in side
さて、高畑さん達と合流後、俺達は食料を大量に買い込むことにした。
人数が多くなったというのもあるが――
「なぜ、私を見るのですか?」
「ここで言った方がいいか?」
「うぐ……」
俺の返事に不満そうにしてたセイバーが言葉に詰まっていた。
うん、食べるよね? 俺も食べる方だとは思ってるけど、あなたはそれ以上だよね?
だからね、こんだけ買うことになったんだよ? ほら、高畑さんとか呆れてるじゃん。
ちなみに代金はエヴァ持ちだったりする。本人曰く「これだけ買うとは驚きだが、話を聞けるなら安い物だ」とか言ってたけど。
まぁ、そんなこんなでエヴァの別荘に到着したわけだが――
「すっげぇ〜!?」
と、驚いてるのは蒔寺。俺も結構驚いてるけど……ていうか、まさか本当にここに来れるとは思わんかった。
まぁ、初めて来た奴は大体驚いてるっぽい。ネギとか明日菜は来たことあるのか、苦笑してたけど。
後は大体ポカンとしてたり、蒔寺みたくはしゃいでたり……あ――
「全員、耳を塞げ!?」
それを目の当たりにして、俺は叫ぶと共に耳を塞いだ。
「え? え?」
ただ、三枝や氷室、美綴に蒔寺とライダー、後麻帆良組の奴らはわけがわからずといった顔をしてたが――
他は悟ったらしく、素早く耳を塞いでいた。
「なによこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「きゃ!?」「おわぁ!?」
ここで凜が大絶叫。おかげで三枝が尻餅をつき、蒔寺は盛大こけてます。
他の奴らも驚いてたけど。たく、震えてるのを見なかったら、俺もああなってたかも……
「エヴァンジェリン。もしかして、ここは時の流れも違うのではないのですか?」
「良くわかったな。そうだ、ここでの一日は外の世界では1時間となる」
「やはり……どこか、感覚が狂うのでもしやと思いましたが――」
どこか嬉しそうに答えるエヴァの話に、問い掛けたセイバーは納得と腕を組んでいたが――
「ちょ、ちょっと!? 異空間の創設と時間制御を同時にって……ほとんど魔法じゃない!?」
凜はなぜか戸惑っていたりする。いや、そう言われてもな。俺としては凄いな〜程度にしか思えないんだけど。
まぁ、そんなこともあったが、俺達の休暇が始まる……だよな? なんでだろ? 嫌な予感がするのは……
で、エヴァの別荘に来ると俺は仲魔を全員召喚し――
「あ〜……マッサージがこんなに気持ちいいものだとはなぁ〜……」
別荘にいた人形……だったっけ? 茶々丸に似た人にマッサージを受けていた。
で、その横では凜とエヴァにメディアがテーブルに向かいながら、ああだこうだと話し合っている。
内容は良くわからんが、魔法と魔術の違いとかを話してるようだ。それを氷室と夕映が熱心に聞いていたりするけど。
更にその横で高畑さんとシャークティさんがその話を聞いていたけど、なぜかシャークティさんの顔が険しいのが気になった。
で、他の奴らは思い思いなことをしている。水着を借りてプールで泳いでたりとか、話し合ったりとか。
別隣りでは、権三郎さんがお酒をちびちびと飲んでいたりするけど。
「翔太。体、大丈夫?」
「ああ、マッサージのおかげでかなり……って、おい」
やってきた理華に顔を向け、その姿を見た時に思わず顔が引きつってしまった。
「どうしたの?」
「いや、その水着は何?」
首を傾げる理華だが、俺は顔を引きつらせたまま聞いてしまう。
いやね、理華の水着がね……すっごいのよ。
「変かな?」
「変というより、なんだその露出はと言いたいんだが……」
理華は首を傾げるけど……いや、本当に何? その水着は? と、言いたくなるような物だった。
というのも……一応、ビキニなんだが……その面積が結構小さいのだ。胸なんて、はち切れんばかりだし……
あれ? 理華の奴、胸が更におっきくなってない? あ、いや、そういうことじゃなくて――
後、下の方もかなりきわどいし……
ちなみにだが、去年理華が着た水着はワンピースにパレオといったかな〜りおとなしめの物だったりする。
それでさえ、理華は恥ずかしがってたんだが――
「そうかな? 普通だと思うけど?」
なんて、理華はキョトンとしてたけどね……いや、それを普通と言っていいのか?
というか、何がありましたか理華さん? 去年のことを知っている身としては戸惑いを隠しきれませんよ?
「ねぇねぇ、翔太も遊ばない?」
「あ〜……すまん。ちょっと無理だわ」
「む〜……でも、しょうがないか……」
やってきたミュウに手を合わせて謝るが……ちなみにミュウも水着だ。
水着は薄紫のワンピース。こう見ると、ピクシーだった姿を思い出すなぁ〜。
「ところで……あなたはいつまでそうしているつもりですか?」
「いや、俺は休む為に来たんだけど?」
なぜか、ジト目で問い掛ける高音に首を傾げる俺。いや、本当になんでさ?
「あの方々達を見習いなさいな」
と言って、高音が手を向けた先では――
「その若さでここまで出来るとは……中々出来ますね、セツナ」
「いえ、私はまだまだです」
なんて、竹刀を構えながら言い合ってるのはセイバーと刹那。ちなみに刹那の方から頼んだらしいけど。
ていうか、元気だね……ある意味羨ましいかも。
「く、うわ!?」
「きゃあ!?」
「ネギ君!? 明日菜ちゃん!? おわ!?」
「ケケケ、ナンダソノ動キハ?」
で、こっちではネギと明日菜と士郎が、茶々丸をデフォルメしたような人形ことチャチャゼロとなぜか戦っていた。
鍛錬とかそういうのだろうか? でも、チャチャゼロが本気っぽいのは気のせいか?
まぁ、それはともかく――
「がんばってるねぇ〜」
「あなたもやったらどうですか!?」
「やれやれ、人の話を聞いていたかい?」
思わずそんな感想が出たが……いや、俺としてはがんばってるな〜としか思えないんだよ。
なのに、高音さんはお気に召さなかったようだが……そこで声を掛けたのは真名であった。
ちなみに着ているのは白のビキニ。しかも、理華並に面積が小さかったりする。
「あの戦いを見てないからわからないだろうけど、翔太さんはかなり無理をして戦っているんだ。
それに翔太さんは気や魔力を使えないからね。負担はそれだけ大きくなるのさ」
「どういうことですか?」
真名の話に問い掛けたのは刀子さんである。シャークティも聞こえたらしく、気になってこちらを見てるし。
「そうだな、岩などを破壊する際は道具や爆薬を使うだろう? お前達の場合、そういったことを気や魔力で代用しているはずだ。
だが、翔太は気や魔力を使えん。己の肉体のみでそういうことをやるしかないのだ」
「それって……」
「あの、どういうことなんですか?」
で、こっちにやってきたスカアハが話してくれるんだが、こっちも赤いビキニだった。
しかも、なんで理華や真名と同じなのよ? それしかないわけじゃないよね?
それはそれとして、刀子さんは何かわかったような顔をしていたが、愛衣はというと首を傾げている。
「わかりやすく言うとだ。気や魔力を使わずに岩を殴れば、普通は痛いだけだ。
だが、翔太はそれでも岩を殴り続けなければならない。そんなことをすればどうなるのかは……言わなくてもわかるだろう?」
「だったら、使えるようになれば良いではありませんか!」
「無理だな。翔太はその手の才能がまったく無い上に時間も無い。
この休暇だって、運良く手に入ったようなものだ。とてもじゃないが、覚える暇なぞ無いよ」
「すいません。泣いてもいいですか?」
何を言ってるんだと言わんばかりの高音だが、説明していたスカアハは呆れたように答えていた。
俺は泣きそうになったけど……いや、確かに気や魔力を使いたいな〜と思ったことはあるよ?
でも、使えないとハッキリと言われるとね……けど、スカアハの言い方を考えると、時間を掛ければ使えるようになるってことか?
ちなみに俺はそんなことを考えていたんで、高畑さんの同情的な視線に気付かなかったけど。
「それでも鍛錬を続ければ――」
「お前、人の話を聞いているのか?」
それでも反論しようとした高音だけど、それを遮る形で話しかけてきたのはエヴァである。
その顔は呆れたって様子を見せてたけど。
「聞いたであろう? そやつにはそれが出来るようになるだけの時間が無いとな。
だからこそ、そやつは戦い続けなければならない。もっともそのせいか、実力はとんでもなくなっているがな」
で、腕を組みつつエヴァは話すんだけど……俺ってそんなに強くなってるのかね?
ううむ、いっつも戦ってるのが悪魔とかそういうのばっかだからわからん。
「ま、そういうこった。だから、休める時に休んでおかないと、体を壊すだけじゃ済まないってことだよ」
なんてことを言いながらやってくるのはクー・フーリンである。
やはり水着で。まぁ、いわゆる競泳水着だったけど……でも、体のラインがくっきりと現れてます。
しかも、ありえないほどに……どんな素材を使ったら、そんなに出るわけ?
「良く考えたら、あんたも凄いことしてるわよね」
なんてことを言いながらやってくる凜。こっちは疲れた様子で肩を鳴らしていたけど。
その後ろでは氷室と夕映がなにやら熱く語り合っていたが……何を話してるんだろうか?
「ところでシャークティさんはどったの?」
気になったので思わず聞いてみる。いやね、さっきから険しい顔をしてるんで、嫌でも気になるんだって。
「いやね、どうやら遠坂君やメディアさんが使う魔術に思う所があるようでね」
「だって、あんなことが許されていいのですか?」
「ふん、所変われば品変わると言うだろう? 世界の違いが魔法と魔術という違いを生んだとしてもおかしくはない。
それと言っておくが、魔術の方が私好みだ。良い機会だから、じっくりと学ばせてもらおう」
苦笑する高畑さんの横でシャークティさんは文句を言っていたが、エヴァは腕を組みつつそんなことを話す。
好みだと言ったせいか、シャークティさんに睨まれてたけど。それはいいけどね。
「へいへい……ま、人それぞれって言うしさ……ともかく、俺はゆっくりと休ませてもらうよ」
「悪いけど、それは無理ね」
呆れつつもため息混じりにそう言っておいたら、そんなことを言われた……ちょっと待て。
うん、今の声は……まさかねぇ……と、思いつつも顔を向けてみると――
「ご機嫌よう」
凜とエヴァが座ってたテーブルに座っているスキマがいました。その背後には藍さんが控えてたけど。
うん、ちょっと待とうか……
「なんでいる、スキマ?」
「あら、昔みたいに紫って呼んでくれないのかしら?」
「てめぇ、昨日何したかわかって言ってるのか?」
「そのおかげで刹那ちゃんを助けられたじゃない?」
「やり方考えろ!? あの時は本気で死ぬかと思ったわ!?」
睨んでスキマと話し合ってたが、最後には叫んでしまった。いや、確かに刹那は助けられたよ?
でもね、いきなりあれは無いじゃん? あれは本気で死ぬかと思ったんだよ?
「えっと……彼女は誰だい?」
「八雲 紫。ああ見えて妖怪だ。それで何の用だ?」
「妖怪……ですか?」
高畑さんの問い掛けにスカアハが答えると共に、顔を向けて問い掛けていた。
話を聞いていた夕映が首を傾げてるけど。まぁ、見た目は妖怪には見えないよな。見た目は……
「何か失礼なことを考えているようだけど……まぁ、いいわ。私の用件は2つ。
まずはエヴァンジェリンの呪いを解きに来たのよ」
「私の呪いを……だと?」
「でも、まだソウマは手に入れてないけど?」
スキマの話にエヴァは訝しげな顔をしてるが、俺は首を傾げていた。
だって、マジでソウマはまだ手に入れてないし……作る材料もまだ集まってないしな。
「ええ……でも、あなたのお友達の中にはエヴァの呪いを解ける人がいるんですもの。
だったら、少しは妥協して呪いを解いた方がいいと思っただけよ」
なんて、スキマはどっかに顔を向けながら話していたが……
向けた先はパラソルの影で椅子に座って寝ている式とメディアだったけど。
ああ、なるほど……式は呪いを殺せそうだし、メディアはすっごい魔術師だから解けそうだよな。
「ほぉ……で、何を求む?」
「前にもらったお酒を1本でどうかしら?」
意味ありげな視線を向けるエヴァに、スキマはにこりと答えた。
エヴァは訝しげな顔をしてるけど、少し経ってから別の人形に指示を出してワインを持ってこさせていた。
高畑さんは少し驚いたような顔をしてたけど。普通なら話に乗りそうにもないもんな。エヴァの場合。
でも、たぶんだがエヴァはスキマの実力を知っているのだろう。だから、応じたんだと思う。
「これで良いのだな?」
「ええ、では早速――」
睨むエヴァにワインを受け取ったスキマは嬉しそうに閉じた扇子を軽く振り上げる。
それだけなんだが、エヴァは何かに気付いたように体を見回し――
「お、おお……なんと……あれほど苦労した呪いがこうもあっさりと……
ふふ……はははは……解けたぞ、茶々丸! 辛酸をなめさせられた呪いが!」
「おめでとうございます」
なにやら大喜びのエヴァに、茶々丸は無表情ながら手を叩きつつ賛辞の言葉を向けていた。
「ちょっと!? 何をしてるんですか!?」
と、いきなり怒り出したのはシャークティさんである。あ、高音も怒ってますよって感じだな。
「あら? どうかしたのかしら?」
「あなた、エヴァンジェリンが何者かわかっているんですか?
今でこそ取り下げられているとはいえ、賞金を掛けられた極悪人なのですよ!」
首を傾げるスキマに高音が怒鳴ってる。そういや、エヴァって賞金賭けられてたんだっけ。
で、シャークティさんも怒ってるって顔だな。
「あなた達はエヴァンジェリンの何を知っているのかしら?」
「「え?」」
が、スキマのひと言で高音とシャークティはポカンとしてたけど。
「あなた達はなぜエヴァンジェリンが賞金を掛けられることになったのか……
それ以前になぜ吸血鬼になったのか……それを知ってて言っているのかしら?」
「私としては、お前がなんでそれを知っているのかを聞きたいのだがな」
問い掛けるスキマだが、エヴァはそんなスキマを腕を組みつつ睨んでいたりするが。
いや、確かになんで知ってるかね? 漫画でも読んだか?
でもまぁ、漫画を読んでると……うん、エヴァって悲惨だったよね。
で、高音とシャークティさんは訳がわからなくて戸惑ってたが。
一方で高畑さんはつらそうな顔をしている。どうやら、事情とかは知ってるみたいだ。
そういや、同級生だったらしいし、付き合いも長いみたいだしな。知っていてもおかしくないか。
「それはそれとして……翔太、あなたには今すぐに幻想郷に来てもらうわ」
「なんでさ?」
「悪魔が現れたのよ。しかも、そいつらは霊夢を攫っていったわ」
「へ?」
来いと言われて嫌そうな顔をしてしまったが、そんなことを言い出したスキマの話に思わず思考が止まる。
霊夢が攫われた? あの霊夢が? ええと……マジですか、それ?
「言っておくけど、マジよ」
「考えを読むな……しかし、あの霊夢がな」
考えを読んだスキマに文句を言いつつも思わず考えてしまう。
あの霊夢があっさりと誘拐されるはずがないしな。となると、悪魔が強かったりするのだろうが――
「行かなきゃダメか……」
「当然でしょ? あなたにあれがなければ、頼みに来てなんかいないもの」
思わずため息を吐くが、スキマにそう言われてしまう。
くっそぉ……エヴァみたく俺の呪いも解いてくれないものか……この呪いのせいで俺は――
「言っておくけど、私でも無理よ。あれはあなたの運命とも密接に繋がってる……いえ、混ざってると言っていいわ。
それこそ境界が見えないほどにね。だから、私でもどうにも出来ないのよ」
なんてことを言ってくれるスキマ。だから、人の考えを読むなっつ〜の。
けど、それを聞くと……あのゴスロリボクっ娘め……本気でとんでもない呪いを掛けやがって……
「なんのことだ?」
「この場では少々言いづらいな。いずれ話そう」
気になったエヴァが聞いていたが、スカアハは腕を組みつつ答えていた。
そういや、俺の呪いのことはたやすく話すなって何度も言われてたけど……やっぱ、マズイのかね?
それはそれとして……
「はぁ……休めると思ったのになぁ……」
「ふふ……でも、これが無事解決したら、今度こそゆっくり休めるわよ」
立ち上がる俺にスキマは笑いかけるが……でも、それがすっごく大変そうなんですけど?
なんてことを考えつつ、俺は理華と共に準備をし――
「何をしてるんだ、お前ら?」
準備を終えて戻ってくると、さっきまで遊んでたり話し合ってたりしてた奴らが集まっている。
うん、何となくわかるけどね。でもね、そうではないと思って聞いてみたんだけど――
「別の世界に行くんでしょ? 私達も一緒に行こうかと思って」
「そうそう、仲間はずれは良くないぞ〜」
凜の言葉に蒔寺は腕を上げつつそんなこと言うし……あの、遊びに行くんじゃないんだけど……
「いいのか、あれ……」
「別に構わないでしょう。まぁ、口が軽そうな子には対策をしておくけど」
指を差して聞いてみると、スキマは閉じた扇子を口元に当てながら答えてました。
いや、本気でいいのか? 明らかに人数が多すぎるんだけど……にしても――
「エヴァも行くのか?」
「なに、幻想郷とやらを一度見てみたくてな」
頭になぜかチャチャゼロを乗せているエヴァは、腕を組みつつ意味ありげな笑みを向けながら答えてました。
それはいいんだが……大丈夫なんだろうか? 本当に……
そんなわけで一抹の不安を抱えつつ、俺達は幻想郷に向かうことに……無事に終わるといいなぁ〜……
あとがき
そんなわけで翔太の休暇が始まる……と、思いきや紫によって幻想郷で一仕事するはめに。
果たして、幻想郷で待ち受けるものとは――
次回は幻想郷に到着した翔太達。そこで賑やかながらも事態の解決の為に話し合うことに。
しかし、その中で映姫様が誰かを睨んでいるようで――
というようなお話です。次回をお楽しみに〜
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