オーブの軍港に静かに入港するミネルバ。それをオーブの首長の一人、ウナト・エマ・セイランはオレンジ色のサングラスの下から冷ややかに見て呟いた。
「ザフトの最新鋭艦ミネルバか。姫もまた面倒なもので帰国される」
カガリが代表首長とは言え、その若さからウナトが宰相という立場に立ち、実質、オーブの政権を握っていた。そして彼の隣には閣僚であり、またカガリの婚
約者でもあるウナトの息子、ユウナ・ロマ・セイランが笑みを浮かべて立っていた。
「仕方ありませんよ父上。カガリだってよもやこんな事になるとは思ってもいなかったでしょうし、国家元首を送り届けてくれた艦を冷たくあしらうわけにもい
きますまい……今は」
「ああ、今はな」
息子の言葉にウナトは笑みを浮かべて頷いた。
機動戦士ガンダムSEED Destiny〜Anothe Story〜
PHASE−07 再会
「カガリ!」
昇降用のハッチから、神妙な顔で降りてくるカガリを、出迎えの一団から飛び出したユウナが思いっ切り抱き締めた。
「ユ、ユウナ!?」
一応、婚約者――勝手に決められた――という間柄の2人だが、人目もはばからず抱き締められカガリは困惑する。
「おお、よく無事で! ほんとにもう君は……心配したよ」
「あぁ、いや……あの……すまなかった」
困った顔でユウナを引き離そうとしながら言うカガリ。タリアやアーサーは呆気に取られ、アスランはフゥと息を吐いて肩を竦めた。
「これユウナ! 気持ちは分かるが場を弁えなさい。ザフトの方々が驚かれておるぞ」
するとウナトがユウナを窘めに出て来るとカガリもようやく解放された。
「あ、ウナト・エマ」
ウナトはカガリの前に行くと、オーブの閣僚達は揃って彼女に頭を下げる。
「お帰りなさいませ代表。ようやく無事なお姿を拝見することができ、我等も安堵致しました」
「大事の時に不在ですまなかった。留守の間の采配、ありがたく思う。被害の状況などどうなっているか?」
そうカガリが尋ねていると、ふとユウナがアスランの方を見て勝ち誇った様な笑みを浮かべた。それを見てタリアが、あらあらとアスランに同情の視線を向け
るが、彼は逆にフッと笑みを浮かべて目を閉じる。
その態度にユウナは眉を顰め、タリアは少し驚いた。少なくとも艦の中でのアスランは、そんな表情を見せなかった。常に迷い、悩み苦しんでいる感じだった
が、この短い間に何が彼の心境を変化させたのか分からなかった。
「沿岸部などはだいぶ高波にやられましたが幸いオーブに直撃はなく………詳しくは後ほど行政府にて」
他国の人間もいるので詳しい話は出来ないのでウナトはそう言うと、タリアとアーサーの方を向いた。2人はウナトに対し、敬礼して挨拶する。
「ザフト軍ミネルバ艦長、タリア・グラディスであります」
「同じく副長のアーサー・トラインであります」
「オーブ連合首長国宰相、ウナト・エマ・セイランだ。この度は代表の帰国に尽力いただき感謝する」
「いえ、我々こそ不測の事態とはいえアスハ代表にまで多大なご迷惑をおかけし、大変遺憾に思っております。また、この度の災害につきましても、お見舞い申
し上げます」
「お心遣い痛み入る。ともあれ、まずはゆっくりと休まれよ。事情は承知しておる。クルーの方々もさぞお疲れであろう」
「ありがとうございます」
思いっ切り社交辞令的な挨拶の遣り取りをして、タリアはウナトがカガリのような実直的な政治家ではなく、腹の底で良からぬ事を考える狸爺だと分かった。
「まずは行政府の方へ。ご帰国そうそう申し訳ありませんがご報告せねばならぬ事も多々ございますので」
「ああ……分かっている」
ウナトに促され、カガリは車に乗ろうとするとアスランの方を振り返る。しかし、突然、ユウナが彼女の肩に手を回してアスランの姿を遮った。そして、優越
感に浸った笑みでアスランの方を振り返る。
「あー、君も本当にご苦労だったねぇ、アレックス。良くカガリを守ってくれた、ありがとう」
「いえ……」
「報告書などはあとでいいから、君も休んでくれ。後ほど彼等とのパイプ役など頼むかもしれないし」
「はい」
ペコッと頭を下げるアスランに、カガリは沈痛な面持ちで見つめ、アーサーは彼に完全に同情の眼差しを向けていた。
「何だと!」
カガリはバンとデスクを叩いて立ち上がった。
行政府に着くなり、彼女は会議に出席したが、そこで驚くべき内容を聞かされた。
「大西洋連邦との新たなる同盟条約の締結!? 一体何を言ってるんだこんな時に! 今は被災地への救援、救助こそが急務のはずだろ!」
「こんな時だからこそですよ代表」
閣僚達が冷ややかな視線を彼女に送る中、首長の一人であるタツキ・マシマが言った。
「それにこれは大西洋連邦とのではありません。呼びかけは確かに大西洋連邦から行われておりますが、それは地球上のあらゆる国家に対してです。約定の中に
は無論、被災地への救助、救援も盛り込まれておりますし。これはむしろそういった活動を効率よく行えるよう結ぼうというものです」
救助や救援など、同盟を結ばなくても出来る。そんなものは同盟締結のお飾でしかなかった。大西洋連邦が何よりも望んでいるのはオーブの軍事力に他ならな
いのだ。
「いやしかし……!」
彼女の反論を許さず、ウナトが溜息を吐いて言った。
「はぁ……ずっとザフトの艦に乗って居られた代表には、今一つ御理解頂けてないのかもしれませんが」
そして彼はデスクのコンピューターを操作すると、ある映像が手元のモニターに映し出された。それは、地球の被災地の様子だった。オーブはともかく、被害
の大きい地域は女子供までもが怪我を負い、泣いている姿が映っている。
「地球が被った被害はそれは酷いものです。そしてこれだ」
そして、次に映ったのはユニウスセブンでレンやアスラン達が戦った改造ジンの部隊だった。それにはカガリも驚きを隠せない。
「我等、つまり地球に住む者達は皆、既にこれを知っております」
「こんな……こんなものが一体何故……?」
それに答えたのはユウナだった。
「大西洋連邦から出た情報です」
「(大西洋連邦だと!?)」
あそこにいたのはザフトと改造ジン部隊を除けば、あのボギーワンと呼ばれる謎の戦艦だけだ。この映像が大西洋連邦から出たものだとすれば、あのボギーワ
ンは大西洋連邦と繋がりがあると考えられる。
そうなると、アーモリーワンでの事も大西洋連邦が絡んでいるように彼女は考え、顔を俯かせた。
「プラントも既にこれは真実と大筋で認めている。代表も御存知だったようですね」
「だが……でもあれはほんの一部のテロリストの仕業でプラントは……現に事態を知ったデュランダル議長やミネルバのクルーはその破砕作業に全力を挙げてく
れたんだぞ! だから、だからこそ地球は……!」
「それも分かってはいます。だが実際に被災した何千万という人々にそれが言えますか?」
被害の少ないオーブが、プラントを擁護すれば、間違いなく地球の人々は非難するだろう。そう言い返されてカガリは言葉を詰まらせた。
「く……」
「あなた方は酷い目に遭ったが地球は無事だったんだからそれで許せ、と?」
「今これを見せられ、怒らぬ者などこの地上に居るはずもありません。幸いにしてオーブの被害は少ないが、だからこそ尚、我等はより慎重であらねばならんの
です」
ユウナ、ウナトにそう言葉で攻められ、カガリは唇を噛み締めて拳を強く握り締めた。
「理念も大事ですが我等は今誰と痛みを分かち合わねばならぬものなのか、代表にもそのことを充分お考え頂かねば」
「ええそうね、まぁ船体の方はモルゲンレーテに任せて大丈夫でしょう。でも船内は全て貴方達でね」
オーブ軍港ではタリアが、技術主任のマッド・エイブスにミネルバの修理の指示を出していた。
「資材や機器を貸してくれるということだから、ちょっと入念に頼むわ」
「はい」
無愛想で厳格ではあるが、仕事の腕は本物のマッドは、頷くと即座にミネルバに向かった。それを見送るタリアに、アーサーが不安そうな声を上げた。
「でもいいんですか? 艦長。本当に」
「ん?」
「補給はともかく、艦の修理などはカーペンタリに入ってからの方がは良いのではないかと、自分は思いますが……」
ミネルバはザフトの最新技術で作られた艦……いわば軍事機密の塊である。それを他国の者に修理を手伝わせるのは機密漏洩に繋がると彼は言うのだ。
「言いたいことは分かるけど……一応日誌にも残しましょうか?」
そうタリアが言うとアーサーはブンブンと首を横に振った。
「い、いえ! そんな……」
艦長の判断に副長が異を唱えた時、その事を航海日誌として残す。それで、もしその事が上層部で問題になっても、副長の経歴に傷はつかない。
しかし、アーサーの場合、気が弱いという事もあってか、タリアにめっぽう逆らえなかったりした。
「でも機密よりは艦の安全、ですものねやっぱり」
その時、透き通るような女性の声がしたのでタリアとアーサーは振り向く。そこには、タリアと同年代ぐらいの茶色い長い髪にモルゲンレーテの制服を着た女
性がいた。
「艦……戦闘艦は特に常に信頼できる状態でないとお辛いでしょ? 指揮官さんは」
まるで自身が体験したかのように語るその女性にタリアは警戒しながらも尋ねる。
「誰?」
「失礼しました。モルゲンレーテ造船課Bのマリア・ベルネスです。こちらの作業を担当させていただきます」
スッとマリア・ベルネスは歩み出て柔らかな微笑を浮かべて手を差し伸べる。その物腰にアーサーがつい見惚れている。タリアは、マリアに好感を感じながら
も手を握り返した。
「艦長のタリア・グラディスよ、よろしく」
そうして手を交し合った時、タリアは彼女なら艦を任せても安心、という感覚に襲われた。それは、経験というよりも勘であった。
マリアが近くにいた整備士に指示を出すと、手早くミネルバの修理作業が行われた。恐らくカガリの指示だろうが、タリアはそれが恩を売るようなものではな
く、普通の厚意からのものだと疑わなかった。
タリアとマリアは、プラットフォームにやって来て修理されているミネルバを見下ろした。
「ミネルバは進水式前の艦だと聞きましたが……なんだか既にだいぶ歴戦と言う感じですわね」
アーモリーワンで進水式前だった最新艦は、既に多くの傷をこさえ、彼女の言うように歴戦の戦闘艦と言われてもおかしくなかった。
「ええ、残念ながらね。私もまさかこんなことになるとは思ってもなかったけど…ま、仕方ないわよね。こうなっちゃったんだから」
そうタリアが苦笑して言うと、マリアも微笑む。
「いつだってそうだけど、まあ先のことは分からないわ。今は特にって感じだけど」
「そうですわね」
「ほんとはオーブもこうやってザフト艦の修理になんか手を貸していられる場合じゃないんじゃないの?」
「まぁそうかもしれませんけど……でも同じですわ」
意外なマリアの返答に、タリアは虚を突かれたような表情になる。
「やっぱり先のことは分かりませんので、私達も今は、今思って信じたことをするしかないですから。後で間違えだと解ったら、その時はその時で泣いて怒っ
て、そしたらまた次を考えます」
「……ま、そうね」
そう言われ微笑むと、タリアはすっかりと警戒心を抜いてしまうのだった。
マグロ、鯛、イカ、エビ……目の前に盛り付けられたお造りにレンは、フッと笑みを浮かべ、綺麗に割り箸を二つに割った。
「オーブは島国だから海鮮料理が旨い!」
上手に箸を持ち、チョンチョンと醤油を付けて食べる。その向かいの席で、帽子を深く被っているリサは呆れて溜息を零し、キツネうどんを食べる。2人とも
オーブに入る際、恐らくカガリを送り届けにミネルバも来ているだろうから、変装する事にした。
レンは眼鏡をかけ白いカッターシャツと黒い長ズボン、リサは帽子を被り赤いジャケットとジーンズという出で立ちだ。特にリサみたいに、白髪で眼帯をして
いる女の子は目立つので髪は纏めて、帽子も目深に被っている。
最初、レンは断固、女装をするべきだと通したが、リサの誠意のこもった説得――別名チョークスリーパー――で何とか阻止された。
「兄さん、私達がオーブに来た理由は何ですか?」
「オーブの旨いもん巡り」
「違います!」
あっさりと的外れな返答をするレンに、リサがツッコミを入れる。
「私は物資の買物ですけど、兄さんと副長は情報収集でしょう!」
ちなみに一緒にオーブに入ったシュティルは、何処かへ行ってしまった。まぁ彼の事だから心配はしていないが。
「まぁ落ち着きなって。私にだって情報収集のアテはあるんだからさ」
「アテ?」
「マルキオ様さ」
「? 誰です、それ?」
「お前をプラントに連れて行く時に世話になった人」
盲目の導師、マルキオ。連合の外交官で、プラント・地球の双方から信頼の厚い人物である。またジャンク屋ギルドを国際的なものにしてしまうなど、その力
は大きい。
オーブ近海の孤島で暮らす彼は、戦災孤児達を引き取ったりしている。その際、レンは記憶を失い白髪になるまでの重傷だったリサをマルキオの下へ連れて行
き、終戦間近で情勢が不安定な時にプラントへ行き、彼女の治療を行ったのだ。
「そのような方が……」
「あの人なら今のオーブの情勢も知ってるだろうね」
「それなら是非、私も挨拶がしたいです」
知らぬ事とは言え、自分が生きている事に関わっている人物なら御礼がしたいとリサが言うとレンはニコッと笑った。
「よっしゃ! 飯食ったら早速……」
「はい!」
「風俗へGOだ!」
グシャ!!
真昼間から最低な事をほざくレンの額に、リサは思いっ切りコショウの入った瓶を投げつけた。
オーブ軍に所属するトダカ一佐は神妙な顔で国防本部の廊下を歩いていた。つい先程、ザフトの戦艦によりカガリが帰国したと報告があった。それは非常に喜
ばしい事だ。
しかし、今のオーブは大西洋連邦との同盟に流れが傾きかけている。その流れはカガリでも止めれるものではないだろう。
彼は、実直で生真面目な軍人だ。オーブの理念を守り抜き、凄絶な死を遂げたカガリの父、ウズミ・ナラ・アスハの意志を守り抜いていかねばならないと思い
ながら、あるジレンマを抱えていた。
「(このままではオーブの理念は崩壊する……しかし……)」
彼の脳裏に浮かぶのは二年前、オーブ戦役の折、オノゴロで保護した少年の事だった。目の前で家族を失い、悲しみと絶望に満ちていたあの少年の表情は忘れ
られない。
理念を守る事こそが、オーブを、国民を守る事に繋がると信じていたが、その彼の考えがあの少年を見て揺らいでしまった。このままオーブは、どうなってし
まうのかと考えていると、一人の軍人が声をかけてきた。
「トダカ一佐!」
「ん?」
「面会人であります!」
「面会人? 私にか?」
「はっ! 何でも“旅の傭兵”だと言えば分かると……」
「!?」
それを聞いてトダカは目を見開いて驚愕する。そんなトダカの反応を知らず、軍人は憎らしそうに言った。
「あの男、あろう事か一佐に“近くの噴水公園で待っている”と言われたのです。図々しいにも程があります!」
「ふ……彼らしいよ。ありがとう、噴水公園だな」
しかしトダカはフッと笑い、礼を言うと、ポンと軍人の肩を叩いて去って行った。
「…………」
噴水公園のベンチでシュティルは缶コーヒーを飲みながら遊ぶ子供達をサングラスの奥の瞳で見ていた。この国はユニウスセブンの破片が落下した被害を感じ
させず、皆、日常通りの暮らしをしていた。
ふと足にボールが当たった。チラッと見ると、子供がジ〜っとこちらを見ているのでフッと笑みを浮かべてボールを投げ返す。「ありがとう〜」と手を振って
礼を言う子供に手を振り返し、缶コーヒーを飲もうとするとフッと影が彼を覆い、顔を上げた。
「久し振りだな、シュティル・ハーベスト君」
「……お久し振りです、トダカ二佐……あ、今は一佐ですか」
そこには公園にはとても不釣合いな軍服を着たトダカが立っていた。トダカはシュティルの隣に座ると、彼と同じように遊んでいる子供達を見つめる。
「こうして会うのも久し振りだな」
「ええ……」
「今は何を? まだ傭兵を?」
「いえ……今はボチボチやってます」
四、五年前……各地の紛争で傭兵をしていたシュティルは、海を移動中に襲撃にあい、オーブへと流れ着いた。それを助けてくれたのがトダカだった。
「貴方から頼まれたシンですが……」
「!?」
ふとシュティルが先程までトダカの考えていた少年の名前が出て目を見開く。トダカが保護した少年はシンだった。彼が家族を失った後、トダカはプラントへ
の移住を勧めた。その時、プラントにいたシュティルは、トダカから連絡を受け、しばらく面倒を見てやって欲しいとの事だった。
「今はオーブにいると思います」
「何!?」
「ミネルバの……エースパイロットとして」
「!?」
驚愕でトダカは声を詰まらせる。あの大人しかった少年が、ザフトのエースパイロットと聞いては当然だろう。
「………何故?」
「力が欲しい、と。家族を守れなかったのは自分の力が無かったからだ、と……俺に士官学校の推薦を頼んで来ました」
士官学校にもコネはあったので、それは楽だったとシュティルが言う。
「違う! 彼が家族を失ったのは我々、軍人の不甲斐なさの所為だ!」
「? トダカ一佐?」
声を張り上げて言うトダカに、シュティルは眉を顰める。彼は額を押さえ、顔を俯かせて語った。2年間、ずっと悩んでいた事を。シュティルは、トダカの悩
みをただ無言で聞いた。
「オーブの理念とは……あのような犠牲を払ってまでも守らねばいけないものだったのだろうか……?」
「………確かに……国民がいなければ、理念もクソもありませんね」
「………………」
「ですが……もし、最初からどちらかに与していれば、もっと早くあの惨劇は訪れていたかもしれません」
「え?」
シュティルのその言葉にトダカは顔を上げる。オーブにはマスドライバーがある。それを連合、ザフトの両方が狙う可能性だって充分にあった。そうなれば、
結局はオーブは戦場となっていただろう。
「結局、戦争が始まれば中立なんて言葉は通用しない……民間人の血が流れないっていうのもあり得ないんですよ。そもそも種族闘争っていうのは、どちらか一
方を滅ぼさないと終わらないものですからね」
逆を言えば、ウズミは中立という事でナチュラル・コーディネイターの関係の無い国を作りたかった。そうする事で戦争を終わらせたいという思いだったのだ
ろう。
「確かにオーブの理念は甘い。ですが、その理念を守らなければ、世界は二分化され、どちらかが滅びるまで争いを続けます……トダカ一佐」
スッとシュティルは、砂場で遊んでいるまだ年端もいかない子供達を指差した。
「もし、あの子がコーディネイターだとしたら……貴方は、その手であの子を殺せますか?」
「………………出来る訳が……無いだろう」
「ですが、オーブが大西洋連邦に与するという事はそういう事です」
「しかし……今の状況は、もうカガリ様でさえ変えられん! 同盟を締結しなければ、オーブはまた焼かれてしまう!」
「だから言ったでしょう……何処かに与しようがしまいが、国民の血は流れる。それが戦争だ、と」
シュティルの言葉は、トダカの胸に深く突き刺さった。
アスランは、夕陽の海岸沿いの道路で車を走らせていた。地球にユニウスセブンの破片が落下し、彼の親友がどうなったか気になった。それで、今はオーブ本
島にいると聞いたので、そこへ向かう途中だった。
「ん? キラ?」
そこで、砂浜で遊ぶ子供達とピンクの髪の少女と茶髪の少年がいたので車を停めてクラクションを鳴らす。すると、それに気づいた子供達が声を上げて駆け
寄って来た。
「あー! アスラン!」
「違うよ、アレックス!」
「どこ行ってたんだよ〜?」
「カガリは?」
車から降りたアスランに子供達は口々に言い合い、彼に群がる。アスランは困惑しながらも、子供達に続いてやって来た2人を見て頬を緩めた。
「アスラン……」
茶色い髪をなびかせ、黒いベルトの多い服を着た少年、キラ・ヤマトに名前を呼ばれる。アスランの幼馴染で親友。そして2年前、劇的な再会を果たした彼ら
は敵同士だった。
コーディネイターでありながら地球軍に属していたキラ。互いに、それぞれの友人を殺し、本気で憎み合いもした。それが、こうして穏やかに話せる日が来る
など、アスランにはあの時、とても思えなかった。
「お帰りなさい。大変でしたわね」
キラに続いてピンクの髪の少女が微笑みかける。ラクス・クライン……プラントの歌姫と呼ばれながら、2年前は、プラントでも地球でも無い第三勢力のリー
ダー的存在としてキラ、アスランと共に戦った。
キラとラクスも戦争が終わると、マルキオ導師のもとで静かに暮らしていた。
「君達こそ……家流されてこっちに来てるって聞いて……大丈夫だったか?」
「そうお家なくなっちゃったの」
「あのね見てないけど高波っての来て、壊していっちゃったって!」
「バラバラー」
「玩具もみんな無くなっちゃった」
「新しいの出来るまでお引っ越しだって」
「そうだよ、お引っ越しすんの」
「あぁ……」
再び口々に言い合う子供達にアスランが困惑するラクスが助け舟を出した。
「あらあら。ちょっと待って下さいな皆さん。これではお話が出来ませんわ」
そう言い、ラクスは子供達と一緒に砂浜に戻って行った。キラとアスランを、それを見送ると、ふとキラが尋ねてきた。
「カガリは?」
「行政府だ。仕事が山積みだろ」
それに2人は苦笑し合うと、砂浜からラクスが手を振って来た。
「キラは先に行って下さいなー! わたくしは子供達と浜から戻りますわー!」
2人はラクスに手を振り返し、車に向かう。その際、緑色の鳥ロボットが飛んで来てキラの肩に止まった。アスランが、昔、月からプラントへ渡る際、キラに
送ったロボット――トリィだった。
「あの落下の真相はもうみんな知ってるんだろ?」
車を走らせながらアスランが尋ねると、キラは神妙な顔で頷いた。
「うん」
「連中の一人が言ったよ」
「え?」
「“討たれた者達の嘆きを忘れて、何故討った者達と偽りの世界で笑うんだお前らは”……って」
「……戦ったの?」
少し驚いた様子でキラが尋ねる。
「ユニウスセブンの破砕作業に出たら、彼等が居たんだ……あの時、俺聞いたよな、やっぱりこのオーブで」
2年前、父の命令でザフトの最新型MSを強奪したキラを追って、オーブへとやって来たアスラン。しかし、その時アスランは初めて父親の命令を無視し、キ
ラと共に戦った。
「うん」
「“俺達は本当は何とどう戦わなきゃならなかったんだ”って」
「うん」
「そしたらお前言ったよな。“それも皆で一緒に探せば良い”って」
「……うん」
「でも……見つからなかった」
仲間がいて、親友がいながらもアスランは答えが見つからず、ずっと悩んでいた。
「先輩に言われるまでは」
「え?」
「先輩……言ったんだ。“ 私は君に何と戦う事よりも重要なものがあると教えた筈だよ”って」
「先輩?」
不思議そうに尋ねて来るキラに、アスランはフッと笑った。その表情を見てキラは目を見開く。アスランの表情は晴れやかで、まるで迷いの無い瞳だった。
「ああ。掴み所の無い人だけど、強く、優しく、誠実な人だ……お前も会えば分かるよ」
あの堅物で、お世辞も言えないアスランが、そこまで言える人物。そして何よりも彼の迷いを吹き飛ばすような人に、キラは自然と興味を持った。
「ちきしょう!! 浜辺だってのに水着ギャルの一人もいないよ!!」
「泣くな!」
その頃、夕陽の砂浜ではレンが膝を突いて悔やんでいるとリサの回し蹴りが彼のコメカミに直撃して砂浜に倒れる。アスラン曰く、強く、優しく、誠実な人で
ある。
「そりゃ、あんな事があったのに暢気にビーチで遊んでいる人なんていないでしょう」
ピクピクと砂浜に倒れて痙攣しているレンに、リサはハァと溜息を吐く。食事の後、マルキオ導師の孤児院に向かったレン達だったが、そこは崩壊していて誰
もいなかったので、仕方なく戻って来たのだ。
「どうするんですか、兄さん?」
ゴツッとレンの頭を爪先で蹴って質問するリサ。
「あの……リサさん。せめて兄らしく、敬意を表して扱ってくれると嬉しいんですけど……」
「は? 敬意? 兄さんに、そんなものあると思ってんですか?」
「すんません……」
シクシクと泣きながらレンは、水平線の向こうに沈んでいく夕陽を見つめる。
「うぅ……水着ギャル〜!」
「もっと他に叫ぶこと無いんですか?」
「私の脳は約87%が性欲で支配されているのだ!」
「…………いっそ海に沈めてやった方が全女性の平和の為ですね」
右腕の義手を外し、銃口を向けるリサ。レンは、ダラダラと冷や汗を垂らす。
「お、落ち着きたまえよ、リサ君!」
「問答無用!」
パァン!!
「どわぁ!?」
マジで撃って来る妹。レンは咄嗟に転がって銃弾を避けるとダッシュで逃げ出した。
「兄さん! 大人しく撃たれなさい! これ以上、生き恥を晒すのなら、いっそ私の手で!」
パン、パンと連射してくるリサから、レンは必死に逃げる。
「すんません! 謝ります! こ、これからは87%から86%にします〜!」
「変わらないでしょうが!」
アスラン曰く……強く、優しく、誠実な人物であるレン・フブキ。その彼は現在、夕陽の落ちる砂浜で妹から必死に逃げているのであった。
「あ、ラクス見て〜。あの人達、追いかけっこしてるよ〜」
「あらあら。仲の良さそうな2人ですわね」
翌朝、アスランはアスハ邸で朝食を取り終え、ニュースを見ているとカガリが慌しい様子で入って来た。
「アスラン!」
「おはよう」
「昨日はすまなかった。あの後もずっと行政府で……ああ今日も朝からずっと閣議になるからゆっくり話しもしていられないが、あの……」
昨日のユウナの事で必死に弁明しようとするカガリに、アスランはクスッと微笑んで言った。
「いいよ、分かってる。気にするな。それよりどうなんだ? オーブ政府の状況は……」
その質問に、今まで騒々しかったカガリがピタッと止まる。沈痛な面持ちを浮かべる彼女の態度で、アスランは悟った。
「……そうか」
「今は情勢がああ動くのも仕方ないかとも思う。他と比べれば軽微だろうがオーブだって被害は被った。首長達の言うことは分かる……けど、痛みを分かち合
うって、それは報復を叫ぶ人達と一緒になってプラントを憎むって事じゃないはずだ!」
「…………憎しみを憎しみで返すのは簡単だ」
「え?」
コーヒーを一口飲み、そう言ったアスランにカガリはキョトンとなる。
「やったらやり返されるなんて子供でも分かる理屈だ。だが、そんな事、続けても最後には虚しさしか残らない。誰かが我慢するしか無いんだ。我慢する人間
は、怒りの捌け口を失い辛いかもしれない……でも、そうしなければ悲しみを増やすだけだ」
「アスラン……」
「だから、俺はプラントに行くんだ。議長が何を考えているのか……真実を確かめに」
そう言って強い意志の篭った瞳を見せるアスランに、カガリは何も言えなかった。
「カガリ……」
「え?」
「たとえ周りが何と言おうと……君は君だ。オーブの獅子、ウズミ・ナラ・アスハの娘、カガリ・ユラ・アスハだって事を忘れるな」
強い意志の篭った瞳でそう言われると、カガリはコクッと頷いた。
アスハ家のヘリポートに、ヘリが到着する。アスランは、最小限の身支度をして、カガリは彼を屋敷の玄関で見送る。そして、ふとアスランは眉を顰め、呟い
た。
「ユウナ・ロマとの事は分かってはいるけど……」
「え?」
いきなりユウナの名前が出てカガリはキョトンとなるが、アスランはポケットに片手を入れながら続ける。
「やっぱり、面白くはないから……」
そうして彼はカガリの左手を取り、その薬指にポケットから取り出した指輪を付ける。ポカン、となるカガリ。しばらく、その指輪と、それを付けられた位置
を見て、正気に戻ると顔を真っ赤にした。
「あ………ええッ!?」
「…………」
アスランも頬を染め、カガリから視線を逸らしている。
「お……おま……いや……あの……こういう指輪の渡し方ってないんじゃないか!?」
「悪かったな」
憮然とした態度で返すアスラン。ムードもへったくれも無い。男なら口説き文句の一つぐらい吐いたら良いのだが、如何せんアスランとは、そういう人間であ
る。
余りにも彼らしいっちゃ彼らしいやり方に、カガリは思わずプッと噴き出した。そして、自分の指にはめられた指輪を見つめ、アスランを見上げて微笑んだ。
「気を付けて。連絡寄こせよ」
「カガリも……頑張れ」
そうして互いに軽くキスして見詰め合うと、アスランは鞄を手にしてヘリに乗り込んだ。空高く飛んでいくヘリを、カガリは見上げ、右手でギュッと指輪を大
切そうに握るのだった。
「ふぅ……」
エリシエルは、私服でオーブの街に来ていた。今日、クルーに対し、上陸許可が出たのだ。彼女も上陸し、花屋に来ていた。
「動くな」
「!?」
その時、背後で低い声がし、背中に先端の尖った感触がした。彼女はツゥと冷や汗を垂らす。こんな所で何者かに襲われるなど想像だにしなかった。今の彼女
は、黒いシャツにスカートという、おおよそ軍人とは思えない。
恐る恐る振り返ると、いきなり口に何かを突っ込まれた。
「もが!?」
「やっほ」
「!?」
振り返るとそこには、タコヤキを片手に笑顔を浮かべているレンの姿があった。エリシエルは、口に突っ込まれたタコヤキを飲み込むと、慌てて彼に尋ねる。
「あ、ああああ、貴方、こんな所で何やってんですか!?」
「観光。食べる?」
サラッと答えてタコヤキを食べるレンに、エリシエルは表情を引き攣らせる。
「一応、私の立場からすると貴方を捕まえないといけないんですが……」
「まぁまぁ。今はオフシーズンだし、お互い物騒ごとはナッシングって事で」
「オフどころか、いつ戦争になってもおかしくない状況です!」
「っていうかさ、私、一応、見つかると厄介なので変装してるんだけど………何で話しかけたんだよ!?」
「逆切れしないでください!」
もう訳が分からないといった様子で溜息を吐くエリシエル。
「もう良いです。今日は、そんな気になれませんし……」
そう言って彼女は左手に持っている菊の花束を挙げた。
「菊? どうするの、それ? 入院してる人にでも送るの?」
「そういうサイテーな発想するのは貴方だけです………慰霊碑ですよ」
「慰霊碑?」
「はい。折角ですから慰霊碑に花を添えようと思いまして……」
それを聞いてレンは爪楊枝を咥えながら肩を竦めた。
「また生真面目な……確かオーブ戦役はザフトは関わってなかった筈だよ?」
「それでも……戦争の犠牲者の方々には変わりませんから」
そう言い、辛そうな表情を浮かべるエリシエル。レンは、空になったタコヤキのパックをゴミ箱に捨てると、その花束を奪い取った。
「レ、レン!?」
「丁度、港でリサと待ち合わせの約束しててね。慰霊碑もそこにあるし、ついでだし一緒に行こう」
右手骨折してるし大変だろうと言い、レンは歩き出す。エリシエルは、呆れながらも、小さく微笑み彼の後に付いて行った。
「えっと、後買うものは……」
その頃、リサは別の所で買物をしていた。ミサイルや弾薬など兵器類は、正規ルートじゃ手に入らないので、裏――闇市から手を回して貰っている。ワイ
ヴァーンという名前を出せば、割と手に入り易いのだ。
それらは届けて貰うとして、後はクルーに頼まれた生活用品などだった。
「…………兄さん、堂々とエロ本と書いてる貴方はアホですか」
メモ用紙を見ながらポツリと呟き、買物袋を片手に歩いていると、ドンと誰かの背中にぶつかった。
「きゃ!」
「あ、すいません。大丈夫で……!?」
ぶつかった際、帽子が取れ、リサの白髪と眼帯が露になる。
「あ……」
周囲がザワつき、リサは大きく目を見開いた。そして、慌てて零した荷物を拾うとガシッと腕を掴まれた。
「え?」
「何やってんだ、お前?」
「シ、シンさん?」
リサがぶつかったのは、上陸していたシンだった。シンは、不審そうにリサを見ていると周囲の奇異の視線に気付いた。どうやらリサの容姿が人目を引き付け
ているらしい。カタカタと震えながら荷物を拾うリサを見て、シンは舌打ちすると帽子を取って走り出した。
「ちょ、ちょっとシンさん!?」
「うるさい! 良いから来い!」
無理やり走らされ、リサは驚きながらも彼に付いて行った。
やがて2人は人目の付かない堤防へとやって来て、ゼェゼェと息を吐く。
「ったく……そ、そんなに人に顔、見られるのが嫌だったら、街になんか来るなよ!」
帽子を彼女の頭に押し付け、文句を言うとリサはムッとなって言い返した。
「そんなの人の勝手です! 私だって好きでこんなんになった訳じゃないんですから!」
「ちっ……大体、海賊のクセに何でこんな所にいるんだよ?」
「ただの観光です。そちらこそ、オーブが嫌いなクセに何でいるんです?」
ギロッとシンとリサは互いに睨み合う。すると、シンはプイッとソッポを向いて言った。
「今日は行く所がある……見逃してやるから、とっとと消えろ」
「ええ、消えますよ。私も貴方の顔なんて見たくありませんからね」
そう言い合い、同じ方向に向かって歩き出す2人。ちっとも違う道を行こうとしないリサに、シンは青筋を浮かべて怒鳴る。
「…………何で付いて来るんだよ!?」
「そっちこそ私の行く道を歩かないでください!」
「俺は港に用があるんだよ!」「私は港で兄さんと待ち合わせしてるんです!」
同時に怒鳴り合う2人は、意外な顔になった。
「「…………え?」」
「何で俺がお前の荷物なんか……」
もうすっかり夕方になり、シンはリサと共に慰霊碑のある公園を訪れていた。その両手にはリサの買った荷物があり、愚痴を零している。
「か弱い女の子に荷物を持たせる気ですか?」
「(何処が“か弱い”だ)」
少なくともか弱い女の子は右腕に仕込み銃なんてしていない。やがてシンは、かつてとは違う綺麗な遊歩道に目を細めた。2年前、彼は此処で家族を失った。
父、母、妹のマユ……昨日までごく普通にあったものが一瞬にして奪われてしまったのだ。
そして、綺麗に整地されたこの場を見て、シンの胸に言いようの無い怒りが込み上げて来る。この場であった凄惨な現実を、整地された公園という仮面を被
せ、隠しているのだと。
彼はポケットからピンク色の携帯電話を取り出す。それは、妹のマユの形見で、これのお陰で彼は助かったと言っても良い。今では、彼のお守り代わりでも
あった。
<はい、マユで〜す。でもごめんなさい。今マユはお話出来ません。後で連絡しますのでお名前を発信音の後に……>
携帯電話を開くと、昔と変わらない妹の声が響く。
「? 何ですか、それ?」
不思議そうにリサが尋ねると、シンは顔を俯かせて答えた。
「妹の……形見だ」
「ああ……確か家族を亡くされたんですね」
「此処でな……」
そう言ったシンに、リサは目を細める。すると、ふと海辺に花に囲まれた石碑を見つけた。その前には一人の少年が立っている。その肩には<トリィ>と無く
ロボットが止まっている。
少年も、シンとリサに気付いて振り返る。
「慰霊碑…ですか?」
「うん。そうみたいだね。良くは知らないんだ。僕も此処へは初めてだから。自分でちゃんと来るのは……」
その時、何処からか風に乗って歌声が聞こえてきた。
「せっかく花が咲いたのに、波を被ったからまた枯れちゃうね……」
「……誤魔化せないって事かも」
シンの言葉を少年が不思議そうに見る。
「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす……」
「君……?」
少年が眉を顰めてシンを見ると、反対側からピンク色の髪をした少女がやって来た。シンは、少年に向かって頭を下げる。
「すいません、変なこと言って」
そう言って立ち去ろうとすると、軽快な声が響いた。
「確かに人は花を吹き飛ばすが、また花を咲かせる事も出来るのだ!!」
ポロロ〜ンとウクレレの音が響き、シンとリサは表情を顰め、少年と少女は不思議そうに音のした方を見る。
「だから慰霊碑でウクレレ弾くなんて罰当たりにも程がありますよ!!」
「兄さん!」
「エリシエルさん!」
ウクレレを弾きながらやって来るレンと、それに呆れながら付いて来るエリシエル。
「おや? デート中?」
「「違う!(違います!)」」
ポロロンと弾きながら尋ねると、シンとリサは揃って声を上げた。少年と少女は不思議そうにレンの姿を見ていると、ふとエリシエルが慰霊碑に花を供えてい
るのに気付く。
「どうせ歌うならレクイエムより私は、平和の歌を歌いたいね〜」
「だったら、その無意味に陽気なウクレレを捨てなさい!」
「は〜い」
ヤレヤレと肩を竦めレンは、チラッと少年と少女の方を見る。そして、少女を見て、目を見開くとエリシエルの方を見た。彼女も少女を見て、呆然としてい
る。やがてレンはフッと笑みを浮かべると、少年にウクレレを差し出す。
「はい、進呈」
「え?」
「これで平和の歌でも歌ってくれたまえ。はっはっは!」
呆然となる少年を他所に、レンは高笑いしてリサと共にその場から去ってい行った。その際、振り返り、エリシエルに向かって口の前で人差し指を立てた。
エリシエルは最初、目をパチクリとさせながらもフッと笑い、シンに言った。
「私達も帰りましょうか」
「…………良いんですか? あいつ等、見逃して」
「此処はオーブだし……揉め事は起こさない方が良いわよ」
そう言い、エリシエルは少年と少女に向かって頭を下げると、その場から去って行った。去って行くレンの背中を見つめ、少女が言う。
「誰でしょう? お知り合い?」
「いや……でも……不思議な人だった……平和の歌……か」
感想
更新速度が凄まじい(汗)
私は何時に成ったら、感想が終わるのか戦々恐々デス…
いや、眼堕さんには直接関係無いんですけどね。
沢山の方に投稿していただけるようになってシルフェニアも大きくなったなぁと実感しています。
しかし、ま…その分どうしても、感動の出遅れが起こるわけでして(汗)
色々お許しください。
さて、今回はオーブ編その1って感じですね。
キラ達も出てきましたし、話が展開し始めるでしょう。
でもレン君縦横無尽に動き回ってますね〜
リサちゃんとのトークも見事に炸裂してます(爆)
今までよりも感覚的に面白く見えるのは気のせい?
やっぱり、煩悩のままに動き回る主人公は面白いです♪
まあ無害だしね(汗)
でもアレですね、マルキオ導師…相変わらず得体が知れない(汗)
いや、コメントあっただけだけど…
最後にウクレレを渡されたキラこの先彼はウクレレ引きとなるのか!?
乞うご期待! って感じですな(爆)
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