に売り込む意図もあり、扶桑軍にライセンスを発行しまくっている。扶桑はカールスラントのライセンス料ボッタクリに完全に立腹しており、その報復措置も兼ね、米国に頼み込み、大量に航空兵器や電子装備などを買い込んでいた。米国も取引先確保のため、アフターサービス等をつけて売り込んだため、最新技術の輸出を渋る傾向(ジェット機の設計や、燃料噴射装置など)のカールスラントは瞬く間に市場を奪われた。しかも、遥かに年代の進んだ兵器を持ってこられては、カールスラントの立つ瀬がない。そのこともカールスラント軍需産業の衰退の理由でもあった。カールスラントの軍需産業はライセンス生産などに軸を移しつつ、太平洋戦争中に生き残りを達成する。メッサーシュミット博士、タンク技師の流出こそ起こったが、その次の世代の俊英が奇跡的に出た事で、なんとか誇りは守ったという。







――そこにのび太のコスモタイガーが着陸し…。――



「綾香さーん」

「お、のび太。帰って来たか」

「さっき、パラサイト・ウィッチを見かけたよ」

「お、そろそろとは思ってたが、思ったよりは早かったな」

「コスモタイガーで爆撃機を落としてきたけど、母機は最後尾に配置してたよ。たぶん、翼端援護の発想だね。」

「7人くらいは最大で運べるとは言え、B-29での話だからな。旧式の17だとだいぶ減るはずだ。爆弾みたいに落とすしかないからな、あれだと。戦術的に、空中給油はウィッチには有効でないしな」

「それと、途中でディケイドから連絡があって、蘇生作業は思いのほか早く済みそうだよ」

「おお、そりゃ朗報だ!おーい、ドリーム、ピーチ!ディケイドから連絡があって、みらいとリコの蘇生が早められそうだ!」

『え!!ほ、本当ですか!?』

「盛り上がってるとこを悪いが、お前らは仕事にかかれー。ドリームとピーチは面貸せ」

二人を呼び寄せ、自衛官達を解散させる。ドリームはみらいとリコの蘇生が早められる事に安堵し、安心したのか、へたりこんでポロリと泣き、『よがったぁ〜!』と声を出す。

「ほら、大丈夫かい?」

「あ、あり…、がとう」

のび太が手を差し述べ、ドリームはその助けで立ち上がる。ベタであるが、ドリームはその瞬間、かつての恋人『ココ』と出会った時と似たような状況に自分があり、のび太がちょうどその時のココと同じ立ち位置なのに気づき、心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。のぞみが青春期以来、久しく感じなかったものでもあり、ココ以外には無かったはずの胸の高鳴りである。のび太が妻子持ちなのは知っている。それなのに、なぜ、心臓がバクバク言うのか。はーちゃんが惚れた理由がわからないまま、自分もこの事態になったため、わけがわからない。

(え…?なんで、なんで心臓がドキドキしてるの?ココと話してた時みたい……で、でも待って、のび太君は…!?)

「…おい、のび太。お前、まただぜ」

「ええ。…またのようだ」

黒江が呆れ、のび太はため息だが、ドリームは自分でも気づかない内に顔が真っ赤になっていた。

「おーい?だめだ。完全に撃ち抜いたな」

目の前で黒江が手を振っても反応がない。完全に一目惚れの様相を呈している。ただし、のび太が妻子持ちであることは分かっているので、その方面での困惑も入っているだろう。ピーチは微笑ましい表情だが、のび太の青年期での『大関スケコマシ』のあだ名の裏付けがされてしまった事に多少困ったような表情だ。

「こういうのは百発百中でなくても良いのに、参ったなぁ……。この分だと、カミさんにまた言われそうだ」

「お前んとこ、かかあ天下だしな」

「あたしが説明してあげるよ。なんとかなると思うよ」

「恩に着るよ、ピーチ!」

かかあ天下なのを滲ませつつ、キュアピーチに助けを求めるのび太。ピーチはこうしたところで面倒見のよい面を見せていた。



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