out side
その少女はうつむきながら歩いていた。両手足を短い鎖で繋がれた鉄枷を付けた状態で――
なぜ、こんなことになっているのかは少女自身もわからない。罪を犯し、その罪を償う為というのはわかる。
問題なのは自分がどんな罪を犯したかだ。実の所、少女自身に罪を犯したという自覚は無い。
いや、覚えすら無いと言った方がいい。なのに罪を犯したと言われ、こうして拘束されて歩き続けることとなった。
少女は歩き続ける。自分がどんな罪を犯したのかを考えながら……だが、やはり思い当たる節は無い。
誰かを傷付けたりしたことも侮辱したりしたことも無く、仕事などで粗相をした覚えも無い。
ましてや上司となる存在に逆らったことも無くて……だからこそ、わからない。自分の犯した罪はなんなのかと――
そんなことを考えながら歩き続けたせいだろうか。少女の瞳は虚ろな物であった。
「来たか……」
ふと、声が聞こえて少女が顔を上げる。
その先には某有名宗教の司祭が着るような祭服に身を包んだ男が立ち、少女を見下していた。
「数百年……ここではそれだけの時が過ぎ、その間お前は自身が犯した罪を自覚し、償う為にそれだけの間を休むことも許されずに歩き続けた」
見下す男の言葉に少女はうつむくしかない。
確かに人間では無い自分でなければ、それだけの時を生きることも休まずに歩き続けることも出来なかっただろう。
この地もその為に用意された物だ。外の世界ではそれ程時が経っていないはずなのだし。
「それで、お前は己が犯した罪がなんなのか、自覚することが出来たか?」
見下したまま問い掛ける男に少女はうつむいたまま首を横に振るしかなかった。
自分の犯した罪がなんなのかわからない。例え、出鱈目を言っても嘘を言ったとして更に罪を課せられる。
だから、少女には首を横に振るしかなかったのだ。
「愚かな! 未だに己の罪を自覚出来ないとは! なんたる不心得者だ!」
一転して怒り出す男だが、少女は反論出来ない。
『神』であるはずの自分が自らが犯した罪を自覚出来ないとは……不心得者と言われてもしょうがないだろう。
「そんな者を許すことなど出来ぬ! 故に貴様を更に数百年幽閉する!」
男が怒りのままに叫ぶが、少女はただ黙って聞くしか出来なかった。
しょうがない。しょうがないのだ……悪いのは自分なのだから――例え、同じ罰をもう何度も受けたとしてもだ。
だから、不満は無い。ただ、心残りがあるとしたら、あの村の者達が無事でいるか……それだけが心配だった。
「何が罪で許さないですか。あなた達の都合を彼女に押し付けてるだけでしょう?」
「何者だ!?」
不意に、聞き覚えの無い声が聞こえてくる。その声に男と少女は辺りを見回し――
「がはぁ!!?」
「え?」
男の悲鳴と共に見えた光景に少女は目を見開いた。男の胸からは腕が生えていた。
故に最初は何が起きたのかわからない。だが、すぐに男が誰かの腕に貫かれたと理解する。
理解したことで恐怖した。なぜなら、男は自分よりもより高位な神なのだ。故に力の方もそれ相応に持っている。
その存在の体を貫くなど簡単に出来ることでは無い。『自分でも無理だと少女自身が思ってる』程なのだから。
「ぐああぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁ……」
やがて、胸を貫かれた男は断末魔と共に体が塵となって消えていく。その光景を見ていた少女は恐怖のあまり動けずにいた。
しばらくして男が完全に消滅すると、その後ろには穏やかな表情をした青年が1人立っていたのである。
「さてと、初めましてお嬢さん。私、魔族をやっております、アオイ シンジという者です。以後、お見知りおきを」
「ま、魔族……」
胸に右手を当て、丁寧に頭を軽く下げながら自己紹介をするシンジ。その姿を少女は恐怖したまま見つめていたのだった。
これが少女――キャナルがヴォルフィードと1つとなる数日前の話である。
in side
さて、アシェラトとヘルマンとの戦いが終わった次の日。
レッドスプライト号の中で学園長や高畑さんにエヴァ、なぜかいるネギご一行と共にアシェラトの話を聞いていたりする。
エヴァ達を紹介した時のタカハシさん達の表情はなんというか……え?っという感じだった。
まぁ、しょうがないだろう。エヴァはまだしも学園長の頭とかネギが10才で中学校の先生してたりとかな。
一方で理華達はここにはいない。その理由は後で話すけど。
ちなみに今のアシェラトの格好だが俺が土下座までしてお願いした結果、仕方がないと長すぎる自分の髪を水着風に纏ってくれました。
うん、何も変わって無いね。下手すれば裸よりもエロスだよ? 纏った髪のスキマから色々と見えるからね。
そういえば、その時に真名が「翔太さんは露出が多い女性は嫌いなのかい?」なんていうことを聞いてきやがった。
確かに俺の周りの女性達を考えると女性を露出させるのが好きとか思われてもしょうがないかもね。
俺としてはすっごく嫌だけど。だが、嫌いというわけでもない。
なので、「同意の上で誰もいない所で自分達同士ならまだしも、他の人の前でやられても困るだけだからな」と答えた。
言った後で露出させ好きと公言してるような言い方に気付いて落ち込んだけど。
が、それを聞いた真名に刹那とエヴァがなぜかガッツポーズをしているのがひどく気になった。
それに千鶴に裕奈にアキラ、更には楓までが興味深そうにしていたのも凄く気になったよ。
うん、気のせいだよね? 真名と刹那が露出豊富なコスプレしてるのも――
いや、なぜにその格好? と、聞きたかったけど、聞くと地雷踏みそうで怖くて出来なかった。
話が脱線しまくったが、アシェラトにメムアレフが何を企んでるか聞き出すことにしたんだよ。
が、そのほとんどはシンジの話(第85話参照)と変わらぬ物だったりする。他にもないかと色々と聞いてみたんだが――
「他にと言えば、本来ならば我が母の計画はすでに終わっていたはずだったとかだな」
「どういうことですか?」
「なに、各世界での準備はすでに終わっていて、後はある世界に手を加えることで崩壊が始まるはずだったのだ」
話を聞いて問い掛けるフィオナに話していたアシェラトはなぜかこっちを見ながら答えるんだが――
いや、なんでこっちを見ますか? 俺、その時に何かしたっけ?
「その手を加える世界に行くはずだった悪魔が翔太に倒されてな。計画を見直すこととなったのだ。
つまり、今も各世界が無事なのも翔太のおかげとも言える」
「へぇ、翔太さんはすでに世界を守っていたわけか。流石だね……って、翔太さん?」
アシェラトの話に感心したように顔を向ける真名だが、俺はというとテーブルに突っ伏していた。
今の話で思い出すのは初めてボルテクス界に来てしまい、元の世界に帰ろうとそこへと繋がる穴の前にいた悪魔。
なるほど、あいつがあんなに怒って――というか、必死だったのはそういうことだったのか。
そうかそうか……て、納得出来ねぇよ。
「俺はそれでこんなことに巻き込まれてるのかよ……」
「あ〜いや……そんなに落ち込まなくても……君のおかげでボク達もこうしていられるんだからさ、ね?」
「そうですよ! 翔太さんは凄く良い事をしたんですから、あいたぁ!?」
「バカネギ! 少しは翔太さんの様子を見ていいなさいよ!」
すっごく落ち込む俺に高畑さんは苦笑しながらもお礼を言うけど、それに触発されてかネギが興奮しながらそんなことを言い出す。
もっとも、俺の様子に気付いたらしい明日菜に頭をはたかれてたが。
うん、本気で嬉しくない。いや、あのことがあったからこそ、今こうして生きていられるってのはわかってるよ?
でもね、あれが切っ掛けで命を賭けるどころか、色んな世界の命運背負わされる身にもなって欲しいんだけど?
しかも、その原因作ったのがあのゴスロリボクッ娘だし……くそう、殴れるなら本気で殴りたい。割とマジで。
「話を続けるぞ? それによって、我らが母の最終目標はこの世界と聖杯がある世界となった。
2つの世界には巨大な力が蓄えられているからな。それを利用しようとしているのだろう」
「聖杯がある世界……凛達がいる世界のことか――」
「あれ? じゃあ、なんでまたなのは達の世界に手を出したんだ?」
アシェラトの言葉にエヴァは腕を組みつつそんなことを思い出すけど、俺はというとそのことを思い出して顔を上げて問い掛ける。
といっても、ある程度は予想は出来てるんだが。
「なのは達の世界? ああ、新しく穴を通した世界のことか。
あそこには宇宙の卵の代わりになりそうな物があったから、それを手に入れようとしていたようだな」
アシェラトの返事にやはりかと思う。だって、なのは達の世界にはジュエルシードがあるしな。
シンジも言ってたと思ったが、やっぱりジュエルシードを使おうとしてたようだ。
ちなみにこの時はこのことを考えてて気付かなかったけど、エヴァや真名、刹那にアキラ、千鶴、裕奈に睨まれてたらしい。
どうやら、俺が言っていた名前がすっごく気になったらしいけど。
「となると、なのは達の世界はジュエルシードを渡さなければ大丈夫っぽいな。後はここと士郎達の世界だけど――」
「凛達の世界の方はわからんが、こちらで巨大な力となれば世界樹の魔力のことだろう。
そして、その世界樹の魔力が一番高まるのが今年の麻帆良祭の最終日。メムアレフが本格的に狙ってくるとすれば、その日だろうな」
俺の考えに腕を組んでるエヴァがそんなことを言ってくるが、まずその通りと見ていいかもしれない。
士郎達の世界はアシェラトの話を聞く限り聖杯が狙いと見ていいけど、そっちの問題はいつ聖杯が現れるかだ。
俺の記憶が正しければ、聖杯を出現させる為にはサーヴァントである英霊達の魂を入れなきゃダメなはず。
しかし、俺やシンジの行動によってサーヴァントは今の所誰1人として死んでいない。
これはこれで喜んでいいのだが、そのおかげで聖杯が出現しなくなっているはず。
まぁ、この辺りはシンジがどうにかすると思うけど、気になるのはどうしても思い出せない部分だ。
何が思い出せないかというと、聖杯を出現させる為にはもう1つ必要だったという記憶がある。
が、そのもう1つがなんだったのかが思い出せない。確認しようにも今は元の世界に戻れないしな。
士郎達の世界に行けたら確認しておくか。で、このネギ達の世界だが、エヴァの言うとおりと思っていい。
むろん、確定してるわけじゃないから油断は出来ないけど、その日が来るまでは準備が出来ると思ってもいいはずだ。
「それはそうと、翔太君達はこれからどうするのかの?」
で、そんなことを考えていたら、学園長にそんなことを聞かれて……深いため息を吐くはめになった。
現状を考えるとなのは達の世界に行って、ジュエルシード探しを手伝った方がいいのかもしれない。
でも、懸念があって……その懸念というのが――
「俺としてはすぐにでも行きたいんですけど……キャナルが、ねぇ……」
思わずそんなことを漏らしてしまう。
キャナル……スカアハと名乗っていたヴォルフィードと融合していた少女なのだが、色々と話を聞いたんだわ。
で、驚くことのオンパレードだった。まず、キャナルは女神とのこと。しかも、ボルテクス界の悪魔の一種族というわけでは無く、純粋な。
ただ、なんらかの罪を犯してしまい幽閉されていたんだが、シンジに無理矢理連れ出された挙句にヴォルフィードと融合させられたらしい。
シンジがなぜそうしたかは置いとくとして、それ以外はもの凄く胸くそ悪くなった。というのも――
「キャナルの話に出てたシンジが言ってたことを考えると、キャナルが不憫に思えまして――」
「まぁ、神話の中にはそういった話もあるからな。ありえない話じゃない」
俺の話にエヴァが同意するようにうなずいていた。
神話の話はわからんが、シンジの言ったことを考えるとキャナルは無罪。罪を犯してないってことになる。
つまり冤罪ということなんだが、問題はなんでそんなことになったかだ。
キャナルの話を聞く限りじゃ、問題らしい問題を起こしてないようだしな。
幽閉される前も上司である神様の素晴らしさを説く為にある村にいたそうなのだ。
でも、その村の手助けをしたのと上司の神様の素晴らしさを説いた以外はこれといったことはしてないらしい。
キャナルの様子を見てると自分が罪を犯したということを後悔してる一方でなんの罪を犯したかわからないといった感じだった。
俺が見る限りだけど嘘とか言っているようには見えなかったので、そういうのも考えられたわけだ。
が、問題はどうやって解決するか? なんだよな。解決しようにもキャナルの世界がどこにあるかわからないし。
行けても解決出来るかどうかもわからん。というか、行ったら行ったでバトルになりそうな気がする。
でもまぁ、そっちはそっちで別に考えるとして、一番の問題はキャナルをどうするかなんだよ。
というのもキャナル、ヴォルフィードがいなくなったのは自分のせいだと思ってて落ち込んでる最中だ。
さっき話してた罪のこともあって、完全にふさぎ込んじゃってるんだよね。うん、本当にどうしたものか――
キャナルを放っておくというのは無しだ。ヴォルフィードに頼まれたってのもあるけど、なんか放っておけないしな。
でも、どうしたらいいものかわからない。今思うとヴォルフィードの助言のありがたさが身に染みるよ。
というわけで、今は何していいんだかわからん。真面目にわかりません。うん、どうしようか?
キャナルを連れてなのはの世界に行った方がいいんだろうか? このレッドスプライト号に留守番してもらう手もあるし。
「とりあえず、予定が決まっていないのなら、今日ぐらいはここで休んだらどうだ?」
「え? いいのか、それって?」
「ボクは構わないと思う。夕べの戦闘もあるけど、今は何をするべきなのか見えてないからね。焦って行動することもないだろう」
エヴァの提案に首を傾げるが、高畑さんの話には納得する。
シンジの指示待ちってのも考え物だが、今の所何をするべきなのかわかってないしな。
それに緊急事態ならシンジから連絡が来るだろうし……来るよな?
「まったく……確かに今のお前にはのんびり出来る時間は無い。だが、時間があるなら心と体を休ませるようにはしておけ。
それにキャナルや今関わってる事のことも考える時間も必要だろうしな。必要なら、私の別荘を貸したっていい」
なんて、呆れた様子でエヴァは言ってくるけど、そうかもしれない。
いやね、俺も悪いかもしれんけど、色んな事が知らない内に起きてたり進んでたり、とんでもねぇことに遭遇したり――
うん、なんというかね、考えがおっつかないのよ。1つのことに悩んでると次のことが起きたりとかして。
そういった意味ではエヴァの提案はありかもしれないな。
「じゃ、そうさせてもらうか」
そんなわけでOKを出したわけだが、この時は気付かなかった。
エヴァ、真名、楓、千鶴、アキラ、裕奈が内心ガッツポーズを取っていたなどと。
更にはこれが地雷を踏む行為だってことに……いや、余裕が無かったとはいえ、なんで気付かなかった自分?
全員、それらしいことを見せてたじゃないか。
そして、刹那がどこか不安そうにしていたことにも――
out side
その頃、クー・フーリンはレッドスプライト号の外で1人槍を振り回していた。
本人としては鍛錬つもりであったが、その表情を見ていると何かに必死になっているのが見て取れる。
クー・フーリンもそのことには気付いていたが、どうすることも出来ずにただ槍を振り回し続けていた。
やがて、その動きを止めてため息を吐き、レッドスプライト号の中へと入っていく。
そして、翔太と合流しようと中を歩いていると休憩所となっている場所でベンチに座りうつむくキャナルが見える。
また、そんな彼女を心配そうに見ている理華、美希、ミュウとアリスにフロストとランタンの姿があった。
「なんだ、まだ泣いてんのか?」
呆れた様子で問い掛けるクー・フーリンだが、内心は複雑だった。キャナルがどうしてここにいるかの事情は聞いている。
それによって、彼女に何があったのかを大体を察することが出来、それと同時に憤りも感じていた。
話を聞く限り、キャナルはなんの罪も犯してはいないだろう。となれば――
それがクー・フーリンを憤らせるのだ。なぜ、彼女に謂われの無い罪を着せらねばならないのかと。
「ですが、私のせいでヴォルフィードさんが――」
「少なくともお前さんのせいじゃねぇよ。あいつだって覚悟あってのことだったんだろうしな」
泣きそうになりながら呟くキャナルにクー・フーリンは困ったように頭を掻きながら答えた。
この話は翔太に聞いたのだが、スカアハ――ヴォルフィードの行動は少なくとも覚悟あってのことだろう。
自分達の前からいなくなるという覚悟が――だからといって、自分達も大丈夫だとは限らない。
現にクー・フーリンや他の仲魔達もヴォルフィードがいなくなったことに戸惑いを感じているのだ。
それ程までにヴォルフィードの存在は大きかったのである。故に悩むのだ。これからどうするべきかに。
(覚悟……か――)
クー・フーリンはふとそんなことを考えてしまう。自分に覚悟が無いとは思えない。
事実、オニであった頃はその身をていして翔太を守ったこともあった。
だから、その時がくれば、またそうする覚悟はあった。あったのだが――
ここに来て考えさせられたのである。覚悟の末に散っていく者はいいかもしれない。
だが、残された者はどうするべきなのか? こうして垣間見てしまうと、その覚悟も揺らいでしまいそうになる。
もし、その時が来たら自分は今度どうするべきなのか、思わず悩んでしまうのだ。
「ボク達は大丈夫だホ。だから、もう泣く必要は無いんだホ」
「そうだホそうだホ」
一方でキャナルを慰めようとしてるのか、フロストとランタンはそんなことを言い出している。
もっとも、2人は2人で困っていたのだ。この時、どんな風に言えばいいのかに。
フロストとランタンは種族的なものなのか、悪魔達の中では精神的に幼い部類に入る。
それは普段ならば問題は無かった。だが、このような時には困ってしまうのだ。
なまじ、このような経験がほとんど無い為に。それでもキャナルを泣かせておけないと放っておけない。
だからこそ、2人は自分達なりにキャナルを励まそうとしていたのである。
アリスとしてはキャナルの気持ちは少しばかりわかるような気がしていた。
アリスは悪魔に取り憑かれ、それをどうにかしようとして自ら命を絶った経験がある。
しかし、その結果は家族を不幸にしてしまい、その悲しみから悪魔に意志を完全に乗っ取られ――
そのことに後悔が無いとは言えない。悪魔に意志を乗っ取られたとはいえ、人々を襲い殺めていたのは事実なのだから。
その償いとして、アリスは翔太達に協力している。自分を救ってくれた者へのせめてもの償いの為に。
かといって、キャナルに何を言えばいいのかはわからない。彼女に何をさせるべきなのか? それが見えないからだ。
理華と美希、ミュウにはただキャナルを見つめているしか出来なかった。複雑だったのだ。
そうだろうとは思っていた。でも、あの時のヴォルフィードの表情を見て、ハッキリとわかってしまう。
彼女は翔太に想いを寄せながらも、それでもやるべきことを貫き通したのだと。
それと共に考えてしまう。今の自分達はどうなのかと。翔太に依存していると言われれば、そうなのかもしれない。
事実、こうしている間も不安になってくる。翔太がそばにいない。ただ、それだけなのに。
もし、本当に翔太に会えなくなったら……そんなことは考えたくも無かった。
だからこそ、ヴォルフィードが羨ましくもあった。想い人にもう会えなくなるのに、それでも別れる覚悟をしたその精神が。
それがあって悩んでしまう。自分達はこのままでいいのかと――
キャナルも悩んでいた。上司である神に罪を犯したと言われ、更にはヴォルフィードがいなくなる。
そのどれもが自分のせいに思えて、どうしたら償えるのかと考えてしまうのだ。
本人としては簡単に償えるものでは無いとは考えてはいる。それでもどうにかしたかった。
自分が出来る範囲でだけでも償いを……でも、今の自分には何も出来ない。
そんな自分がどうやって償えというのか――それが彼女を悩ませた。
この場にいる誰もがそれぞれの答えを見いだせてはいない。そのことに悩んでいたせいで理華達は失念していたのである。
ここには自分達以外にも翔太を想う者達がいることに――
あとがき
そんなわけで本当にお久しぶりです。最後の投稿から3ヶ月くらいでしょうか?
いや、本当に時間が掛かってしまいました。なんでこんなに時間が掛かったか?
ひとえに大雪のせいです、こんちくしょう……え? 大雪と執筆が関係あるのか?
実はあったりします。私は東北の雪が結構積もる地域にいるのですが、今年は皆さん知っての通り大雪。
で、家で雪かき出来るのは私のみ。両親は仕事の関係で出来る状態ではありませんので。
まぁ、ここまでならば問題は無かったのですよ。問題は雪かきする広さと量でして――
広さは駐車スペースにして3台分+一部道路(やらないと車で出る時に大変になる)
これでも雪の降る量が少なければ良かったのですが……大雪で時には軽自動車以上の大きさの雪を片付けるはめになってます。
で、私も仕事をしてますから雪かきの後に仕事に行って、戻ってくるとまた積もってるのでまたもや雪かき――
そんな日々の繰り返しのせいで疲れて執筆どころではなかったりしました。
うん、本当に大雪じゃなかったらね……休日に8時間ぶっ通しで雪かきのなんてのもありましたよ。
まぁ、それはそれとして、今回は簡単にでも拍手のご質問にお答えします。
今回はキャナルってあのロストユニバースの? というご質問。お答えしますとキャラの名前と姿を使わせてもらってます。
で、なんでまたキャナルを使ってるのかと言えば、私的に嫁ですからとしか言えません(おい)
というのも私がアニメに漫画、ラノベにはまった切っ掛けがキャナルでしたので。
初期の頃の私の作品知ってる方なら、納得してるかもしれません。
初期の頃は本気でロスユニを多く書いてましたしね。なので、また使いたいな〜と思ってたわけです。
なので、思い切って使ってみました。まぁ、原作やアニメの設定だと色々と問題なので、この作品用の設定にしてますけど。
で、次回ですが、なんとか一息付けた翔太達。
しかしながら、ヴォルフィードがいなくなったことに戸惑いを隠せない翔太達。
一方でエヴァ達ネギま組はなにやら企んでて――というようなお話です。
ぶっちゃけるとお色気回です(おい)では、また次回お会いしましょう。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m