とうとうナリタ作戦作戦当日となった。
ブリタニア軍は現在ナリタ周辺を封鎖して日本解放戦線に対する包囲網を築いている途中だ。
俺やコーネリア殿下、ユフィ、ギルフォード卿にダールトン将軍といった主だったメンバーは現在G-1ベースの中で今回の作戦について話し合っている。
「この地域に日本解放戦線の本拠地があるのは確実です」
ダールトンがそう話しだすとモニターにナリタ周辺の地図が表示され、現在配置についているブリタニア軍の場所が表示される。
「すでに4個大隊を7つに分けて伏せてあります。後は総督の合図で一気に包囲網を狭め、殲滅します」
「包囲網の外から敵が現れる事はないのでしょうか?」
ユフィが疑問に思ったらしい事を質問する。
「ゼロか?」
「ご安心ください、作戦開始と同時に周辺道路および山道を封鎖します」
「友軍もある、下手に姿を現せばその時がゼロの最後となろう」
ダールトン将軍はユフィの質問に対して丁寧に説明をして、コーネリア総督はユフィの懸念をばっさりと切り捨てる。
ここでゼロの事をキチンと考慮にいれておいたらあの山崩れの被害はもっと少なくて済んだのかもしれない。
ここはいちおう進言をしておいたほうがいいだろう。
「総督、自分はゼロという人物を知りませんがここにゼロが現れないと言う保障はどこにもありません。黒の騎士団という組織をつくって名乗りを上げたからには戦力が揃いつつあるのかもしれません。念には念を押して警戒しておくべきではありませんか?」
「リンテンド卿、心配なのはわかるがあまりそちらにばかり気を配っていると日本解放戦線を潰すのに支障をきたす。たしかにゼロは気がかりだが最低限の注意だけ払えばよい」
「しかし総督、ゼロは「くどいぞリンテンド卿!」Yes, Your Highness」
どうやら総督はこの作戦でゼロの妨害は確実にないと考えているのだろう。
ここであまり食い下がるとコーネリア軍との関係が悪化しかねない、ここはとりあえず引いておこう。
そのころのアッシュフォード学園
「はぁ〜、会いたいって言ってもさぁ、相手わかってる?向こうは皇女様、こっちは庶民。ホテルジャックの縁って言ったってどんな縁よそれ」
「でも、お礼言ってないし、ユーフェミア様に」
「家も昔ならそれぐらい出来たんだけど・・・・・・ん、待ってよ?もしかしたらいけるかも」
「いけるって何が?」
「だからユーフェミア様への謁見よ! 何とかなるかも知れないわ!」
「ほ、ほんとにミレイちゃん?」
「まあ、ある人にお願いしてみてOKが出ればだけど・・・・・・ニーナって今の私の婚約者のこと知ってる?」
「え、そう言えば最近はミレイちゃんお見合いしていなかったみたいだけど、とうとう相手決まったの?」
「相手の人がとりあえず婚約しておいて「嫌ならその時破棄してくれればいい」って言ってくれてるんだ」
「なんかいい人だね、その人」
「そうなのよ、私も彼とならほんとに結婚してもいいかなと最近思いはじめてるの」
「で、誰なのその人? 伯爵様、それとも辺境伯様、まさか侯爵様とか?」
「う〜ん、貴族としては子爵なんだけどね、軍のお偉いさんなんだ。」
「軍のお偉いさん? それじゃあ結構歳が離れているんだ、ミレイちゃんとその婚約者の方?」
「いいえ、1つ違いよ。それも私より一つ下ね、だから彼はニーナやルルーシュ達と同い年よ」
「え、私たちと同い年で軍のお偉い様? ミレイちゃん誰その人?」
「ふっふっふ、聞いて驚け、なんと相手はラウンズの方なのだ〜」
「ミレイちゃん、大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
「頭よミレイちゃん、お見合いのしすぎでおかしくなったの?」
「何よ失礼ねニーナ、そんな事言うと彼にユーフェミア様への謁見の話はしないわよ」
「え、ほんとにラウンズの人とお見合いして婚約者になったの?」
「そうよ、ナイトオブファイブ、レイス・リンテンド卿がこのミレイ様の婚約者なのだ」
「リンテンド卿? ああ、あの赤色のマントの人?」
「そうよ。それで彼今エリア11に来てるの、だから頼めば謁見ぐらいなら出来るはずよ。実際私はホテルジャックの後に1回会った事があるし」
「嘘っ!!ミレイちゃん、私そんな事聞いてないよ」
「まあまあ、ニーナ落ち着いて。とりあえず話はしておくからあとは結果を期待していてちょうだい」
「わかった、ありがとうミレイちゃん」
場所は戻ってG-1ベース
「総員配置につきました」
通信士が作戦準備完了の知らせを伝える。
「わかった、ユーフェミアとリンテンド卿は予定通りG-1で後方待機。ユーフェミアは衛生班の指揮に当たらせよ。リンテンド卿は万一の時に軍全体を指揮させろ」
「Yes, Your Highness」
ユフィは予定通り衛生兵の指揮、俺は前線に出るかわりに万一の時の軍全体の指揮となった。
「あ、あの後方にある部隊はなんですか?」
「あれはイレブンのパイロット有する友軍です」
「ランスロットですか?」
「ナイトメアをナンバーズが動かすことなど本来なら許されざることなのですが」
「あの部隊は第二王子様の肝いりでして、我々の人事権は及ばないのです。しかし出来るだけ実戦経験をあたえて欲しいとのことで」
この名前も知らない参謀たちはランスロットの事をよく思っていないらしい。
たしかにナイトメアに乗れるのはブリタニア人だけという決まりがあるが、実力があるのだからもう少し評価されてもいいと思うのだが。
ユフィも同じ事を考えているのか苦い顔をしている。
しばらくするとコーネリア総督の号令で作戦が開始される。
ナイトメア輸送用の貨物車からはドンドンとサザーランドが出撃していき、ナイトメアフレームを搬送するVTOLからもサザーランドが空から降下していく。
突然現れたブリタニア軍の大部隊に日本解放戦線は今頃大慌てだろう。
「敵の本拠地は山中にあります、正確なポイントは掴めていません。しかし協力メンバーのリストを手に入れる為にも空爆で本拠地ごと空爆するわけにもいきません」
「敵は我が軍の包囲網を突破するためにも一点突破を狙うでしょうからそこから本拠地を推測します」
「我が軍の正面戦力は3つ、ダールトン将軍、アレックス将軍、そしてコーネリア総督が率いる部隊です。そして、ん?」
参謀がユフィに作戦目的を説明している最中にジャミングが入った。
どうやら解放戦線も戦闘体勢が整ったようなのでそろそろ戦闘が開始されるらしい。
モニターに敵ナイトメアである無頼が表示されていく。
コーネリア総督とギルフォード卿の機体が敵ナイトメアの方へと突っ込んでいく、たしか総督が「私をそこいらの女と一緒にするなと」言って一気に突っ込んでいったんだよな。
現に今も前方にいた3機の無頼を撃破した。
その後もブリタニア軍は敵の無頼や固定砲台を破壊して征圧していき、こちらの勝利が近づいてきた。
ダールトン将軍の部隊がとうとう敵本拠地への入り口を見つけたらしく、信号弾が上がった。
それを見たコーネリア総督が「予備部隊をダールトン将軍側に寄せろ」と命令を出したんだろう、部隊が中央から右翼気味に固まって来ている。
このままでは逆落としをまともに食らってしまう、何とか理由をつけて意見してみよう。
「総督、あまり部隊を右翼に寄せるのはまずいのではないですか? あのポイントがフェイクだった場合反対側の守りが薄い所から逃走される恐れがあります」
「大丈夫だリンテンド卿、そこは私とギルフォードが抑えている。万が一にも抜かれる事はない」
それっぽい理由を出してみたがだめだった。
他に何かないかと考えてみるが何も浮かばない。そうこう考えているうちにいつの間にか包囲網がかなり縮んでいて、ふと気がついた時にはもうまずいと思って地響きが起こり山が崩れた。
ブリタニア軍、解放戦線を問わず土砂はナイトメアを巻き込んでいき、右翼、正面に配置されていたほとんどのナイトメアが全滅して、指揮系統が成り立たない。
我がブリタニア軍は完全に混乱してしまった。
「落ち着け!緊急事態により総督に代わって今から自分が指揮を取る。異存はないな?」
「「「Yes, My Lord」」」
「現在生き残っている戦力を大至急調べろ、そしてすぐに生き残った部隊と側面戦力を集結させろ。それとコーネリア総督の部隊が孤立している。総督の近くの側面戦力の部隊と予備部隊は至急総督の元へ向かわせろ。これは解放戦線の手ではない、ゼロと黒の騎士団が何かしたんだろう。ゼロは総督を狙うはずだ、今更解放戦線に逃げられても仕方ない、総督の救出を優先する。ただ今をもってナリタ作戦を破棄、作戦をコーネリア総督救出作戦へと変更する」
「「「Yes, My Lord」」」
「リンテンド卿、黒の騎士団と思われるナイトメアが現れました。まっすぐにコーネリア総督の元へと向かっています」
「やはりな、我が軍の機体はエナジーを消費している、このままではまずいな。特派へと通信をつなげ」
「お待ちください、リンテンド卿。あの部隊は」
「黙れ! 今は一刻も早く総督を救出しなければならない、部隊を選んでなどいられるか」
「・・・・・・Yes, My Lord」
こんな時に限って彼ら参謀は時間を取らせる。優先順位が本当にわかっていないのだろうか?
「はいは〜いお呼びですか、レイス君?」
「ちょっとロイドさん、作戦中ですよ! 真面目にしてください!」
「あ〜ごめんなさい、やめて」
ロイドさんのふざけた態度にセシルさんが怒る、いつもの事だが今はこんなことしている場合ではない。
「ロイドさん、セシルさん今はふざけてる場合ではありません、作戦を伝えます。ランスロットは今から自分と一緒に山を登って総督の元まで行ってもらいます。総督のナイトメアのエナジーがどれほど残っているのかわからないのでなるべく戦闘を避け速やかに撤退させてください。自分も全体の指揮を取り終わったらすぐにそちらへと向かいます、とりあえず準備をしておいてください」
「「Yes, My Lord」」
こちらが真面目に話すとロイドさんも空気を読んだのかちゃんと軍式の返事を返した。セシルさんの教育の成果のようだ。
俺も全体の指揮を終わらせて早くラモラックの元へと向かわねば。
「おそらく解放戦線も混乱から回復すればここから逃げ出すために再び攻めてくる、急いで全部隊を集結させろ。逃げる解放戦線は追わなくていい、あくまでも総督の救出が第一だ、総督に牙を向けるものと逃げずに襲ってくる敵だけを相手にしろ。全部隊に今の指示を徹底させろ」
「「「Yes, My Lord」」」
「では俺はこれから特派と共にコーネリア総督の元へと向かう。指揮権は参謀部に預けておく、くれぐれも大局を見間違えるなよ」
「「「Yes, My Lord」」」
そう指示を出すとユフィを安心させるため近づいて「総督は必ず生きて連れ戻すから安心してくれ」と伝えるとG-1ベースの管制室から出てラモラックの待つトレーラーへと向かった。
ラモラックを搭載してあるトレーラーにたどり着いてレオ君に話しかける。
「レオ君、ラモラックはすぐに発進させる事ができるか?」
「はい、通信は聞いていましたので今はシステムの最終確認をしています。それが終わったらエナジーフィラーを装入するだけですので、後5分ほどで発進可能です」
「わかった、俺はパイロットスーツに着替えてくるから引き続き作業を頼む。特派にもそのように連絡しておいてくれ」
「Yes, My Lord」
そう指示を出すと俺は奥にある更衣室でパイロットスーツに着替える。
着替え終わってラモラックの元へ戻ると、どうやら俺が着替える間に作業は完了していたらしい、仕事が速くてほんとに助かる。
「リンテンド卿、ラモラックの準備完了しました。何時でもいけます」
「よし、現在の戦況は? 総督の現在位置はどこだ?」
「現在日本解放戦線側に新たに5機のナイトメアが現れました、そちらはギルフォード卿ら親衛隊が相手にしているようなのですが手強いようで苦戦しています。総督はポイント9で解放戦線を迎え撃とうと先行していたのですが、現在そちらに黒の騎士団と思われるナイトメアが向かっていて非常にまずい状況です」
「純血派はどうした? 奴らは総督の近くに配置していただろう?」
「それがオレ・・・ジェレミア卿が暴走し、それにより敵の新型ナイトメアに撃破され、現在生き残っているのはヴィレッタ卿と数名のみです。そのヴィレッタ卿もギルフォード卿と共に解放戦線と戦闘中で総督の元へはいけないようです」
やっぱり暴走したのか、あれだけ釘をさしておいたのに・・・・・・
昨日俺は純血派のジェレミア、ヴィレッタ、キューエルの3名を呼び出した。
「ジェレミア・ゴットバルト、ヴィレッタ・ヌゥ、キューエル・ソレイシィ、参りました」
「ああ、立ったまま話すのもなんだからとりあえずそこに座ってくれ」
「「「Yes, My Lord」」」
「それでは早速本題に入らせてもらう、明日のナリタ作戦の配置についてはもう聞いているな?」
「はい、聞いておりますリンテンド卿。しかしあの配置では我々には戦場で汚名を返上するチャンスすらないではありませんか」
純血派を代表してヴィレッタ卿が俺に問いに答える。
「あそこにお前たちを配置したのは総督ではない、この私だ」
「「「なっ!!」」」
「リンテンド卿、どう言うことですか? あなたも私がオレンジなどと言うゼロのふざけた話を信用して、我々純血派を後方に配置するのですか?」
ジェレミア卿がすごい勢いで食いかかってくる。
「落ち着きたまえジェレミア卿、たしかにあそこに配置されれば日本解放戦線との戦闘ではほとんど戦場で活躍は出来ないだろうな」
「はい、ですがリンテンド卿、日本解放戦線との戦闘ではとはどういうことですか?」
俺の言葉に含まれた疑問点について確認をしてくるヴィレッタ卿。
「俺はこの作戦内で、ゼロと黒の騎士団が何かしらの行動を起こしてくると予想している。奴らは絶対にコーネリア総督を狙ってやってくるんだろう、俺はお前たちの腕前は評価している。だから奴らが何か行動を起こした時に、この位置からなら総督とすぐに合流できるだろう」
「そう言うことですか、リンテンド卿。黒の騎士団が何か行動を起こした時に我々がコーネリア総督の元に駆けつけ救出する事で我々純血派の信用を取り戻せるようにとのご配慮ですね!」
今まで黙って話を聞いていたキューエル卿が俺の考えを理解したようだ。
「それならばこの配置も納得です。我々の事を考えて、あえてこの配置にしてくれたのですね?」
「感謝します、リンテンド卿。このジェレミア・ゴットバルト、必ずやそのご期待に応えてみせます」
ヴィレッタ卿やジェレミア卿もこの配置の意図に気づいたようで納得してくれた。
「ジェレミア卿、私が唯一懸念しているのは君の事だ」
「私でありますか?」
「君は黒の騎士団が現れた時、その復讐心を捨ててコーネリア総督の元に駆けつける事ができるか?」
実際アニメでは黒の騎士団が現れたと聞いたとたん命令も聞かずに独断先行をしていた。
ここではっきりさせておかなければ不安が残る。
「はっきりと暴走しないとは言いきれませんが、何とか自分を抑えて総督の元へと駆けつけてみせます」
なんだかあいまいな答えだがまあこれでいいだろう。
「わかった。ではもし君が暴走すれば純血派は解散させる、その事を頭にいれて置くように」
「なっ! リンテンド卿私1人の暴走でそこまでされるのですか?」
「そこまでしてでも君に暴走されては困ると言うことだ、わかったかジェレミア卿?」
「・・・・・・Yes, My Lord」
ジェレミアの了解を聞いて、俺は3人を下がらせた。
◆◆◆◆
今更暴走してしまったジェレミア卿の事を考えても仕方ない、早くランスロットと合流しよう。
「リンテンド卿、枢木参りました」
「よし、作戦を伝える。今から我々は総督救出に向かうが普通に行っていたら時間がかかる。ランスロットにはヴァリスがあったな、それで前方の障害物を破壊して一気に山の中を突っ切っていくぞ。私とラモラックは君の後ろについて行く。総督発見後ランスロットは総督を連れて撤退しろ」
「しかしそれではリンテンド卿が危険ではありませんか?」
「枢木、私を誰だと思っている。ラウンズの戦場に敗北はない。では行くぞ!」
「Yes, My Lord」
作戦を伝え終えて行動を開始するランスロットとラモラック、サンドボードを装着したランスロットとラモラックは山の急斜面を駆け上がっていく。
山を駆け上るとランスロットはヴァリスを構えてバーストモードで発射する。
バーストモードで発射された弾丸は木々を次々と破壊してついには岩盤も破壊してしまった。
しかしヴァリスの威力だが、バーストモードであれだけの威力が出るのだから、ノーマルモードでもこのラモラックの装甲を突き破る事ができるだろうな。
やっぱりロイドさんにお願いしてラモラック用に調整されたヴァリスも貰おうかな?
ランスロットは破壊した岩盤の上を飛び越えて、そこにいた総督のグロースターと黒の騎士団のナイトメアの間に割って入る。
「総督、ご無事ですか? 救援に参りました」
「特派だと? 誰の許しで」
「私です、総督」
「リンテンド卿か。これならあの謎の新型ともやりあえて、ゼロを捕まえる事ができる。ついて来いリンテンド、枢木!」
「残念ですが総督、それは出来ません。ランスロットを護衛につけますので早くG-1ベースへとお戻りください」
「なっ! リンテンド卿、私に引けと言うのか?」
「はい、総督の機体はまともに戦闘できる状態ではないようですし、エナジーも残り少ないでしょう。動けなくなった総督をかばいながら戦うのはこちらの不利にしかなりません。エナジーが切れる前に早くお戻りください」
「く、この状況では仕方がないか。あの赤い新型には気をつけろ! 機動力が桁違いだ」
「Yes, Your Highness. 行け枢木、必ず総督を無事にG-1ベースへとお連れしろ」
「Yes, My Lord」
枢木はそう返事をするとコーネリア殿下を連れて元来た道を帰っていく。
今まで沈黙を保ってきた黒の騎士団はそれに気づくと追走しようとするが俺のラモラックがその道を阻む。
アサルトライフルで俺を撃破しようと撃ってくるがラモラックの装甲にはたいした傷がつかない。
さて、ここで戦場を見渡したが敵は紅蓮弐式と無頼の指揮官機が1機に一般機が2機。
戦力差は1対4だがこれは問題にならない、そろそろ反撃と行こう。
<ゼロ>
「おい、ゼロ!なんなんだよあの赤くてでかいナイトメアはよ〜!」
玉城が目の前のナイトメアについて聞いてくるがそんなもの俺が聞きたい。
事前に得ていた情報ではあんなナイトメアの事など聞いていない。
白兜一体だけでも厄介なのにあんな機体まで来ているのか。
幸い白兜はコーネリアをつれて下がって行ったがそれでも厄介だ。
アサルトライフルで牽制しているが向こうは動かずにただ立ち尽くしているだけ。
アサルトライフルが全く効いていないようだ。
こちらの機体で奴にダメージを与えられるのは紅蓮の輻射波動だけだろう。
しかたないがコーネリアには逃げられたしここは撤退するのがいいだろう。
「コーネリアの捕獲には失敗したがここまでやればこちらの勝ちだ、このまま撤退するぞ。紅蓮はあの赤いナイトメアの足止めをしてくれ、不利になったらすぐに撤退してかまわない。無理に相手をして紅蓮を破壊されるなよ」
「了解」
するとカレンは返事をして赤いナイトメアへと向かっていく。
「扇、玉城、撤退するぞ。他の部隊にも通信をいれろ」
「わかった、ゼロ」
「おい、ゼロ。カレンはどうすんだよ!?」
「彼女にも不利になれば撤退するように伝えてある。このまま私たちがここに残るよりも先に撤退しておいたほうがいい」
ちっ、玉城のやつ今の通信を聞いてなかったのか、本当に使えない奴だな。
まあいい、俺の力でコーネリア軍に勝利できたんだ。これでこいつらも俺の命令に逆らう事はなくなるはずだ。
反撃するために動き出そうとしたら、紅蓮がこちらに向かってきて無頼は撤退して行く。
追いかけて捕獲しないといけないが紅蓮の相手をしなければならないので今回捕獲は無理だろう。
紅蓮が左手に持った小型ナイフで切りかかってくる。
それに対して俺はMVSを展開し左手に持って迎え撃つ。
切り返した紅蓮はすぐに蹴りを放ってくるが後ろに引く事でそれをかわし、MVSで切りかかるがすばやい機動力でかわされる。
一度後退して距離を取る紅蓮にハーケンを放ち、ミサイルを6発放射して攻撃を加えるが輻射波動で止められ爆破される。
再び向かってくる紅蓮は輻射波動を使おうと右手を出してくる。
MVSで右手を止め爆破される前にMVSを手放して紅蓮の左側にまわりこみリボルビングバンカーを打ち込む。
寸前で回避行動を取られ、かわされてしまうが左手の手首に少しかすってその部分が削れる。
それが原因で左手の小型ナイフを落としたようだ。
また向かってくると思われた紅蓮だが反転して撤退してしまった。
追撃しようかと思ったがここは総督の救出には成功しているのでこちらも撤退しよう。
しかしここまで機動力の高い機体と戦うのは初めてなので苦戦するかと思ったがこれなら十分戦える。
ラモラックの装甲の軽量化に成功すれば機動力の差も埋まりこちらの不利な要素が減る。
幸いアッシュフォードの協力のおかげでまだしばらくかかると思っていた機体内部の軽量化が予定より早く進むだろう。
本国の研究所からも新型の装甲素材の開発に成功したとの知らせもあった。
今からそれを取り寄せてラモラックの装甲を作り直すには一か月はかかるだろう。
ロイドさんにフロートユニットの開発を急いで貰ってラモラックの大幅な改造を行おう。
そんな事を考えながら俺はG-1ベースの元へと戻って行った。
<カレン>
つい先ほどまで戦っていたナイトメアを思い出すと自分が情けなくなる。
明らかにこちらのほうが機動力が勝っているのにこちらの攻撃は一度も当たらず、逆にカウンターを食らって左手を削られてしまった。
本当ならまだまだ戦えるがこのままやってもこちらが勝てる気配が見えなかったのでゼロのいう通り撤退する事にした。
白兜一体でも厄介なのにあんな機体まで現れて私たちに勝ち目はあるのかと考えてしまう。
ダメよカレン、そんな事考えちゃ。私が黒の騎士団のエースなんだから私があの2体を倒さないと。そう心に誓って、私は仲間たちと合流してナリタを後にした。
<ルルーシュ>
ナリタでのブリタニア軍との戦いの後、俺は黒の騎士団をブリタニアの警戒範囲外まで撤退させると、被害状況の確認を扇達幹部に任せ、一人黒の騎士団のために用意したトレーラーの自室でナリタでの戦いの戦後検証を行っていた。
「日本解放戦線は事実上壊滅、対するブリタニア軍も紅蓮による逆落としで、多数が土砂の下敷きになり残った戦力も早急に再編が迫られるほどの被害を与えた。これは黒の騎士団の大勝利といっても過言ではない」
「だがお目当てのコーネリアについては捕縛することもかなわず、突然現れた赤いKMFによってこちらも撤退を余儀なくされた。ルルーシュ、お前はこれでも大勝利だと言えるのか?」
本来ゼロである自分以外誰も許可なしに入ることのできないこの部屋、それはゼロという仮面の下の素顔を誰にも見られるわけにはいかないからだが、その仮面の下の素顔を唯一知っている女、それが俺にギアスという異形の力を与えたC.C.だ。
こいつの存在は黒の騎士団にはまだ知らせていない。だがナリタに勝手についてきた以上、放置しておくわけにもいかない。
こいつはもともとクロヴィスが何らかの研究を行っていた実験体で、それを今の黒の騎士団の幹部である、旧扇グループの人間が毒ガスと勘違いして盗み出したことが俺とこの女の出会いだ。
そのせいで親衛隊の人間に殺されかける羽目になったわけだが、おかげで絶対順守のギアスという力を得られた。この力のおかげで俺がブリタニアへの反逆を大幅に早めることができたのだから、過ぎたことは気にしないでおこう。
「戦略的な勝利は得られたんだ。コーネリアの身柄は今回は確保できなかったが、チャンスはまだいくらでもある」
「詭弁だな。目の前のチャンスを掴めなかったことを認められないのか」
俺を嘲るように鼻で笑ったC.C.に俺はいら立ちを覚えるが、こいつの言うことにいちいち目くじらを立てていたらきりがない。俺はそれを無視するように目の前のパソコンで今一番知りたい情報を検索する。
ブリタニアで正規に生産されるKMFとは一線を画すオリジナルKMF、それを持つことができるものなど限られている。それをしらみつぶしに調べていけばいい。そしていくつかの情報を検索していくと、俺の知りたかった情報がすぐにパソコンのモニターに表示された。
「あった。これは……とんでもない大物がこのエリアにやってきているようだな」
俺は座っていたイスの背もたれに体重を預け、目の前の情報を茫然と眺める。
「ほぅ、帝国最強の騎士の一人がブリタニア本国からこのエリアに派遣されているのか。名前はレイス・リンテンド。ナイトオブファイブ、ある意味コーネリア以上の大物が釣れたようだな」
先ほどまでソファに寝そべっていたC.C.も俺が見つけ出した情報を食い入るように眺める。
「ラウンズになってまだ1年弱、専用機の開発が遅れ、その間にEUとの間に停戦協定が結ばれ戦線への投入はなかったみたいだが、ラウンズになるまでの記録では同時期にラウンズに昇格した二人と合わせて小隊規模での敵KMFの撃墜数はいまだにその記録を破られていないらしい。それぞれ得意分野が違うが一人一人の腕がエース級、ナイトオブファイブはその小隊のまとめ役でもあるらしい」
KMFの腕がエース級で搭乗するKMFも通常のアサルトライフルが通用しない化け物のような機体。毎回出てきては俺の邪魔をする白兜もそうだが、厄介な敵が増えてしまった。今の黒の騎士団にはこの男を相手にする余裕なんてない。
「当面はブリタニア軍も大きな軍事作戦は起こせないだろうからいいが、ブリタニア軍の体制が整った時、一体どうするつもりなんだ。何ならギアスでこちらに寝返らせてみるか」
C.C.の軽口に俺もそれを頭の中でシュミレートが結論から言うとそれはやめておいた方がいい。メリットとしてはブリタニア軍の内部情報をかなり深いところまで容易に手に入れることができるということと、純粋に強力な駒が一つ手に入れることができるということである。
しかしそのメリットは容易にデメリットへと姿を変える。ブリタニアでも最上位といってもいい、ラウンズの周りには情報流失を防ぐための手が打たれているだろう。さらに秘密裏に情報を流させるというスパイ行為をさせるにも先の条件で不可であろう。そして強力な駒が手に入ると言ったが、黒の騎士団にこの男を受け入れるだけの器が整っていない。自らもゼロという仮面を隠し素顔を隠している状況だ。今は奇跡ともいえる結果を残して有無を言わせない状況を作っているが、これ以上の不信の種をねじ込むのは得策ではない。
「いやそれはない。今はこの男のことを気にするよりも黒の騎士団の基盤を盤石にする。そして完全な俺の軍隊を作り上げる。こいつや白兜のことを考えるのはそれからだ」
そうだ、いずれはどんな強敵も相手にしなければならないが、今は黒の騎士団の地盤を固める時だ。そのためにも日本中のレジスタンスを束ねているというキョウトの力を手に入れる。そのための足掛かりは卿の戦闘で十分に得られた。
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