外伝その303『のび太のモテモテ度とは』


実のところ、成人後のしずかは気が若く、投げナイフと銃を使いこなす妖艶な女性になっており、表向きは20代の内に警察官になっているとされるという経歴を使うエージェントである。公安警部から内閣調査室出向後に結婚、妊娠、退官というのが表向きであるが、妊娠前にG機関に誘われており、出産で転職したのだ。そのため、子供の頃の大人しさは鳴りを潜め、勝ち気な性格になっており、家庭はかかあ天下気味である。のび太は家庭ではこの時点でもヘタレ気味であるため、はーちゃんや調に助けてもらっている。成人後はモテるからだ。

「お前のカミさん、ガキん時は清純派を装ってたのに、大人になったら、勝気で妖艶な女になりやがった。アレが素か?」

「ええ。カミさんはお義母さんから、女の子は清純派でないといけないっていう、古いジェンダー感で育てられてて。昔からお転婆でしたよ、親のいないとこだとね」

おしとやかで礼儀正しいというのは、しずかの子供の頃のイメージだが、それは良家の出である母親の厳格な教育によるもので、素はお転婆そのものである。また、焼き芋好きなのを『はしたない!』と母親が叱るなど、しずかの母親は戦中までの良妻賢母の思想で育てられたのが分かる。その反動か、成人後のしずかは少女期と別人のようになり、レストラン選びで夫に強く出るなど、かかあ天下である。

「結婚した時、これで焼き芋がおおっぴらに食えるって喜んでたもの。カミさん。ノビスケに性格が遺伝して、一人前が俺だもの」

「ノビスケ、運動神経抜群だし、カミさんの血が濃いからなぁ。顔と頭はお前だけど」

「そう言えば、ノビスケくんって誰と結婚したの?セワシくんが生まれるには…」

「あいつはクラスメートのゆかりって子と、僕が55歳になる頃にゴールインさ。意外に一途なのは、僕に似てるさ、ピーチ。孫かひ孫の代で、たぶん、ジャイアンの家とひっつくよ」

「そっか、TVで見た『どこかで釣り合う』ってことは…」

「そう。孫かひ孫がジャイアンの一族の誰かとひっつくって事。セワシはジャイアンの血も受け継ぐ存在だよ」

「セワシ、23世紀まで存命だったろ?長生きだな」

「僕の転生体からの連絡だと、そいつが士官学校出る時に亡くなったそうだよ。軍を辞めて資産家になったけど、不幸があったみたいでね」

「お前の転生体か…。苦労かけちまったみたいだな」

「何、あなた達はその強大さこそが、周りからの迫害の根源になってきたんだ。誰かが盾にならないとね。それが出来るのは、僕らしかいないよ、ドラえもんズを入れてね」

のび太は黒江達への迫害を見てきている。扶桑軍の手のひら返し、自衛隊に潜り込んだ黒江を旧軍の亡霊と疎んじる防衛省背広組、復帰後の現役世代からの迫害。現政権の防衛大臣が特権を認めたのも、そのことへの禊と言える。実際、Gウィッチの強大さは当初、『突然変異の異物』と見なされ、後に覚醒する者も含めて、出る杭は打たれるの心境だった者は扶桑軍には多い。武子もそうだ。覚醒した事で罪悪感を感じたのも、難色を示していた64の隊長就任を承諾した真の理由だ。Gウィッチの扱いが厚遇に変化しだしたのは、のぞみを皮切りに、かつてのプリキュア戦士たちがGウィッチという形で蘇ったり、英霊達の出現によるものだ。また、ウィッチの問題が時空管理局の魔導師と違い、戦士としての寿命が短い事に根ざす事が同位国らに知れ渡ったのも、つい最近のことだ。誹謗中傷で心労を重ねる黒江達。プリキュア勢も職業軍人として職を得たことが問題視されるなど、政治的問題に巻き込まれている。

「あたし達が世の中に認められるには、戦うことで存在意義を示すしかないんだね…」

「日本系の国家は基本、集団主義だけど、戦時になると、軍神とかいって、個人を持ち上げる。悪い癖だね。それで平和になれば用無しなんだから。江藤参謀と武子さんの負の遺産だな、扶桑にとっては」

のび太はピーチに、日本系の国家の悪い面を教える。武子の抱く、強い罪悪感の根源は『若手時代は集団戦至上主義』であり、江藤に詳細な個人戦果を公表しないように進言した事である。バベルの塔の雷のように、後の世代と自分達の代の対立を引き起こしたとして、隊長就任は黒江に譲って、辞退する(ただし、一隊員として所属はする)つもりだったが、かつての経歴が問題になり(皇室が階級を無視して、感情的に忠誠のある下級将校に指揮権を移譲したと取られた)、日本の感情的な誹謗中傷や批判から、扶桑皇室を守るために引き受けた。武子のこの頃の口癖であり、実際、事変当時の皇室からの指揮権の委譲がかなり問題視されたのは事実で、その批判から皇室を守るために准将になったと公言する。武子は堅物と言われるように、こういう面では時代相応の尊皇思考を持つ。言うならば、武子は若い頃の発言が尾を引き、黒江達と違い、覚醒前後の発言の整合性、行為の連続性を気にし、割り切れないあたりは軍人としての冷徹さに欠けると言われるのも仕方ないと言える。

「武子は軍人向けの性格じゃないんだよ、本当はな。歳の離れた姉貴が死んだから、その代わりに軍に入れられただけだ。あいつ、兄弟が多いから、輪を乱すのを嫌う気質でな。事変ん時は扱いにくかったよ。なんと言おうか、堅物でな」

「前に言ってたね、魔神双皇撃したら、怒られたって」

「ああ。最終決戦だからド派手に行ったんだけど、あいつ、若い頃は隊長のイエスマン気味でな。こっちがまっつぁんや若さん呼ばないと、意見を引っ込めなかったんだよ。やりにくいのなんの」

現在は自分も含めて、色々と羽目を外す武子も、少尉時代は超真面目な堅物で、奔放な黒江と智子を制御しようとしていた節があるとは、赤松の談。その武子も覚醒後はかなり羽目を外すようになり、真っ昼間からビールを煽るなどの行為も行う。これは堅物だけをしていると、指揮官の器足り得ないぞ、と欧州で若松に諭されたかららしい。


「ま、今だと、若さんのおかげでジョークを解するようになったけど。若さん曰く、奴の中尉時代に教育してやったっていうし」

「良かったじゃない。事変の時のやらかしを認めてもらって」

「おう。ケイがストナーとシャインスパークをやらかした時は傑作だったぞ。俺たちでノリ良く掛け合いしたから」

「どんなです?」

「ああ、こんなやり取りだったよ。ほれ、録音しといた」

『ケイ、分かってるな?』

『感じる……、皆の心が一つになっていく…!』

『うおおおおおおっ!』

『はぁあああああっ!』

ズオォッというゲッター線の高まりを示す音がレコーダーに入っており、シャインスパークを撃つ時のものであると分かる。シャインスパークはゲッタードラゴンのエネルギー量では緑、それを超えると青白く変化する。ゲッター真ドラゴンのシャインスパークと同様の構図であり、明らかにウィッチのそれでない力を行使している事から、武子と江藤がパニクっている声も録音されていた。シャインスパークの際には、圭子はマッハウイングを使用していたので、それも大いに混乱させたのだろう。


「なんですか、これ」

「シャインスパークの掛け合いだよ。再現したんだよ、景気づけに。隊長と武子がやかましかったけどな」

ピーチにそう答える黒江。シャインスパークはゲッターの最終兵器であり、その破壊力はゲッター真ドラゴン級のパワーであれば、次元の裂け目を開くことが可能である。それを放ち、怪異は消し飛んだ。当時の目撃者達は『白い闇に包まれたと思えば、辺りに静寂が戻っていて、青空になっていた』と口を揃える。

「たぶん、お前らのキュアレインボー形態の合体攻撃の数十倍の破壊力はあっただろう。次元の裂け目を開いたからな。これで疎んじられたが、電光三羽烏の異名はついた。今はレイブンズで通してるから、ガキ共には分からんだろうけど」

「は、はっ!?」

「あ、お目覚めか」

「なんか頭がぼーっとしちゃって……。久しぶりだったし…」

「お前、さっきのやりとり、見られてたからな」

「え〜!?」

「おかげで、横綱スケコマシって言われそうだよ、ははは…。カミさんになんて言おう…」


「わ、わ、わかってますよ、のび太くんが妻子持ちだって!?わ、わ、私、そんな!?」

「往生際がわりーぞ」

「ピーチ、なんとか言って…」

「諦めようよ、ドリーム」

「そ、そんなぁ〜!」

のび太はしょげている。ピーチに肩に手をかけられ、事の重大さを悟り、顔から湯気が出て、パニックになるドリーム。のび太に往時のココを重ねた側面もあるように、基本的に包容力のある男性がのぞみの好みのタイプらしく、青年のび太はばっちり合致していたといる。

「好きだと思ってくれるのは嬉しいけど、友達として、戦友として家族みたいな付き合いで頼むよー?」

「わ、分かってる、分かってるからー!りんちゃ〜ん、助けて〜……」

ドリームは湧き上がる感情がわからず、困惑する。これはのび太への好意が先程の出来事をきっかけに自制できる一線を超えた表れであり、のび太としても、みらいとリコへの説明に四苦八苦する事が待ち構えているのだ。

「僕なんて、あと数ヶ月もあれば、みらいちゃんとリコちゃんに話さないといけなくなるんだよ?はーちゃんと、20年も一緒に暮らしたなんて、普通に信じてくれないよ?」

「そうだよね。はーちゃんは元から歳を取らないし、変わったのは口調が変身した時と同じになったくらいだし」

ピーチも頷く。のび太が10代前半の頃から一緒に暮らしていた事を知れば、みらいがパニックになるのは目に見えている。ちなみに、みらいと常に一緒だった『モフルン』は二人の死と共に、普通のぬいぐるみに戻ったが、はーちゃんが必死にバダンから守り、野比家に持ってきており、二人の復活で妖精に戻る日を待っている。

「表向きは親父の養女って事で、戸籍謄本にも載ってるんだよ。どう説明したもんか。10代を一緒に過ごしたって事はね…」

「うん。それが難題だよねー。今、のび太君は28だから、10数年は一緒ってことだし」

「みらいが怒るぞー、たぶん」

「リコちゃんも詰め寄りそうだよー。色々と染まってるし」

のび太は二人が蘇生すれば、はーちゃんの事で説明の義務がある。はーちゃんは実質、妹二号と言える立場であり、中学、高校、大学も出て、地球連邦軍の士官学校まで出ている。ダイ・アナザー・デイ中には任官も済ませており、エイトセンシズに到達している。妖精からプリキュアへ転じ、元の世界の大地母神の後継者であった経歴なので、精神的に成長はするが、肉体的成長はしない。成人後ののび太を手つだっているので、プリキュアの姿で銃火器も使うこともあり、P220を好む。

「はーちゃんがプリキュアの姿でP220を撃ってるの、週刊誌にスクープされた事あってね。それ見たら、二人は失神モノだよ」

「わたしがスーパーレッドホークを撃つようなものだしね」

「あたしはサブマシンガンだよ?せつなとブッキーが腰抜かしそうでね」

ピーチはその場にあったMP5を使い、ハリウッドさながらのガンアクションをした事を明らかにし、それぞれ不釣り合いとも取れる実在の銃火器とのミスマッチをネタにされることも増えた。

「まあ、ダーリジンこと、蒼乃美希なんて、イギリスのネタ戦車で戦車道してたし、そのほうが食いつきいいかもな」

「ま、プリキュアと銃火器は水と油なんて思ってる連中が多いからね。プリキュア本来の武器は使用条件も厳しいのがあるから、実在の銃火器はちょうどいいんだけどさ」

「この間、航空機関砲使ったら、スクープされて大変だったしなぁ。旧陸軍の粗悪品を撃たせたとか言ってさ。99式20ミリより直進性いいのに、ホ5は。第一、ベルト給弾式だと、M60みたいに三脚つけないと安定しないし、移動できなくなるんだよ?」

ドリームは錦としての嗜好も入り、大口径砲を好む。その関係でプリキュアの姿でも大口径の航空機関砲を使う回数が多い。ホ5を軽いという理由で好んでいるが、旧陸軍系の粗悪品と言われた時は怒っている。同じように、坂本は99式のダウンスケール品を嫌っている発言を今回は一貫して公にしており、坂本は今回においては『大艦巨砲主義』と揶揄されている。坂本は前史の経験から、今回は大口径砲を一貫して好み、事変中から九九式二〇ミリを使いこなした。中口径銃を好む傾向が強いウィッチ界隈では珍しい『火力教徒』として知られており、のぞみもその流れを汲む。坂本はダウンスケール品の開発では押し切られたと愚痴り、赤松に頼み込み、二〇ミリ砲モデルの生産継続に圧力をかけてもらうなど、色々と暗躍した。

「坂本も前史の失敗でよ、『99発しかないのだ、思い切り近づいて撃て!』って教えてたって言うからな。二号なら、120発あるから、専門部隊は使ってるんだぞ?それにホ5は平凡なスペックだが、軽いんだぜ?ったく、日本の連中はなんでも舶来コンプレックスだ」

「それに、マウザーの20ミリも、欧州じゃ補給の厳しさであまり出回って無かったってのに。薄殻榴弾なんて、アメリカでもコピーできなかったから、扶桑は買っといたのに」

「おい、ドリーム。何万発だ?輸入は」

「天姫に聞いた話だと、60万発らしいです。倉庫で腐らすにはもったいないですよ」

「事変ん時に輸入するように圧力かけてたからな。そんだけ備蓄あるなら、前線に回せよ。『旧型』だからって、死蔵するにはもったいないぞ」

「バルカンやリボルバーカノンに使えないとか喚いてるそうで」

「はぁ?ドイツの誇る弾丸だぞ?時代考えろ、リボルバーカノンやバルカンなんて、この時代はまだ試作品もできてないか、なんだぞ」

当時のカールスラントの火力の高さの秘密とされる『薄殻榴弾』はその威力に定評があるので、扶桑は事変の時から、全てを合わせて、合計で60万発は輸入していたが、日本が『規格が合わないし、ドイツ製は補給が』と使用を差し止めていたので、輸入されたマウザー砲共々、武器庫に死蔵された状態だった。より、『年式』の新しいガトリングやリボルバーカノンに切り替えたい思惑からか、自国製のコピー品の生産も差し止めており、有に60万発は死蔵されていたが、当時の国産航空機関砲よりは火力に優れているため、その使用が再検討された。ただし、史実がそうであったように、前線の整備兵の練度の問題もある事から、欧州の機材に手慣れつつ、最精鋭の64に最優先供給される事になる。不平等の声を出させないように、本土の防空部隊にも供給されたものの、本土防空部隊は戦う機会が無いため、弾丸の殆どは64で消費される事になったという。

「どうします?」

「ロンメルに頼んで、数万はカールスラントから回してもらう。そうすりゃ、国内在庫を吐き出すだろうよ。あれはレシプロには効くしな」

「どんどん湧いてきますよ、あいつら」

「天文学的単位で来る宇宙怪獣に比べりゃ、底が見えてる分、マシだ。パイロットだって有限の資源な事には変わりないしな。帰ったら要請を出しとく。」

「ん、あれは?」

ふと、『バシッ!』という音と共に、空に一筋の閃光が走る。超電磁砲である。誰かが撃って、レシプロ重爆をへし折ったのだろう。それが地上からでも見えた。

「超電磁砲だな。調か、ラルが撃ったな。美琴も呼びたいが、当面は無理だな」

「異能、多くないですか?」

「学園都市があった世界だしな、のび太の世界。超電磁砲は割に覚えやすいし、その割に使える能力だよ。資料見ると、美琴の前にも何人かいたらしいしな」

「それじゃ、あたし達もなんか覚えようよ、ドリーム」

「流派東方不敗を覚えさせるが、その前に試したいものもある。お前ら、響も誘え。三人なら最低限、チームって言えるからな。」

「は、はい」

「ドリーム。プリキュア・ピンクカルテットに参加できなかったのが悔しいなら、別にチームを作ったらどうだ?メンバーは一部が被るにしろ、りんとはーちゃん入れれば、ちょうど5人でキリが良いぜ?」

「ふおおお〜!さすが先輩〜!」

プリキュア・ピンクカルテットはピーチ、メロディ、ブロッサム、ハッピーの四人で構成されていた。戦績は芳しくない上、ギャグ的な場面を残してしまった。戦闘向きのチームを作るというのは、スーパー戦隊という偉大な先達の例を見るに、歴代混合チームというものの意義は大きいし、オールスターズという大きな一区切りで動くと、しがらみなどで満足に動けなくなる場合がある。それを悟っていたドリーム、ピーチは黒江のその言葉の通りに、後々に新たなチームを結成する事になる。ただし、後輩達に『ドリームスターズ』を使われていた関係で、チーム名の考案が難航したのは言うまでもない。

「これからどうなるんだろう、私達」

「僕たちの世界の因縁に、この世界と、君たちプリキュアを巻き込んだようなものだしね。こんな事になってすまないと思ってるよ。だけど、やるしかないさ。ドラえもんのキメ台詞の『通りすがりの正義の味方』じゃないけど、君たちなりの戦う理由を見つけるんだ。生前からの惰性でなく、ね。君たちは子供たちにとっての希望なんだよ。はーちゃんにも言い聞かせてるけど、君たちは強くなれる、どこまでも。君たちが『プリキュア』ならね」

「のび太くん……!」

のび太は心憎いばかりの台詞回しで、ドリームとピーチを煽る。ドラえもんは常に『通りすがりの正義の味方』だと言っていた。代表的なのが、唐の時代の玄奘三蔵法師に言った事であろう。ドラえもんが教えた事を、今度はプリキュア達に自分が教える。それはかつて、ヒーローに憧れた子供が大人になり、自分の子供に心構えを説くのに似ている。実際に、のび太はかつて、年老いた船乗りシンドバッドを再起させた経験がある。奇しくも、それと似ている。その後の人生で挫折を味わい、往年の志を見失っていたドリーム/のぞみに再起を促すかのようなのび太の一言は、のぞみが前世の後半生に不幸の連続で挫折と恐怖を味わい、すっかり失っていた青春期の純粋無垢な前向きさを思い出させた。


「出来るかな、わたしに……。40くらいの時、自分の子供と喧嘩したりしてたし、若い頃みたいに、未来を前向きに考える事が怖くなっちゃったんだよ……?」

「僕を考えてみて。子供の頃はカミさんにも、『あんたみたいなクラス一の劣等生が?』って笑われたこともあるんだよ。それでも少しづつ努力して変われた。君だって、プリキュアに戻れたんだよ?君の未来を信じた人のためにも、明日を、夢を諦めないでくれ」

「……ココに会ったら、許してくれるかな……こんな私を」

「一生懸命に生きた君を、『彼』が否定すると思うかい?」

「――ありがとう……。上の娘は私の生き方を否定したの……。その時にどうして?って何度も自問自答したんだ……。自分の子供に自分のあり方を否定されるって、こんなに辛いんだって……思った。だから、この姿に戻りたかったんだ。ずっと…ずっと…!」

ドリームはのび太に縋り付くように、悲しい声で本音をぶちまけた。長女に自分のあり方を全否定された事でのショックから立ち直れなかった事、自分の道をそれぞれ歩む仲間達に頼りたくなかったのと、誰かに縋り付いて泣きたい気持ちのせめぎあいで、自分に生じた闇に決着をつけられなかった事を口にする。

「泣いていいんだよ。君たちは弱いところを見せられない肩書がついて回ってきた。でも、それ以前に、一人の女の子なんだから」

「う、うわぁああ……あぁ…!!」

堰を切ったように、のび太の胸で泣くドリーム。長年、耐えてきた負の感情を抑えられず、溢れ出たのだろう。のび太は何も言わずに、ドリームを抱きとめ、ただ、優く微笑む。

「のび太君みたいな人が『男の中の男』なんですよね……」

「ああ。やろうとしても出来ることじゃないぜ。人の不幸を悲しむ事ができるのが、のび太だ。男の中の男ってのは、単純な強さじゃない。心の強さ、優しさも条件に入る。『男は、優しくなければ生きる資格はない』なんて、誰かが言ったが、要は『強さは愛』なんだ。苦しみを超えて、思いっきり生きる。それが強さの本質なんだと思うぜ、ピーチ」

「強さは愛…、か」

「でも、しずかが見たら怒るぜ、あれ」

「確かに。でも、ドリームのためにも…」

「しばらく、そっとしてやろう」

のび太の強さを、黒江は男の中の男と表現する。博愛精神を持ち、それでいて、守るべき者のためには、どんな存在と戦う事も辞さない。ピーチは、『ドリームが一目惚れしたのも分かる』という顔をし、黒江とお互いに顔を見合わせ、ドリームへ微笑むのだった。



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