in side
さて、あの後メディアが士郎の家に結界を張り、桜と式を残して教会へと向かってるのだが――
あ、ミュウは流石にGUMPに戻したぞ。いくら認識阻害の魔法……魔術だっけ?
それを使ってるからといっても、限度というものがあるそうな。
それはそれとして凜がすっごく不機嫌です。というのも、桜に何があったのかを聞いたからなんだが……
「それは……本当なの?」
「あいにくだが、このような冗談を話すような趣味はしていなくてね」
顔を向けずに問い掛ける凜だが、スカアハの返事にどこか悔しそうにしていた。
士郎はそんな凜を心配そうに見ていたりするけど。
「心配かな?」
「そんなことは……ないわ……」
問い掛けたスカアハに凜は顔を背けて答えるが――
「誤魔化し方が下手だな。それに唯一血の繋がった家族だろう? 心配しても別に構わんと思うがな」
「え?」「へ?」「なに?」
スカアハのひと言に凜だけでなく、士郎やアーチャーも驚いたように顔を向けてました。
セイバーやバゼットも興味津々って様子だな、おい。
「なぜ……それを……」
「言わなかったかな? この世界の情報を持っていると」
戸惑ってる様子の凜にスカアハはそう答えるんだけど……
俺が気になるのはなんでアーチャーがスカアハを睨んでいるかなんだけど。
あれ? そういや、アーチャーって何か目的があったような気が――
「ま、いきなりあれこれしろとは言わんが、話し合うくらいはした方がいいぞ」
などとスカアハは言うのだが、凜はうつむいたままである。
まぁ、色々とあったんだろうしなぁ……いきなりそんなこと言われても困るって感じかね?
しかしまぁ、凜と桜が姉妹ってのは一応知ってたけど……姉妹にしちゃあんま似てないように思えるのは俺だけか?
例えば――
「って、のわぁ!?」
と、何かを感じて体をひねると、顔をすぐ前を黒い塊が飛んでいった。
いや、ちょいと待て。
「いきなりなにしやがる!?」
「今、何を考えたの?」
「撃たれるようなことは考えて無いわ!?」
正確には撃たれそうなことを考える直前だったが……と、睨みつけてくる凜に叫び返す。
ていうか、ニュータイプかお前は!? しかも、ガント撃ってくるんじゃねぇよ!
で、凜はといえばそっぽ向くし。この野郎……いつか泣かす!
なんてことをやりながら、俺達は教会へと向かうのだった。
out side
「へぇ、結構でっかいんだな」
そんなこんなをしている内に目的地である教会にたどり着いた翔太達。
その建物を見て、翔太がそんな感想を漏らしていた。
「で、ここに来てどうするつもりなの?」
「言ったろう? 挨拶をしに来たとな」
問い掛ける凜にスカアハは意味ありげな笑みを見せていた。
そのことに凜は訝しげな表情を見せていたが……
「シロウ、私はここで待っています。
シロウが中に入っている間に他のサーヴァントの襲撃が考えられますので、警戒しておく必要があります」
「なら、私も残らせてもらおう。ああ、安心したまえ。マスターの指示無しでセイバーとはやりあおうとはしないと誓おう」
と、セイバーがそんなことを言い出すとアーチャーも便乗するかのようにそんなことを言い出した。
このことに凜が睨んでいたりするが……
「う〜ん……スカアハさん、どうしたらいいでしょうか?」
「そういうわけだ……ん? ああ、すまない。別に良かろう。警戒しておくことにこしたことはないからな」
士郎が問い掛けるが、スカアハはなぜかバゼットと話していた。
それでもすぐに気付いて答えてくれたが。一方で話していたバゼットは複雑そうな顔をしていたが。
「では、挨拶と行こうか」
そういって教会に入ろうとするスカアハ。他の者達も互いの顔を見てからその後を追うのだった。
「夜分に失礼する。誰かいないか?」
「ふむ、どなたかな?」
少し大きな声で呼びかけるスカアハ。それに答えるかのように1人の神父が奥から現われた。
神父の服の上からでもしっかりとした体付きだと思われる神父が……そう、言峰 綺礼である。
「なに、サーヴァントを従えるマスターを連れて来ただけだよ。ああ、私達は単なる付き添いだ」
「ほぉ……ん? 凜、君も来ていたのか。珍しいな……連絡をしたのに来なかった君が……」
「その必要を感じなかっただけ。言っとくけど、私も付き添いみたいなものよ」
スカアハの言葉に辺りを見回していた言峰が凜の姿を見つけてそんなことを言い出した。
凜はと言えば、どこか嫌そうな顔をしながら答えていたが。
「遠坂……知り合いなのか?」
「まぁ……私の後見人……みたいな人よ」
「そうとも言えるな。もっとも、最近は顔を見せることも無くなったが……」
士郎の問い掛けに凜は困った顔をしながら答えていた。
言峰も笑みを含みながら話していたが……その表情がわずかながら驚きのものへと変わっていた。
凜がなんだろうと首を傾げながら言峰が見ている方へと顔を向ける。そこにいたのはバゼットであった。
「どうしたのかな、神父? 私の顔に何か付いているのかな?」
「いや……なんでもない」
にやりと笑みを含めて問い掛けるバゼットに言峰は無表情で答えていた。
なぜ、バゼットが知らないふりをしているのか? これは先程スカアハと話した時にそうして欲しいと言われたためである。
実を言えば、バゼットとしては今この場で言峰を殴りたかった。なにしろ、裏切られたのだ。その感情は当然とも言える。
だが、それに耐えて欲しいと言われたのだ。復讐の機会は必ず来ると言われた為に……
だからこそ、今は耐えてこのようなことをしたのだ。
言峰はそのことに気付いたわけではないが……何か意図があると感じ、自分もまた知らないふりをした。
もっとも、内心は少しばかり驚いていたが……
バゼットが生きていたことはランサーから報告されていたが、昨日の今日でこうも元気な顔を見せるとは思わなかったのだ。
「それで……マスターとは誰かな?」
「彼だ」
「あ、どうも……」
言峰の問い掛けにスカアハは士郎に右手を向けた。
そのことに士郎は頭を下げ、言峰もその様子を静かに見ていた。
「君がそうか……名前はなんというのかな?」
「あ、衛宮 士郎です……」
「衛宮……だと?」
名乗る士郎を問い掛けた言峰はどこか驚いたような顔を見せる。
もしかしたら……その考えを確かめる為に、言峰は問い掛けることにした。
「そうか……君もまた、聖杯を求め参加したのだな?」
「いや……俺は止めたいんです……10年前、この聖杯戦争が元であの大災害が起きたって聞きました……
だから……だから、俺は止めたいんです。あんな悲劇を……もう二度と起こしたくないから……」
言峰の問い掛けに士郎は両手を握りしめながら答えていた。
10年前のあの日……士郎は名前以外の全てを失った。同時に見ていたのだ。あの悲劇を……
だからこそ、士郎は止めたいと思った。あんな悲劇はまた起こしちゃいけないと考えたから――
「あのねぇ、って、え?」
そのことに凜が呆れてしまう。なぜなら、聖杯戦争は聖杯を求める者達と同じく求めるサーヴァントが争うもの。
士郎のような考えはある意味異端であり、聖杯戦争ではあまりにも甘すぎる考えだった。
だから、凜は忠告しようとしたのだが、それをスカアハは右手で制していた。
「何を――」
「なに、今のあやつの決意に茶々を入れるのは無粋だと思ってな」
スカアハの返事に訝しげな顔をしていた凜は首を傾げていた。
凜としては士郎の甘いと思った。その甘さがどこか許せなかった。だから、文句の1つでも言ってやろうかと思ったのだが……
もっとも、凜がそう考えたのは事情を知らないからとも言える。もし、事情を知れば、凜も同じように考えたかもしれない。
一方、言峰は笑みを浮かべていた。本音を言えば、愉悦を浮かべても良かった。
今の士郎の言葉で確信したのだ。士郎はあの男の息子であると……
「ふむ、それもまた戦う理由であろう。よろしい……君の参加を認めよう。
今ここに、5回目となる聖杯戦争の開始を宣言する」
そのことを表に出さず、言峰は両腕を広げながら宣言した。
そのことに凜はため息を吐き、士郎は顔を引き締めていた。他の者達はただ顔を向けて見ていただけだが。
「もう、用は無いわよね? そうなら、私は帰りたいんだけど?」
「ああ、挨拶だけのつもりだったからな。そうしても良かろう」
呆れた様子の凜にスカアハがうなずく。そのことに他の者達も帰ろうとするのだが――
「喜べ、少年。君の願いはようやく叶う」
言峰がそんなことを言い出した為に、誰もが足を止めて振り返ってしまった。
「正義の味方とは倒すべき悪が必要となる。
皮肉なものだな……誰かを助けたいという願いは、悪という存在を求めるのと同じなのだから――」
「な……」
笑みを浮かべながら、言峰はそんなことを言い出した。そのことに士郎は戸惑うが――
「ち、違う……俺は――」
「く、くく……ふふふ……はははは……」
士郎が反論しようとした時であった。突然、スカアハが笑い始めたのである。
このことに士郎は反論することも忘れて思わず見てしまっていた。
「どうしたのかな?」
「なに、おかしなことを言うのでな。思わず笑ってしまっただけだ」
「なに?」
笑みを浮かべたまま答えるスカアハに、訝しげな表情をしていた言峰はどこか睨んだような顔をするが――
「お前の論法で言うとだ。悪は正義という存在を求めることになるぞ?」
「は?」
スカアハの言葉に言峰は思わず呆然としてしまう。なぜなら、その言葉の意味を理解出来ていなかった。
それは士郎達も一緒であったが――
「それは無い。悪とは人を傷付け、奪い、破壊することを望む者だ。決して、正義という存在を必要としたり望んだりしない」
「極論だが、確かにそうではある。だが、何かしらの形でそういう者を阻む者が現われるのも事実だ。
それがわかっていても悪を行う者がいるというのは、そういうことにならないかな、神父?」
言峰は反論するが、笑みを浮かべたままのスカアハの話にどこか怒りを含んだような表情を見せる。
「まぁ、そうだよなぁ。どっちにしたって、そんなのに出てきて欲しく無いだろうし」
翔太は納得したようにそんなことを言い出すが、言峰は思わず睨んでしまった。
正義も悪も体現しなければそうとは呼ばれない。そういった意味では正義は難しいと言える。
なにしろ、正義は事故や事件などそういった事態が起きなければ人助けなどの行動することがまず出来ない。
かといって自分達でそんな事態を起こせば、逆に悪ということになってしまう。
故に正義は悪を求める……と、言峰は言っているのである。
ある意味そうではあるが……では、悪はどうなるのだろうか?
先程の考えで行けば、悪というのは簡単だ。人を傷付け殺し、物を壊し奪う。そういったことなどをすれば良いだけなのだ。
故に正義を求める必要は無い。が、何かしらの形でそれを阻もうとすることは起きる。例えば、正義が邪魔をするなど――
悪を行う者にもよるだろうが、そういったことを起こることを考えているはずなのだ。
それでも悪を行おうとするのは、そういった存在を現われるのをある意味期待しているんだ――
と、スカアハは言っているのである。
どちらが正しく、どちらが間違いなのか……というのは色んな意味で判断するのは難しい。
なにしろ2人ともそうとも言えるし、そうではないとも言えるからだ。これは価値観の違いにもよるだろうが――
「ふむ、面白い考えだな……失礼だが……名前を聞かせてもらえないだろうか?」
「女神スカアハ……今はそう名乗っている」
「なに?」
笑みを浮かべながら答えるスカアハだが、睨むように問い掛けた言峰は眉をひそめた。
スカアハ……言峰もケルト神話を知るだけにその名の意味を知っている。知っているからこそ、眉をひそめたのだ。
今、自分のサーヴァントとなっているランサーことクー・フーリン……ということは――
「待て……お前もサーヴァントなのか?」
「違うとだけ答えておくよ……そして、もしかしたらお前の前に立ちふさがる者かもしれないぞ?」
スカアハの返事に問い掛けた言峰は目を見開く。スカアハの今の言葉と共に向けられた瞳……
それに見透かされたような気がして……そんな言峰が正気に戻った時にはスカアハ達はすでにいなかった。
「なんなのだ……奴らは……」
言峰から漏れ出た疑問。彼はまだ気付かない。
自分の思惑とは別の……自分が祝福しようと思っている以上の存在が動いていることに。
彼はこの時、その片鱗すらも気付くことは無かった。だが、それは無理もないのかもしれない。
なぜなら、その存在は言峰にとって理解外の存在なのだから――
さて、少し時間は遡り――
「1つ……聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
教会の前にいたアーチャーの問い掛けにセイバーが顔を向ける。
アーチャーはといえば顔を向けず、どこか睨んでいるような顔をしていた。
「翔太やスカアハ達は……君から見てどうなのかね?」
「なぜそれを?」
「気になった……では、ダメかな?」
首を傾げるセイバーに問い掛けたアーチャーはやはり顔を向けずに答えた。
気になってしまうのだ。自分の記憶違いでなければ翔太らはここにはいないはずなのだが――
「そうですね……彼らは強い。それは確かだと言えます」
「ほぉ……」
セイバーの言葉にアーチャーの目が細まる。セイバーにそう言わせるのだから相当なものなのだろうと辺りをつけていたが――
「スカアハにクー・フーリン、メディアらは悪魔という存在だと聞いていますね? だからこそ、というのもあります。
理華はボルテクス界の魔法を使います」
「魔法……だと?」
「ああ、勘違いしないで欲しいのですが、魔術とはまったくの別物です。
その辺りの説明が難しいのですが……」
アーチャーの問い掛けに話していたセイバーは困った顔をしていた。
基本的に剣士であるセイバーが魔術や魔法に関して詳しくないのは当然である。故に説明に悩んだのだ。
「驚くのは翔太でしょうね。彼は戦い始めてから2ヶ月程と聞いていましたが、私に匹敵するほどの強さを持っています」
「なに!?」
セイバーの話にアーチャーは驚きを隠せずにいた。サーヴァントの中でセイバーは最優と言われている。
これは喚び出される英霊にもよるが、能力が高い上にサーヴァントシステムによって得られるスキルの優秀さのおかげである。
それにある理由でアーチャーは少しながらセイバーの実力を知っている。そのセイバーに匹敵するということは――
「翔太はそれほどまでに才がある者なのか?」
「いえ、戦いの才はまったくといってありません」
「……は?」
セイバーの返事に問い掛けたアーチャーはそれを聞いてしばらく呆然としてしまった。
その様子にセイバーは思わず苦笑してしまう。しかし、セイバーがどう見ても翔太に戦いの才が無いのは事実だった。
まぁ、元々一般人な上に翔太は元々人並みに運動が出来る程度なのだ。そのような才が無いのもある意味当然とも言える。
「ああ、すみません……ですが、翔太に戦いの才が無いのは事実ですので……」
「では、そやつはどうやってそれだけの力を……」
「その辺りの説明は難しいですね……翔太が今まで戦ってきた相手が格上ばかりだった……
中には私達に匹敵するほどの者もいました。翔太はそんな者達と戦ってきたのです」
戸惑い気味のアーチャーの疑問に先程まで苦笑していたセイバーが打って変わって困った顔で答えた。
生体マグネタイトによる影響で翔太が力を得たのはセイバーも聞いている。
だが、それを話して良いものかと悩んでしまったのだ。なぜなら、それによって翔太は枷を背負う羽目になったのだから……
なので無難な形で説明したのだが、アーチャーに睨まれる結果となってしまう。
まぁ、当たり前とも言える。格上相手に戦って勝ち続けるというのは普通出来るものではない。
ただ、アーチャーは知らなくて当然なのだが、翔太の戦い方はどちらかというと集団戦闘において発揮する。
翔太は意識しているわけではないのだが、理華や仲魔達の援護があるからこそ、あのような戦い方が出来るのであった。
「最後に1つだけ……翔太はどのような人物なのかね?」
「あなたも見たでしょう? 翔太は色んな意味で正直すぎる。ただし、悪い意味で……ですがね」
睨みつけるかのように問い掛けるアーチャーにセイバーは呆れた様子で答えていた。
翔太は別に望んで戦っているわけではない。逃げられない状況に追い詰められている故に戦っているにすぎない。
現にケルベロスの時には状況の悪さに逃げだそうとした程である。だが、その時に人を守ろうとしたのも事実だ。
『知り合いに死んで欲しくない』というのも翔太にとっての本音なのは間違いないのだから……
そういった意味でセイバーは悪い意味でと称していたが――
「どうやら、戻ってきたようですね」
そんな時、教会のドアが開いて翔太達が出てきたのをセイバーは顔を向けて確認していた。
アーチャーもまたそれを顔を向けて確認する。ただ、その視線は明らかに睨んでいたが――
in side
「それで、どういうことなのか聞かせてもらいましょうか?」
教会での話し合いの後、俺達は士郎の家に戻る最中に凜がそんなことを言い出した。
そういや、教会で話したら知ってることを話すってことになってたっけ?
「そうだな。そういう約束であったな。しかし、お前にとってはツライ話になるかもしれんがね」
「どういうことよ?」
スカアハの言葉に凜が訝しげな顔を向けている。ああ、そういやそういう話だったっけ?
確か、言峰は――
「こんばんわ、いい月夜ね」
と、可愛らしい声が聞こえてきました。
で、少し離れた先には長い銀髪にコートを着た可愛らしい少女と馬鹿でかいマッチョがいました。
うん、どう見たってイリヤとバーサーカーですね。なんでいるのさ?
あ、そういやゲームじゃ、言峰との話の後に出てこなかったっけ?
じゃあ、来てもおかしくないかぁ……どうしろと?
「サーヴァント!?」
「ふふ、久しぶりね。お兄ちゃん?」
「え?」
セイバーがすぐさま鎧姿になって士郎の前に立つが、イリヤはといえばその士郎に笑顔を向けていた。
士郎はぽかんとしてたけど。
「ちょっと、衛宮君。あなた、あの子の知り合いなの?」
「え? あ、いや……通りすがった時に声は掛けられたけど……知り合いのはずが……」
顔を向ける凜の問い掛けに士郎は戸惑うが……そういや、この時はイリヤが切嗣の娘だって知らなかったんだっけ?
でも、どうしたもんかね? 話した方がいいんだろうか?
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。
初めまして、私はイリヤ……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」
「アインツベルンですって?」
スカートの両すそをつかみながら優雅に挨拶をするイリヤ。
それに凜が顔をしかめていた。あ、良く見たらバゼットも顔をしかめてるし。
「知ってるのか?」
「ええ……確か、聖杯を手に入れることを宿願としている魔術師の家系のはずよ」
「ええ、確かにトオサカの言うとおりよ。でも、私には別の目的があるの。それはね、お兄ちゃんを殺すことなの」
「な!?」
士郎の疑問に凜が答えてたけど、イリヤがにやりとしながらそんなこと言うもんだから士郎が驚いていた。
しかしまた物騒な……なんだろう? 今、もの凄く嫌な予感がしたんだけど……
「お兄ちゃんもちゃんとサーヴァントを喚べたようだし、これで戦えるね。
なんか変な連中もいるけど……いいや、一緒に殺してあげるね」
「ちょいと待てや幼女!」
イリヤの言葉に思わず絶叫。でも、俺は悪くないよね?
というか色々と待て。なんで俺達を巻き込む? ていうか、巻き込むこと決定済み?
「なによ?」
「いきなり殺すってなにさ!? ていうか、なんで俺達まで!?」
「あら、今は聖杯戦争の真っ最中なんだよ? それに参加してるんだから当然じゃない?」
「俺達は違うわぁ!?」
叫び返すと首を傾げるイリヤからとんでもねぇ返事が返ってきました。
それに対して怒鳴った俺は悪くないよね? ていうか、嫌な予感的中ですかい。
いや、確かにこの世界じゃそういうのに巻き込まれてもおかしくはないのだろうが……
それでも勘弁して欲しいぞ。いや、マジでさ。
「どうすんだよ?」
「どのみち、戦わねばなるまい。イリヤには用があったしな」
俺の疑問にスカアハは呆れた様子で答えてくれたが……イリヤに用がある?
用って、なんでまた? あれ、そういやイリヤって聖杯じゃなかったっけ?
もしかして、それと関係あるんだろうか?
「ふふ、お話は終わり? それじゃあ始めよっか? バーサーカー――」
「待ってもらおうか」
と、イリヤが何かを言おうとした時、そんな声が聞こえてきた。
みんながそちらに顔を向けると……げ!?
「久しいな、ショウタよ」
「なんでいるんだよ!?」
そこにいたのはリニアスだった。ご丁寧にあの時一緒だった仲魔もいる。
ちょっと待て!? ここって異世界だよ! ボルテクス界じゃないんだぞ! それがなんでいるのさ!?
思わず叫んじゃったよ!? しつこいようだけど、俺悪くないよね!?
「ちょっと、知り合いなの?」
「知り合いっつ〜か、俺としては会いたく無かったというか……ていうか、その格好は何!?」
凜に聞かれるが俺は混乱中。しかも、ここにいるよりもリニアスの格好が気になってしまう。
なぜって? だって、前に現われた時みたいに鎧じゃなくて、モンハンのノワール装備みたいなのになってんだぞ!
うん、エロイね。なんて言いそうになるが……いや、マジでどうしてさ?
「これか? これは貴様と戦う為に用意した物だ。そう、貴様に付けられた胸の傷……この礼をするためにな」
と、妖艶な笑みを浮かべるリニアス。しかも、胸の間を見せるというオマケ付きで……
うん、確かに胸の傷はあったね。でも、魔法でそういうのって痕残らないもんだと思うけど?
俺もそのおかげで体にはほとんど傷は残らないし。流石に深いとそうでもないけどさ。
「俺としては勘弁して欲しいんだけど……」
「さぁ、始めようか? 貴様との決着を付け、宇宙の卵と世界の羅針盤を私の手にするためにな」
「スルー!? ていうか、やる気満々!?」
剣を構えるリニアスに俺絶叫です。完全にやる気になってるよね、あれって……
「あの……俺が戦わなきゃダメ?」
「その方が良さそうだな。あちらもやる気のようだ」
顔を引きつらせる俺にスカアハは呆れた様子で答えてくれました。
だよねぇ〜……リニアスの仲魔達もこっち睨んでるし……たぶん、スカアハ達が一緒に戦おうとすると邪魔する気満々ですね。
「まずいな……手助けをしてやりたいが……奴らもそれをわかっているんだろう。いつでも魔法を撃てるようにしている。
こっちの世界で派手な魔法を使われたらまずいぞ……」
スカアハもそれがわかってるようで、あっちを睨んでるよ。
確かに魔法ってバズーカよりもとんでもない威力のものもあるからなぁ……
1発2発くらいならまだしも連発となると……うん、ここら辺笑えない状態になるよね。
そうなったら色々とマズイよね。あれ? でも、ゲームじゃ遠慮無しに物壊しまくってたような気がしたが……
「ちょっと! 私を無視しないでよ!?」
と、怒ってる様子のイリヤ。確かにいきなり邪魔されたら怒って当然か。
「まだいたのか? 貴様に用は無い。帰れ」
「な……バーサーカー! そいつから殺して!?」
「■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーー!!!??」
で、リニアスのひと言に怒ったイリヤがそう言うと、バーサーカーが声になってない雄叫びを上げる。
あの……バーサーカーとやり合うのは勘弁して欲しいんだけど……
「邪魔をするか……ベルセルク、相手をしてやれ」
「御意に」
視線を向けるだけのリニアスの指示に仲魔であるベルセルクがバーサーカーの前に立った。
で、リニアスはと言えば俺に顔を向けて――
「さぁ、始めようか……私とお前との決着をつけるために……な」
「俺としては勘弁して欲しいんだけどね」
「翔太さん!?」
リニアスの言葉にうんざりしながらも剣を持つ俺。うん、戦いたくないよ?
だって、前に戦った時は負けるかと思ったもん。ていうか、俺が勝ったというより見逃されたって感じだよね?
で、士郎はといえば叫びながらこっちに来ようとしたが、スカアハに止められていた。
「何を――」
「翔太……負けるなよ?」
「出来ればいいけどね」
戸惑う士郎を無視してスカアハはそんなこと言うけど……うん、勝てる気しないよ?
だってね、なんか前より凄そうに感じるんですけど……どうしようか……マジで……
あとがき
そんなわけで言峰との対話が終わり、凜に事情を話そう……とした所でイリヤの登場。
更にはリニアス達も現われてしまい、なし崩しに戦う羽目になってしまいました。
バーサーカーとベルセルクの戦いはどうなるのか? そして、翔太とリニアスとの戦いの行方は?
次回は凜とイリヤにとって目を疑う光景が繰り広げられることとなります。
そして、翔太は追い詰められて……そんなお話です。お楽しみに〜
なお、感想掲示板にあった凜のことですが……ごめんなさい。複雑になりそうなんで出来ません。
期待してた方、申し訳無いです……
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m