(BGM  冷厳なる守護者のカルテット 戦女神MEMORIA――戦闘終了まで――)




 「ヴァイスハイト閣下! こちらです!!」


 絶叫の様な報告、その発生源に向かい両先輩に続いてオレも奔る。とんでもない戦闘になった。もうゲームの常識が通用しない。何処ぞのSFアニメの世界だ。ここはディル=リフィーナなんだぞ! 世界観変えないでくれ!!
 悪態を突きながら声の向こう側から飛んでくるアームバンドの一つを掴む。それに体重を預け断崖を蹴る。僅かな落下の気配の後強烈に引っ張られる感触、一気にソレが目の前に迫ってくる。牽引魔導索(トラクタービーム)! 既にコレすら実戦配備なのかよ。西領の底力をまざまざと見せつけられる。其のまま艦舷まで引き寄せられ体の撓りを利用して飛び降りる。
 全長120ゼケレー(360メートル)全幅20ゼケレー(60メートル)、海を進む帆走戦列艦を数倍した姿、ガレー櫂を模した浮遊術式による輪形精霊光が船体周りを取り囲み、後方の旋回推進翼が騎馬をも超える速力を与える。両舷に数十門配された大口径魔導砲、船尾にせり上がるように聳え立つ艦橋。前方にも戦闘艦橋が聳え立ち、其の間に三本ものラティーンセイルを張ったマスト。
 それがオレ達を回収したと同時に速度を上げ、リプディールの山渓から離れて行く。目指すは前方。信じ難い……いやこのゲームをやりこんだオレですら絶句するしかない情景、【魔導巧殻】その真なる戦闘運用が行われている戦場に向かう。
 そう、オレの今度の戦場は戦闘指揮。その場所は西領艦隊旗艦 魔導戦艦一番艦

 
【ドレッドノート】


 本来帝国内乱まで完成していない筈の超兵器の上にオレはいる。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――




――魔導巧殻SS――

緋ノ転生者ハ晦冥ニ吼エル









 「エイダ様!」

 「このぶわヵ者! 無茶苦茶しくさりおって! 主の方が先に死んでどうするのじゃ!!」


 指揮所に跳躍して飛び込み怒鳴られる。そりゃ確かに無茶でしたよ。でもあのドラゴンブレス一回は防いでおかないとギュノア百騎長は兎も角、先輩達は警戒しない。特にリセル先輩は対竜戦闘経験皆無なんだ。あのドラゴンブレスの直前、竜の顎を向けられた時、先輩の足が止まってしまった。本来竜が敵意を向けただけで人間族はその恐怖から動きが止まってしまう。激鱗の前には何もかもが無駄だと言わんばかりにね。だからこそオレもアル閣下も即座に割り込み防御に走ったのさ。オレはこれをある程度想定してたけど【崩壊のディザイア】が無かったらどうなっていた事か。
 向こうで黒い光が炸裂してる。ヴァレフォル得意の闇系精霊魔術【ティレルワンの闇界】、ないし【ティレルワンの死磔】。どちらにしても最高位魔術だ。竜族の魔法耐性も此処までくれば防ぎきれない。


 「状況!」

 「フン! 押しておるわ!! あの小娘、とんでもないバケモノじゃな。拾ってきたと言っておったがそれも【知っておった】のか?」

 「まさか! 彼女はテレジット、最下級ですが育て上げれば走らせることに関しては最強の獣人ですよ。ですがアレは違う、断じて違う! アレは魔神ヴァレフォル。イアス=ステリナのソロモン72柱が序列6位、バーニエを襲ったグラザ等比較にならない超常です。」


この序列は戦闘実力と言う意味ではない。格の問題だ。実際深凌の楔魔の中にもソロモン魔神がいる。だから多少拡大解釈させねばならない。今の事態をオレと同じ危機感で考えられるように。


 「なに!」  想定通り驚くエイダ様に、

 「勿論、劣化してますけどね。」  あっさり前言を覆して見せる。


 問題はそれほどの大物――特にゲームにとっての大物――が介入してきたという事実なんだ。と……思う間もなくゴツンと後頭部にエルボーが飛んだ! ジト目で睨むエイダ様、突っ込まなくても良いじゃん!! 


 「つまりお主流に言えばそこまで【知らなかった】ということだの?」


 その皮肉、全く同感。こうして考えると彼女の好い匂いや悪い匂いが解ってくる。後の時代にヴァレフォルは好い匂いの元たる神殺し――正確には正義の大女神アストライアの肉体――に釣られて来るんだ。リプディールと次元的近郊地帯にある【狭間の宮殿】、其処には神殺しの強力な存在証明(のこりが)がある。まぁ今後何処ぞの港町(ミルフェ)で勘違いから酷い目に合う第三使徒(シュリ)ちゃんには御愁傷様と言っておこう。では悪い匂いというのがあの結晶体。己を封印し歪めた力として……あ!


 「(そういうことか、ジルタニア。これは一種の実験と言う事か。人為的に御物を創り出し、それを強力な魂に制御させる。結局失敗したのが今のエア=シアルの有様と言う事か。)」


 な、なんて奴だ! 魔導技巧師が判断した失敗、それは常識の範疇でしかない。其処から外れ、いやもう道義も人倫も神意すら斟酌し無い。それら全てを逸脱した禁忌、それを奴は禁忌と定めていたのか!!
 奴は、奴だけは絶対に表舞台に出してはいけない。奴が出た段階で現神はメルキアを問答無用に滅ぼす敵として認識する。彼を放置できないのは簡単だ。結局のところ皇帝ジルタニアとアルの融合は三神戦争の発端となった神【機工女神】の復活に等しいのだ。現在の現神の覇権、これが根こそぎひっくり返る。現神はアヴァタール東方域どころか中原、いやラウルヴァーシュ大陸全域を犠牲にしてでも三神戦争を再開させジルタニアを滅ぼそうとするだろう。
 それしか手が無いのだ! 今敗北し現神の下で永劫たる辛酸を舐め続けている古神の末路、それを現神も辿ることになるのだから。エイダ様に手短に話す。だからかもしれない。グラザ、エリザスレイン……こいつらですら先兵に過ぎない。今、このメルキア中興戦争は世界の興廃を動かす中心軸となりつつあると言う事か。
 聞いていたエイダ様、此方見て静かに立ち上がり前線に向かって歩く。エイダ様の苦衷の声、ジルタニアが何をしようとしているのか解っていた。いや解っていて恐怖と言う感情だけで目をそらし続けていた罪を告白するように。


 「すまぬ。妾は全ての切り札を切らず此処まで来た。実はの……主の言う『すぐやる計画』『真打ちの計画』。妾流の其の計画は存在し、既に完成しておるのじゃ。対南領戦争の切り札としての。じゃが、もう温存等と言う贅沢はできぬ!」


 エイダ様の体が膨れ上がる!? いやこれは体で無く魔力? いやそれとは異質の力! あの莫迦王と同質の存在力――即ち闘気、エイダ様、貴女も超常級だったんのですか!! 凄まじい力の噴き上がりに彼女の鎧も魔導兵器も衣服も燃え上がり吹き飛んでいく。


 「シュヴァルツバルト・ザイルード! 洞窟の外にヴァイスハイトとリセルを連れて行け。其処に『すぐやる計画』が存在して居る。そして刮目せよ。妾の『真の計画』、いや皇帝と四元帥のみが知る魔導巧殻、その真なる戦闘形態を!!」


 猛攻撃に耐えかねたエア・シアルが無理矢理天井に開いた穴から這いだし空に逃れようとする。それを闘志と憐みの瞳で彼女は見やり、咆哮する。


 「リューン! 同調開始。メルキアの流儀、見せるぞ!」


 リューン閣下が転移! 嘘だろ……アルやノイアスだけじゃないのかよ。吹きあがる闘気で全裸となったエイダ様の胸の部分にリューン閣下が磔にされる格好で配置され、リューン閣下の胸――御物の搭載位置――が割れるように開いて青い光が溢れ出す。それは青の月リューシオンに似て何処までも清浄で……

 
光が爆発する!!!


 その光柱から歩み出す彼女。それはエイダ様では無く、リューン閣下でも無く、そもそも妖精形態ですら無い女性の体躯。スリムな胴鎧に過剰なほど巨大なショルダーガード、サイドスカート――内蔵型多連装魔導砲――を纏う。背中に装着され発砲時は頭上に展開する魔導荷重力子照射砲【ドゥン・レーゲン】(グラヴィティ・ブラスト)、右腕はその手ごとオレの砲楯をさらに一回り膨らませた単装魔導光分子砲と一体化。それはアル閣下の衣装、

 
【魔導巧殻砲撃戦衣装・アイデスゲルデ】


 いや、それはオリジナルである筈のアル閣下と似て異なるナニカ、その女性――リューン閣下がもし成熟し女性となったらこうなるであろう似姿――が彼女の口癖をエイダ様の声で真似る。


 「【魔導巧殻(・・・・)リューシオン(・・・・・・)】、何故四元帥というオマケ《・・・》が必要なのかこれで解ったですの? これがシュヴァルツバルト・ザイルード。貴方の【知らない】真実。」


 オレの膝が耐えられず折れて尻餅をつく。躯そのものががくがくと震え言葉が出ない。気が付くべきだった。魔導巧殻はあくまで封印。それを守る為に帝国四元帥が存在していると言う固定概念がオレの思考を停止させていた。何故可愛らしい妖精型の戦闘機械に擬態(・・)する必要があったのか。何故ジルタニアは万夫不撓の勇者たる四元帥を使い捨て(・・・・)と言いきったのか。そして何故あの莫迦王が直感同然で魔導巧殻を頂上決戦の枠外(・・)に置こうとしたのか。ズキリと激しく何かが痛む。魔導巧殻が禁忌なのが今解る。晦冥の雫、それだけが原因ではないのだ。


「(機工女神と同質の力。即ち機工融合能力(シュミハザ)の行使!)」


 勿論其の物じゃない。現神がそれを許す筈もない。似て異なる劣化品、魔導によってリスペクトされたガワだけの代物。それでも、それはオレの目指す『真なる計画』にあまりにも似て……


 「ルツ、後退するぞ! エイダ様の指示に従え!!」

 「シュヴァルツ君、あぁもう! 引っ張っていきますからね!!」

 「よりにもよって融合騎(コレ)はないだろー!!!」


 此方側では意味不明のオレの糾弾内容、引き摺られて行きながらそれを知る者はいないと信じたい。




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 魔導戦艦の後部艦橋、その最上部が開きこれまた他ゲームのロボット兵器が現れる。回転するアームで側面に移動しロボット兵器のスラスターが火と水の魔力残滓を吐き出す。


 「シャッスール・ド・シュヴァリエ零号機スタンバイ、ヴァイスハイト閣下、どうぞ!」

 「解除!」


 右舷側のヴァイス先輩の機体がロックを外され自らの噴射炎でドレッドノートを追い抜いていく。今度が左舷側のアームに同型機がセット


 「シャッスール・ド・シュヴァリエ弐号機スタンバイ、リセル閣下、どうぞ!」

 「解除!」

 左舷側のリセル先輩の機体が後に続く。


 「乗員傾聴! これより魔導戦艦・ドレッドノートはリプディール上空戦闘空域に入る。既にエイフェリア元帥閣下が魔導巧殻・リューシオンを用い戦闘を開始しているが其の稼働時間は短いらしい。我々は戦闘を引き継ぎ、エア=シアルを今度こそ叩きのめし、皇帝ジルタニアの野望を挫く!」


 オレの声と共に戦闘艦橋に居るアディばーちゃんの『魔焔反応炉、第一戦速へ、両舷魔導砲斉射準備、艦首魔導光分子砲魔焔充填開始。』、その命令と復唱が続き、二週間前に竣工したばかりの新造艦が熟練の動きで戦闘空域へ突入する。そう、本来こんな馬鹿げたことはない。そもそもそんな熟練の乗員が何処に居るのか? と言う話に成る。だからオレとエイダ様はこいつが出来る前にまず乗員から育て始めたのさ。
 魔導装甲や魔導外装、これらの試作品で魔導戦艦の練習台を作り徹底的に乗員を鍛えた。魔導戦艦の完成スペックを逆算し猛訓練を行う。必要なら天馬騎士や鷹獅子騎士でユン=ガソル製の木偶凧を引っ張らせ操縦感覚を身に付けさせるという荒技までやったんだ。その成果が今試されている。
 不意に近づき甲板に降り立った闇色の翼、何者か!? と思えば。洗濯板娘(アル)が成人すればこんな感じだろうな? という格好の女性、でも口調はアル閣下のものではない。


 「よ? アンタがこの戦場の指揮官??」

 「魔神・ヴァレフォル!」

 「へえぇぇっ! 私を知ってるんだ!? 昨今のニンゲンって物知りだねぇ。私のことなんか誰も知らないと……ところで魔神って何?」


 あ……そうか彼女はシュミハザの被験体にされて記憶も力も奪われていたっけ。それが明かされるのは神殺しと共に真のウィーンゴールヴ宮殿を見つけ機工天使フラウロスと再会してから。


 「失礼、盗獅子・ヴァレフォル。こっちでいいか?」

 「そうそう! ホント良く知ってるねー!!」


 それよりも尋ねたいことがあるよ。アンタさっきまでの姿はどうなった? しかも今の衣装、アル閣下の『いっちょおらぁ〜♪』こと、【躁球士の衣装】じゃないか! 聞いてみるとあっけらかんと


 「このチビッ子、凄いじゃん! 使っているブツはヤバイなんて物じゃないけど、ちょっとさっきの同調方法真似させてみたらちゃんと出来てる。」


 ぅヲィ! ぶっつけ本番であんな真似できる訳が……そうか! 彼女がシュミハザ被験者であることが融合、同調に適正を与えているのか。しかも尋ねると内部封印の事もモノバレだった。彼女も危険判断して先程同調しているアル閣下に『どんなことがあろうとも封印を解放するんじゃないよ!』と念押ししたらしい。そう、ゲームにおける終局、魔導兵器ノイアスを倒す為にアルが自力で封印解放を行ったことが晦冥の雫の再稼働の原因になったんだ。
 残る三体の外郭封印? ゲームでもそれだけでは保って2年、最悪2週間で晦冥の雫が封印を破り中原全土を闇で覆い尽くすとされている。有難いのは内部封印は桁外れに強固なものらしく通常の魔導巧殻破壊ではびくともしないらしい。驚くべきことだ、これはオレの【真打ちの計画】光明がさしたも同然の答えなんだ。
 戻ってきた、稼働時間は約20分てとこか。見た感じ個体戦闘力は桁外れだが余りにも局地兵器すぎる。事実リプディール山脈の一つの峰が半分ほど削れているからな。向こうも事態を確認したんだろう。たかが一体、それが地上代行者エア=シアルの暴走だとしてもそれだけでは竜族全体が動くことはない。
 そのリプディールの竜族が其の眷属を引き連れて続々と上空に展開を始めている。竜族だけで100を超え、眷属を含めれば数千! まてやコラ、覇道ルートじゃこんな馬鹿げた質と量を相手にせにゃならんのかい!? それが出てきた理由は一つだ。エア=シアルの抹殺、俗世に関わらない竜族が其処までやるということは今、彼女が禁忌として認定されたということだ。歪んだ笑みを浮かべて嗤う。

 
大変面白くない。都合の良い様、修正させてもらおう。


 其の彼女が甲板に降りるとともに魔導巧殻が弾かれるように放り出されエイダ様が力尽きるように倒れ込んだ。慌てて二人を抱える。


 「どっちが無茶苦茶ですか! たかが竜一匹とメルキア、どちらが大切だと思っているのです!!」 

「主のせいじゃぞ。指揮官で良い、勇者では無いから……そう言っていた主が竜の眼前に立ったのじゃ。無茶の一つもしたくもなるわ。」


 閃く、今シャッスール・ド・シュヴァリエ二体掛かりで抑えてはいるが時間の問題だ。超常たる竜にあんな代物で長く保つ訳が無い。


 「ヴァレフォル、いまから無茶苦茶をやってあの竜を怯ませる。其の間に付帯技展開までいけるか?」

 「ザン・ドゥケルじゃ意味なさそうだし【ヴァスタールの堕柱】ならいけるかな? 私もチビッ子もそれでいっぱいいっぱいだろうけどね。」


 うへぇ、魔王竜相手じゃ【躁球士の衣装】に付帯する必殺攻撃すら意味がないになっちまうのか。しかも言い出したのが全く未確認の代物、それでもその力のほどが理解できる。『エルフの主神』【ルリエン】の同輩でありながらその神の権能を奪って緑の七柱より堕とされた『黒の太陽神』【ヴァスタール】、この世界では主神に叛逆した従神――天魔(サタン)――に相当する神の御業だ。半端な威力じゃないだろう。


 「恩に着る。」

 「とりあえずは御飯に寝床だね!」


 ちゃんとテレジットでもやんの。思わず吹き出す。伝声管の前でアディばーちゃんに伝達。


 特一級機動戦闘、両舷交差砲撃戦準備、浮遊術式緊急転回に備えろ。」

 「……了解した。が、艦内大損害じゃぞ! ええいエイダ様にせよお主にせよ同類じゃな。技術が完成すればよいものでは無いわ!!」


 珍しいアディばーちゃんの悪態。若かりし頃エイダ様付きの侍女兼、魔導砲騎士として散々振りまわされたらしい。リューン閣下を抱え上げ肩に乗せる。


 「リューン閣下はタイミングお願いします。オレじゃ測距なんて無理な話なんで。」

 「了解、ですの。」

 「じゃ私はいくね。チビッ子! 闇魔法の本当の使い方見せてやるよ。付いてきな!!」

 「はい! ネトラレわたしはどこへ行く〜。るるるるる〜〜〜〜♪」


 飄々としたヴァレフォルの声にいつもの場面をぶち壊す不思議独唱が遠ざかっていく。それに一安心、ゲームではあの洗濯板、封印を解いた後調子が良くなるというより人の機微に聡くなるのよ。
 ヴァイス先輩とリセル先輩に一丁前に嫉妬するなど……成程ね。アルタヌーの母である古神アルテミスは嫉妬も司っていたっけ? 復讐という行動原理の前には必ず理由がある。嫉妬はその一つだ。アルもゲームでは懸絶した故に自分とは違う魅力の持ち主に嫉妬するという感情もあり得るがここまで超常級が場を盛り上げてくれれば嫉妬よりも克己の方が上に来るだろう。そういう意味では封印開放が無いとしても洗濯板の性根が良い方向に動くといいな。


 「戦闘確認! シャッスール・ド・シュヴァリエ圧されているようです。」


 砲騎士の報告に表情を引き締める。そもそも空中戦では先輩達の不利は隠せないのは想定済みだ。


 「両舷全速、特一級機動戦闘、開始!」


 オレの咆哮と共にドレッドノートが異形の竜めがけて突撃を開始する。振り向き傍らに小柄な彼女が今回いないことに気付き、少しだけ残念に思って敵を見据えた。





◆◇◆◇◆






 「高度520ゼケレー(1550メートル)、速力27.5ランパール(58ノット)を維持。【魔王竜・エア=シアル】右舷上方に遷移せよ。」

 「右舷魔導砲群、装填完了! 方位20、仰角マイナス15」


 一斉にボールマウント式の舷側魔導砲群が蠢き、一方向に狙いを定める。


 「交差砲撃で逆算しましたですの! 左舷魔導砲群 方位230、仰角プラス5……6に変更ですの!!」


 リューン閣下がこの戦法の肝だ。測距困難というより測距手が測距不可能な事態に追い込まれるため常時空中追従とリアルタイムで外接測距が可能なリューン閣下にしかできない。


 「艦首光分子砲、出力35で固定。……三斉射が限界!? アディ、熟練のお前なら四斉射させて見せよ!」


 エイダ様の無茶にアディばーちゃん大いに悪態付いているんだろう。艦首に収納された連装砲身が長く伸ばされ、衝角の前に出る。
 オレ達の次々の命令とは別に従兵達が兵士やオレ等に命綱を付けて回る。付けられた兵士の中には――魔導砲騎士だろう――【魔導砲・プラーダム】を抱えマストによじ登る。擦れ違う一瞬に牽制攻撃、その成算に賭ける。今回の特一級機動戦闘、事実上のぶっつけ本番だ。最悪このドレッドノートを帝都の隣リエンソ湖に不時着させ使い捨てにするつもりでいる。頼む! それまで艦体が保ってくれ。
 遂にシャッスール・ド・シュヴァリエの一機が火を噴く。あのカラーリングからすればヴァイス先輩の方か! リセル先輩の二号機の方が緑色の煙を吹く。もちろん信号煙、『戦線離脱』の合図だ。そして上空750ゼケレーに巨大な魔方陣が浮かび上がる。どす黒い光が空の青と混じり病んだ緑の燐光でリプディール山脈を照らす。隣に彼女がいないのに思わず独り言、慣れとは始末が悪い。


 「敬虔な神官なら卒倒しかねん事態だな。」

 「どうしたのですの?」  小首を傾げるリューン閣下

 「独り言です。」

 「?」 ますます首を傾げられるが任務専念


 現神同士でも勢力争いはある。自ら現神は光と闇に分裂し管理された争いを繰り返しているんだ。それがディル=リフィーナの光と闇の争い。青の月女神【リューシオン】の聖地を闇の月女神【アルタヌー】の光を魔力屈折させたエルフの堕天神【ヴァスタール】の力が覆う。宗教戦争モノの事態だが、人が単に魔法を魔導を武器兵器として扱っているだけのこと。故に神は介入してこない。竜族としてもグレーゾーンになるのか己の眷属で遠巻きに包囲するだけに留まっている。ドレッドノートとエア=シアル、共倒れとは言わないが残った方なら楽に処理できるという魂胆か?
 狂い、本来の力をヴァレフォルに【奪い返された】エア=シアルが大きく羽ばたき始める。この距離からですらオレの額冠が使用不能な魔力量だ。もちろんそれは魔導戦艦のものでは無い。狂ってはいても明確に【魔導巧殻・アルタヌー】を脅威として認識している。
 向こうは闇雲に急上昇できない。人間形態ならともかく竜ではその巨体故、旋回上昇という手段に出ざるを得ないのだ。予想通りだが有り難い。人間形態だと戦闘力こそ下がるがどうやってもドレッドノートで叩ける相手ではなくなるからね。


 「操舵騎長(しかん)、トカゲもどきの旋回に合わせるですの。違いますのー! 追従でなくて正対するんですのー!!」


 上手い、はじめこそ勘違いしたが高度が上がるほど旋回半径が大きくなることを見越して内側に入り込んだ。これでエア=シアルはこっちを完全に無視して一方的に攻撃を受けるか、首を内側に向けて不本意に高度を落としこちらを攻撃目標にするか二者択一を迫られる。


 「艦首光分子砲、斉射開始!」


 艦首の魔導砲が射撃を開始しそれが竜の眼前で逸らされていく。空間歪曲障壁がある上に遠隔では致し方がない。ただ明らかに速度と高度上昇が止まった。力を防御に割り振らざるを得なくなっている。


 「魔焔反応炉、臨界運転開始。推進翼、流入エネルギーカット、浮遊術式姿勢制御以外滑空維持、全砲門にエネルギーを回せ。」


 こちらも後戻りできなくなった。エア=シアルの首がこちらを向き大きく羽ばたく。無理矢理高度をこちらに合わせドラゴンブレスをぶちかましてくるつもりだ。奴の顎が大きく開く。な! その中に生まれるあの歪んだ波動は、


 「障壁展開! 各魔導技巧師、個人防御許可。【アウエラ歪波動】が来るぞ!!」

 「遅いわ! このまま突っ込む!!」


 オレの命令をエイダ様がかき消し最後の艦首光分子砲の斉射が終わる。最後の斉射は途中で途切れ空間歪曲障壁の前に明後日の方角に飛んで行ってしまった。


 「右舷魔導砲群、砲門開けェ!(フォイエル)

 「艦体左回転、バレルロールスタート!」

 「砲騎士、各個射撃開始ですの!」


 右舷魔導砲が一斉に重質量弾を叩き出し、砲騎士の肩持ち式魔導砲【プラーダム】が次々を竜に向かって放たれる。同時に急激に魔導戦艦そのものが左側に傾いでいく。


 「右舷乗員、何でもいいから掴まれ!」[size=+1]

 「左舷乗員、放り出されても照準を合わせ続けよ!!」


 オレが魔導戦艦を大戦期のような単一巨砲艦にできなかった代替策がこの特一級機動戦闘だ。本来魔導戦艦はその総火力を相手に向けることはできない。いくらボールマウント式魔導砲でも舷側砲門式では片方の砲列しか使えない。そして魔導砲は巨大になればなるほどチャージ式となり連射が利かない。特に砲弾と砲エネルギー分離式の重魔導砲撃では。だからこそ艦そのものを回転してチャージ済みの使っていない砲門を無理やり敵に向ける。相手は初砲撃で高度が落ちこちらは両舷砲撃前提で交差砲撃の射界限界まで魔導砲を広く指向させる。
 重魔導砲とアウエラ歪波動が双方に同時に着弾し向こうのは多数の竜鱗を撒き散らしながらよろめき、こちらは右舷砲列の半分とマストの一本が拉げて吹き飛ぶ。そこに詰めていた砲騎士小隊が即死だろう。クソ!
 何かに掴まって凌ぐオレとエイダ様はともかくリューン閣下は空中で真剣に魔方陣を展開している。その顔が彼女らしからぬ獰猛な笑みを浮かべた。


 「捉えた。西領の総力、もってけー! ですの♪」

 [size=+2]「左舷魔導砲群、砲門開けェ!(フォイエル)



 元の位置のマストを0度とし120度まで艦体が傾いた時点で左舷魔導砲も一斉に火を噴く。交差したばかりだから未来位置を予測した向こうの前方――此方から見る後方――へだ。
 派手な着弾音。よし、クリーンヒット! 歪曲障壁はさすがに一方向にしか展開できないか。エア=シアルの右翼、いや右半身までもが重魔導砲に貫かれ抉り取られる。高度を急速に下げいや、錐揉みになって墜落を始めた。そして完成、上空を見上げる。


 
「禁術開放・【ヴァスタールの堕柱】!!!」(アウタールール・フォールンダウン)



 巨大な光柱が天空から竜に襲い掛かる。その緑の燐光を撒き散らしながら落ちる漆黒の光は魔王竜を飲み込み、大地へ叩きつけた! 巨大なキノコ雲と衝撃波が襲い掛かる。


 「ドレッドノート制御不能。何から手を付ければいいか解らん!」

 「なんでもいいから手を付けるのじゃ!」

 「マグナットの鷹獅子、来援しました。僅かでも持たせてください。艦を捨てて乗員のみ撤退!」


 気を抜くつもりはない。まだ戦いは終わっていないんだ。生き残った者全員が帰ってこそ任務遂行の証だから。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(BGM  無常の地平 戦女神VERITAより)





 唯一人、結晶化した街路を歩く。四つの太陽がその光を放ち尖水晶を反射するたび、事実上の放棄都市と化してしまった【帝都・インヴィティア】の寂寥感だけが心を満たしてしまう。勿論千騎長ともあろう者が護衛無しでいるのは許されない。周囲に少なくとも数個小隊、それに叔父貴の影が複数人ついているんだろう。
 ドレッドノートはリエンソ湖に大破不時着、先輩達はエア・シアルの方に向かっている。ギュノア百騎長が竜核剥奪によって摘出に成功すればそれを開放するだけでエア=シアルは人の形を取り戻せる筈。エイダ様はバーニエに残置している魔導技巧師部隊――汚染浄化施設建設担当――を掌握しリプディールに進発させるために湖を魔導装甲で渡っていった。
 工房街、緑の7区画に入る。カロリーネがいつもここで駆け出していた。いつも煙突から蒸気の絶えない小さな工房兼住居があって、その入り口扉にもたれかかるように女の子が出てきて、カロリーネが抱きかかえていた。
 その扉を潜る。同時に拳を握り締める。どの面下げてここに来たのか! どんなに言い訳しようがオレはこの家族を見捨て、そしてカロリーネを奪った。そんな責めと罵声を覚悟してもここに声を発するものはいない。
 ベッドの前に立つ、驚愕の余り飛び起きた少女、それを掻き抱く女性。その姿は水晶によって閉じ込められ彼女達の時は止まったまま。


 「小母さん、それにリインナちゃん。ルツです、いつも貴女方から逃げてばかりのザイルードの小倅です。このたびカロリーネと一緒になる覚悟を決めました。まだ指輪もドレスも戦争が終わってからになりますが……貴女方を開放して文句を言われながら決めますので待っていてください。」


 尖水晶の中に閉じ込められた母娘に語り掛ける。欺瞞でいい、自己満足でもいい。エア=シアルとの戦闘、すべてに魅せられながらどこかオレは冷めていた。ゲームの中だと、ゲームの設定の変形に過ぎないと。それでも、


 「嘘はつけません。オレはやっぱりカロリーネが好きです。オレはこの世界を知っています。カロリーネもそのゲームでは一つのデータ、消耗品同然のキャラクターに過ぎないんです。それでもオレはこの世界で生きていく覚悟を決めた時、彼女が眩しかった。ゲームと違うこんな絶望しかない世界で彼女は明るく前を向いて歩いている。それがたまらなく眩しかった。だからカロリーネと一緒に歩いていきます。こんな絶望しかない世界を安易に破滅に追いやる(かみ)に負ける気はありません。絶望を崩し、オレなりの理想化された未来をカロリーネと一緒に創っていきます。」

 「……だから貴方は皇帝陛下に似ているの。」


 居ながら視線をずらし腰の魔導拳銃《エケホース》に指をかける。その静かな声に敵意はないことを確認して振り向く。――向こうは殺そうと思えば殺せる。半端な特殊能力者の人間族と飛天魔族上位種、勝負など明らかだからだ。


 「これで三回目か。そろそろ名前くらい教えてくれてもよさそうだが?」

 「人の目の前で堂々といない人間のプロポーズされれば文句の一つも言いたくなるわ。虫唾が走るから。まだ思い出せない? いいえ、思い出す気が無いのね。」


 その飛天魔族は緋い……いやオレよりはやや明色の紅い髪を揺らし、己の爪を磨きながら答えた。どうやら本気で呆れているらしく挑発的な文言にすら棘が無い。正直彼女との記憶は無いが少しでも情報を引き出さねばならない。最悪、死亡した後とこちらに転生した中間に『何も無い』と言い切れ無いんだ。


 「敵の話に乗って調略されたなんて噂流されても面倒だからな。で魔力隠蔽モードの出どころはナフカ閣下ということか。」

 「あのノイアスじゃあるまいし魔導巧殻に手を出せばただでは済まないこと等、先刻承知でしょう? 【知っている】貴男からすれば。」


 ここでオレは選択肢が狭まる。【知っている】を真に把握できるのはエイダ様や伯父貴、そしてヴァイス先輩位だ。彼女の範囲内と目される連中でここにたどり着けるのは皇帝陛下、つまり最大の敵手たるジルタニア・フィズ・メルキアーナだけとみていい。――――現神とかは例外にせざるを得ないな。


 「では【知っている】ことを識るならこんな場所に居る必要はないだろう? エア=シアルの現状確認にでも行ってこい。」

 「それはノイアスがやらかしたことに過ぎないわ。私には関係ない。むしろ貴男がここにいること自体が予想外、ヴァイスハイトの覇道を無視してどういうつもりなのかしら?」


 うーん、エア=シアルを含めた竜族との戦闘と和解は『黎明の焔』作成の根幹に関わってくるからな。必須イベントであり、ヴァイス先輩共々参加したのにそれが要らないときたか。つまり彼女の思惑としては『とっとと私が罠仕掛けているザフハ侵攻に戻れ。』と言う事なんだろう? ここでゲームの進行順序を考えるとよほどのチート戦術か周回機能でない限りエア=シアルとの戦闘はザフハ攻略の後。唯、彼女が焦って介入してくることはなかったから想定内なのか、それとも想定する必要が無い小さいものなのか。僅かに鈍痛が響くが意識を集中させる。


 「メルキア必殺『部下に丸投げ』でザフハなんぞどうにでもなるからな。そちらがザフハを強化することを見越してアヴァタール五ヶ国連合軍で政治的にザフハを潰す。【知っている】だけならばメルキア一国でも十分だ。」

 「だから宰相と公爵の火種に片っ端から水幼精(ティエネー)を突っ込ませているのね。」


 ふむ、少し内情が読めた。おそらくこの飛天魔族はゲームの進行を何らかの形で知っている。たが、史実ルートというヴァイス先輩とアル閣下を主軸としたメルキアの中興と悲恋劇は知らない。優秀な戦略家なら前者は想定できるから予めジルタニアが同じことを考えて彼女に指示を出しても不思議じゃない。だがジルタニアの策たる【アルファラ・カーラ】と【晦冥の雫】は知らない。少なくとも聞かされて居ない。これでジルタニアがあらかじめゲーム知識で呪いを回避していたという線は潰せた。奴はゲームを【知らない】。


 「当然だろう? 帝国内乱なんぞ無駄の極みでしかない。どっちにしろ伯父貴は後数年もすれば冥界逝き(・・・・)だ。そうすれば魔法か魔導かという下らん争いも収まるさ。」

 「で、貴男はヴァイスハイトにこき使われながら一生過ごすつもり?」


 え? これはどういうことだ。こちらの撒き餌に反応しない。伯父貴の寿命を無視した。逆にさらに未来を問うてきた。知っているのか……それとも策の対象外という事なのか?? 相手の意に戯けて見せ真意を探るべきか…………


 「ナンバーワンになって全部背負い込むより、ナンバーツーでいくらか楽をするのが賢い生き方だ。正直御意見番って立場で良いと言ったけど先輩はおろか皆許してくれそうもないからな、そこらへんは甘受するさ。」


 茶化すように放言すると彼女の瞳がこっちを向いた。彼女の瞳をまじまじと見る。茶褐色の瞳、ベッドから抱え起こした、その唇に近づける顔……思い出せない。鈍痛が強くなる。


 「愚かな男。理想と大望を抱きながらそれを嫌悪し、他人に押し付けて悦に浸る。それなら……ジルタニアにひれ伏せばいいじゃないの!」


 最後に感情的になったことに違和感を覚えながらオレは隔意を作り出すことを思いついた。


 「ジルタニアは論外だ、神はなんでも一人でやっちまう。メルキアはヒトの国家だ。神なんぞ糞食らえ!」

 「ジルタニアがヴァイスハイトを滅し、あなたに国を与え手切れにしたらどうなるのかしら。」


 あり得ん想定だな。そもそも魔導を司る神帝になるのがジルタニアの目論見、それに万が一それをやったとしてもオレという致命的な欠陥がある。だから嗤って答える。


 「メルキア崩壊だな。オレに一国纏められる器量は無い。それができる数少ない候補がヴァイス先輩だからって事なだけさ。だからジルタニアは先輩を利用しているんだろ?」


 挑発ともいえる言葉に無表情で彼女は言う。冷たい微笑を浮かべて。


 「やっぱり解ってないのね。ジルタニアはあなたを買っている。『真の敵』として。だからあの事件は起きた。皇帝暗殺未遂事件を紐解き、そこで本当に殺されたのは誰だったのか? 調べてみなさい。そしてヴァイスハイト? 彼は道化よ、昔も今も。道化と自嘲して貴男に使われる彼が哀れだわ。」


 10年前の皇帝暗殺未遂事件、ゲームにはない事象だが概要は知っている。ジルタニアが即位した直後、強権的な改革を断行しようとした矢先に起こった事件だ。ジルタニアの側近であり親衛隊長であった女性が謁見の間での公式行事の真最中、ジルタニアに斬りかかった。
 裏には別の皇族や強権的な改革に叛意をもつ元老院議員がいたらしい。事実上の愛人に裏切られたジルタニアは怒り狂い大粛清をやらかしたのだ。
 そのおかげでザイルード家から勘当され、いち査察官でしかなかった伯父貴は捜査の功績で南領千騎長へ抜擢、そして元帥、宰相を兼任するという立志伝を立てることになった。対価に己の妻の死にも立ち会えず、実娘たるリセル先輩の恨みを買う事にもなったのだが。


 「あの愛人の自業自得だろう?」


 たぶんそれだけではないがそれ以上の情報は必要ない。


 「貴方の考えるそれが表向き、ヴァイスハイトはなぜあの令嬢の腹を引きずりだしたか? そこに真実と彼の道化たる所以があるわ。」

 「それを二度と口にするな! 次は貴様の腹を抉ってやる!!」


 いかん! 思わず感情的になった。いやもう時効だけどヴァイス先輩の心の闇をまざまざと思い知らされた事件だったからな。ゲームの有名人を見つけて話の一つも……と気楽なつもりで先生に附いて行ったらあの惨劇だからぶっ魂消たわ。彼女の躰がぼやけ始める。転移に入ったか。言うべきことは言ったという事……今回は無駄なことをせずとっととアヴァタールを纏めろという警告と見るべきか。去り際の一言、


 「いい顔になったわ。あなたの本性がソレ。御伽噺の自慰に飽き足らずその理想を他者に強制することを厭わない。だからジルタニアが言うのよ『似ている』って。ヴァイスハイトが己を嘲るのよ『道化』って。」

 「待て!」


 それはどういう意味だ!? ようやく気付いた。オレ達の出逢い、あの場所で飛天魔族が覗き見をしていた可能性は低い。あの時からジルタニアがヴァイス先輩を駒として使うには時系列で無理がある。しかも彼女は今決定的な言葉を吐いた。オレはゲーム知識を限られた人間にしか話していない。それを知識とは言わずに連鎖する物語、すなわち御伽噺と断じた。逢った事がある筈、話した事がある筈。だが誰だ!?


 「また来てくれるよね、ルツ……」

 彼女が消えその言葉に奇妙な愛おしさを感じると共にその根源を特定できないやり場のない怒りがオレに残された。壁に拳を打ち付け尖水晶の煌きの中、罵声が飛び出す。


 「クッソおぉ!!!」










―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(BGM  覇道〜希求を胸中に抱いて〜 魔導巧殻より)





 先輩の執務室でオレは包帯を脱ぎ散らかしポイポイと捨てていく。ヴァイス先輩もだ。当然包帯の下に傷は無い。パレードの演出、満身創痍の奇跡、エア=シアルとの激闘は東領の凱旋式でそう扱われるように配慮した結果だ。そしてそれが現帝国政府たる四元帥会議の総意でもある。
 竜族との共闘。本来あり得ない、しかもこのアヴァタール最大の中立勢力である竜族をメルキアの協力者としたヴァイス先輩の功は桁外れになる。事実、アヴァタール各国、それも五大国西端のスティンルーラ女侯国までもが事実関係を調査という名目で東領首府センタクスに使節を送り込んできた。
 個人的にはトップレス腰布オンリーの褐色ねーちゃん(アマゾネス)がぞろぞろやってきたらどうしようか? と泡食ったが流石に【勇者セリカ・シルフィル】の時代から300年は経っている。意外とまともだった――ビキニアーマーで腹筋割れして拳で外交語る外交官てなんだよ! ツッコミ入れそうになったが。しかも女侯国だけあって女ばーっか。


 「ついに来たわけなんだが意外に粘ったな、ザフハとしてはだが。」

 「オレも驚きましたね。ザルマグスを突かなければアルフェミア本気で西部ザフハを放棄しかねなかったんですから。」


 予定通りと報告書を眺める。クルッソ山岳都市に北領第3軍団、西領第3軍団、レウィニア第2と第8軍、そしてリスルナ竜騎士軍団を編合したアヴァタール連合軍が集結、城塞都市ヘンダルムには帝都結晶化から難を逃れた親衛2個軍団とエディカーヌの神官団、スティンルーラの国策傭兵部隊が入った。これでゲーム位で言うなら55部隊、5個軍団半11000がグントラム-北領国境線沿いにいることになる。
 オレ達が魔導戦艦使ってエア=シアルとド付き合いしていた間も交渉は継続してた。身動きできなくなったリセル先輩たちの後ろから前に出てきたのが伯父貴だ。流石策謀にかけては玄人、アルフェミアの牛歩戦術を見越して部下を暴発させる手に出る。標的になったのはドゥム=ニールより離反したザルマグス・グランとその一党、彼らが交渉の邪魔になるという名目でチルス連峰にメルキア軍の進駐を認めろ、その代わりアンナローツェへの同盟参戦に南領は反対する。伯父貴酷ェ! と笑ったわ。
 ザルマグスのドゥム=ニールからの離反とザフハへの帰属をドワーフ同士の内乱で一刀両断しザフハを中央で分断する交通上の要所【チルス連峰】をメルキアが平和裏に掌握する。これでは易々とザフハ東部がメルキアの影響圏に取り込まれてしまう、そうアルフェミアは考える。そして南領の対ザフハ参戦とアンナローツェ救援の反対は功績が巨大化した東領との相殺で反故、改めてメルキア帝国……いや【アヴァタール五大国連合軍】としてザフハの政情不安を鎮定するという名目で出兵するという段取りだ。オレの策を同じ論法で数倍大きく仕掛けるとはね。
 もうどう足掻いても戦争になる。いや戦争どころではない。ザフハと言う国家が戦わずして滅亡してしまう。五大国が寄ってたかってザフハをバラバラにし、植民地にするのがアルフェミアには見えただろう。だから国の形だけでも残そうと戦争を仕掛けざるを得ない。面子で戦争をするなど愚かだがアルフェミアがそれをしなければザフハの民も、そして光か闇かという己の信念すら潰されてしまうんだ。
 伯父貴の配下にいるローズフリート百騎長の早馬が届けてきた宣戦布告文書。オレも機嫌よくそれを開いて内容を確認、外の野営部隊に目を向ける。そこにはケスラー()騎長率いる北領第2軍団、レイナデリカ()騎長率いる南領第2軍団、そしてオマケの東領混成軍団、合計6000が展開している。先の兵力と合わせて85部隊8個軍団半17000。常備兵力をこれほどの数で統制できる国家(・・)はディル=リフィーナにおいて【貪欲なる巨竜】(メルキア)のみ、――悪かったな! 今の東領の国力じゃ併合したルモルーネ、属国のラナハイム合わせて守備隊を除いた機動兵力は一個軍団分しかいないのよ!! 自分たちの軍団が各国や帝国各領に比べて酷くみすぼらしいのを察したようで先輩が懊悩の腰を折ってくれた。 


 「気にするな、俺達は飾りだ。竜族を味方につけるという大功を立てた以上、次期皇帝は後ろにすっこんでいろ……そんなところだろうさ。」


 これで東領軍が武勲を立てると東領軍が皇帝の私兵になっちまうという事ね。つまり皇帝権力と軍との引き離し。――口に出てしまう。


 「ははぁ……次期四元帥の選定を含めるわけですか?」


 勿論、ガルムス元帥にエイダ様、伯父貴にも自らの考えがある。帝都結晶化で次の最高権力者がヴァイス先輩になるのはほぼ確定。それが実務責任者としての偕主か簒奪者と言う名の皇帝なのかは兎も角、次を見据えて最高権力者の取り巻きである側近を創り出す。三元帥でこれほどの連携できるのよ。これで魔導か魔法かで下らん争いに本気にならなければ元帥皆留任でも良いんだけどな。そう思ってたら先輩爆弾落としてきた。


 「勿論ルツは東領元帥確定……」

 「却下、オレは腰巾着でいいです。元老院長辺りでいさせてくださ……」


一見政治の中枢職なんだが事実上のお飾りでしかないポスト、それを言おうとすると遮られた、? 先輩微妙に顰っ面、


 「……最後まで話を聞け! それは三元帥に却下されてしまった。それにナンバーツーとしての立場も一時停止とエイフェリア元帥とオルファン元帥が言ってきた。」

 「そこまでぶち壊しが効きましたか?」


 あれだけ挑発すれば外交官失格で副将の立場外されるのも解らなくはない。そしてアンナローツェの裏切りでオレ達の策謀をフェイスごと闇に葬り、ヴァイス先輩にバカ王女ひっぱたかせる醜聞作ってストッパー役として3元帥がオレを呼びもどす。そんな筋書きだ。大陸航路作るのには一地方長官(げんすい)という重みは枷でしかないのよ。だからオレは【先輩の腰巾着】。


 「全く別と言えばいいのか、ルツ、お前二人の間で上手に動き過ぎたぞ。両者揃って『祖霊の塔』調査団長に指定してきた。二人ともよほどノイアス前元帥を警戒しているようだな。」

 「だからレイナが千騎長になってこっちに来た……。」


 そうか、それで納得できた。『ヒキコモる〜』のレイナデリカ新任千騎長、優秀だが閥族出身でないから最後に千騎長で退役、そのまま地方の領主コースだとオレは将来を見ていた。帝国軍が拡大しているとはいえこの段階で出世コースに乗ったとも考えにくい。エイダ様が先の折衝で竜族との共闘を出汁にヴァイス先輩に近づけばエリナ所長と伯父貴は東領への南領騎長の浸透を狙ってくる。恐らくケスラーさんも同様……あぁ成程、北領の『軍師』コーネリアさんとしてはオレを別の任務に引き抜く前払いとして己の息が掛かった将をヴァイス先輩に押し付ける気だな。


 「つまり南領“筆頭”千騎長のエリナスカルダ魔法研究長は『療養』の為、僻地の祖霊の塔には出せない。そして西領から調査団長を南領は出したくない。そして言い出しっぺの東領に配慮するという形で西領が納得し東領に恩を売れるオレを団長にしたわけですか。」

 「それもあるが【知っている】人間でないと不味いと考えたかもな。特にこの報告書だ。【祖霊の塔】にせよその前哨拠点であった【ラ・ギヌス遺跡】にしても西領がなぜ皇帝家にこれを開示しなかったのか良く解る。」


 オレの額に当てられたファイルが防諜用にかけられていた呪いをかき消す。そしてヴァイス先輩から受け取り少し概要だけ読むと納得した。


 「ノイアスが莫迦王に負けた後、避難するには絶好の土地だった訳ですか。メルキア帝国以前に存在した古代国家の遺跡とされていたのは知っていますが先史文明の封印遺跡だったとは。」

 「今皇帝家が壊滅し、先史文明にガワだけとはいえ最も広い知識を持つのがルツだ。俺も文句は言えん。しかも両元帥の意気込みが半端じゃない。『全部切り捨ててでも情報を持ち帰れ』だそうだ。」


 付随する命令書を見て今度は絶句、まぁ調査隊に側近扱いのカロリーネとオマケのシャンティ、秘書役のシルフィエッタの三人娘が入るのは良いとして西領でまだ傭兵隊長として残っているギュノア百騎長と昇進したばかりのアルベルト百騎長、南領からはなんと黄の太陽神アークリオンのデレク神官長にダリエル百騎長……一個軍団編成できるじゃんか。


 「ここまでくるとルツと周りを除いて東領が誰も出さないというわけにもいくまい。ギルク百騎長とコロナを付ける。」


 バランスをとるのは良いけど先輩、東領の人材枯渇盛大にアピールしているだけですよ。ロリコン騎士に獣化幼女なんて実力こそ高いけど軍としては戦力外、あ〜そういうことね。


 「あくまで調査隊で各領とも軍(兵)は出さない方針ですか。」

 「金は出すから何とかしろだな。どうやら西領も南領も主力は温存したいようだ。」


 だな、オルファン元帥もエイフェリア元帥もノイアスの件で共闘はできても魔法か魔導は別問題と軍拡を続けている。あの飛天魔族の言うように水幼精突っ込ますのも手だけど水蒸気爆発されても困る。向こうが先に譲歩してきたんだ、今回は我慢すべき。
 そして今回のザフハ侵攻、西領も南領も主力の第1軍団を展開していない。しかもその編制を拡大し後備軍団を作ってすらいる。冷戦の雪解け期位まで双方が警戒感を上げているという状態だ。


 「何としてでも成功させねばなりませんね。ノイアスの確認、できれば捕縛と行きたいところです。」

 「確認だけでいいぞ。どうせルツでは返り討ちになる。」

 「! これを何処で!?」


 そういって先輩何か放り投げてきたものを受け取りそれに驚愕する。【飛翔の耳飾り】、この世界、神殺しの物語での必須転移アイテム。値段は見当がつかない程高価な先史文明級のマジックアイテムだ。まず人が持てるもんじゃない。最低国家指導者が持つべき超希少品。オレの顔で察したのか先輩が肩を竦めた。


 「勘違いするな。エイフェリア元帥曰く魔導でリスペクトされた使い捨て、しかも固定転移しかできない劣化品だそうだ。だから使い捨ててでもお前は戻ってこい。」

 「つまり雇う傭兵は木偶人形にしてくれという事ですね。同胞。」


 簡単に言えばノイアスが出てきた時、これほどの指揮官クラスの戦力集中でも勝ち目はない。オレのみが転移で脱出し、ほかの指揮官は囮として傭兵諸共散り散りに逃げてもらう。ノイアスはいくら配下として混沌生物を多数召喚できても一方向にしか戦力を向けられない。包囲するには自前に罠を仕掛けるというオレ達の想定するヤツの稼働時間からすれば戦術的不可能をこなさなければならない。むしろ『発見した』でノイアスを祖霊の塔から追い出すのが今回の作戦目的だ。
 それでも留まる、いや留まらねばならない事態であるのなら奴がまだ半身不随である証拠。おそらく双方の利害に関わらないガルムス元帥が北領第1軍団をもって遺跡に侵攻することになる。ゲームでこそ不覚を取ったが実際の強さは事実上の魔神であるグラザと拳で御突き合いできる程だ。遺跡侵入と同時に完全復活なんていう中二展開でもない限り勝敗は動かないだろう。


 「しかし準備期間が中途半端です。ディナスティに集結して進発するにしても西領のメンバーが1週間遅れそうですしね。南領だって神官長様が即応できるわけじゃないですよね。」

 「レクシュミ閣下が動いてくださるそうだ。南領はいいとして西領は当然遅れる。だから少しは家に顔を出して来い。」


 あー先史文明を何かと胡乱や敵意を持って眺める現神の考えを逆用するわけか。名目上古代遺跡探索の監察ということでアークリオン神殿が出張ってきた。そういう筋書きで引っ張るということね。『メルキアは禁忌には関与しませんよ。』のアピールと証明のために神官長様引っ張り出すわけか。
 赤の太陽神アークパリスや嵐神バリハルトと違い現神の最高神である黄の太陽神アークリオンとその神殿は極端な考えは持っていない。――逆に言えば極端な神を唆すことと常に仲介役を買って出ることでその地位にいる交渉人(ネゴシエイター)が彼の神の役割ともとれる。でも後半はいただけないなぁ。


 「不満顔が表れているぞ。ルツ。」 そりゃ顔に出るからなオレ。

 「先輩、家に帰って何をしろと? あれはあれで平穏そのもの、オレが帰って引っ掻き回すくらいならそっとしておいた方がいい。」


 事実妹の死と共にオレの家族、ザイルード伯爵家は壊れた。今は代替物とオレと言う異物がいないことで危ういバランスを保っている。伯父貴?(オルファン) 伯父貴はザイルード伯爵家の当主じゃない。オレの父上、クリストファー・ザイルードの廃嫡された兄なのよ。本来は庶子扱いで帝国のシステムから弾かれないがあの暗殺事件で一挙に名が知れた。事実上『もうひとつのザイルード伯爵家』いや、知名度と廃嫡した爺様を失脚させた事で伯父貴の方を本家と誤解する人間の方が多い。
 先輩が真剣に説得してくる。唯一の家族(ははおや)を奪われた先輩と家族がありながらそれを顧みなくなったオレ、忸怩たる思いと共に伯父貴の轍を踏ませたくない思いが強く伝わってくる。


 「……そうまでして家族ごっこが嫌いか? ただ筋は立てておくべきだ。嫁候補を両親に紹介して来い! これは元帥命令だ。」


 おいっ! オレまだカロリーネに公式にプロポーズしていないんだぞ。そんなことが出来る訳が。言い訳にも容赦なく、


 「帝都で報告はしたんだろ。」  何故それを!

 「ミリアーナ。」  にまにまして揶揄され初めて絡繰りに気付く。


 あ……あのぺたん娘睡魔めぇ! 対外諜報の任務与えているのに何やってんだぁ!! まぁ本人が帝都にいたわけじゃなく配下や禿のスゥーティー使ったんだろうけどさ。それヴァイス先輩に流す? 流す!?


 「……つまり攻略(ベッドイン)済み、って訳ですか?」


 ジト目で睨むオレにとうとう先輩大笑い。ちくしょー! NTRれた!? まー高級娼婦だから寝取るも寝取らんもないんだが。盛大に溜息をついて納得と言う物を喉に流し込む。


 「解りました。どちらにせよ前回の資金援助のお礼には行かねばなりませんでしたし、嫡子である以上は未来の伯爵家当主として領内の視察も行わねばなりません。行ってくることにします。」

 「もう一つだ。妹さんの墓参り、行ってこい。」


 その言葉にオレの顔が強張ったことを予測していたようで先輩がオレの喉仏に手を添える。


 「ルツ、絆を置き去りにするな! どんなに苦しくてもそれを忘れた時お前は、いや俺達はジルタニアと同じモノになってしまう!!」


 たった一度しかなかったあの時、ヴァイス先輩、リセル先輩、オレ、そして妹。家の旧邸側、父上の私室に仲良く談笑する4人を描いた絵がある。あの時は戻らない。一生懸命先輩達と御喋りしようとしていた内気で物覚えの良い妹はもういない。
オレは頷いた――――やっとの思いで。






あとがきと言う名の作品ツッコミ対談



 「どもっ! とーこですっ。これで第二章終了……の割に中途半端で切れたよね作者?」

 ども作者です。魔導巧殻SSここまでお付き合いくださり有難うございました。

 「コラ! ここでエタるつもりかっ!!(46センチツッコミ砲照準)

 ちがわい! 此処までは基本的な流れは原作準拠なの。東領奪回、ラナハイム戦、国力増強、そしてザフハ宣戦布告。ちとエア・シアル戦だけ繰り上げしたけど順調に予定を消化してる。でもね。

 「といっても既にマップ外の四大国の動きまで入ってるから十分変更されている気がするよ?」

 だからこそ背景情報で抑えておいたわけ。これから四大国を初め未だ公式設定ですら単語だけしか存在しないノスクバンラ帝国まで動き出す。そしてそれどころじゃないくなる。遂に超常と呼べる存在まで介入が始まるからね。神殿は言わずもがな。つまり『国獲りというゲーム本筋』から物語が離れてしまうんだ。

 「それSSで無いと自白したようなものよ?(にたぁり)」

 マテやこら、ツッコミ砲リロードするなって! “はじめに”でも言ったろ? この話は魔導巧殻の裏側だって。裏側だからこそ超常が『魔導巧殻』で何やってたか見えてくると思ったのよ。

 「? 神採りのエリザスレインのこと?? 十分ラスボス級だけど。」

 彼は道案内人に過ぎないよ。それに甘い、奴が来る。この世界で派手に動く以上絶対に奴は避けて通れない。全ゲームにて無理矢理にでもゲスト参加可能なキャラでもあるからな。

 「そりゃー魔神クラスとか天使クラスなら幾らでもいそうだけどそんなのいたっけ?? あーメイド天使かな???」

 あいつらでたら作者が筆折って逃亡するぞ(笑)。ま、いいや。第三章からいよいよ事実上のオリジナル展開になる。話の流れこそ史実ルートのままだけど主人公はその外側に出て物語を動かしていくんだ。そして本来のゲームで何故ジルタニアをラスボスにしなければならなかったか? を長い時間をかけて紐解いていきたいんだな。

 「えー? 訳解んないよ!? ゲームでどう見てもノイアスを利用しアルを取り込んだジルタニアがラスボスなのは決まり切っていると思うけど?」

 じゃ設定に書かれる擦れ違い続ける兄弟というヴァイスハイトとジルタニアの関係はどう解釈するんだという話になる。だからこそオリキャラ三人態勢なのよ。主人公としてシュヴァルツ、相反する存在として一人、そして俯瞰する者として一体という話の構築が本来の物語だったって前言ったろ?

 「自滅した癖に(ボソ)」

 …………(号泣)

 「あれ? ちょっとまって! 今主人公、相反者、俯瞰する者っていったよね。まさか……」

 ストップ! それ以上はオフレコで。

 「解った(笑)じゃツッコミ行こうか? ねぇ……このままで大丈夫??」

 何が?

 「BGM」

 いきなりメタなネタかよ! 正直言うがしんどい。本来節として100曲もあれば十分と考えてきたけどそれどころじゃなくなったしな。しかも一曲使ったら次は使わない縛りかけてるからストックは減る一方……まーなんとかなるさ。

 「いきなり楽観論?」

 有難いことに制作会社様が毎年新作出してくれるからな。そのたびに20曲追加されると考えれば楽観できるだろ。

 「作者こそメタな情報晒すんじゃない! (威嚇射撃)」

 おわぁ! 楽屋破壊するんじゃない!! それでも考えているんだぞ。メインパートは魔導巧殻でクロス要因のパートは対応した作品で。なるべくイメージに合うように組み立ててる。そして重要場面こそゲーム同様の手を使う。

 「?」

 主題歌フルバージョン熱唱♪

 「オイオイオイッ!!」

 問題ない。現にゲームでも真のクライマックスに行かないと回想で主題歌フルヴァージョンはカウントされないからな。つまり主人公達が史実エンドを超えるグランドエンディングを取らない限り今まで発売された制作会社の主題歌フルヴァージョン全ては流れないという縛りなんだ。そして解禁されていない作品こそが主人公の本来のパート曲だから三章から少し楽になると思ってる。

 「どゆこと?」

 創刻のアテリアルこそが主人公のパートBGMなのよ。これが解禁されさらに天結いが発売されれば選択肢は曲数と言う意味以外にもぐっと増える。しかも驚くべきことにヴァレフォルの登場が拙作と天結いアペンドで同月出撃(2017年5月)という偶然だもんな。震えたよ♪

 「狙ったんじゃないの?」

 ホント偶然。姫狩りは並行世界だからリリィ含めキャラ登場は無理だったけど今回のアペンドで「迷子」と明言されたからリリィがこの世界に関わらないことが明言されたようなもんだしな。……なによ? 青い顔して。なんかミスってる??

 「まったー! いくら同制作会社と言えども創刻はディル=リフィーナじゃない!!」

 でもないぞ。明らかにアレ、人類の世界イアス=ステリナだからな。

 「げ、なんというこじつけ……」

 それに作者としては天結いを踏んで作中の単語の「想い」を「絆」に変更することを検討してる。これが出来れば全パートで天結いの楽曲使えるからな。

 「あーあーあー珍しく体験版やっただけで良く入れ込むもんだわこの作者(呆)」

 でもこの作品、拙作にとって鬼門に近い難物だよ。フィアスピア地方と言い時代背景といい厄介な位置に存在してて前の話を改訂しまくってる。某駄女神の『やっぱり私のせいだったー!』は伊達じゃない(笑)

 「コラコラ(笑)。確かに大陸航路、あーでもないこーでもないと引き直して13話混乱させてたわよね?」

 そりゃアレちょっと知ってる読者からすればディル=リフィーナを舞台としたゲームその全ての地方を網羅してるだけだしな。だからこそ世界中を巻き込むという流れにできる。

 「でもソレ四章でしょ? 何故三章と言う間が必要になったの?」

 相反者について作中で語られてないからな。事実上三章から魔導巧殻から戦女神へS・RPGからRPGへ移行していく。三章は四章以降の為の伏線展開になるのさ。

 「大丈夫かなー? この作者エタりかねないなー??(胡乱)」

 正直言うとさエタりかけた話はあったよ。痛すぎて筆が進まない。作者としては内心でこの世界を憎んでいるんじゃないか? と考えたくらいだから。

 「マテマテマテ!」

 それだけ作者がディル=リフィーナの世界観に執着していると思っていてくれ。さて長々とやるのもなんだし纏めていこう。ここまでで起承が終わり、いよいよ本伝である転に入る。次回冒頭は拙作のプロローグに繋がる人物へ宛てられた手紙から。三章は彼が主役持って行ってしまったよ(笑)

 「また訳解らないことを。では三章よろしくお願いします。」

 読者から殴られかねない程難易度上がりそうだけどなー(ボソ)

 「そういうことは初めに言って謝れとゆーに!!!(ツッコミ砲身乱舞)」



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