ダールトン将軍が俺たちの指導教官に就任し、訓練がスタートしてから2週間、朝から訓練のために準備をしていると、学校から支給されている端末にダールトン将軍から連絡が入る。

「本日の訓練は中止する。訓練ばかりではお前たちも息が詰まるだろう、今日は気分をリフレッシュして身体を休めるがいい」

それだけ伝えると、ダールトン将軍は通信を終了した。

突然のことだが今日1日休みをもらえる事になった、しかし急に休みを与えられても何をすればいいかわからない。

突然もらった休みに何をしようか考えていると、ジノが3人で遊びにいこうと誘ってきた。

「レイ、せっかくだからアーニャも誘って、街にでも行って思い切り遊ぼうぜ」

ジノはすでに遊びに行くつもりなのだろう、訓練用の服を脱ぎ散らかして、外出用の服を選んでいる。

「遊びに行くのはいいけど何しにいくんだ?」

遊びに行くのは構わないが、何をしたいのだろうか。

「俺はほとんど屋敷の中から出してもらえなかったから、庶民がどんな生活をして、どんな風に遊ぶのかしらないんだ。だから色んな物を見てまわりたいな!」

そうだった、ジノとアーニャの2人両方ともが貴族の家の出身だ。

俺は平民だから貴族の生活がどんなものかわからないから、それを知りたいというのと同じ事なのだろう。

「じゃあアーニャにも連絡して、今から30分後に正門前に集合でいいだろ」

アーニャに遊びに行こうと言うメールを送ると、2分と経たぬうちに了承のメールが返信されてきた。

これでアーニャの了解も取れたので、俺も出かけるための準備を始める。

「なあレイ、庶民って普段何して遊ぶんだい?」

すでにほとんど準備を終わらせていたジノが横から話しかけてくる。

「遊ぶにも色々あるが、まあ一般的にはゲームセンターに行ったり、カラオケやボーリングに行ったり、ファーストフード店でご飯食べながら、お喋りするぐらいかな」

それ以外にもスポーツをして遊ぶと言う選択肢もあるだろうが、3人では数が少なすぎて出来ない。

少なくとも今の人数の倍は集めないとダメだろう。

「へぇ〜、さっきも言ったけど俺ほとんど屋敷の中で生活してたんだ。家庭教師がいたから学校にも行ってなかったし、少しでも外の世界が見たかったから、親の反対を押し切って士官学校に入ったんだ。でもなんかまわりと話が合わなくて少し浮いていた俺に今回の選抜の話がきて、ここに来てレイと会えることができたから、本当によかったんだ」

ジノの話を黙って聞いていると、貴族の子どもも庶民とは違った悩みがあるんだなと思う。

「ジノ、俺はお前とアーニャと知り合えてよかったと思ってるし、俺はお前とアーニャとずっと友達だし、仲間だし、最高のライバルでいるつもりだよ」

「当たり前だろ、俺もそのつもりだぜ!」

ジノは俺の言葉を聞くと、そう言って俺の肩に手を伸ばして肩を組んでくる。

そんな話をしながら準備を整え、予定より少し早く正門前に向かうと、アーニャはすでに到着していて、携帯をいじりながら、俺たちを待っていた。

「ごめん、アーニャ遅くなった」

「大丈夫、私も今来たところ」

俺が謝罪をすると、アーニャはそう返事をしてくれた。まるで付き合っているカップルのようなやり取りだなと思って少し笑みがこぼれる。

アーニャは何で俺が笑ったのかがわからず、その事を尋ねてきたので、今思った事を説明すると少し照れたようで、アーニャの顔が少し赤くなる。

このままここにいても仕方ないので俺たちは街に向かう事にした。

「ジノとはさっき話したんだけど、アーニャはどこか行きたいところある?」

俺の問いかけに、アーニャは首を振って答える。

「特にない、レイに任せる」

任せると言われたが、どこに連れて行こうか?

カラオケでもいいが、最近ナイトメアの訓練やダールトン将軍の戦略学の講義ばかりで、体全体を思い切り動かしてないな、それならボーリングで運動しながらストレスを発散しよう。

「よし、じゃあボーリングに行こうか?」

ボーリングに向かうと言う俺の提案に、二人はそれで構わないという。

なので俺たちは近場のボーリング場に向かう事にした。

ボーリング場に到着した俺たちは周りをきょろきょろと見渡すジノを強引に引っ張り、俺が代表して受付をすませる。

俺達にあてがわれたレーンに移動すると、ふと疑問に思った事を聞いてみる事にする。

「ところで2人はボーリングってどんなものか知ってる?」

「「知らない」」

やはりこの2人はボーリングの事を知らなかったようだ。

そのため、ゲームを開始する前に二人に投げ方や基本的なルールなど簡単な説明を行う。

それを伝えると、二人もとりあえず1回やってみようという事になり、まず俺がお手本として投げる事になる。

「あんまり上手くないから期待するなよ!」

俺もボーリングは久しぶりなので、とりあえずハードルを下げておくために釘を刺しておく。

「レイがそう言う時は大抵俺たちの期待を裏切らないから大丈夫だぜ、なぁアーニャ?」

「そう、レイなら大丈夫」

二人にそう言われ、下げようとしたハードルはむしろ跳ね上がったと行っても良い。

どれだけ俺に期待しているんだ、と考えながら、ボールをピンに向かって投げると、ボールは想像通りの軌道を描き、見事全てのピンを倒してストライクとなった。

それには思わず二人の方に振り返り、ガッツポーズを見せる。

「ほら、やっぱりレイは上手いじゃないか!」

「ほんとう、上手」

2人がそう褒めてくれるので、素直に「ありがとう」と返答しておいた。

俺に次に投げるのはジノ、ジノは俺の教えた通りのフォームで投球する・・・が、無駄なところに力を入れすぎているのか、ボールはレーンの半分辺りでガターゾーンに落ちてしまった。

ボールの行方を見ながら、悔しそうに自分の膝を叩くジノ。

「力みすぎ、もう少しコントロールして投げるといいよ」

俺がジノにそうアドバイスを送ると、ジノも素直に頷いて、二球目を投じる。

先ほどよりコントロールされて投げられたボールは、今度は最後までレーンの上を走り続け、5本のピンを倒していった。

たった5本だが、ピンをはじめて倒したジノは大はしゃぎで喜ぶ。

その光景は周りの注目を集め、ジノは少しの恥ずかしさも見せずにこっちに戻ってくる。

自分が注目されることに慣れているのか、無頓着なのか、それは解らないが一緒にいるこちらが恥ずかしくなる。

次に投げるのはアーニャ、彼女は普通の女の子では持つのも苦労するであろう重さのボールを抱えて、投球体勢に入る。

身体を鍛えている彼女だからだろう、彼女はそのボールを辛そうな表情一つ見せずに投げた。

レーン上を転がるボールのスピードはゆったりと、だがその機動はまっすぐと一番ピンを目指して転がって行く。

そしてそのままボールは全てのピンを倒していく。

アーニャの結果はストライク、いきなりの投球でその結果は俺とジノを驚かす。

アーニャは特に表情を変えずに戻ってきたので、俺はナイス投球とだけ伝える。

これだけならビギナーズラックとも言えるが、その後もストライクやスペアを連発していたので、アーニャはボーリングが上手い事が判明した。

1ゲーム終わって俺たちのスコアは、俺173、ジノ107、アーニャ205となり、ジノは1人だけ大差をつけられたのが悔しいのか、「もう1回勝負しよう!」と挑戦してくる。

もう1ゲーム付き合ったがあまり差は埋まらず、ジノは特訓するとの事なので俺とアーニャはひとまず休憩する事になり、俺は飲み物を買いに、アーニャはトイレに行くと言ってひとまず別れた。

2人の分の飲み物も買って、ジノたちの元へ帰ろうとしていると、ガラの悪い男が3人、女の子に絡んでいる。

よく見るとその女の子はアーニャのようだ。

「アーニャ、この人たちと何かあったのか?」

俺が近づくと、アーニャはうんざりそうな顔からなんだかほっとしたような表情となり、こちらに近寄ってくる。

「オウ、兄ちゃんその嬢ちゃんの知り合いか?そいつ人にぶつかっておいて謝罪もないんだぞ。こいつその時転んで怪我しちまったじゃねえか、治療費払ってもらうぜ」

今どきこんなことを言ってくる不良がまだ存在しているのか。

「ぶつかった事はすいませんでした、この子は人と話すのが苦手で仕方ないんです。でもアーニャにぶつかったぐらいで怪我するとも思えないんですか。少し見せてもらえませんか?」

俺がそう聞くと、男たちは言葉につまった後、「黙って金払えや!」と言って殴りかかってきた。

普通の人なら3対1など経験した事もないのでやられてしまうだろう。

しかし僕は士官学校に通う軍人候補生だ、白兵戦の訓練もうけているので、向かってくる3人の男達を返り討ちにして、警察に通報し彼らを引き渡した。

軽い事情聴取を受けた後、解放された俺とアーニャはジノに連絡をして、待ち合わせる事にした。

「レイ、ありがとう。でもなんで助けてくれたの?」

アーニャは表情を変えずに、そう尋ねてくる。

「アーニャは大事な仲間だからに決まっているじゃないか。アーニャが困っているなら俺もジノも絶対にアーニャの事を助けるよ。それにアーニャは女の子だから守ってあげないとね」

笑いながらアーニャにそう告げると、アーニャは顔を真っ赤にして「ありがとう」とつぶやいて、下をむいてしまった。

さすがに臭いセリフだなと思いながら再びアーニャの方をむくと、「一緒に写真を撮ろう」と言ってきたので、写真を撮る事にした。

「ジノが来てからでもいいんじゃないか?」

「いい、二人だけで撮る」

そう言われては仕方がないので、二人で撮る事にした。

アーニャの肩に手を置いて写真を撮ると、アーニャは恥ずかしそうに顔を赤くしてたけど、少しだけ笑顔になってくれた。

そして写真を撮り終わるとちょうどジノがやってきて、俺たちは昼食を食べにいく事にした。








私は自分がよくわからない、携帯の中に記録してある事が全く記憶にない事がしばしばある。

そのせいで人と話すのが少し恐くなり、家族以外の知り合いがほとんどいない。

最近はそんな事はめったに起こらなくなったが、またいつ起こるかわからない。

それが恐くて今でも人と上手く接する事ができない。

それでも、レイは私の事を仲間だと言ってくれた。

そして私の事を守ってくれると言ってくれた。

こんな事を言ってくれた人は初めてだ。

レイの事を考えると頭がいっぱいになる、これが恋と言うものなのか?

レイに2人で写真を撮ろうというと、肩に手を置かれてすごく恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しかった。

その写真は私の携帯の待ち受け画面に設定しておいた。

ジノが戻ってきて私の方に近づいてきた。

「アーニャ、写真撮ってる時のお前すごくかわいかったな、レイにほれたか?」

「なっ!」

「俺はお前の事応援するぜ、だって大事な仲間だからな!」

ジノも私の事を仲間だと言ってくれている。

いつかこの2人には記憶の事を話しそうと思う。

ただなぜか応援すると行った後のジノの笑い声にむかついて、ジノのすねを一発蹴り飛ばしておこう。









俺たち3人は昼食を食べ終わった後、適当に街をぶらぶらしながら次に何をするかを決める事にし、店を出る。

そして店を出て10分、俺が迷子になったのか、あの2人が迷子なのかはわからないが、とりあえず2人とはぐれてしまった。

きっと周りの珍しい物を見ていたら、それに気を取られてふらふらと行ってしまったに違いない。困ったもんだ。

携帯で連絡を取ろうと思ったが、運悪く先ほど電池切れが確認されている。

2人を探す手段が探し回る以外ないので、とりあえず歩き始める事にしよう。

二人を探しはじめてからはや30分、あちこち探し回っているのだがジノとアーニャが一向に見つからない。

歩きまわって俺も疲れた、ここらで少し休憩することにしよう。

自販機で冷たいお茶を買おうと思い、お金をいれてボタンを押した。

出てきたお茶を取り出すとなぜか熱く、冷たくない。

なんだ今日は、ジノとアーニャとははぐれて、その2人を探してたら、不審な行動と勘違いされて警察に引き止められ、冷たいお茶を飲もうとしたら熱いお茶が出てきただと、やる気がなくなりそうだ。

「やってられるか〜!」と思い切り叫びながら、中身が入ったままの缶をゴミ箱のあるほうに放り投げたる。

そこから「ゴンッ」と音がして、そちらを見るとピンクの髪の女の子が1人と缶が当たったであろう男が1人。

まずい、デート中のカップルに怪我させてしまったか?

など考えていると、女の子と目があいこちらに近づいてくる。

怒られる前に謝ってしまおう。キチンと謝れば話は通じるはずと考え、謝る事にした。

「デートの邪魔してごめんなさい!」
「助けてくれてありがとうございます!」

・・・・・・あれ?







学園が終わっていつもどおり護衛と迎えの者が来て、宮に帰らなければならなかったけど、たまには私だって遊びに行きたい。

護衛の者を撒いて街に遊びに来て、最初の方は色んな物を一人で見ながら、楽しく時間を過ごしていました。でも突然変な男の人に絡まれてしまいました。

「お茶にいこう、大丈夫お茶を飲むだけだからさ」と言いながらこの男性の方はしつこくつきまとってくる。

普段なら護衛の方が追い払ってくれるのですが、今回は逃げて来てしまったので助けてくれる方もいません。

だんだんこの男性の方も強引になってきて、今では腕をつかんで無理やり連れて行こうとします。

私は体力のあるほうではありません。

抵抗するのにも疲れてもうダメかと思ったその時、何か声が聞こえて「ゴンッ」と言う音がすると、男性の方が突然倒れてしまいました。

倒れた男性の横にはジュースの缶が落ちていて、周りを見ると私と同い年ぐらいの男の子が投げ終わった体勢そのままで固まっていて私と目が合う。

あの人が助けてくれたんでしょう、お礼を言いに行かないと。

私が近づいていくと男の子はなぜかあわてだしてしまいました。照れくさいのでしょうか?

男の子の前まで来たので、お礼を言うと、なぜか謝られてしまいました。








「なんだあの男はしつこいナンパ野郎だったのか、デートの邪魔をして怒られるのかと思ったよ」

あれは本気で焦った、本日3回目の警察のお世話になるところだったからな。

「そんなわけありません、助けていただいたのにあなたを怒るなんて」

申し訳なさそうな表情で俺にそう言う彼女。

「俺はレイス・リンテンドって言うんだ。レイって呼んでくれればいいよ。君の名前は?」

「私は・・・ユフィと呼んでください」

ここでテンパッていた俺はようやく気づく。目の前の彼女を俺は知っている。

ピンク色の髪でユフィと言えばユーフェミア・リ・ブリタニアしかいない。


"ユーフェミア・リ・ブリタニア "

神聖ブリタニア帝国第3皇女で、"ブリタニアの魔女"コーネリアの実の妹で通称ユフィ。

本国で学生として過ごしていたが、兄クロヴィスの死に伴いエリア11の副総督に就任。

残念ながらユフィ本人に指揮能力や政治力はなく"お飾りの副総督"と呼ばれているが、弱い者を守るために自ら立ち向かう強い精神を持ち、全ての人々が幸せになれる優しい世界を願って、自らの皇位継承権と引き換えに"行政特区日本"の設立を宣言した。

しかしルルーシュのギアスの暴走で「日本人は虐殺。」と言うギアスをかけられ、抵抗を見せるも、最終的には命令に操られ、式典に集まった日本人の虐殺を命令し自らも虐殺を行ってしまい、その後ルルーシュに撃たれ、スザクに救出されるもすでに手遅れで、特区は成功したと信じながら息を引き取ったある意味この作品で一番不幸な女の子だった。


この時ユフィは皇族として表舞台には立っていないので、世間には名前を知られていないので、俺も知らない振りをしなければならない。

「ユフィはしゃべり方がすごく丁寧だけどどこかのお嬢様なの?」

当たり障りのない質問で会話を続ける。

「あ、はい。そんなところです。変でしょうか?」

「全然、まだ会ったばかりだけど、それがユフィらしさなんだとだと思うよ」

「ありがとうございます。そういってもらえると嬉しいです」

俺の言葉に、本当に嬉しそうに笑うユフィに少しドキッとしたのは俺だけの秘密だ。

その後もたわいのない話をして、俺が士官学校に入っている事や、ユフィが俺の一つ年下である事、今日友達と遊びに来てはぐれた事を話す。

「私、家庭の事情のせいでお友達がいないんです、だからレイさんが少し羨ましいです。」

陰のある表情でそう言うユフィに、身分違いとは理解していながらも、俺は答える。

「おいおいユフィ、俺とお前が友達だと思っていたのは俺だけか?」

その言葉を聞いて、ユフィの表情はパァッと明るくなる。

「本当ですか?いえ、私たちは友達です。もう断ってもダメですからね」

大好きなおもちゃを取り上げられないようにする子供のように、ユフィは俺の腕をしっかりと取ってそう宣言する。

「別に断らないよ、あ、そうだ携帯持ってる? 出来たら貸して欲しいんだけど?」

「はい、かまいませんよ」

そういってユフィから渡された携帯で、ジノと何とか連絡を取り、合流する事になった。

「ありがとう、ユフィ。もう学校の方に戻らないといけないからそろそろ行くよ」

「そうですか」

俺の言葉に残念そうな表情を見せるユフィ。

「ユフィの携帯に俺の携帯の番号を登録しておいたから、もし話したくなったら電話でもメールでもしてくるといいよ。あ、でも電話の時は事前にメールで伝えてくれると嬉しいかな」

そう伝えるとさっきまでとは打って変わって、「絶対に連絡します。」といって迎えの者を呼んで帰っていく。

俺もそのあとジノとアーニャと合流して、学校へと帰っていった。



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