外伝その354『M78星雲とは?』


――キュアビートも参戦したわけだが、歴代プリキュアとしても、現役時代ほどの優位性は確保できておらず、最近はティターンズの繰り出す超人に『現役時の最強形態でようやく立ち向かえる』という状況であり、広報での華々しさと裏腹に苦戦を強いられていた。そんな中、メルトランディとして転生していたキュアビート/黒川エレンの口から、『日本が誇る三大スーパーヒーローの最後の一つの陣営がいる星雲』の存在が示唆された。

「えー!?M78星雲にいそう!?あの光の巨人が?」

「ゼントラーディの間で、嘘か真か言われてるのよね、そのヒーロー」

「す、す、すると何か、エレン。未来世界の宇宙には……ウルトラマンが?」

「時空融合の影響だと思うんだけど、いると思うわ」

「ウルトラマンキングもいるって事になんね…?」

「いるだろ、M78星雲のウルトラマンがいれば」

「だぁーーー!!あの世界、ごちゃまぜ過ぎだろー!?」

「コスモリバースシステムの効果がイスカンダルのデータよりも良好なのは謎だったが、これで一つの推論が成り立つ。ウルトラマンキングがこっそりと地球を直していたというものだ。」

「あのウルトラマンの長老なら、やれそうだもんな…」

「でも、なんでウルトラマンは種族を挙げて地球を守るの?」

「前になんかで見たけどさ、元々はプロトカルチャー系の人類と同じ姿の種族で、太陽が滅んだ時に設置した人工太陽からの放射線を受けて、突然変異したんだそうな。カラータイマーは恒星エネルギーを得るためのものらしいし。元はアケーリアスの生き残りだったんじゃね?」

「時空融合の影響もあると思うけど、恐らくは」

「うーん」

キュアビートから、ウルトラマンの『M78星雲・光の国』の存在が示唆され、考え込む一同だが、戦線ではそれどころではない状況ではあった。この時期に特に不足したのが野戦防空機材で、扶桑は八八式7.5cm野戦高射砲を回収されたために、野戦防空機材が危機的に減少。抗議に困惑した日本の防衛省は携帯式防空ミサイルシステムを普及させる事で実質の代替(87式自走高射機関砲は自衛隊そのものが欲しい装備である)とされた。当時は史実戦後第一世代ジェット戦闘機も配備されだした頃であるので、戦線では敵味方共に、盛んに機銃掃射が行われていた。その対策が考えられ、携帯式防空ミサイルシステムが脚光を浴びた。地球連邦軍の協力もあり、一気に普及。レシプロ戦闘機や攻撃ヘリが機銃掃射を行うにあたって、返り討ちの危険性を与える事に成功した。こうした近代化は教育の期間の確保的意味で兵器普及速度の鈍化も招いたため、前線にとっては良し悪しであった。キュアビート達がM78星雲にウルトラマンがいるかいないかを大真面目に議論している頃、リベリオンの『宇宙怪獣』もかくやの物量を超兵器で跳ね返していた。当時、新兵器は行き渡っておらず、数合わせの旧型兵器も多くが回収されたため、部隊単位でこっそり保管していたものも使用していたが、パーツ不足に喘いでいた。ニコイチ整備も横行しだし、稼働率もみるみる内に低下。装甲戦闘車両や偵察車両で顕著となった。ブリタニアから購入したセンチュリオンとコンカラーが多数、大手を振って使用されたのは、新式戦車の部内の反対による生産数の伸び悩み、新兵器が前線に行き渡っていないのに、日本側が旧型兵器を回収したのが原因であった。










――そんな状況もあり、Gフォースは連日連夜の出動を行い、既に撃破数は単独で史実ソ連の一個機甲軍団を殲滅するのに相当する数に達していた。しかし、リベリオンのフル稼働の生産力はその損害をなんのそので補い、リベリオン人含めての連合軍首脳を慄かせていた。既に小国の陸空軍を二個ほど全滅させるはずの撃破数に達したはず(当時のスオムス全軍を二個は吹き飛ばした計算になっていた)にも係わらず、リベリオンの攻勢が衰えない(全ての物量で)事は脅威そのものであり、そのこともリスボン攻勢計画の遅延に繋がっていた。プリキュア達は広報に駆り出され、後方支援が主な任務になる者、それを兼ねつつも、前線で戦う事が課せられる者に二分された。のぞみは素体となった肉体が生前と違い、軍内でもそれなりの名家の出かつ、そこそこの武功を挙げていた中堅ウィッチのそれであったため、生前以上の基本能力値を得ていた。自動的に錦の軍籍と立場を受け継いだこともあり、シャーリー(北条響)と同格を自負している。ただし、英霊/プリキュア枠の双方に食い込んでいるペリーヌ・クロステルマン(三つの人格が肉体を共有し、空中元素固定能力の応用で変身するが、ペリーヌ・クロステルマンからのプリキュア・プリンセスエンゲージも理論上は可能である)、アストルフォに比べるとインパクトは薄い。現役時代からやって来たのが、魔法つかいプリキュアとキラキラプリキュアアラモードだが、みらいとリコは療養に入っており、いちかとあおいは本業に専念しているため、ことは、みなみ(竹井)、ペリーヌ(トワ)の三人が事実上の第三期プリキュアの代表格であった。

「ビート、貴方も来たのね」

「マーメイド。広報任務の帰り?」

「ええ。広報が強請るから、長丁場になってね。これで、ある程度まで揃った事になるわ」

「いないのは奏(南野奏)、プリキュア5の年長組、スマイルの二人、ハートキャッチのほぼ全員とかになる、か…。今ちょうど、M78星雲のことを話しててね…」

「M78星雲?あの、ウルトラマンの故郷の?」

「そう。そのM78星雲」

正確に言えば、そこにあるとされる主系列星が寿命を迎え、星系としては滅んだとされた星系にいた地球人と同系列の種族が人為的に突然変異を起こす事で超人『ウルトラ族』に変貌を遂げた種族。主星の爆発時に、その惑星の人々の中の王族の一人が、現代における『ウルトラマンキング』である。彼はその出来事の生き証人であると同時に、ドラえもんズとバダンの死闘で作動した時空破断装置の影響で生じた『時空融合』を制御し、安定させたのは彼の力であると推測されている。『超人』でありつつ、高位の神の域に達した能力から、ウルトラ族の『神』と讃えられる。どの世界線のウルトラ族かは不明であるが、いることは確認された事になる。

「あれ、ウルトラマンレオ、M78星雲の出身じゃねーぞ?」

「獅子座にあった母星が滅んだから、らしいわよ」

「つか、セブンとタロウは本当に親戚だったような」

「母方で繋がってる設定が昭和時代はあったから。レッド族のほうが最強の戦士を輩出しやすいって聞いたわ」

「ホーンがあの一族の超戦士の証じゃなかったか?」

「そのはず。ウルトラマンタロウはウルトラの父に代わる最強のウルトラマンになれる素質を持つ事になるわね」

ウルトラマンで言い伝えられる『超ウルトラマン』になれる素養は『ウルトラホーンを持つか』であり、当代ではウルトラの父の嫡子であるタロウがその素養を持つとされる。ウルトラ族は非常に長命なため、6400歳で地球人の15歳前後換算であり、10万歳台のウルトラ兄弟たちは20代から30代前半相当にあたるという。

「あれ、昔の大戦争の時、今のウルトラ兄弟はいたのか?」

「その頃はゾフィーがまだペーペーの警備隊員で、たしか父親が、青年の頃のウルトラの父を庇って戦死したとか?」

ウルトラマンシリーズで度々語られる『エンペラ星人率いる怪獣軍団』と宇宙警備隊の死闘。その際にゾフィーの父親は親友であるウルトラマンケン(後のウルトラの父)を庇って戦死しており、ゾフィーはウルトラの父の薫陶を受けて成人したという。

「ウルトラ兄弟は地球を守った功績で組織化された義兄弟ってことだけど、2000年代以降は曖昧にされてるのよね」

「ま、昔の定義は『ウルトラの父のもとで義兄弟の契を交わした歴代の地球防衛担当の勇者』だったからな。平成ウルトラマンの出る前はそうだったはずだ」

のび太が子供の頃に買っていたムック本(平成ウルトラマン登場前の時点の設定)ではそう定義されていたため、平成初期まではそのような設定だった。のび太は子供の頃からヒーロー物に目がなかったため、その延長で変身ヒロインモノも見ていた。ただし、中高生時代は玉子が世間体を最も気にしていた時期であるため、ちょうど初代プリキュアからスプラッシュスターの放映時期はTVをあまり見ていない。(のぞみ達を知っていた一方で、初期の二代に妙に疎かったのは、そうした事情によるもの。プリキュア5の放映時期には、のび太は大学生である)

「のび太がヒーロー物好きで助かったよ。あらかた見てたみたいだから」

「のび太さん、ドラえもんさんに皮肉られてたみたいだけど」

「ドラえもんは皮肉屋みたいなとこあるんだよ。口下手だって言ってるけどな。…うーん。マーメイドまで変身してるのに、あたしとのぞみが普通の姿じゃ、締まりがないような?」

「貴方、そこは無駄にこだわるのね…」

「いや、なんとなく…」

「貴方ねぇ…」

「気持ちはわからんでもない。変身しとけ、お呼びがかかるやもしれんからな」

「ラルさん、あんた、楽しんでるでしょ」

「こいつは昔からこうだ。しかし、戦線は切羽詰まった状態なのは本当だ。みんな、出すものは出しておけ」

「ミーナさん、ストレートすぎます…」

実際、トイレは死活問題であるので、一同は苦笑いしつつも同意はした。用を足し、全員で再変身して集まる。

「ふう。…で、前線の状況はどうなんです」

「正直、兵力不足が目立ってるというところだ。超兵器の山で海戦を順延させたが、陸戦は不利だ。敵の物量は凄まじい。撃破しても、撃破しても、戦車が減らん。もう、平時の一個師団級の車両は撃破しとるというのに…」

「連中は魔法でも使ってるんですか?」

「お前らが言うか?冗談抜きに言えば、連中の工業力だよ。戦車の数百など、連中は数日もあれば揃えられる。訓練はそこそこに送り出し、物量で相手をロードローラーする。日本の連中は、第二次世界大戦時代の戦法を真には理解しとらんよ」

日本は資源と金の都合で『質で相手を抑える』ドクトリンを近代以降は取る傾向が強い。それは二次大戦の敗戦のトラウマで更に顕著になっており、それが日本連邦のアキレス腱と揶揄されていた。

「のび太も呆れてるもんな」

「その彼だが、やるべき事はやったはずだという中傷が来ているようだ」

「また、この類か。シバいてやりてぇぜ」

「いきりたつな、シャーリー。彼がどのような選択を取ろうが、生き様を選ぼうが、個人の勝手だろう。Mr.東郷など、オリジナルとされる初代は元・日本軍の少年兵で、ナチス・ドイツ残党と『彼』は因縁の相手だと聞く」

「それに、のび太氏は『英雄たる素養』は充分に備えている。彼の戦歴をオープンにした上で、模擬戦を公開で行うしかあるまい。ゴルゴはこう言っている。『俺はただ 依頼者が絶対的に求める技量と価値観を身につけるよう 心がけているだけだ』と。また、『連中の言う、Nの"やるべき事"とやらは、連中の都合のいいように考えた、自分勝手な解釈にすぎない…。『世界の危機に立ち向かう経験』の浅い者が、さも経験豊富なようにふるまう……白けるものだ……』とも言っている」

デューク東郷はのび太への中傷にも至って冷静であり、なおかつ、同じプロとしての友情を見せる。彼が親愛を見せるケースは少ないが、腐れ縁のデイブ・マッカートニー、亡きヒューム卿、ヒューム卿と同時期の旧連合国諜報機関の長などで、ないわけではない。この頃は、圭子と共にティターンズが敷設した人工衛星の破壊に勤しんでおり、カスタマイズされた銃でその衛星の破壊を行っている。その最中でも、のび太への中傷を『気にするな…、連中の言うことは"酔っぱらいの戯言"にすぎん程度のものだ。だが、大衆は"目の前に示されたものしか信じない"。日本人は特にそうだ。あの『戦争』の後はな…』と述べている。

「のび太氏は『ボクは他の世界で見られてるフィクションのボクと同位体かもしれないが別人なんだ、一緒にされ過ぎても困るよ。ボクだってカミさんと倅食わしてるし、養子も招来は六人とるのにな』とボヤいてるし、のび太氏とて、全てがフィクションと一致するわけではない。特に新アニメ版の彼ではなく、旧アニメの彼に近いのだからな」


ラルはのび太が壮年期に『コージ』を含めた六人の養子を持つ事、のび太の基本的な人格と気質は新アニメ版の彼より、往年の旧アニメ版に近いと告げる。また、大長編ドラえもん補正が強まったことで『任侠的気質』が表に出た結果、人助けのためなら、どんな労苦も厭わないところも見せている。その純粋さにことはと調は惚れ、のび太の事実上の『妹』として生きることを選んだ。調に至っては、それまでの全てをかなぐり捨てて、のび太に尽くしているほどだ。

「のび太氏は人たらしなんだろうな、相当に。そうでなければ、調が暁切歌との生活に戻らずに彼のもとで生活し続けるわけはないし、あのデューク東郷が友人として振る舞うものか。ことはも、20年は彼のもとで生活しているのだぞ」

ラルがのび太という存在を総括する。あのゴルゴ13をして『友人』と言わしめ、ことはと調がのび太と家族として生活するなど、普通に考えて『奇跡』のような状況である。特に、野比家ではプリキュアであろうと、シンフォギア装者だろうと、変身した状態で普通に生活可能なために『いい修行場』とされ、野比道場と渾名されるほどである。ドラえもんのおかげでもあるが、街の立地も学園都市の隣であったという奇跡のような立地条件であり、23世紀の地球連邦軍も兵器の実験などに使用し始めている。それも手伝い、新・野比家はプリキュア・プロジェクトの指定宿泊所兼道場であり、その管理人にラウラ・ボーデヴィッヒ/緑川なお/キュアマーチが就任している。



ここで『デューク東郷』の出自に触れよう。オリジナルとされる初代デューク東郷の起源は日本軍の少年狙撃兵であり、戦争の後期か末期には日本軍に奉職していた。その事も関係しているのか、国家のイデオロギーが容易く、時代の流れと大国の都合で変わる事を実感し、成人後に裏世界に入った。その記憶は継承されているため、デューク東郷のポリシーは『特定の勢力に肩入れはせん…』と公言するものの、資本主義の世の中でなければ、『商売上がったり』の実状なため、東側諸国よりも、西側の依頼のほうを多くこなしている。また、初代が戦争経験者である事から、その事に由来する依頼を引き受けることも多い。日本人は戦後、『眼の前に示された事ならば簡単に鵜呑みにする』気質が災いし、好景気を知らない世代が若者になってゆく時代には、一向に景気が上向かないという事実に悩んでいたように、日本人の過激な層を納得させるために、のび太との模擬戦をどこかでやれと示唆したMr.東郷。その事はのび太も『パフォーマンスは必要な事』ということで、友人達に『デモンストレーション』を公言しており、東郷から何らかのアドバイスを受けた事が窺える。

「のび太氏から要請は受けている。この戦が終われば、デモンストレーション代わりの模擬戦を行う事になった。のび太氏はギャグ漫画補正も入るし、絶対に死なないから、遠慮なくぶっ放しても大丈夫だ」

「そう言われても、いつ終わるんですかね?」

「分からん。だが、M78星雲にウルトラ族がいれば、この世界の危機に一人や二人は駆けつけてくれるはずだ。地球や太陽系専門の戦士団があるしな」

「希望的観測ですか」

「この状況だ。そうでも思わんとやってられんさ。終わりが見えんよ。どこかの宇宙人か異次元人が怪獣や超獣を持ち込んだら、事だ。地球産最強の呼び声もあるバードンがいたら、特にな」

ラルとミーナはM78星雲にウルトラマンがいる推測が生ずると、すかさずにウルトラ怪獣の名を出す。どこで覚えたのか。マーメイドとビート、メロディは苦笑する。

「ゼットンいたら、どうするんですかね」

「ゾフィーか、タロウを送り込むだろう。新マンがウルトラハリケーンでやる手もあるが、シルバー族で正面から戦えるのはゾフィーだけだろうしな」

「ゾフィーって強いんですかね?」

「大戦争の時にも、ルーキーながら戦功を挙げたというがね。分かっているのは、後にウルトラの父と呼ばれるウルトラマンを庇って、彼の父親は大戦争で戦死していることくらいだ。たしか昇進も初代マンの助命の功だから、ずっとヒラだったらしいぞ。実力者として名は知られていたらしいが」

ゾフィー。ウルトラ兄弟長兄であり、M87光線を誇る勇者である。その実力はウルトラの父(ウルトラマンケン)に次ぐレベルとされるが、地球来訪時の戦績は芳しくない。バードンに火炙りにされた記録がある事から、あまり強い印象がないとも揶揄される事すらある。だが、実力者である通り、M87光線はウルトラ兄弟最強とされる。ゼットンが現れた場合の派遣要員の候補にされるだろう。ウルトラマン界隈では、ウルトラ兄弟は『精鋭』で名が通っているためだろう。

「ま、来てくれれば、心強い味方になってくれるだろう。ウルトラマン、いや、ウルトラ族も全てが善でもないし、平行世界の一つでは派閥抗争で二つに割れて抗争が行われたというし、ウルトラ族でさえも業からは逃れられんということだ」

ウルトラ族も全てが善ではない。中には悪に堕ちたウルトラマンもいる。ウルトラマンベリアル、ウルトラマントレギアが例に挙げられるだろう。いずれもウルトラの父、その子であるタロウの親友であった者が悪に堕ちているため、友達運に恵まれないと揶揄される。ただし、弟子には恵まれており、ウルトラマンメビウスはタロウの教え子であり、実子のタイガもタロウの教えを受けている。その点、タロウはセブンが教官を辞した後の穴を埋めて余りある功績を挙げたと言える。(そもそも、ウルトラセブンは観測員が本業であったが、地球防衛の功績でウルトラの父がスカウトし、宇宙警備隊に入隊。レオの育成がキングに評価された結果、教官を10年ほど務めたが、ヤプールとの死闘で地球に滞在せざるを得なくなったので、タロウが代わりに帰還し、教官の後任に着任。メビウスはその時の教え子である)

「もし、セブンが来たら、MACの事はあまり触れるなよ?シルバーブルーメはトラウマらしいから」

「引きずっているらしいですからねぇ。いつ、ゼロをワイフに仕込んだんだが」

「わからんが、レオが現役だった時代の後だろうな。アンヌ隊員の事が気になっていたようだが、ゼロを考えるとな」

ウルトラセブンは実子として、新世代ウルトラマンでは最強クラスとされるウルトラマンゼロがおり、彼の母親が誰か議論される事が多い。また、ゼロは鼻をこする癖を持つ事から、レオの時代にアンヌ隊員と思われる人物が連れていた宇宙人の子供『ウリンガ』がウルトラマンゼロの幼少期の姿では?と取り沙汰されてもいる。その説を取った場合、ウルトラマンゼロはアンヌ隊員の血を受け継ぐ者、『地球人の血を持つ』という仮説が生ずるが、あくまで推測である。それだけ、ウルトラマンゼロの母は謎のベールに包まれていると言えよう。

「21世紀には、タロウも子供持ってる事になったし、レッド族のウルトラマンの子供多いよなあ。混血進んでるのかねえ」

「多分な。時代が進んだせいだろう。それとウルトラ族そのものは古い種だ。元々、種としての限界が近づいていたからこそ、全国民をウルトラマンにしたんだろうな」

メロディの疑問ももっともで、ウルトラ族そのものは太陽が赤色巨星〜超新星爆発を起こすまで存続した種属であるため、種族本来の姿では限界を迎えつつあり、それを憂いた現在のウルトラマンキングを始めとする長老達が全国民をウルトラマン化させたというのが正解である。ウルトラマン化した後は種の延命に成功したため、ウルトラ族という言葉はそれ以降に生まれたとされる。光の国の超新星爆発は数十万年前と割に新しく、ウルトラマンというのは、ここ数十万年の歳月で生まれた『新しい種族』とも取れる。彼らの光線技の基本はスペシウム光線だが、エメリウム光線、メタリウム光線、ストリウム光線と様々なタイプがある。ストリウム光線がウルトラマン単体の光線としては最高レベルの威力であるが、スペシウム光線を必殺技に昇華した点では初代ウルトラマンは達人である。

「ウルトラ兄弟、動くかねえ」

「事態を把握すれば、ウルトラの父が誰かを寄越すはずだ。それで知られれば、歴代のウルトラマンも動くと思う」

「向こうも戦争中だったりしてな」

「あり得る。それもキングが出向くレベルの。エンペラ星人でも来たのかと思うくらい音沙汰無いしなぁ」

「彼らのことも気になるが、お前らもプリキュアとは言え、ティターンズは超人を多数抱えとる。現役時代の敵より強敵と思え」

「ウルトラマンもいるなら、アルター能力者が居ても驚かないですって。これじゃ。あたしたち、世紀末系の連中相手に危ない線を渡ってるんすよ」

「元斗皇拳や南斗鳳凰拳が出てきたら、初見は歯が立たんだろう。その時のためにカッコいい台詞回しを覚えとけ」

「あとのたわ言は地獄の鬼にしろ、てか?ラルさん、あたしたち、世紀末救世主じゃないんですよ?」

「お前らには『ザコ相手にイキる連中』という中傷が来ている。払拭するには南斗六聖拳級の連中をノックアウトするしかない」

「嘘だろ…ケンシロウと戦える超人相手に死闘をやれと?日本の連中はあたしらを殺す気か!」

「仕方あるまい。お前らは勝つのが使命だ。相手が元斗皇拳だろうが、南斗鳳凰拳だろうが、やるしかあるまい。死を乗り越えてしまった以上、危機意識が薄いという批判もある。お前たちは死線を越えるしかないのだ」

その通り、既にそれを実感しているドリーム、ピーチ、フェリーチェ、ルージュの四人は死闘を繰り広げ、最強形態で返り討ちにされた事も味わっている。気でプリキュアの必殺技をかき消せるような超人相手にはステゴロしか有効手段はない。そのため、フェリーチェも、みらいとリコが見たら卒倒間違い無しの血まみれの状態で帰投する事も珍しくない。コスチュームが南斗の手刀で切り裂かれた事すら日常茶飯事である。

「こちとら、コスチュームがボロボロになって、血まみれにされても戦ってんのに…!おまけに機械獣や円盤獣、百鬼メカ、はたまた学園都市の能力者とガチで殺し合ってるって言うのに、これ以上何をしろって!!」

「熱くなるな、ドリーム。連中は我々Gウィッチに血の献身を求めている。のび太氏にすがる臆病者、愛玩動物だのな。義理の父を侮辱されるお前には耐え難いだろうが、堪えろ」

「オレは躾けられた犬じゃねぇ!クソッタレが!!」

ドリームに錦としての粗野な言葉づかいが出るのは基本的に怒っている時らしい。義理の父になるのび太を侮辱された事も重なり、かなりの怒りが出ているようである。

「へっ、威勢のいいガキだ」

「モードレッド卿、おいでですか」

「母上が仕事に出たんでな」

モードレッドが現れた。自身はペリーヌの第二人格だが、目的によって三人が役目を果たすことで脳内会議がまとまったらしい。円卓の騎士である事から、卿と呼ばれる。

「連中は俺たちのことなんて気にしねぇよ。トワから聞いたが、お前の義理の親父殿を侮辱されて怒るのは無理ねぇが、いちいち気にしてたら時間の無駄だぜ。それとのび太にメールしたら、こう返事が来た。見ろ」

モードレッドはメールを、のび太のことで一人称まで荒くなり、カッカするドリームに見せる。内容は。

『バカにされたって気にする事無いさ。人をバカにしたって、自分が偉くなる訳じゃ無いし、他人を下に見ることでしか自分を肯定出来ない可哀想な奴らに何を言えっての?僕らの言うことなんて、てんでバカにして聞きやしないよ、ムダな時間を使うだけさ』

のび太のシニカルな回答であった。のび太はニムバス・シュターゼンのことを知っているらしきシニカルな回答である。

「のび太のやつ、ニムバス・シュターゼンのことでも知ってるのかね」

「ああ、一年戦争でジオンの騎士と嘯いてた男…」

ニムバス・シュターゼン。一年戦争で戦死したジオンのエースパイロットの中でも『狂気』が似合う男であった。その当事者のユウ・カジマ(現在、大佐)曰く、『他人を見下すことでしか自己肯定のできなかった男』とのこと。後世、あるいは他世界でのフィクションで狂気を強調される彼。モードレッドもそう評するあたり、一年戦争で実際に戦死した彼も同様の傾向にあり、やはり、ユウ・カジマに倒されたらしい。のび太はそれを知っているのだろう。

「俺たちは周りを見下しちゃいねぇだろ?それに親を見下した挙句に死んだ見本がココにいるぜ。槍で貫かれて、な」

モードレッドは死に様が相打ちであったため、過去の自分を振り返るように哀しげであった。モードレッドも親を見下し、たかをくくったが、最後は槍でとどめを刺された。自嘲するように言うのは、自らが青二才だったことを認めているようである。

「卿、自嘲してますな」

「おりゃ、1000年以上も裏切り者、親殺しって謗られてきたんだ。それを考えりゃ、お前らへの誹りなんぞはガキの嫉妬程度の戯言だよ」

「卿はお仕事ですか」

「ペリーヌに頼まれて、これからガリア議会の説得だ。あいつも向かってる。トワに肉体を渡して帰ってくるよ」

モードレッドは『あの胸にもういちど』の主演女優であった、往年の人気女優『マリア○ヌ・フェイスフル』を彷彿とさせる姿だった。バイクでガリアまで行くつもりらしい。

「峰不二子みたいですね」

「若い連中にゃ、それがわかりやすいだろうが、オレは『マリア○ヌ・フェイスフル』目指したんだけど」

「それ、通じるのどれくらいいますかね」

「さーな。マニアックなカルトチックな映画だし、60年代の映画だから、一般には峰不二子って答えとくよ」

モードレッドはそう微笑い、去っていく。妙にマニアックな映画を知っているのもモードレッドらしかった。このやりとりでドリームの怒りはどこへやらになり、霧散してしまった。モードレッドはこうした空気を変える役もこなし始め、ペリーヌとトワの間を取り持つ人格としての居場所を得たおかげか、以前より温厚さも見せていた。



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