外伝その305『死闘、ショッカーライダー戦』
――日本連邦は日本内部でも批判は大きかったが、通常の経済政策では、如何なる手段でも再活性化が不可能とまで言われた経済が扶桑との貿易で奇跡的に復活し、扶桑の膨大かつ良質な労働力を得られた事、軍事力を得た事による国際問題の沈静化というメリットが生じたことは誰の目にも明らかであった。委任統治領の取得も重なり、台頭する中国の抑え役として、世界から期待された。扶桑から全ての資源がわんさか取れる(南洋の石油の枯渇の心配がされ、樺太油田も開発され、石油資源の心配も消えた)上、格安である。経済が持ち直したのは、燃料問題の解決と、扶桑の莫大な市場が得られたことで、国家の資金繰りが良くなったからだ。ただし、問題を起こして、その恩恵がすぐには受けられなかった組織もある。海保である。ロシアと学園都市の戦争で失った巡視船の補充もままならず、政治問題を起こした責を問われる事態になった。現場の必死さ加減が哀れになるほどで、海保の尻拭いを扶桑海軍が行う事となった。その任務代行に大和型戦艦を駆り出すのも珍しい光景でもなくなり、2019年の頃には日本海の治安は安定した。なにせ、史実の大和型戦艦より巨大化し、現在装備を持つ戦艦が漁船の摘発で現れるのだから、密漁船は肝を潰す。2010年代のネットでよくネタにされる場面は間違いなく、『戦艦大和、密漁船を摘発』だろう。大和型戦艦は近代化で細かい部分は未来化されているが、大まかな構造物配置は原型のままであり、2000年代後半の革新政権が肝を潰したほどの威圧感である。関係者の間ではラ號にも通ずる近代化とされるが、実際は、より強力な宇宙戦艦ヤマトのそれである。艦尾は波動エンジン搭載改修可能なモジュール構造であり、主機を熱核反応炉から波動エンジンに取っ替えれば、ヤマト級宇宙戦艦になれる。第三次改修はそのためのもので、煙突も実は、ヤマトに準じた構造のVLSである。その実は近代化どころか、宇宙戦艦に改造可能なように作り変えているに等しい。ここまで行くと、前時代的と笑うどころではない。戦艦の維持の理由はそれで充分であった。革新政権時代は扶桑への不当な圧力が大きかったが、自分達より強大な力があると分かった途端に媚びてくるため、扶桑の政治家は日本の政治家を少なからず嫌悪している。これは扶桑が織田政権下で覇権国家であった歴史を持つため、日本と違う政治姿勢で生きており、日本の政治姿勢を『事なかれ主義で、腰巾着』と感じたためだろう。その違いによる思考の相違が、ダイ・アナザー・デイでの計画変更からの長期化に繋がったのである。日本は革新政党が寄ってたかって反軍的であり、国民の福利厚生のほうしか関心がなく、国防会議参加資格の停止中である。そのため、日本連邦国防会議は政権与党と警察関係が参加しているが、多くは双方の自衛隊員と高級軍人だ。これは扶桑の軍需産業は基本的に、軍部の要請で兵器を生産する立場であり、基本的に役割分担が意外にされていたからだ。役割は国会が戦略目標の承認、大筋原案、実行が連邦軍だが、それをよく理解しない野党議員が多く、この時点では内閣、防衛、警察の三者が国防会議を回していた。ダイ・アナザー・デイは当初、先制攻撃を予定していたが、防衛戦のほうが国民の理解を得られるという意見で紛糾している間に先制されたためでもある。その失敗で長期化が否めないのも事実だった。
――そんな国家会議を他所に、黒江達は前線の要請で、救援に駆けつけたが、そこにはバダンが量産していたショッカーライダー達が待ち構えていた。ショッカーライダーは量産可能な旧二号と新一号タイプであり、旧二号は本物と同型だが、新一号タイプはゲルショッカーが製造し、外観に識別用の変更を加えたため、本物との差異が大きいお馴染みの個体である。
「あんた達は!?」
「フフフ…。我らはショッカーライダー軍団!!仮面ライダー一号や二号と同等の能力を持つ改造人間だ!」
「ベタ過ぎる待ち伏せしやがって!高いところから見下さないとダメ症候群かよ!」
黒江がツッコむように、数百人規模のショッカーライダーがそれこそ、ベタすぎるほどの状況で待ち伏せていた事にツッコミを入れる。しかしながら、ショッカーライダーの基礎能力は一号と二号と同等レベルであり、その面では強敵である。
「ふふ、これだけの数のショッカーライダーを相手に、貴様達だけで戦えるかな!?」
「ライダー車輪で一網打尽にされたくせに、よく言うぜ、ショッカーライダーナンバー1!」
「ハハハ!あの時とはワケが違うぞ、小娘共!」
ショッカーライダーのリーダーシップを取っている、ショッカーライダー一号は自信ありげであった。正統なホッパータイプの発展型である『三号』や『四号』が出た以上、彼らの立場は雑兵に毛が生えた程度であるはずだが、妙に自信がある様子だ。
「一斉攻撃だ!!」
ショッカーライダー達はその言葉を合図に、一斉にライダージャンプで飛び降り、物量での攻勢をかけてくる。それを迎え撃つ一同。数百人のショッカーライダーは連携こそ出来ないが、基礎能力は一号と二号と同等である上、分隊や小隊のリーダー格のショッカーライダー達は格闘技の達人を改造していたため、プリキュア達の攻撃を凌ぎ、格闘に持ち込めるだけの技能を見せた。
「ただの戦闘員とは違うってことかっ…!」
キュアエンジェルピーチの先制攻撃をいなした旧二号型のショッカーライダーはキックボクシングで応戦し、ピーチも蹴り技主体で応える。改造人間相手に渡り合えるポテンシャルを持てるプリキュアの能力は褒められるべきだが、スーパー化した状態で戦っているドリームとピーチを考えると、『余裕がない』証でもある。一同で素で圧倒できるのは、黒江とのび太(ガンアクションで)のみ。数の差はキツイが、黒江単独で数十は相手取れる。しかし、流石に持ちこたえるので精一杯は否めない。
「ルージュは下がってて!ここはわたしが!」
組織と初交戦のルージュを守る形で、ショッカーライダーと戦うドリーム。錦としての戦闘能力がプラスされている分、戦闘力はアップされていたが、ショッカーライダーのポテンシャルは相当に高く、シャイニングドリームのスピードに加速装置で追従してみせる。
「なっ!?」
「フフフ、俺達には加速装置がある。奥歯の奥のボタンを押せば、極超音速にまで加速するのだ!」
「ベタすぎて、笑えてくるネタをっ!」
シャイニングドリームがこの時点で出せる限界に容易く追いついてみせるショッカーライダー。加速装置は機械改造式の仮面ライダーではお馴染みのギミックである。ホッパータイプと俗称される仮面ライダー型改造人間には必須の装置で、量産型がショッカーライダーにも積まれている。一号と二号のワンオフ品より落ちるが、マッハ3までは加速できる。持続時間を伸ばすため、速度を落としたのだ。ちなみに、加速装置で加速された攻撃は高い破壊力を持つ上、ものすごく加速されているため、周囲に衝撃波を撒き散らす。そのため、相手にする場合は、加速装置の性能限界と同じ次元に立ち、なおかつその疾さを超えるしかない。
「あ、が…!?」
加速された状態での膝蹴りが脇腹に入り、そのダメージで意識が飛びかけるドリーム。そこからのハイキックで、ドリームは吹き飛ばされる。意識が飛びかけているため、翼で飛行して態勢を立て直ずこともできない。ルージュがなんとか受け止めて救助する。シャイニングドリームは加速装置を発動させたショッカーライダーに追従した。スーパープリキュア化した状態であるからこそ可能な芸当だったが、あくまで、個人としてのスペックは、ショッカーライダーのような超人ではないため、隙を突かれてしまった。満足に言葉も発せられない状態のドリームの姿に激昂するが、ピーチに止められる。
「待って、ルージュ!ルージュの力じゃ、こいつらにかすりもしないよ!」
「それじゃ、黙って見てろって事!?」
「ルージュ、僕の後ろに。対ショッカーライダー用に敷島博士が連中の技術を使って製造した『コロージョン弾』を使う。元は連中が持っていた特殊弾らしいがね」
ボルトアクション式の銃にその特殊弾を装填し、不用意に接近してきたショッカーライダーの一体に放つのび太。すると、撃ち込まれたショッカーライダーはドロドロに腐食し、溶けてしまう。
「な、何……?その弾……」
「元は、奴らの組織が処刑用に使用していた腐食弾頭さ。一号が回収していたそれを敷島博士が再現して、製造した代物さ。曰く、超合金ニューZや合成鋼G以外の素材を一瞬で溶かせるらしい。だから、ショッカーライダーは殺せるってことさ」
のび太は自分が『生身』(不死性を得るのは、転生後の話である)である事を利用しての戦闘法でショッカーライダーに対処する。ルージュを呆然とさせるほどのとっさの射撃で、ショッカーライダーを瞬殺してみせ、弾頭の解説までやってのける。青年になり、裏稼業で名を馳せるようになると、一種の余裕さえ感じさせるのび太。総じて、カッコいい大人として振る舞っているが、家庭では少年時代とあまり変わっていない面もある。それが、のび太の魅力である。
「ただし、あまり数は無いよ。そうなったら、他に切り替えるしかないね。綾香さん、彼らには?」
「脳波通信に割り込んで、連絡を入れといた。じきに来るはずだ」
「彼らって、誰ですか?」
「歴代の仮面ライダー達。お前らプリキュアの偉大な先達だ。お前らの時代にいた平成ライダーじゃないが、敬意を払っとけよ?」
ルージュにそう告げる黒江。昭和ライダーは全ての『現在形』等身大変身ヒーローの原型である。その点で考えれば、プリキュアの偉大な先達と言える。最も、黒江が歴代の昭和ライダーと親交がある事は有名であるが。
「ゲホ…ッ!先輩、彼らを?」
「気づいたか。そうだ、彼らを呼び寄せた。挨拶しとけよ」
気がついたドリームにも教える。歴代の仮面ライダーたちは、『強者』であるのび太や黒江が頼りにするほどの存在である。それを知っているため、なんとなく嬉しいような、自分たちでは『足りないのか』と残念そうな、複雑な表情を見せるドリーム。しかし、この時点では加速装置での一撃を食らっただけでノックアウト寸前に追いやられたため、自分たちの微力さを実感している。素でショッカーライダーと渡り合えるのは、のび太。格闘センスに優れているキュアピーチ、黒江の三者のみ。ショッカーライダーの高い基礎能力を考えると、キュアピーチがかなり善戦していることがわかるだろう。ただし、オリジナルの一号と二号にないショッカーライダー特有の特殊能力を備えている。一号と二号は『ライダー車輪』という技で始末したが、その能力を活用されると厄介である。
「しばらく休んどけ。加速装置での一撃をもらえば、ただではすまん。奴等の利点はそれだ。自由落下以外の動きは加速されるから、そこから攻撃されたら、常人なら潰されてるぞ。本物の仮面ライダーには劣るが、それでもマッハ3以上には加速できるからな」
「加速装置って、そんなに?」
「仮面ライダーか、それに匹敵する幹部級の怪人にしか搭載されないギミックだ。ショッカーライダーのは量産品の質が落ちるものを積んでる。これだけいるとな」
「どこぞの00ナンバーみたいなことを…!」
「改造人間には高出力活動モードが組み込まれている。特に仮面ライダーは元々、幹部級怪人の予定で、贅が尽くされている。改造人間界のガンダムさ」
黒江がドリームとルージュに解説する通り、仮面ライダー一号は『バッタ男』として予定されていた改造人間であり、事前に試作品まで制作されるほどのものである。これはジュドのボディ再現の試作と、次期ショッカー首領としての育成を兼ねていたからで、緑川博士の研究の成果であった。仮面ライダー二号と新一号のボディはその改良タイプに当たる。
「その仮面ライダーの量産品の雑兵が連中がだ。黄色い手袋の連中は雑兵でいいが、旧二号タイプは本物と同じ能力だ。侮るなよ」
黒江が注意を促す。旧二号型(後に、グリーングローブ型との呼称がつく)のショッカーライダーは一文字隼人/仮面ライダー二号と同等の身体能力を持ち、素体も他よりよりすぐったエース級の人間である。そのため、キュアピーチも苦労している。歴代随一の巧者と鳴らす彼女で、だ。
「いいか。これから、お前らが相手にするのは、現役当時に戦った怪物じゃない。れっきとした『ヒト』だ。歴代の仮面ライダー達が戦う絶対的な邪な存在。それを打ち払い、みんなの嘆きの声にその腕を差し出す。それがお前らに課せられた次の使命だ」
「使…」
「命…」
二人が息を呑む間もなく、黒江は闘技を披露する。
『エレクトロサンダーフォール!!』
黒江が事変後に危険視、異端視された理由がこれである。黄金聖闘士に叙任されていた故に操れるもの。『アーク放電』を伴う電撃攻撃である。その威力は歴代黄金聖闘士でも随一と評され、ショッカーライダーを行動不能にするには充分すぎるものだ。事変当時には突然変異的な能力と解釈され、後に迫害される理由ともされたが、人知を超えた鍛錬で身についたものと判明した現在では羨望の対象である。江藤が懲罰を受けたのは、その風潮を結果として助長したからで、昭和天皇が黒江へのいじめ問題を憂慮していたのも大きいだろう。
「何よ、あれ…」
「先輩が当代最強で鳴らしてた理由。黄金聖闘士だから、聖剣持ってるし、電撃が得意で、グレートマジンガーみたいな事もできちゃうんだ。若い連中に、おとぎ話みたいに言われてるんだよね」
「電撃系は貴重だし、俺ほどの出力は出せないからな。ペリーヌにもぶーたれられたけど。そうだ。あいつ、キュアスカーレットになったとか?」
「重大なことをここで言いますー!?」
ガビーンというのが似合うアクションのドリーム。茶目っ気で場を流す黒江。ルージュも思わず、『ものすごく重大なことを、さらっと言わないでください!』と膨れる。
「そう怒るな。俺も今さっきだよ、智子から詳しいメールが入ったのは。ケイがMr.東郷の仕事で不在だし。智子のやつは間が抜けてんからな」
智子は生真面目な気質の割に、意外と間が抜けているところも多く、圭子や武子に呆れられている。キュアマーチとスカーレットに言われ、ようやく黒江に事の詳細を伝えるなど、間が抜けた行動も多く、義理の娘で、大姪である麗子も『母さんは間が抜けてるから』と明言している。黒江の『姉』を自認しつつ、意外に事務作業が苦手であるのも智子らしく、そこが事務作業もこなす黒江に劣る点であった。
――黒江のテレパシーによる連絡を受けた仮面ライダー達の内、『栄光の七人ライダー』がマシーンをかっ飛ばし、急行していた。その七人が最も因縁が深いからで、クライシス帝国への対応のために、四人を待機させ、七人がショッカーライダー撃滅のために戦場に赴いた。――
「これより、ショッカーライダーを撃滅する!!」
『おう!!』
一号からストロンガーまでの七人が平均時速200kmでマシーンを飛ばし、戦場に急行する。改造サイクロン号(一号用新サイクロン号がオーバーホール中であるため)からカブトローまでのマシーンが爆音高く、欧州を疾駆する。新造されたネオサイクロン号は調整中のため、使用していないが、『栄光の7人』を演出するには、新サイクロン号か、改造サイクロン号が必要なためでもある。改造サイクロン号は引退後も、新サイクロン号の予備扱いで保存されており、一号用のものは立花藤兵衛の存命中、ヘルダイバーのエンジンに流用されたが、二号用の個体が保管されており、一号が使用した機会も多い。今回はその個体を引っ張り出したのである。黒江からの要請を受けてから15分ほどが経過して、七人ライダーが爆音を轟かせて、戦場に颯爽登場する。
「ん!来てくれたか!」
黒江の声が弾む。特徴的なエンジン音とともに、七人ライダーがマシンを飛ばし、見参したのだ。一号を先頭に、ストロンガーが中央に位置する見事な隊列で爆炎をバックにジャンプしながらの登場であった。昭和の時代に生まれたヒーローらしく、マフラーをなびかせているのが不思議にカッコいい。
「きおったな、ライダー部隊!」
主敵の到来を喜ぶショッカーライダー一号。昭和ライダー達は組織の攻勢に対し、チームを組んで対応していたため、それを示すコードネームが組織の中で使用されていた。ネオショッカーの頃から使われだしたのが『ライダー部隊』である。スカイライダーの現役の時代から用いられ、ライダー達も時たま使う事もあるこの言葉。4人以上の仮面ライダーが一堂に会した場合、敵味方共に用いる。マシンに跨がり、勢揃いした七人ライダーの姿は敵には恐怖を、味方には歓喜をもたらす。いつしか伝説とさえ言われる存在になった彼ら。敵は伝説の七人と呼称するが、仮面ライダー達は『栄光の七人ライダー』と称している。それが立花藤兵衛という七人共通の師の命名だからだろう。
「七人ライダー!!ほ、本物だぁ……。転生して良かったぁ……転生して初めて、幸せゲットできたかも…!ピースに見せてやりたいなぁ…」
途中で感極まるキュアピーチ。本物の七人ライダーが見られるとは思ってなかったからだろう。この反応から、仮面ライダーはプリキュア達のいた世界でも、特撮ヒーローとして存在しているのがわかる。プリキュアの中でも、『特撮オタク』で鳴らしたキュアピースの布教の悪影響(?)も窺える。(実際、キュアピース/黄瀬やよいは夏休み中にヒーローショーを見に行っていた。元からノリがいいためか、転生してカチューシャになっても、あまり苦労せずに済んでいる)。その事から、代が離れた先輩後輩の間でも、意外に交流があったらしい。
「皆さん、来てくれたんですか…?」
「我々が来た以上、奴らの好きにはやらせん。ここは任してくれ」
ドリームに一号が答える。歴代の仮面ライダー達(平成含め)の中でも、初期の七人は特別な存在であるとされる。一号からストロンガーまでの七人は、その実戦経験が物を言う。仮面ライダー界の長老とされ、平成ライダーとは意見の衝突も多いが、最強と呼び声高い。
「待ってください!このまま、あなた達に任せて引き下がったら!」
「プリキュアの名がすたる!」
「あんた達のセリフじゃないっしょ、それ」
「細かい事は気にしないの、ルージュ!こうなったら、咲さんと舞さんの技を借りるよ!」
「そっか、プリキュアの原点は!」
ドリームとピーチは自分達の先輩である『ふたりはプリキュア Splash Star』の二人が使用していた技を借りて、プリキュアの意地を見せる事にし、ルージュを困惑させる。
「え、待ちなさいよ、あんた達!?」
「こうなったら、ぶっつけ本番!!行くよ、ピーチ!」
「うん!ゴメン、咲さん、舞さん!技、借りるよッ!!」
前代未聞の事態である。あるプリキュアの技を代の違うプリキュアが使う。プリキュアの名は共通していても、力の根源がそれぞれ違う存在であるので、不可能なはずである。だが、転生で本来の力の柵を超えた以上、理論的には可能と考えたのか、プリキュアの意地にかけて、行った。ルージュはパニック、黒江とのび太は苦笑交じり。7人ライダーはストロンガーが代表で、『お手並み拝見、だな』とだけ言う。
『精霊の光よ、 命の輝きよ!』
『希望へ導け!二つの心!』
前口上は、オリジナルそのままで行うドリームとピーチ。この技こそ、本来はキュアブルームとキュアイーグレットの技である『プリキュア・スパイラル・ハート・スプラッシュ』。精霊の力を借りて放つので、本来は『Splash Star』の二人でなければ、使用できない必殺技。それをアイテムもなしに、本来の使い手の次代の二人のプリキュアが使う。本来であれば、ありえない光景である。しかも、同じ属性のはずの二人のプリキュアが使う点は完全に、生前の柵や制約を超えている。両手を広げて、エネルギーを腕へ螺旋状に収束させる。ルージュはあまりに生前の縛りを超えている光景に、言葉すら出ない。
『プリキュア!!』
『スパイラルハート!!』
『スプラァァァッシュッ!!』
かつてのブルームとイーグレットがやった事を、その後輩であるドリームとピーチがやってのける。プリキュアとしての色々な制約や壁をぶっちぎった行為であった。スーパープリキュア状態で行ったこともあるが、日向咲と美翔舞が見たら、間違いなく腰を抜かすだろう。
「えぇぇっ!?アイテム無しでプリキュア・スパイラル・ハート・スプラッシュをぉ!?ど、ど、どうなってるのよ!?」
唖然とし、腰も抜かす勢いのキュアルージュ。プリキュア・スパイラル・ハート・スプラッシュはシャイニングドリームとキュアエンジェルピーチの力で放たれたこともあり、戦場を貫く光となって、ショッカーライダーを数十人単位で消滅させた。
「スパイラルスターのほうでも良かったんじゃね、お前ら」
「いやあ、そこまでしちゃうと、咲さんと舞さんに悪いし。それに、なぎささんとほのかさんの技も試したいし……」
「お、おう……」
「あんたら、どうなってんのよ!?いろいろぶっちぎってくれちゃって!?」
「ココとナッツ、タルトが見たら……うん。腰抜かすの間違いないなぁ」
「そういう問題じゃなくて!」
「それは後回しにして、ルージュ!ライダーの皆さん、今です!!」
「よし、行くぞ!!」
プリキュア・スパイラル・ハート・スプラッシュを見届けた七人ライダーが戦闘を開始する。ドリーム、ピーチはプリキュアの意地を、先輩の技を借りる形で見せた。ルージュのツッコミが色々な意味で追いつかなかったりするが、プリキュア達はのび太と黒江に守られる形で、栄光の七人ライダーの戦闘を間近で見る事になった。かつて、日本を悪の手から守った勇士達の姿、背中を。
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