「ぶっちゃけ無理ぶっ!!」
カガリの執務室で、そう言い切るレンに、リサのアッパーが炸裂する。ちなみにレンもエリスもリサ、そしてステラもオーブ軍の軍服を着ている。
「兄さん、のっけから力が抜けちゃうような台詞、吐かないでください」
ゲシゲシとレンを踏みつけながら冷たい目で言い張るリサ。何だかんだでシンの事が心配なのだろう。
「は、話を聞きなさい! 話を!」
「マリューを助ける気が無いのか、お前は!?」
更にムウまでも参加して踏みつける始末。レンは、こいつ等は何で揃いも揃って人の話を聞かないのだろうと本気で思った。
機動戦士ガンダムSEED Destiny〜Anothe Story〜 IN ナデシコ
PHASE−10 飛び立つ旗
「だから〜……もし、キースの研究通り、火星に転移装置があって、アークエンジェルが何らかの作用を起こして、何処かに転移させられたら、探しようが無い
じゃんか」
仮に自分達も新型戦艦に、新しいエンジンを積み、火星へ向かったとしても、果たして転移装置があるのか? あったとしても上手く作動するのか? アーク
エンジェルと同じ所へ行けるのだろうか? 果たして人体に影響は無いのか? 余りにも不確定要素が多過ぎる。
「だから、色々な事を想定し、しっかり準備しなくちゃいけない。ただ新しい戦艦に新しいエンジン積み込んで火星へ行けば良いって問題じゃ……度したの、
皆?」
説明していると、何故か皆、ポカ〜ンとアホな子みたいな顔をしているので首を傾げるレン。
「いえ、兄さんの口からそんな理論的な言葉が出るなんて………」
「ねぇ、君達、私が必要だから呼んだんじゃないの?」
「ですが兄さんのイメージって言えば……」
「鬼畜」(キラ)
「外道」(アスラン)
「邪悪の化身」(カガリ)
「ドスケベ」(メイリン)
「救いようの無いダメ人間」(ムウ)
「…………変態」(ステラ)
「御免、レン。全部、事実だからフォロー出来ないわ」(エリシエル)
「あふぉ〜(阿呆)」(ルシーア)
「しくしくしく……」
嫁さんと娘にまで見放され、部屋の隅で泣き出すレン。
「だが、確かにレンの言う事ももっともだ。しょうがない……アークエンジェルも心配だが、慎重に考え、レンを中心に新型戦艦の建造をする事にしよう」
カガリの言葉に、中心にするべき筈のレンを放っておいてキラ達は頷いた。
「でも、今回、私達って軍から離れて活動するのよね? じゃあ、構成員は軍人で固めない方が良いわね」
エリシエルの言葉にカガリは頷いた。軍服こそオーブのものだが、今回の件、彼らは軍から離れて自由に動く。規制の厳しい軍人を沢山、使って行動するの
は、それに反すると考える頭の堅い軍人も多いだろう。どちらにしろ、現在、オーブの戦力は、最低限の防衛だけで他は各地の復興支援に赴いているので、正規
の軍人は使えない。
「と、なると暇してる人達を当たりますか……腕は一流ですし」
「あはは……」
リサの提案に、キラは乾いた笑いを浮かべた。
キラ、アスラン、そしてメイリンは、私服に着替えると、タクシーに乗って、ある会話を交わす。
「今の時代、タクシーですか?」
「はは……まぁ、情緒があって良いんじゃないかな?」
「一応、就職してるようだし良いんじゃないか?」
「…………お客さん達、どちらまで?」
不機嫌そうなタクシーの運転手に、キラ達は苦笑いを浮かべて言った。
「火星までお願いします、アルフレッドさん」
運転手――アルフレッド・ボーガンは、キラにそう言われ、舌打ちすると煙草を咥えた。レン、リサと共に、かつて海賊ワイヴァーンの操舵士を務めていた彼
は、オーブでタクシーという前時代的な交通機関の運転手を始めた。
本人曰く『誰か後ろに乗せてると落ち着く』だそうで、特に繁盛してる様子も無く、街中で暇そうにしている所を簡単に見つかった。
「で、お客さん? 火星なんて遠い所まで行くとなると、料金凄いよ?」
「大丈夫です。戦艦で行きますから」
キラの言葉に、アルフレッドは目を細め、煙草を備え付けの灰皿に押し付ける。
「俺に戦艦乗れってか? そんな事しなくても、オーブ軍には、あのノイマンって若造がいるだろうが?」
「いないからアルフさんに頼みに来たんですよ〜」
メイリンにそう言われ、アルフレッドは「あぁん?」と眉を顰めた。適当に走りながら、キラ達は事の顛末を話した。最初は、余りに突拍子の無い話にアルフ
レッドも信じ切れてない様子だったが、あのレンまで再び表舞台に出て来たので、信じるしかなかった。
「かと言って、また戦艦の操縦ってのもな〜……」
「でも暇なんでしょ?」
「う……」
「しかも、これカガリから直々の任命ですよ?」
メイリンに痛い所を突かれて冷や汗を浮かべるアルフレッド。更には一介のタクシー運転手に国家元首直々に、任命されてしまうという大事。やがて、しばら
くの葛藤を経て、
「わぁ〜ったよ! 分かりました! 火星でも何処にでも俺様が連れてってやらぁ!!」
「「「おぉ」」」
パチパチパチ、と三人は男らしいアルフレッドに拍手した。
「うん、うん。了解ッス。三時に噴水公園ッスね」
工業カレッジのキャンパスに備え付けられたベンチで、眼鏡をかけた青年が携帯で意気揚々と話し、会話を終えると脇に置いていたノートパソコンを膝の上に
置いて、背筋を伸ばす。
「さ〜て……と。とっとと課題終わらせるッスよ」
「今の電話、誰です?」
「もしかして恋人か?」
「いや〜、そんなんじゃないッスよ〜。ただ、今日こそ告白……って、のわぁ!?」
後ろから話しかけられて振り返ると、そこには茂みから顔を出しているリサ、ムウ、ステラの三人がいた。
「お久し振りです、ロビン。一年振りですね」
「久し振りの再会が、何でこんなコントせにゃいけないんスか!?」
青年――ロビン・アッカードは、戦いが終わった後、オーブの工業カレッジに通い始め、平穏な日々を送っていた。
「ま、落ち着いて話聞けや」
ムウが肩に手を回して逃がさないよう、今回の件をロビンに伝える。で、彼の答えは……。
「嫌ッス」
「何故に!? お前はマリューが、どうなっても良いって言うのか!?」
マリューだけが心配なのか、顔色を変えて怒鳴るムウに、ロビンも怒鳴り返す。
「俺だって、これからデートなんスよ! そんで、告白して幸せな未来への第一歩を踏み出そうとしてるんス! あんた等にそれを邪魔される筋合いは無いッ
ス!」
「ロビン……」
ポン、とリサが興奮気味のロビンの肩に手を置いた。
「私でさえ恋人いないのに、影の薄い貴方が恋人作るなんて許されると思ってんですか?」
「何気に残酷な台詞ッスね!」
「そもそも、これはオーブの国家元首直々の任命です。オーブにいたかったら言うこと聞いたほうが身の為ですよ?」
「アンタ、悪魔の申し子ッスか!?」
「惜しい! 悪魔の妹です」
その際、ロビンの脳裏にハッハッハ、とVサインをして勝ち誇る悪魔の笑顔が浮かんだ。
「リサ……何か性格軽くなってないッスか?」
「兄さんがいなくなって、すっかりツッコミする事の無くなったので……この一年は普通の年頃の女の子してましたから」
少なくとも年頃の女の子が道楽で喫茶店を開くような事はしないと思うロビン。
「で? どうするんです? まぁ断固拒否した場合、多少、痛めつけてでも連れて来て良いって、兄さんが言ってましたけど? あ、それと、もし幸せそうだっ
たら、尚、連れて来なさいって……他人の幸せ見てるとぶち壊したくなるそうです」
「何処まで自分勝手なんスか!? あの鬼畜外道!!」
「今更ですけどね〜。で? お答えは?」
ゴキゴキと指を鳴らして問うリサ。こんな姿、実の兄が見たら絶対に泣くな、とロビンは思いつつ、ガクゥッと肩を落とすと携帯を取り出した。
「あ、もしもし。悪いッスけど、今日、用事が入っちゃって……え!? そ、そんな! 待って欲しいッス! この埋め合わせは………切れた」
呆然と携帯を見つめるロビンにムウは「憐れな……」と同情の視線を向ける。その時、唐突にリサの携帯が鳴った。相変わらず、シンから返して貰ったピンク
の携帯を使っている。
「はい、もしもし……分かりました。こっちもOKです。じゃ、内閣府で」
それだけ話し終えると、リサは携帯をポケットに入れて言った。
「アルフも来てくれるようです。ロビン、久し振りに同窓会ですね」
塩の柱と化しているロビンの背中をポンと叩いてリサが言うと、彼はポツリとか細い声で呟いた。
「同窓会って割には面子少ないッスね……それに彼女は……」
「そうですね……あの人は、どうなるんでしょうか……」
そう言って、リサは空を見上げた。
プラントの首都アプリリウス。そこの市街にある家の前に豪華なリムジンが停められた。リムジンからまず出て来たのは金髪に褐色の肌をした緑のジャケット
を着た青年と、銀髪を肩口で切り揃え、スーツをビシッと着こなしている青年だった。銀髪の青年が後ろのドアを開けると、白いワンピースに日除けの帽子を
被ったピンクの髪の女性が出て来た。
女性は躊躇わずにインターフォンを押すが反応が無いので、首を傾げる。
「お留守でしょうか?」
「変ですね……ちゃんと伺うって連絡入れといたんですけど」
金髪の青年が不思議そうに呟くと、不意に三人の背後から声をかけられた。
「お忍びなのは分かるけど、その近所迷惑なデカい車、何とかして欲しいな〜」
三人は振り返ると、そこには買い物帰りっぽい、青年よりも明るい金髪をショートにした眼鏡をかけた女性が立っていた。ピンクの髪の女性――ラクス・クラ
インは、ニコッと笑って挨拶した。
「お久し振りです。キャナル・セイジさん」
金髪の女性――キャナル・セイジは、三人の場違いな来訪者に目を細めた。
「この家は……シュティル様の?」
ラクス・クライン、イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマンの三人を家の中へ招き入れ、キャナルはコーヒーを淹れながら部屋の中を見回しているラク
スに答える。
「まぁね〜……あのオーブの坊やと一緒に暮らしてた家さ〜。空き家のままだったから、私が買った〜」
そう言って、ラクス達にコーヒーを差し出し、自分も彼女らの対面に座る。
「連絡を受けた時は驚いたぞ〜。まさか、プラント最高評議会議長が、わざわざ私みたいな庶民に会いに来るなんて〜」
「庶民ではありませんわ。同じ戦争を戦った仲間ではないですか」
「いきなりだったから、慌ててもてなす準備したぞ〜」
「そこまで気を使って頂かなくても結構ですのに」
救国の歌姫、と称されるラクスは、現在、プラントの最高評議会議長を務めており、カガリ同様、各地の復興支援、崩壊したヤヌアリウスやディセンベルなど
の再建など、多忙の日々を送っている。
「ご存知の事とは思いますが、キャナルさん。単刀直入に申し上げます……アークエンジェル捜索の為、オーブへ行って頂けませんか?」
「…………戦艦に乗るのが……怖いんだ」
ラクスの頼みに対し、キャナルはカップを持ちながら答えた。
「自分は後方で……シュティルは前線で……アイツが死んだ時、何も出来なかった……戦いが終わった後……もう、戦艦に乗りたくないって思った……」
今でも夢に見る。モニターでしか確認出来ない幼馴染の死んでいく様。
「別に、あのシンって坊やを恨むつもりは無いし、シュティルが好きだったって訳でもない……寧ろ、私がシュティルを誘って、あの二人を引き離して、そして
死なせて……坊やに償いたい、って気持ちの方が強いな〜……」
顔は笑っているが、心は悲しんでいる。ラクス達には、彼女の気持ちが痛いほどに分かった。が、アークエンジェルを探すには、彼女の情報処理能力は必要
だった。ラクスは、立ち上がるとスッと頭を下げた。
「! 議長!?」
思わずイザークが叫ぶ。ディアッカも唖然となっている。最高評議会の議長が、一市民に頭を下げるのだから、当然かもしれない。
「彼に償いたい気持ちがあるというのならお願いします……その彼を助ける為にオーブへ……そして火星へ行って下さい」
「………………」
「行きますかね、彼女?」
帰り道、車を運転しながらディアッカが後ろの席のラクスに尋ねる。それにラクスは、目を閉じて微笑みながら答えた。
「行きます。きっと」
「何故? こう言っては何ですが、今の彼女は、とても戦艦に乗るような気迫は見受けられませんでしたが……」
シュティルの住んでいた家に住んでいるのが良い証拠だ。過去の思い出に縋り、日々を無気力に生きている。イザークには、少なくともキャナルが動くとは思
えなかった。が、ラクスは首を横に振る。
「シュティル様が自らを犠牲にして守った人が危機なら……キャナルさんは、きっと動いてくれる筈です」
ラクスのその言葉に二人はフッと笑うと、唐突にディアッカが声を上げた。
「あ〜……出来れば俺も行きたいんですけどね〜」
「ディアッカ!」
相変わらずアークエンジェルの通信士の少女に未練タラタラなディアッカをイザークが怒鳴りつけると、ラクスはクスリと微笑んだ。
「やぁ諸君。久し振り」
三日後、モルゲンレーテの秘密ドックでは、アルフレッド、ロビン、そしてキャナルが、レンと再会した。三人もオーブの軍服を着ており、レンは、チラッと
キャナルを見ると笑みを浮かべた。
「流石にラクスちゃんから頼まれたら断れなかった?」
「別に〜。ただの気まぐれ〜」
プイッとソッポを向いて答えるキャナルに苦笑し、レンは後ろを振り返る。そこでは着々と新型の戦艦の建造が進められている。
「火星にも衛星を飛ばして、色々と調査を進めている……が、一つ問題が発覚した」
「問題?」
カガリがそう言うと、アスランが眉を顰めて返す。レンも真剣な顔で頷き、エリシエルは皆から視線を逸らしている。皆、ゴクッと唾を呑んでカガリに注目す
る。そして、カガリは、その重い口を開いた。
「艦長がいない」
ズシャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
盛大にズッコける。
「いや〜! すっかり忘れてたけど、ラディック死んじゃってたんだよね〜!」
「忘れないでくださいよ、そういう事……」
起き上がりながらもリサはツッコミを入れる。アスランは表情を引き攣らせながらも自分の意見を述べる。
「ま、まぁ、それだったらレン先輩がやれば……」
「私が艦長? やっても良いけど、女子の制服はスクール水着ぶっ!!」
レンの横に立っていたエリシエルが、ルシーアを抱きかかえたまま顔面に蹴りを入れる。
「アスラン、こんなの艦長にしたいなんて本気?」
「…………すいません」
「キラ君、アスラン、フラガ一佐、ステラちゃんはパイロット。アルフレッドさん、ロビン君、キャナルさん、メイリンちゃんは、それぞれブリッジでの役割が
ある。レンはパイロット兼技術者だけど、艦長も兼任しようと思えば、この人なら出来る……けど、任せられない」
エリシエルの言うように、消去法で皆の視線が一人の少女に集まる。
「私!?」
「頼むぞ、リサ」
艦長に指名されたリサは、唖然となり、カガリはポンと肩を叩く。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私だってパイロットで……」
「フリーダムにはキラ、ジャスティスにはアスラン、レジェンドにはムウ、ラストにはステラ、それに予備パイロットにはレンがいる。パイロットは有り余って
るぞ?」
そう言われて、何も言い返せないリサは、恐る恐る皆に尋ねた。
「あの……皆さん、私なんかが艦長で良いんですか? 私、このメンバーじゃ最年少なんですけど?」
それの言う事を聞くなんて屈辱じゃないか、と尋ねると皆、首を横に振った。
「クルーの殆どはドラゴネスに乗ってた人達だから、リサの有能さは承知しているよ」
いつの間にやら復活していたレンがそう言うと、キラ達もリサなら大丈夫だと頷いた。リサは、しばらく考え込んでいたが、やがて意を決して顔を上げた。
「分かりました……リサ・アスカ。不束者ですが、艦長を務めさせて頂きます!!」
「どっちにしろ私が任命したら拒否権なんて無いんだけどな」
「権力って素敵♪」
決意表明するリサを見つつ、ボソッとカガリが呟き、レンが爽やかに言うのであった。
二ヶ月後……。
火星の衛星からのデータを解析し、レンがキースの研究を元に計算し、ようやく火星へ向かう目処が立った。
そして、一同は、オーブ軍港に集合し、整列していた。海には、白銀に輝く戦艦が、その船出を待っている。
モルゲンレーテと志波コンツェルンが共同で開発し、レンがその設計指揮を執り、新型エンジンを組み込んだ新型戦艦カムイ……それが、この戦艦の名前で
あった。剣のように鋭い先端に、扇状に広がる両翼を持っている。
『いや、もう……ステレオの位置を決めるのに苦労しました』
と言うのは、設計者の弁である。実は、それが一番、時間がかかったとかかからなかったとか。
「カムイは、一応、オーブ軍第三宇宙艦隊所属となっているが、実際は独立した戦艦だ。ザフトからも二名、アスラン・ザラ、メイリン・ホークが乗艦する事に
なっているが、気にせず、アークエンジェル捜索に尽力して欲しい」
カガリに言われ、ザフトの制服を着ているアスランとメイリンが前に出て敬礼する。そして、リサが言った。
「本艦はこれより、火星の極冠へ向かい、そこでアークエンジェルの手がかりを調べます。出発は三十分後。総員、持ち場へと就いてください」
そう言うと、整列していたクルー達は駆け足でカムイへと乗り込んで行く。
「じゃ、行ってくるね」
レンは、ルシーアの頭を撫でると、軽くエリシエルの頬に口付けした。エリシエルは、ルシーアがいるので、今回はオーブに残る事になった。
その時、レンは、ふと見送りに来ていた意外な人物を見つけた。
「レイ君?」
そこには、ナースに車椅子を引かれたレイが来ていた。そこへ、ムウが歩み寄ると、レイはスッと手を差し出す。
「シンとルナマリアを……頼みます。俺はもう戦えませんから……」
「ああ……任せろ」
グッとレイの手を握り返すムウ。キラとアスランは、その光景を温かく見守っていた。
カムイのブリッジは、三段構造になっており、一番下にキラ達パイロット組みが座るシートがあり、二段目には右側から火気担当のロビン、操舵士のアルフ
レッド、索敵のキャナルが座っている。そして最上段の艦長席の後ろには通信士のメイリンが座っている。
「機関、定格起動中。コンジット及びFCSオンライン、パワーフロー正常、主動力コンタクト。システムオールグリーン、カムイ全システムオンライン。発進
準備OK」
「メイリンさん、艦内に放送を」
「了解」
メイリンに指示し、リサは艦内放送で全クルーに呼びかける。
「クルーの皆さん。これよりカムイは火星へと向かいます。この艦は戦艦です。万が一、戦闘になる場合、ひょっとしたら犠牲が出るかもしれません……です
が、皆さん。私に命を預けてください」
その言葉に、キラとアスランは顔を見合わせ、笑い合う。ずっとラディックの傍にいたお陰か、リサも十分、艦長に相応しかった。
「ですが私達が最優先すべきはアークエンジェルです……アークエンジェルを無事、発見できた場合は…………散々、迷惑かけたのでクルーの皆さんに奢って頂
きましょう」
ドッと艦内に笑いが巻き起こる。
「ラッちゃんとはタイプは違うけど、これはこれで良いかな〜」
「ま、俺らがサポートすれば良いッスよ」
「だな」
「では、カムイ……発進してください!」
アルフレッドが操縦桿を引くと、カムイは飛び立って行った。
「行ったな……」
「行ったわね……」
飛び立つカムイを見送りながら、カガリとエリシエルが呟く。無事、帰って来る時は、アークエンジェルと共に、と二人は願う。
「う〜ん……! これで一仕事、終わったって感じだな」
「ふふ……カガリさん、この後、暇?」
「ん〜……書類整理も終わってるし、閣僚会議までは時間が空くな」
「じゃ、ルシーアと遊んでみる?」
そう言われ、カガリは驚くが、ジッとエリシエルに抱かれているルシーアを凝視する。
「あぅ〜」
小さな両手を目一杯、伸ばしてくるルシーアに、カガリはあっという間に心を奪われた。この二ヶ月の間、ずっと気になっていたが、エリシエルのお許しが出
て、表情を緩める。
「ルシ〜ア〜。お姉ちゃんと一緒に遊ぼうな〜」
「(この子、将来、子煩悩になりそう……)」
そう思いつつ、カガリにルシーアを抱かせて二人は戻って行った。
〜後書き談話室〜
リサ「と、いう訳で私達はいざ火星へ。果たしてアークエンジェルと無事に語流できるのやら」
ルリ「リサさんが艦長ですか。失礼ですが、年齢は?」
リサ「15」
ルリ「…………負けました」
リサ「でも、私達みたいな子供に艦長任せる世界って、他の軍人がよっぽど無能なのね」
ルリ「そうですね」
リサ「新型艦カムイを携え、私達も火星に乗り込みます!」
ルリ「次回は、あの二人が登場……はぁ、馬鹿が増えます」
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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