外伝その400『図上演習と戦闘12』
――地球連邦。21世紀の人間からすれば『理想』だが、それが実現した後の時代のスペースノイドの一部からは『圧制者』と蔑みを受ける存在である。連邦の権威が回復傾向になったのは、異星人との戦争が起こる時代に入り、移民星が連邦の影響下から脱する事が危険と見なされるようになったからという皮肉な状況が22世紀終わりから継続していた。これを危ぶんだのが、ジオン残党の一派である。皮肉なことに、スペースノイド、アースノイドの区別なく共通の敵が現れる事が地球連邦政府の権威を回復させたのだ。それと、ドラえもん達が「地球連邦政府は理想の実現のはずなのに、なぜそれから離れたがるのか」とメカトピア戦直後のインタビューでぶちまけた事がジオンの権威を落ち込ませた。のび太達は21世紀の初期に子供であった人間であるので、地球連邦政府の存在に喜んだのだが、ジオンがそこから独立するのを理由に、数十億を殺戮した事は『身勝手なエゴだ』と断じている。地球連邦政府はのび太たちの擁護、異星人との戦争で急速に権威を回復していったのである。――
――黒江が一対一で図上演習を行い始め、その順番待ちの一同は――
「アンタ。なんで、大尉なんて、たいそれた位を希望したの?」
「同化した錦ちゃんの持ってたものを受け継いだからだよ、りんちゃん。先輩は新規に軍籍を用意してもいいって言うけど、今のわたしはどっちでもあるから、軍籍を受け継いだんだ。技能もそっくりそのまま継いじゃったしね。それに、大尉は下級将校だから、そんなに偉くないよ?」
順番待ちのドリーム。順番待ちの間、ルージュと話す機会があった。生前と違い、錦の姉御肌なところを受け継いだため、能天気さが売りであった現役時代と違い、思慮深い面が出来たのである。
「会社で言えば、現場監督の係長級に相当するんだよね。大尉は。それに、錦ちゃんはこの世界の日本の名門の出(中島家はウィッチの名家である)だしね。国内で馬鹿やると、姉貴や妹にあれこれ調べられるから、戦地でないと、昔の姿は取れないよ」
ドリームは中島錦としての帰省やプロパガンダはしなければならぬ立場にある。夢原のぞみとしての姿は戦地で取るが、扶桑本土ではあまり取れないだろうとする。
「わたしも姉貴や妹とは揉めたくないし、家の立場を考えないといけない立場なんだ。先輩にあれこれのガードは固めてもらうさ。そうでないと、小鷹姉貴が機密書類を見かねないし」
「錦の姉さんは偉いのね?」
「うん。実戦に出てないけど、そこそこ軍で名は知られてる。軍の部署に顔が効くから、書類を見られて、わたしの主人格が夢原のぞみで固定された事を知られたら、色々と不味い事になりかねない。だから、政治的に色々と姉貴がやりそうな事を封じ込める権限がある先輩たちに動いてもらうんだよ。バレたとしても、力づくで認めさせないといけないけどね」
「この間の新技はそのための?」
「アニメで技がモロバレしてるなら、新しい何かは必要だよ。それに成長はするもんだよ、りんちゃん。わたしだって教師になれたようにね。先輩達も転生の繰り返しで今の強さを得たけど、わたしだって、伊達になぎささんと咲さんの下で長く戦ってたわけじゃない。現役時代より強くなってる自覚はあるよ。何十人も後輩がいる以上、なぎささんと咲さんのようになれなくても、誰かが引っ張っていかなきゃならないからね」
のぞみは現役時代はチームリーダーを置くことを自分の信条もあって、しなかった。だが、今は軍という組織に身を置く以上、形式的にも指揮権序列は決めないとならないし、誰かが先頭に立つ必要はある。その役目は席次的意味で第三位である自分と、その次の席次であるラブが担うしかない事は強く意識していた。のぞみより上位の立場にある先輩のなぎさと咲の不在は強いプレッシャーをかけているのである。
「だけど、仮面ライダーV3さんみたいに、口で引っ張るのはガラじゃないんだよね」
「昔からそうだったものね、アンタ」
「昔は漠然としか考えてなかったけどさ、子供を産んで、社会で揉まれると、否応なしに意識させられるんだよね、序列って奴をね。私は三番目だから、特にね」
「軍隊にいるって状況、かれんさんが聞いたら腰抜かすわよ?」
「この世界は軍隊に入ると、もれなく箔がつく世界だからね。それに、日本軍だから、アメリカみたいなローテーションは組めないから、戦いが終わんないと長期休暇は取れないよ」
「マジ?」
「時代的にも、前線勤務が花形だしね。それにさ、日本側が前線に後方でテスパイしてた人材も根こそぎ動員したんだ。だから、前線で戦果挙げないと、扶桑の国民が許してくれないんだよ」
「なにそれ。武士の時代じゃあるまいし」
「サッカーやフットサルでもあるじゃん?ストライカーが仕事しないで負けたら、すごく叩かれるっての。軍隊はサッカーやフットサルより、ずっと風当たり強いから、手柄立てないと復員した後に故郷で爪弾きに遭うんだよね」
「なんかアホらしいわね」
「逆に言えば、従軍経験がその後の人生にプラスになる社会なんだよ。アメリカみたいにね。手柄がある士官なら特に。日本はそれを無理に捻じ曲げようとしたから、反発食らってるんだよ」
ドリームの言う通り、日本はドイツ領邦連邦の混乱を他山の石とし、扶桑の内政に手出しするのを控えるようになり、代わりに扶桑の皇族を養子にもらうなどの施策の実現を懇願するに至る。これは扶桑も皇族のこれ以上の肥大化は避けたい思惑があったという利害の一致もあり、公式に交流の一環という形で実現に至る。皮肉にも、学園都市の暴走によるロシアへの戦争が日本に自らの無自覚な扶桑への悪意を自覚させることとなり、保守政権が懸命に軌道修正を図っているところである。扶桑としては、軍事を軽視するわけにもいかなかった。だが、日本の手でウィッチの供給体制を変更され、前線への人材供給が細められた結果、前線は人手不足が顕著に表れている。日本防衛省はウィッチ兵科を解消させ、軍から10代の兵士や将校を段階的に減少させたい意向を示していたが、ウィッチ兵科の宿命的に、それは不可能である。
「自分たちのほうに扶桑の制度を合わせたかったの?」
「そういう事。科学力で50年分以上は上だから見下してたし、のび太くんの世界の日本は科学力でオカルトを解明しようとしてたからね」
「でも、先に接触してきたのは23世紀のほうなんでしょ?」
「まぁね。でも、それは一部にしか知らされてないよ。文明レベルが違いすぎるもん」
「宇宙移民が当たり前に行われて、宇宙移民がオーストラリアの一部をぶっ飛ばす戦争をやった後に、地球滅亡寸前の宇宙戦争をやるなんて、あたし達の時代じゃ夢物語だものね」
「落とし物とか、友好的な宇宙人から提供された技術で、一気に恒星間国家になったしなぁ。ドラえもん君の時代から戦争で衰退したと思ったら、今度は恒星間国家に飛躍した。だけど、内輪揉めは続けてるからねぇ」
「でも、地球だって、持ってる資源とか限られてるはずよ?」
「宇宙で資源を賄ってるんだよ。石油がエネルギー源の時代は終わったし、波動エネルギー文明になったから、地球上で造れる普通の金属じゃ耐えられないからね、波動エネルギーに」
地球連邦は金属資源やエネルギー資源の多くを宇宙からの供給で賄うようになった。地球上の金属資源を温存するため、統合戦争で生じた星の数ほどのスクラップの再利用も積極的に行われ、波動エネルギーの実用化でエネルギー問題に一定の解決を見ると、金属資源の主な供給源を宇宙に求め、23世紀頃には地球上の資源を温存しつつ、宇宙からの資源供給で経済活動を行う事が当たり前となった。この関係で、光子力の源であるジャパニウムの新エネルギー源としての民生研究は下火となり、ゲッター線もその危険性がクローズアップされた結果、新エネルギーとしての研究は縮小されつつある。タキオン粒子由来の波動エネルギーは光子力以上のエネルギー出力を誇りつつ、一旦起動すれば、無限動力となる事から、富士山の掘削工事を必要とする光子力は急速に求心力を失った。光子力の最悪の可能性と言える、マジンガーZEROの登場も光子力の未来を閉ざす一因となったのは言うまでもない。
「わたしたちがまた戦う事になった原因を作ったマジンガーZEROも元々はどこかの世界での兜十蔵博士が愛する孫を守るために生み出そうとした『真・マジンガー』のなり損ないだし、あいつも元は善意で生まれた。それが次元世界をいくつも滅ぼした悪魔になったのは皮肉でしかないね」
「それを倒すために試行錯誤してるのが23世紀の?」
「うん。同じマジンガーじゃ不利だから、完全にはマジンガーじゃないマシンでしか戦えない。ZEROは光子力が動力のマジンガーには勝てるけど、それ以外の動力のマジンガーはマジンガーと認識出来ないって話」
「イタチごっこみたいな話」
「逆に言えば、あいつはマジンガーZが現役時代に共闘したロボしか認識出来ないから、攻略法自体は単純明快だよ。問題はそれができるだけの性能がグレートマジンガーやゲッタードラゴンよりはるかに上の次元ってことだよ」
ZERO自体の強さがマジンカイザーや真ゲッターロボと同等以上になっているため、それよりも高次元の性能が必要であること。当時のスーパーロボット軍団でも、これはほぼ無理難題に近い。
「ゲッタードラゴンとグレートマジンガーがカス扱いって…」
「最低でも、ゲッターロボアークやガイキング・ザ・グレート級の力はいるってことだよ。文字通りに大地を揺るがせるほどのね」
「スーパーロボットでも、そんなすごいパワー持ちはそういないっしょ?」
「ゲッターロボは真ゲッタードラゴンがいる。マジンガーはゴッドとエンペラーがいるよ」
「いるんかーい!?」
「真ゲッタードラゴンはまだ繭だよ。ゲッタードラゴンのオリジナルが羽化したのが真ドラゴンだからね」
「昆虫じゃないんだから…」
「ゲッターは自己進化の時に繭を作るから、危険性がクローズアップされちゃったんだよ」
「当たり前よ…。でも、みらいたちを倒したっていうバケモノなら、地球を焼くなんて容易いでしょうね。それを倒すための力ってどんなものなの?」
「先輩たちは神を超え、悪魔を倒す力って言ってる。それがわたしたちのたどり着くべき場所だって」
「神を超え、悪魔を倒す、か…」
「うん。わたしたちはそのために冥府から甦えさせられたと思うんだ。みらいちゃんとリコちゃんの借りを野郎に返すためにも。これははーちゃんの願いでもあるんだよ、りんちゃん。」
「でも、なんで、出身世界がバラバラなのよ」
「それは世界線の混線を防ぐためだろうぜ。あたしとエレンも出身世界はバラバラだしな」
「響、あんた。昔と違ってガサツね」
「お前が先輩でなきゃ、あたしゃ一発ぶん殴ってるよ、りん」
「奏が聞いたら怒るわよ」
「あいつも昔のままじゃいられないだろうし、あたしだって、直近の前世は黒の騎士団のエースだ。転生や憑依もののテンプレ通りって言われてるけど、そうなっちまったのは現実なんだ。それをのび太が戦わないのに絡めて批判するのはお門違いってもんだ」
「Z神に聞いたよ。頻繁に行き来出来る次元世界同士なら簡単にバランスが取れるけど、次元航行距離の長い所から転移させるには大量のリソースが食われるし、存在力のバランスが大きく崩れる可能性が有るから、わざとバラけさせているそうだよ」
「やっぱそうか。のび太、お前が記憶を引き継いでるのはなんでだよ」
「僕とドラえもんはそういう役目が世界に求められてるんだよ、シャーリーさん」
青年のび太は少年期の純真さと打って変わって、年相応のシニカルさを感じさせる。父親と違い、タバコは吸わない、酒は付き合い以外では飲まない大人になったが、麻雀は付き合いで嗜む程度、野球は下手の横好きと、スポーツはあまり子供時代と変わらない。
「大人になって自覚した事さ。子供時代に色々と世界を救った事が評価されたらしい。昔ははーちゃんに冒険のことをタイムテレビで見せてあげたもんさ」
「みらいちゃんがパニクったようだけどさ、のび太くん、はーちゃんをいつに送ったの?」
「2000年代の初め頃さ。最初は変身解除出来なかったから、風呂とかで困ってたんだ。半年くらいした後に養子縁組の話が出て、正式に親父とお袋が手続きをしたのは、中3の頃くらいだよ」
「流石に小学校には行かせなかったんだね」
「外見がミドルティーンくらいだから、小学校には行かせられないよ。しばらくは図書館に行かせて、そこで勉強させたよ」
ことはは中学から学業をやり直し、東京都内の大学で史学を専攻したのだが、みらいにとっては『見たくても見れなかった』光景であるため、パニクるのも当然であった。のび太曰く、『僕も二人に刺激されて、カミさんのいる大学行きたくて、猛勉強したからね。その時だよ。カミさんとの本格的な馴れ初め』との事。
「それじゃ、あの雪山のロマンスは…」
「うん。僕自身は風邪で寝込んでたんだけど、昔の僕が代わりに奮闘してさ。昔の僕には悪いことしたよ」
「すごいタイムパラドックス…」
大笑する青年のび太。ルージュものび太の事は知らないわけではないので、のび太がタイムパラドックスをも許容しているところに関心する。
「当時、子供の頃に助けたの忘れてて一月くらいして思い出した時は冷や汗が出たよ。それに、どこかで釣り合いを取るってやつさ。僕自身、ガキの頃の怠惰のツケは中2からの四年の勉強漬けで払らわされたからね。だから、スプラッシュスターは見てないのよね。初代は辛うじて見れたけど」
「なんだか不思議…」
「だから、君たちは否応なしに注目されるわけよ。戦闘行為を合法とするために、現れてる全員に軍籍を与えた事は批判が大きいから。最も、身辺警護の意味合いも大きいから、だんだんと止んできてるけどね。最も、軍隊は史実の問題を批判されて困惑してるけど」
「どういうこと?」
「史実の太平洋戦争のあれさ。食料供給も民間のほうが優先されるようになったし、軍隊には白米だけ食わせておけばいいって批判も出てる。その流れで士官食堂が扶桑空軍で作られてないのは、日本で批判があるからさ。ぶっちゃけ、予算のためだね」
――扶桑軍は陸海空軍で食事面での待遇が兵と士官で統一されたため、士官が作戦を食堂で話しあう事ができなくなった。空軍では講堂を事実上の士官食堂としても使うことにしてどうにかしたが、政治的理由でワードルームが置かれていないため、儀礼的には問題が残った。海軍では司令長官クラスの食事中に軍楽隊が演奏する事が無くなった(実戦部隊の艦に乗艦する事も無くなった)ため、技能維持の懸念が生じるなど、シッチャカメッチャカである。連合軍は日本連邦の施策に巻き込まれる形になったため、空軍では講堂で士官級が食事をしながら、今後の作戦を話し合う光景が定着していく。(ただし、一週間にいっぺんは大食堂での食事を義務付けられているが)自衛隊や地球連邦軍から食料品の提供がなされるため、批判とは裏腹に、食事の内容そのものは充実している。空軍は海軍ほどには政治の介入がされなかったので、雰囲気も和気あいあいであった――
「予算ねぇ」
「財務に財布の紐を握られている以上、軍隊は大人しく従うしかないのさ。日本が軍隊の運用を思いっきり厳しくしたから、この部隊みたいな有事即応部隊が必要にされたんだ。事実上、この部隊しか、日本連邦の前線で戦う航空部隊もいないし。軍楽隊の事は防衛省が文句言って、どうにかするだろう」
日本の誤算は軍隊の運用を厳格にしたら、前線の需要に見合うだけの数の部隊を派遣できなくなったことである。緊急で空軍への編入を待っていた陸軍飛行戦隊と海軍基地航空隊を全て64Fに編入し、64Fの規模を航空軍規模に拡大することで日本国内の反戦世論との折り合いをつけざるを得なかった。新選組はその中でも中核と見做された都合上、激戦地に置かれている。
「普通ならあり得ない規模だもんね、うち。控えの維新隊でも独立飛行隊が涙目になる規模だし」
「ここには、自衛隊のGフォースも駐留してるからね。某怪獣王がいるわけじゃないけど、自衛隊は政治的に大規模派遣は未だに反対のほうが強い。だから、陸海空の自衛隊の部隊を一つにまとめて、『一部隊』の名目で使ってるんだよ」
「政治ねぇ…」
「戦後の日本は軍隊を力で押さえつける事をシビリアン・コントロールって解釈してるから、他国への面子立てが困難なんだ。だから、精鋭部隊を送ってるって名目が必要だったんだ。その条件を、この部隊はちょうど備えてたし」
ミーナはこの騒動に巻き込まれた格好になり、大尉へ降格する羽目になったが、結果を見るなら、ドイツにとっては大成功であった。501の幹部のカールスラントによる寡占状態が薄れ、むしろ扶桑皇国軍出身の幹部が他国軍出身の部下を指揮するという構図に変わったからだ。日本連邦に管理責任を押し付けたいドイツの思惑通りになったわけだ。日本連邦はそれを逆手に取り、各国のエースパイロットを軍中央の駆け引き無しに前線で使い倒せる大義名分にし、64に部隊ごと取り込んで最前線で使い倒しているというわけだ。
「それに、日本は前線勤務こそが正義と思ってるからね。昔ほどじゃないけど、一般人の支持を得る手っ取り早い方法が前線勤務なんだ。士官だろうが前線指揮が尊ばれる。軍事的理由より、精神的な満足感を満たすのが優先されるのも、日本人の特徴さ」
「他の国は数ヶ月もすれば長期休暇なのに、うちはエースはとにかく、最前線だもんねー」
「控えを手配していたのが、防衛省の一部の暴走と政治の介入で潰されたからね。ボクと東郷がフルで働いているけど、進軍を鈍らせている程度。綾香さん達が無双できるったって一応の限界はある。だから、連合軍が立ち直ってくれないと、根本的に状況は好転しないって事さ」
「戦争ってのは、そういうもんなのよね」
「連合軍が開戦時みたいな大兵力を持ってれば良かったんだけど、リベリオンが敵になった上に、同位国からの軍縮の圧力ときてる。カールスラントは使い物にできないくらいに弱り始めたし、ブリタニアは自分達の出兵を渋ってる。だから、僕や東郷が君たちをサポートしないと、一日で戦線は崩壊するよ」
「それもエゴみたいなものよね。この世界の文明が自由主義の皮を被った統制政治の手に落ちるか否かだってのに、同位国の殆どは冷たいし」
「同位国の大衆は自分たちに直接の関係が無きゃ、自分達の血を流すのを嫌がるのさ。下手すれば、自分の先祖の同位体が死ぬってのにね。何かのSFで、主義主張なんてのは、その日を生きるための道具でしかないってのがあったけど、まさにその通りなんだよねぇ。困ったもんだ」
「対岸の火事を見てみぬふりか…」
「君たちの現役時代とは違った意味で、色々と考えさせる戦になるよ、今回は。ドラえもんも言ってたけど、戦争はどっちも正しいって考えてやり始めるもんだし、近代戦争は破壊の嵐だからね。君たちは平和な21世紀に生きているから実感がないだろうけど、僕は子供の頃にクーデターのレジスタンス、西部開拓さながらの悪徳業者との戦いだとかを経験してるからね。それと西遊記も。その分、修羅場は潜り抜けてきてる自負はある。知らないならそれまでだし、知ってても、自分にはどうにも出来ない時の大衆ってのは勝手なもんさ。コーヤコーヤを去る前、コーヤコーヤの友達の妹から聞いたんだけど、危機になっても、僕たちが来ないことに文句しか言わない連中が多かったそうだよ。僕たちも自分の都合があるってのに。大人になってから振り返ると、ガキの頃と違う見方ができるようになるから、後になって考えてみれば、けっこう危ない橋を渡ってた事は多いよ」
「確かに、子供の頃のアニメだとマイルドになってたけど、実際はすごい冒険だったんだよね?」
「ギラーミンは僕が決闘で倒した。本当はね。ウエスタンのブロン○ンみたいな気分だったね、あの時は。ま、コーヤコーヤの人たちは最後にはわかってくれたさ。天上人やアニマル惑星の本来の主星の『地獄星』のコックローチ団は自分達のエゴで相手を滅ぼそうとしたけどね」
その内の天上人の移民の受け皿になった植物星だが、その後の地球連邦の調査では、『ガトランティスによって植民地化された後、銀河大戦の時期までにガルマン・ガミラスの支配領域に組み入れられ、元・天上人の子孫らは地球にルーツを持つという事で、振る舞いを地球寄りに転じたデスラー総統に厚遇され、政府や軍部の要職についている事が確認されたという。天上人らの子孫はガトランティスに代わる、新たな支配者であるガルマン・ガミラスに厚遇されることでルーツに誇りを持つようになっていく。彼らの元々の盟主と言える植物人達はその頃には、ガトランティスとの戦争と虐殺で大きく数を減らしていたが、天上人達の末裔らはその虐殺を多くが生き延び、結果的に天上人達が星の多数派住民の座を取って代わった。23世紀の元・天上人達にかつての故郷の地球人への憎悪は無く、その代わりにガトランティスを倒した事への尊敬の念を持つようになった。かつて、地球人(地上人)をノア計画で滅ぼそうとした天上人の末裔が地球人を尊敬の念で見、自分のルーツを誇りにするという一つの出来事はノア計画を決める議会の当事者であったのび太達にとっては皮肉な出来事であり、キー坊の仲介が時を経て実を結び、天上人と地上人の間のわだかまりを氷解させた事の証明でもあった。のび太の地球は結局、のび太たちの思いと裏腹に、コスモリバースシステムを用いなければならぬほど傷ついた。だが、タキオン粒子を主なエネルギー源とする『タキオン粒子文明』へと飛躍しつつある。コスモリバースシステムで自然も回復したばかりだが…。
「天上人も予測不可能だと思うよ。ガミラスとゼントラーディの攻撃から地球が生き延びて、ガトランティスの侵略にも勝ったなんて。でも、せっかく回復した自然を破壊しようとしてるのがネオ・ジオンの強硬派。旧ジオンのザビ派に属する連中さ。ティターンズ残党を裏で操っているけど、自分らも政治的にはスペースノイドからも『落ち武者』、『過激派』のレッテルが貼られ始めてるし、連邦とジオンの両方を倒そうとする、23世紀には化石扱いなアナーキストの連中も蠢いてる。だから、ネオ・ジオンとティターンズの動きはこの世界にどういう影響を与えるかは未知数だ。ネオ・ジオンの多数派の意向として、第二次大戦級の戦を望んでいるから、ティターンズもその通りに動くだろうさ。連邦の影響力を削ぐことに、この世界の動乱を利用する。下衆そのものさ、やってることは」
「だから、あたしらは今の作戦と、次の太平洋戦線で連中に目に物見せてやらないとならないんだ。のぞみ、りん。たとえ、なんて言われようが、あたしらは敵と戦うしかないんだ。この世界の明日のために、みんなの笑顔を下衆共に壊させないために」
キュアメロディはそう締めくくり、のび太も頷く。キュアドリームとキュアルージュはのび太とメロディに突きつけられた事実と向き合い、戦い抜くことを決意する。かつて、プリキュアであった者として。また、転生者として、生前と違う形で戦う宿命に立たされた事を自覚するのだった。
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