「え？ ミネルバがジブラルタルに」
「はい。もうすぐ入港する筈です」
ドラゴネスの整備を終え、オーブへ向かう事になったレン達。そのドックで、柳生がレンにミネルバのジブラルタル入港の報せを聞いた。他にもミネルバだけ
でなく付近のザフト軍、そして反ロゴスに寝返った連合加盟国もジブラルタルへ向かい始めたらしい。東アジア共和国は、その先頭だ。
「と、なるとアスランとエリィが危ないな……」
「？ 何かあるんですか？」
「いや〜。議長がロゴスの存在を公表したら、機を見てアスランと軍から脱走しろってエリィに言っちゃってさ〜」
苦笑いを浮かべて答えるレンに、リサと柳生は驚く。
「ど、どうするんですか、兄さん！？」
「そりゃ迎えに行くしかないでしょう」
「ドラゴネスは、まだ最終チェックが終わってないんですよ！？」
「だから私一人で行くって」
そうレンが言うと、リサはハッとなってドックに並んである二体のＭＳを振り返る。
二体とも同じキラの言う『ガンダム』と呼ばれるＭＳと同じ造型だが、片方は、まるで天使を思わせるような巨大な翼のスラスターがあり、両腰には砲塔があ
り、手には二本のビームライフルより、大型のライフルが二つ持たれている。
一方のＭＳは、日本に伝わる雷神を思わせるような巨大な円盤を背負い、それには小さな円盤が幾つも付属し、両肩にも大きなシールドがあった。
「どっちいける？」
「トゥルースは、もう最終チェックが終わりましたが……」
「出るよ」
言うや否や、レンはキャットウォークを駆け上がり、二体の内、一体に乗り込んだ。柳生は、すぐに発進準備をさせる。
「（ラストの戦闘データを引き継がせて……）」
新しくＯＳを組み、そしてラストの戦闘データを用いて、自分専用にカスタマイズする。すると、灰色だったＭＳのボディが、白銀に染まり、青い双眸が光
る。
＜お、おい、レン！ 何やってんだ！？＞
その時、ドラゴネスのブリッジからラディックが驚いた様子で回線を開いて来た。
「アスランとエリィを迎えに行く。早くしないと議長に消されるんでね」
＜はぁ？＞
＜ＷＬＭＦ−Ｘ７７Ａ“トゥルース”、システムオールグリーン。発進どうぞ＞
顔を顰めるラディックとの通信を切り、レンは操縦桿を持つ。キャットウォークが離れ、ＭＳに繋がっていた配線が外れる。そして、天井のゲートが開き、青
空が見えた。
「レン・フブキ……トゥルース、行くぞ」
レンの新たなる機体……真理の名を冠した白銀の機体が、三対六枚の黒い翼を広げて飛び立つ。すると、翼と両脚から白い光が発生し、雲の上に上がると、飛
び去って行った。その姿は、正に天へと立ち向かう、漆黒の翼の堕天使のようだった。
機動戦士ガンダムＳＥＥＤ Ｄｅｓｔｉｎｙ〜Ａｎｏｔｈｅ Ｓｔｏｒｙ〜
ＰＨＡＳＥ−２４ 雷雨の脱走
＜こちらジブラルタル・ポートコントロール。ＬＨＭ−ＢＢ０１、ミネルバの到着を歓迎する＞
イベリア半島最南端に位置するジブラルタル基地。ザフトの地球においてカーペンタリアと並んで重要な拠点である。そこへ到着したミネルバ。
＜これより貴艦を二番プラットホームに誘導する。ビーコン確認をどうぞ＞
「こちらミネルバ。了解、ビーコンを確認する」
バートが答えると、今まで張り詰めていたブリッジの緊張がホッと解ける。色々あったが、何とかジブラルタルまで辿り着けた。が、タリアの表情は暗い。
「いや凄いですね〜」
しかし、アーサーは正反対に、ジブラルタルに集まっている他のザフトの戦艦を見て興奮気味に言う。
「付近の全軍に集結命令が出ているのは知っていましたが、こうして見ると壮観です………あ？」
が、そこでようやくタリアの表情に気付いたアーサーは、ハッとなって苦笑いを浮かべる。
「はぁ……剣を取らせるには何よりその大義が重要である」
「え？」
唐突にタリアが呟くと、アーサーは首を傾げる。
「誰だったか忘れたけど、指揮官講習の教官が言ってた言葉よ。ま、当たり前のことね。討つべき敵とその理由が納得出来なきゃ、誰も戦えないもの。今私達に
はハッキリとそれが示された」
ロゴスを討つ。議長の放送で――一悶着あったが、大多数はデュランダルを信頼し、支持している――多くの人々が彼の元に集う。ロゴスを倒せば戦争が終わ
る……恐らく誰もが、そう思っているだろう。
「有り難い事かしら？ 軍人としては」
「はい？」
苦笑しながら尋ねるタリアに、アーサーは訳が分からなかった。
＜これより本艦はジブラルタルへの入港シークエンスを開始します。各艦員は所定の部署に就いてください＞
メイリンの放送がスピーカーから流れると、ヴィーノ達は駆け足でレクルームから出て行く。それを見送りながら、シンが呟いた。
「ジブラルタル入って次はどうすんのかな、俺達？」
その質問に対し、レイは淡白に答える。
「さあな……だが先日の議長の言葉に沿った形での作戦が展開される事は確かだ」
そこへ、自動販売機で飲み物を買ったルナマリアが、話に加わって来た。
「ロゴスを討つなんて……議長御自身だって難しいって仰ってたのに」
「でも、どうしてもやらねばと思われたのだろう。あの悲惨な状況を見られて」
「うん……」
シンは頷いたまま顔を上げない。確かにデュランダルの言う事は分かる。ロゴスは倒さねばいけない存在だ。彼らがいる限り、戦争は無くならない。
だが、前の放送。ルシーアの父だといったキースが、デストロイの設計図をデュランダルに流し、彼はそれを黙認していた。その事が、頭から離れなかった。
多くの人は、ロゴスの放った言い逃れだと言っているが、シンは嘘とは思えなかった。それは、キースという人物を直に見た時、彼の底知れぬ“何か”を感じ
たからだ。
「（ロゴスは絶対に倒す……けど……ロゴスを倒して本当に戦争が無くなるのか？）」
ロゴスがいる限り戦争が続く。では、ロゴスを倒せば戦争が無くなる。そんな簡単な方程式が成り立つのかと考えた。
「シンは気が乗らないか？ 対ロゴスは？」
そこへ、レイに尋ねられ、シンは慌てて取り繕う。
「いや、そんな事……ただ……」
「ただ、何だ？」
「単純に敵を倒せば良いのかって………そりゃロゴスは倒さなきゃいけないと思う。俺だって、それで戦争が無くなって平和になるなら、どんな敵とだって戦う
さ……けど……ただ敵を倒すだけで本当に良いのかなって……」
「シン……」
シン本人にも分からず、彼は天井を見上げる。レイは、黙って彼を横目で見つめた。その時、シンとアスランに出頭命令が下ったと言う放送が入った。
ミネルバから降りると、兵士と車が待っており、シンとアスランはそれに乗って、大きな格納庫へと連れて来られた。司令部ではなく、何で格納庫に連れて来
られるのか分からず、アスランとシンは不思議に思いながらも格納庫に足を踏み入れる。
「失礼します！ シン・アスカ、アスラン・ザラを連れて参りました」
広い空間に兵士の声が良く響く。中央のキャットウォークには、デュランダルとミーアの姿があった。彼女はアスランを見て、パァッと表情を輝かせる。
「お久しぶりです議長」
表情を顰めながらも、シンとアスランは敬礼し、挨拶する。
「あの……先日のメッセージ、感動しました。俺もロゴスは倒さなきゃいけないと思います……」
デュランダルは穏やかな表情で、二人に手を差し出す。
「いや、ありがとう。私も君達の活躍を聞いているよ。色々あったが良く頑張ってくれた」
その手を握り返すのを躊躇うアスランに、ミーアが駆け寄って来た。
「アスラン！」
いつものような明るい表情で飛びつくミーア。
「お元気でした？ 会いたかったですわ」
「そう……ですか」
「アスラン？」
いつもと妙に雰囲気の違うアスランに、ミーアは眉を顰める。
「さて、もう知っている事と思うが、事態を見かねて遂に私はとんでもない事を始めてしまってね……まぁ途中、ロゴスの妨害があったが、私の味方をしてくれ
る者は多い。此処に集まってくれた人達の為にもロゴスに屈する訳にはいかないな……また話したい事も色々あるが、まずは見てくれたまえ」
そう言って、デュランダルは背後に目を向けた。
「もう先ほどから目もそちらにばかり行ってしまっているだろう？」
確かに彼らは、暗闇の中におぼろげに浮かぶ何かに気付いていた。すると、ライトが点灯し、それらが明らかになった。そこには、二体のＭＳが佇んでいた。
「ＺＧＭＦ−Ｘ４２Ｓ“デスティニー”、ＺＧＭＦ−Ｘ６６６Ｓ“レジェンド”」
凛と佇む二つの機体をシンとアスランは呆然となって見つめる。
デスティニーと呼ばれた機体は、大きな翼のようなスラスターを持ち、右肩の後ろには対艦刀、左肩の後ろには巨大な砲身、両肩から突き出しているのはブー
メランのようだ。それは、正にインパルスの三つのシルエット……フォース、ソード、ブラストを織り交ぜたような姿だった。
一方のレジェンドは、背後に円盤を背負い、八基の砲塔が付属されている。かなりの火力を持っているＭＳのようだ。
「どちらも従来のものを遙かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見てもらうが、恐らくはコレがこれからの戦いの主役になるだろう」
「議長それは……」
アスランが意見しようとしたが、それを遮るかのようにデュランダルが言った。
「君達の新しい機体だよ」
「え？ 俺の新しい？」
シンは呆然となってデスティニーとレジェンドを見つめる。最新鋭のインパルスを与えられ、更に新たなる機体を授かる。それは、デュランダル議長に、それ
だけ認められ、信頼されている証だった。
しかし、シンは何故か素直に喜べなかった。何故か分からない。前までの自分だったら、普通に喜んでいた筈だった。いつから、こんな風になってしまったの
か？
「デスティニーは火力、防御力、機動力、信頼性、その全ての点においてインパルスを凌ぐ最強のＭＳだ。一方のレジェンドは量子インターフェイスの改良によ
り、誰でも操作出来るようになった新世代のドラグーンシステムを搭載する実に野心的な機体でね」
何処か嬉しそうに機体の説明をするデュランダル。そういえば、以前、カガリがミネルバでデュランダルに同じように説明を聞いていた時に言った。
『嬉しそうだな、議長は？』
あの時はシンの乱入で話が有耶無耶になってしまったが、今ではアスランは、デュランダルも力に取り付かれているように思える。
「どちらも工廠が不休で作り上げた自信作だよ。どうかな？ 気に入ったかね？」
「あ……いや……凄いと思います
「デスティニーには特に君を想定した調整を加えてある。
「え？ 俺を……ですか？」
唖然となるシンに、デュランダルは頷く。
「最新のインパルスの戦闘データを参考にしてね。君の操作の癖、特にスピードはどうやら通常を遙かに越えて来始めているようだね……いや凄いものだな君の
力は。この所ますます」
「いえ……そんな」
手放しで賞賛するデュランダルだったが、シンは視線を逸らした。そんな風に言われても、その力で守れたものなど無い。シンは、そう思った。
「インパルスでは機体の限界にイラつくことも多かったと思うが、これならそんな事はない。私が保証するよ」
「はぁ……」
デスティニーの説明を終えると、デュランダルは今度はアスランに向き直る。
「君の機体はこのレジェンドということになるが、どうかなアスラン？ ドラグーンシステムは？ 私は君なら十分に使いこなせると思うが……」
そう言ったデュランダルにアスランは答えない。そんなアスランをデュランダルが不思議そうに尋ねる。
「ん？ どうしたね、アスラン？」
「これはこれからロゴスと戦っていくために……という事ですか？ 戦争をなくすためにロゴスと戦うと、議長は仰いました」
「ああ。戦いを終わらせる為に戦うというのも矛盾した困った話だが……だが仕方ないだろ？ 彼等は言葉を聞かないのだから。それでは戦うしかなくなる」
「聞かないから討つ……ですか。子供が言う事を聞かないから叩いて叱り付けて素直になると思いますか？」
そう問い返すアスランに、シンとミーア、そしてデュランダルも意外な表情を浮かべた。が、デュランダルはすぐにフッと笑みを浮かべて答える。
「確かにそうかもしれない……だが、彼らは子供というには危険すぎる力を持っているじゃないか」
「だから、それ以上の力で抑え付ける、と…………貴方にとって危険な力は？」
その言葉にデュランダルの目が細められる。その目の冷たさを、アスランは見逃さなかった。
「力で抑え付ける前に別の方法を探そうと思われなかったのですか？」
「君の憤りは分かる。何故こんな事に、何故世界は願ったように動かないのかと。実に腹立たしい想いだろう。だが言ってみれば、それが今のこの世界、と言う
ことだ」
デスティニーとレジェンドを見つめながら言うデュランダルに、アスランは眉を顰める。
「今のこの世界では、我等は誰もが本当の自分を知らず、その力も役割も知らず、ただ時々に翻弄されて生きている…………アスラン、君の友人、キラ・ヤマト
君や、あのレン・フブキ君のようにね」
突然、彼らの名前が出て来て、アスランは首を傾げる。何で彼がレンはともかく、キラの名前を知っているのか……。
「彼らは実に不幸だと私は思うよ」
「不幸？」
「あれだけの資質と力だ。彼らは本来戦士なのだ。ＭＳで戦わせたら当代彼らに敵う者はないと言う程の腕の……なのに誰一人、彼ら自身それを知らず、知らぬ
が故にそう育たず、そう生きず、キラ・ヤマト君は時代に翻弄され、レン・フブキ君は海賊に成り下がり時代を無視して生きてしまった」
少し、アスランはデュランダルの言葉に共感する。レンも本気になり、キラも不殺を貫かなければ、彼らに敵うような人間はいないかもしれない。
「あれほどの力、正しく使えばどれだけの事が出来たか分からないというのにね」
アスランの中に言い様の無い怒りが込み上げて来る。彼は、キラもレンも“戦士”としか捉えていない。そこに彼らの人格、意志などは関係ない。アスラン
は、ギリッと唇を噛み締め、デュランダルを睨みつけた。その鋭い目に、ミーアはビクッと身を竦ませた。
「本当に不幸だな、彼らは……彼らがもっと早く自分を知っていたら、君達のようにその力と役割を知り、それを活かせる場所で生きられたら。彼ら自身も悩み
苦しむこともなく、その力は称えられて幸福に生きられただろうに」
「幸福……でありますか？」
いまいち話が飲み込めないシンが呟くと、デュランダルは頷いた。
「そうだよ。人は自分を知り、精一杯出来る事をして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろ？ この戦争が終わったら私は、是非ともそんな世界を創り上
げたいと思っているのだよ。誰もが皆幸福に生きられる世界になれば、もう二度と戦争など起きはしないだろう。夢のような話だがね。だが必ずや実現してみせ
る。だからその日のためにも、君達にも今を頑張ってもらいたいのだ」
アスランのずっと思っていた疑惑が確信へと変わる。確かに自分も戦争の無い世界を目指していた。だが、それをどうすれば実践できるのか分からない。デュ
ランダルは明確に、それを思い描いていた。
人が決められた役割を果たす……いや、チェスの駒のように機能する世界、でだ。それ以外の意志など不要。そして、その世界を作る駒として、彼は自分やシ
ンを必要としていたに過ぎなかった。
最初から疑っていたが、此処までだとは思わなかった。政治家なら裏ぐらいあってもおかしくない。だが、それが世界そのものを揺るがすほどのものならアス
ランの取るべき道は一つだった。
「なるほど……戦士は戦士として、政治家は政治家として、医者は医者として…………そして、ラクス・クラインはラクス・クラインとして生きる事が幸せとい
う事ですか？」
キッと挑戦的な目でデュランダルを見返して尋ねるアスラン。その言葉に、ミーアが大きく目を見開いた。そして、彼は敬礼すると、踵を返す。
「俺にセイバーを見せた時、言った事を覚えていますか？」
「ん？」
「“もし、貴方が道を誤れば貴方に銃を向けても構わないか？”です。そして貴方は頷いた……それだけですよ」
そう言ってアスランは去って行く。デュランダルは、厳しい目つきで彼を見ていた。
「そう……それが議長の意志なのね」
ミネルバの甲板で、アスランは先程のデュランダルとの会話をエリシエルと話していた。彼らの視線の先には、東アジア共和国を初めとした反ロゴスへと寝
返った地球連合の加盟国の艦隊が集まっていた。
ザフトの者からすれば、彼らは敵と思い込んで戦って来たから、いざロゴス討伐に共闘するのは複雑な心境だろう。
「そろそろ潮時かしら……」
潮風に揺れる髪をかき上げながらポツリと呟く。
「レンが言ったわ。もしデュランダル議長がロゴスの存在を公にしたら、機を見てザフトから脱走しろって」
その言葉にアスランは驚いて目を見開くが、やがてフッと笑って手摺りにもたれかかった。
「フブキ先輩……いずれは、こうなると予想していたんですね」
「彼は恐らく最初から議長がどういう人間で、どんな事を考えているのか分かっていたんだわ……」
「酷いですね……最初から教えてくれてたら、こんな風に苦労する事も無かったのに……」
「教えてくれなかったのは、私達の目でその事実を知って貰いたかったから……昔からそんな人だったわ」
あくまでも彼は道を作り、示すだけ。それを渡る渡らないは本人の意志。もし、別の道を渡るなら、それはそれで何も言わない。だから、大抵の人間からは、
淡白で無情な人だと思われている。
アスランは、目を伏せ、風に煽られながら苦笑した。
「最初から教えられて楽をするか、苦労して自分で真実を知るか……か」
「普通だったら楽な生き方を選ぶわね……誰だって苦労なんてしたくないもの。でも……そんなの生きてるとは思わない」
ギュッと手摺りを強く握り、まっすぐと海を見つめながらエリシエルは言った。
「議長の言うように、最初から何もかも自分の全てを知って決まった道を歩くなんて……自分で道を探して、決めて歩く事を“生きる”って言うんじゃないかし
ら？ そんなのは私からしてみれば地獄だわ」
「最初から何もかもか……確かに俺もゴメンですね、そんな人生」
「さて……何とか逃げる手筈を整えないとね」
デュランダルが、どういう人間か分かった今、素直に彼に従うつもりはない。アスランは頷くと、ハッと連合の艦隊を見て目を見開いた。
「アレは……」
連合の戦艦の甲板にいる褐色肌の背の高い長髪の男を見て、アスランはフッと笑った。
「フォールディア先輩……あの……」
「？」
「さて……先輩の方は良いとして俺は……やはりＭＳを奪って派手にした方が先輩も逃げ易いだろうが……」
夜になり、雨が降り注ぐ。宿舎に宛がわれた部屋でアスランは、窓の外を見つめながら脱走の方法を考えていた。そこで、ハッとなって眉を顰める。
「（俺も悪人になったな〜………フブキ先輩の影響か？）」
クソ真面目で頭が堅いと自分でも思っているのに、これで通算２回目の軍脱走。とことん軍人には向いていない性格だと苦笑いを浮かべた。その時だった。部
屋のドアがノックされ、高い声が響いた。
「アスラン、アスラン」
「（ミーア？）」
何の用かと思い、ドアを開けると彼女は急に彼に詰め寄って来た。
「やっぱりいた！ 駄目よこんなことしてちゃ！」
「え？」
「貴方、さっきも格納庫で議長にちゃんとお返事しなかったし、あんな喧嘩を売るような事まで……」
「それが何か？」
「あのシンて子はもうずっと新型機のところにいるのよ……貴方も早く！」
訳が分からず、アスランは詰め寄るミーアを引き離して尋ね返した。
「一体、何なんだ？」
「貴方は駄目だって」
「はあ？」
「議長、あのレイって子と話してて、それで………」
ミーアは、先程、応接室を通りかかった時、デュランダルとレイが密談しているのを聞いた。その時の事を話した。
「そうか、やはり駄目かなアスランは……」
「最初からギルを疑っていたように思われます。ザフトに戻ったのも全てはギルの本心を暴く為……」
テーブルを囲んで座り、レイは淡々とデュランダルに話す。
「彼もまた戦士でしかないのにな。余計なことを考えすぎるんだ。それがせっかくの力を殺してしまっている」
デュランダルは溜息を吐くと、レイに尋ねた。
「キラ・ヤマトの所為かな？ 彼と出会ってしまったのは不幸という事か、アスランもまた」
「かもしれません……」
「消せば良かったか……？」
「無理でしょう。彼らの絆は深い。たとえ始末しても、アスランが死んだと思わない限り、生き続ける……彼の胸の中で」
少し詩的な表現に、デュランダルはフッと笑う。
「シンの方はどうだ？ 彼も迷っているようだが……」
「シンは私が何とかします……ただ、エリシエルは、かなりアスランに肩入れしている様です……彼女の場合はレン・フブキを強く信じているのもありますが」
レンの名前が出て来て、一瞬、デュランダルの表情が厳しくなる。かつて、目の前の少年と同じ境遇だった友と並ぶもう一人の友といえた存在。
自分よりも１０以上年下でありながら、自分よりも遥か先を見据えているような少年であった。
「罪状はこちらで何とかしよう……頼めるか？」
「はい」
抑揚の無い声でレイは頷いた。
「ね？ だからまずいの！ やばいの！」
ミーアから、デュランダルとレイの密談を聞いて、アスランは顔を俯かせた。
「早くそんな事ありませんて見せないと、このままじゃ議長あなたを……」
その時だった。部屋を乱暴にノックされた。アスランとミーアはハッとなる。
「ミネルバ所属特務隊アスラン・ザラ。保安部の者です。ちょっとお話をお聞きしたい事があるのですが」
どうせ、すぐに始末されるだろう。アスランは、デュランダルが自分に都合の悪くなったものは即座に排除する……そこまで冷酷に成り切れる人物だと悟り、
笑みを浮かべた。
「流石議長は頭が良いな」
「え？」
「俺の事も良く分かってる。確かに俺は、彼の言う通りの戦う人形になんかはなれない！ いくら彼の言うことが正しく聞こえても！」
言うや否や、アスランは近くにあった椅子を掴み、それで思いっ切り窓を叩き割った。窓の割れる音がして、三人の保安要員が扉のロックを破壊して入って来
る。そして、割れた窓を見て、駆け寄り舌打ちした。
「ったく！ 悪あがきを！」
三人とも、即座に窓から出て後を追おうとする。そして、三人目が出た所で、窓の上の突起に隠れていたアスランは、保安要員の一人の上に飛び降り、気絶さ
せる。いきなりの事で対応できない他の保安要員の一人の顔面に肘鉄を喰らわせる。残った保安要員が銃を向けたが、その間にアスランは間合いを詰めて顔面に
膝蹴りを放った。
あっという間に三人の保安要員を倒し、武器を奪い取ると、アスランは部屋で唖然となっているミーアに手を差し出した。
「早く！」
ミーアは反射的に手を取って窓を潜り抜ける。
「アスラン、どうして！？」
アスランに引かれて階段を駆け下りながらミーアは尋ねる。
「議長は自分の認めた役割を果たす者にしか用はない！」
「え？」
彼がアスランを必要としているのは、パイロットとしての機能だけ。アスランの意志など必要としていない。そして、自分にとって不必要、都合が悪いと分か
れば、すぐに排除する。
「彼に都合にいいラクス、そしてＭＳパイロットとしての俺……だが君だってずっとそんなことをしていられるわけないだろ！？」
デュランダルにはラクスが必要だった。プラントの市民の心を掴んでいる彼女の力が。故に、デュランダルの言う事を聞くだけのラクスを作り出した。
「そうなれば、いずれ君だって殺される！ だから一緒に……」
そこでミーアは立ち止まり、アスランから手を離した。振り返ると、ミーアが躊躇うような表情を浮かべていた。
「ア、アタシは……アタシはラクスよ！」
思いがけなかったミーアの言葉。
「ミーア！」
「違う！」
彼女は激しく首を左右に振り、叫んだ。
「アタシはラクス！ ラクスなの！ ラクスが良い！！」
「君……」
「役割だって良いじゃない！ ちゃんと……ちゃんとやれば！ そうやって生きたって良いじゃない！！」
雨の中、泣き叫ぶミーアを見て、アスランはギュッと拳を握り締める。彼女は、明らかに作った笑いを浮かべながら、アスランに手を差し出す。
「だから……アスランも……ね？ 大丈夫よ……」
が、アスランはその手を取らずに言った。
「君はミーアだ！ ラクスじゃない！」
「違う！ アタシはラクスよ！ 今日までプラントと地球を歌で救って来たのはアタシなのよ！！」
「ああ、そうかもしれない。だが、それはラクスの名前を使ったからだ！ もし、本物のラクスが現れたらどうする！？」
その言葉にミーアは目を見開いた。以前、本物のラクスがシャトルを奪って宇宙に飛び立った時、恐怖した。この顔になる前の元の冴えない、何処にでもいる
平凡な自分。
それがラクスに似た声、そしてラクス・クラインに顔を変えただけで世界が変わった。歓声、名誉、地位……今まで誰も見向きもしなかった自分に、世界中の
人々が注目した。それは甘美な一時だった。
だからこそ恐れた。本物のラクスが再び表舞台に現れ、自分を偽者と言えば……と。得たものが全て一瞬で失ってしまう。
「ラクスなら君を咎めはしない」
「え？」
が、その恐怖を打ち消すようなアスランの言葉にミーアは顔を上げる。
「君がラクス・クラインでいたいなら名前をあげるだろう。だが彼女は、“そんな事”どうでも良いと思う筈だ」
「な、何で……？」
地位も名誉も何もかもを“そんな事”と言い捨てるアスラン。彼は、フッと笑い、答えた。
「彼女がラクス・クラインだからだ……他の誰でもない」
ミーアの目が大きく見開かれる。アスランは、手を差し出した。ミーアは、震えながらその手を取ろうとする。
「こっちだ！」
「いたぞ！！」
「「！？」」
その時、上から保安要員の声がして銃弾が飛んで来た。思わずアスランから離れるミーア。
「ミーア！」
手を差し出すが、ミーアは怯えて取ろうとしない。アスランは、目を細めると踵を返し、階段を下りて行った。後に残されたのは、華やかな歌姫などではな
く、ただ暗闇に怯える少女だった。
「まったく……手間取らせてくれるわね」
丁度その頃、エリシエルの部屋にも保安要員がやって来た。彼女も彼らを部屋に入れると、問答無用で気絶させた。一人ほど、腕が変な方向に曲がっている
が……。
その時、トランシーバーから声が響いた。
＜アスラン・ザラはラクス様を連れて逃走！ 至急―――＞
「なるほど……これが議長のお考えね」
アスランと、そして彼に協力している自分。それが厄介なので即座に始末しようとした。
「（殺そうとする分、レンより性格悪いわね）」
嘆息し、ライフルを奪い取ると窓を開けて外に飛び出る。
「さて……こっちかしら」
そして彼女は、ある場所へ向かって一目散に駆け出した。
「ドアは固めたんだな？ では各部屋と周辺を探せ！ 出来れば拘束したい所だが万一の場合は射殺もやむを得ん」
「一体、何が……」
メイリンは、部屋の外が先程から騒がしいので何か事件でもあったのかと思った。それを調べようとデスクについてコンピューターを立ち上げる。何か情報が
無いか、調べようとした矢先、部屋の扉が開いた。
驚いて、扉の方を見るメイリン。そこには、濡れた体で息を切らし、ライフルを片手に持つアスランがいた。
「アスランさ……」
声を上げそうになったメイリンに詰め寄り、アスランは彼女の口を塞ぐ。驚くメイリンにアスランは謝った。
「ごめん！ 外に出たいだけなんだ……頼む、静かにしてくれ」
メイリンがコクコクと頷くと、アスランは手を離す。そして彼の真剣な顔と、ライフル、そして慌しかった保安要員を思い出し、尋ねた。
「追われてるの、貴方？ でもどうして？」
前の戦争の英雄で、フェイスに任命され、つい数時間前にシンと共に新しい機体を授与された筈だった。
「そんな事は後でレイにでも聞いてくれ」
「え？」
そこで何故か同僚の名前が出て来てメイリンは首を傾げる。窓に歩み寄り、外を伺うアスラン。その時、ドアがノックされた。
「保安部だ。室内を検分したい。ドアを開けろ」
「俺が出たら声を上げろ。銃で脅されていたと言え」
小声でそう言うアスラン。メイリンは、先程の銃殺もやむ得ないという保安要員の言葉を思い出す。幾ら彼が赤のエリートでも、これだけの兵を相手に逃げる
のは無理だ。殺されてしまう。すると彼女は、出て行こうとするアスランを引き止めた。
「こっち！」
「え？」
メイリンは、アスランをバスルームへと引き込む。
「おい！ いないのか！」
「あ、はい！」
保安要員に返事をしながら、メイリンはシャワーのコックを開く。
「お、おい、何を……」
「しっ！ 大丈夫です」
アスランを制し、メイリンは唐突に制服を脱ぎ出した。思わず驚くアスラン。メイリンはシャワーを頭から被るとバスタオルを巻いて、ドアへと向かう。丁度
その時、保安要員がドアをぶち破り、メイリンは驚きの声を上げた。
「きゃ！？」
「あ……」
保安要員達もバスタオルだけのメイリンを見てたじろいだ。そこへ、ルナマリアがやって来て、妹の姿を見ると唖然となって怒鳴った。
「ちょっとメイリン！ やだなんて格好よアンタ！」
「あ、お姉ちゃん……だってシャワー浴びてたらドンドンドア叩くんだもん」
「いいからアンタはさっさと服を着なさい、みっともない。大体なーに？ これは何の騒ぎなの？」
「あ、いえ……」
赤服のルナマリアに睨まれ、保安要員達を残してメイリンは扉を閉めて鍵をかける。
ホッとした途端、足の力は抜けてメイリンはペタンと床に座り込んだ。そして、膝に顔を埋めて泣き出した。バスルームから出たアスランは、彼女にバスロー
ブをかけると礼を言った。
「ありがとう。でも何故……」
「分からない……」
嗚咽を上げながらメイリンは答える。憧れの人だったから？ 好きだから？ メイリン自身、分からず首を横に振った。
「……でも助かった。すまない」
そう言って出て行こうとするアスランを彼女は腕を掴んで引き止めた。
「うわ！？」
「か、格納庫！ ちょっと待って！」
メイリンは、涙を拭いて立ち上がるとデスクについて、コンピューターのキーを叩き出した。
「基地のホストに侵入してどこかで警報を出せれば！」
「警報！？」
突如、港内に警報が鳴り響き、エリシエルはハッとなる。彼女の足元には見張りの兵などが倒れている。
「まさか、アスランが……マズいわね」
自分が見つかったとは思えない。が、港に警報が鳴ったのなら、大量の兵士が来るに違いない。
「急いで彼に合流しないと……」
そう呟いて彼女が目指す先には、連合の戦艦があった。
「何？ 何事なの？」
突然、港中に響く警報に、タリアは慌ててブリッジへと駆け込んで来た。
＜タリア＞
するとそこへ、デュランダルからの通信が入った。妙に重い声だった。
「はい？」
＜子細はまだ分からんが、アスランが突然こちらの保安要員を打ち倒して逃走した＞
「ええ！？」
その言葉に彼女を初め、他のブリッジクルー達も驚きを隠せない。
＜ミネルバに行くことはないと思うが一応知らせておく。事によったらレイやシンを借りるかもしれん＞
「逃走って……何故です！？」
あの真面目で誠実なアスランが、とタリアは思わず声を荒げて聞き返した。
＜だからまだ分からんと言ったろ。また後で連絡するよ＞
そう言って通信を切るデュランダル。タリアは未だに信じられない様子で呆然としていた。
車が闇夜を駆け抜ける。運転席にはメイリンが、助手席にはアスランが身を隠すように乗っていた。やがて車はＭＳの格納庫へと到着した。
「追っ手は殆どが港です。今なら……行ってください！」
目の前には、静かに佇むグフグナイテッドがある。これなら確かに脱出に便利だ。が、脱走に手を貸せばメイリンもただではすまない。アスランは、心配そう
にメイリンを見る。
「でも君……」
「殺されるくらいなら……行った方が良いです！」
その時だった。銃弾が二人に向かって飛んで来た。気付いたアスランは、メイリンを自分の方へと引き寄せ、物陰へと飛び移る。
「やっぱり逃げるんですか！ また！」
「レイ！？」
格納庫の入り口には、ライフルを構えるレイの姿あった。どうやら、後を尾行られていたようだ。
「俺は許しませんよ！ ギルを裏切るなんてこと！」
「やめろレイ！ メイリンは……」
アスランの弁明など聞かず、レイは銃を撃つ。後ろの壁に当たり、メイリンが悲鳴を上げて身を縮ませる。レイは、議長の言う事を忠実に遂行する戦士……正
に議長の言っていた役割を果たす人間そのものであった。
アスランは、話し合っても無駄だと分かると、飛び出して転がりながら銃弾を避けると、ライフルを撃ってレイのライフルを弾き飛ばした。ライフルを拾おう
としたレイに銃を撃って牽制し、彼が物陰に隠れた後、アスランは少し迷った表情を浮かべながらも、怯えて自分を見ているメイリンに向かって手を差し出し
た。
それにはメイリンも最初は驚いたが、やがて意を決したようにアスランの手を握り、リフトに乗ってグフのコックピットを目指す。そこへ、ライフルを拾った
レイが、再び撃って来たが、その前に二人がグフに乗り込んだ。
「ごめん！ でもこのままじゃ君も……」
急いで機体を起動させながらアスランが言うと、メイリンはコクコクと頷いた。
飛び立つグフを背に、レイは急ぎ応援を呼ぶのに駆け出した。
デスティニーのコックピットで説明を受けていたシンは、いきなりの警報に何事かと思った。兵士の話では、スパイが出たそうだが、今は連合もいるからそん
なのもあるかと楽観視していた。
＜シン、デスティニーとレジェンドの発進準備をさせろ＞
その時、いきなりレイから通信が入った。
「え？ 何で？」
授与されたばかりなのに、もう発進準備をしろというレイに問い返す。彼は淡々とした口調で答えた。
＜逃走犯にＭＳを奪取された。追撃に出る＞
「ええ！？」
驚愕するシン。が、すぐに事情を理解すると、整備班に通信の内容を説明し、デスティニーを起動させる。
が、そこでふとある疑問が浮かんだ。逃走犯がＭＳを奪って逃げたというが、何もデスティニーとレジェンド。最新鋭の二機を使ってまで追う必要があるの
か？
そんなシンの疑問に答えるかのように、レイの通信が入った。
＜油断するなよ、追うのはアスラン・ザラだ＞
「え！？ アスランって……そんな……何で！？」
彼が逃走犯？ 驚きを隠せぬままデスティニーを発進させるシン。闇夜にデスティニーの赤い光の翼が舞った。
「アスランて……何でなんだよ、レイ！？」
＜訳など知らない。だが保安部に追われ、それを打ち倒して逃走したのは事実だ＞
「ええ！？」
＜行くぞ！ 本当に逃げられる！＞
隣のレジェンドがスピードを上げて飛んでいく。シンは、訳が分からないまま、その後を追った。
最新鋭のデスティニーとレジェンドは、すぐにアスランを乗せたグフを前方に捉えた。その時、デュランダルから通信が入る。
＜レイ、 君がアスランを追っている時、メイリン・ホークの姿を見なかったか？＞
その名前が出てシンの目が見開かれる。士官学校での同期で、最初からずっと一緒に戦い、サポートしてくれた仲間だ。何で、彼の口からその名前が出たのか
分からなかったが、レイが淡々と言った。
＜メイリン・ホークはアスランと一緒です、今も＞
「ええ！？」
＜アスランと？ それは人質をいう事か？＞
＜いえ、そうではないと思います。彼はメイリンを庇い、私の銃を撃ち落としてグフのコクピットに上がろうとした時には手を差し伸べ、彼女は躊躇せずにその
手を取りました＞
驚くシンを他所に、レイはデュランダルとの会話を進める。
＜映像記録があると想います＞
＜メイリンが！？＞
そこへ、タリアの声が入る。どうやら彼女もアスランの脱走について、司令部へとやって来たようである。
＜では彼女は人質として連れ去られたのではない、と？＞
＜はい、そうではありません＞
「アスラン……」
逃げるグフを見ながら、シンは表情を苦くした。
＜彼女は情報のエキスパートです。こうなった経緯は分かりませんが、このまま逃がせばどれほどの機密が漏れるか分かりません＞
「メイリンも……何で！？」
＜脱走は絶対に阻止すべきものと考えます。撃墜の許可を＞
「！？ レイ！」
今まで一緒に戦って来た仲間を相手に簡単に撃墜と言うレイに驚愕するシン。
＜レイ！ ちょっと待ちなさい！＞
流石にそれはとタリアが割って入って来るが、デュランダルは流す。
＜そうか分かった。君の判断を信じよう。撃墜を許可する＞
＜議長！？＞
＜ありがとうございます＞
「（ありがとう？ あの二人を討つ事が！？）」
殆ど混乱しかかっているシンに、通信を終えたレイが言って来る。
＜聞こえたなシン。ではそういう事だ＞
「でもそんな……」
＜右から追い込む！ 前へ回り込め！＞
そう言って、レジェンドをグフの右側へと付けるレイ。
「レイ！」
＜こんな事で、議長とそれに賛同するする人々の想いが無駄になったらどうする！？＞
珍しく怒声を上げるレイ。その言葉にシンは、ハッと目を見開く。
＜今ここでの裏切りなど許せる筈もない。覚悟を決めろシン！ 俺達で防ぐんだ！＞
そうだった。今、世界はデュランダルの元、一つになろうとしている。ロゴスを討つ為に。シンは、ギリッと唇を噛み締めながら、ライフルをグフに合わせ
た。
「くそ！ 流石に、あの二機は……」
最新鋭のデスティニーとレジェンドに追われ、アスランは表情を苦くした。隣ではメイリンも怯えている。
レジェンドの放つビームを、グフは低空飛行で避けながらも、デスティニーの撃って来たビームを避ける。
「戦うしか……」
メイリンもいる中で、量産機のグフで、あの二機を相手にするのは無謀だ。かといって逃げ切れる訳も無い。戦うしかない。そう思った瞬間だった。
コックピットにアラートが鳴り響く。
「（新手！？）」
が、グフの真後ろからビームが飛んで来て、デスティニーとレジェンドに向かう。二機は咄嗟にビームシールドでビームを防ぐ。すると、グフの後ろから海を
真っ二つに割るかのように、白銀に輝くＭＳが、天使のような三対六枚の漆黒の翼から、白い光を放ちながらグフの前で制止した。
「な、何だ……？」
＜アスラン、無事かい？＞
「！ フブキ先輩！？」
その時、回線が開き、レンの姿が映る。何で、この機体に自分が乗っていると分かったのか疑問だが、レンは笑みを浮かべて言った。
＜アスラン。此処は私が引き受けた。君は早く逃げろ＞
「せ、先輩……その機体は？」
＜私が設計した最強のＭＳ……トゥルースだよ＞
トゥルース……真理、真実……決して覆せぬ絶対のもの。その名を冠したＭＳに乗るレンは、二機のＭＳを見てフッと笑った。
〜後書き談話室〜
リサ「妙にアスランさんが格好いいですね」
レン「そして私の新機体！ トゥルースガンダム！ アスランの危機に駆けつけ華麗に参上！」
リサ「まぁ早い話が黒い翼のＷガンダムゼロカスタムですね」
レン「そう。作者がガンダムじゃ一番好きなヤツだ。ちなみに二番目に好きなのはデビルガンダム」
リサ「それともう一体、作ったんですか？」
レン「作者はＷが好きでね〜……その中でヴァイエイトとメリクリウスという最強の矛と盾をイメージしたＭＳがあった。トゥルースは攻撃力に特化したＭＳ、
そしてもう一機は防御力に特化したＭＳという訳だ」
リサ「またマイナーな……でも、もう一機は誰が乗るんです？」
レン「さぁ？ 最初はシュティルが乗って、連携プレーを考えてたんだけどね〜」
リサ「全く無駄じゃないですか」
レン「ま、パイロットはいずれ考えるよ。次回は私とトゥルースの活躍だぞ！ 主人公の底力見せちゃる！！」
感想
眼堕さん連続で投稿なされてますね〜
今回はアスラン大活躍だったようですが、行動はほぼ同じのようですね。
ただ、トゥルースガンダムっていうのがどういったものかは分りませんが、
最終局面仕様なのにコンビプレイ用というのは珍しいですね。
どういった戦い方をするのか楽しみです♪
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