周辺のバッタ達は主の到来を告げるようにその場から引いてゆき…中央に真空地帯を作り上げる…
オメガはその場に静止し、近付いてくるエグザバイトに通信を繋ぐ。
『ようこそ、<Prince Of Darkness>パーティは楽しんでくれているかな?』
オメガはニヤリと嗤いながらウィンドウを開く。
テンカワ・アキトと双方でにらみ合う中、
次第に唇がつりあがっていく…
「オメガ……貴様!」
その瞬間…凄まじいまでの殺気が互いの機体から放たれた…!
周囲は、無人兵器である筈のバッタやカトンボですら、凍りついたように動きを止める。
そう…殺気の届くその空間は、何人にも邪魔をする事が許されない<結界>にすら見えた…
機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜
第十一話「さらりと出来る『運命の選択』」その9
ナデシコ格納庫内――鬼気すら漂う喧騒の中、ウリバ タケ率いる整備班が縦横無尽に行きかっている…
整備班員は息も絶え絶えだが、目は死んでいない…むしろらんらんと輝き、士気の高さを思わせる。
「いいかー!! ここが俺達の踏ん張りどころだ!!
A班はミサイルのセッティング! B班は俺とエステバリスの応急処置をしながらミサイルに固定だ!
C班は“あれ”をやっておけ!」
「班長! これ落とすだけで良いんですか!?」
「ああ! だが、ディストーションフィールドの下方に穴を開けてもらってからにしろ!!
高いんだから壊すんじゃね〜ぞ!!」
「分かりました!!」
「班長! 生きて戻ったら<ルリルリファンクラブ>を作りましょうね!!」
「何言ってやがる! 結成式は明日だ! 一人も欠けるんじゃねーぞ!!
その為にもここでミスなんぞするなよ! ミスしたらリリーちゃんで歓迎してやるからな!」
「「「「「「はい!」」」」」」
理由は不純な気もするが、兎に角整備班は今までに無い程の働きで整備作業を進めている…
A班とB班は直ぐにミサイル格納庫の方に移動し、固定作業を始めた。
エステバリス空戦フレームのバックパックに、二本のミサイルが固定されていく…
『なー、博士。ミサイルに抱きついていけば十分じゃないのか?』
「誰が博士だ! いいか、ミサイルの初速にエステで掴まっても直ぐに振り落とされるだろう
が!
だからわざわざ固定してやってんだ! 一々文句つけるな!」
『でもよ〜、こんな調子でアキトに追いつけるのか?』
「流石に直ぐには追いつかんだろうが…速度は向こうより速くなる! 追いつけるはずだ。
……まあ、敵にぶつかんなきゃな」
『大丈夫! 気合と根性があれば何とかなる!!』
「ったく…そんなんじゃパイロットなんてやっていけねーぞ!! いいか、分離
したい時はバックパックごとパージしろ!
空戦フレームじゃどのみちバックパック背負って戦えね〜からな!」
『それで、いったいどの位戦えるんだ?』
「三分だ!」
『それじゃあ、帰りはどうすりゃいいんだ!!?』
「クックックッ…そのへんにゃあ抜かりは無い! いいか、これから話す事をよ〜く聞けよ!」
『あっ、ああ…』
ウリバタケの意味深な言葉にヤマダは気圧されつつも、どこか期待してしまう自分を感じていた…
そして…ヤマダはウリバタケの話を聞いて、喜び勇んで発進する。
その直後…近くにいたバッタといきなり接触しそうになったが何とか回避、
どうにかアキトのいる方角に向かい飛んで行った…
「大丈夫かね、アレ…(汗) だがまあ、死にさえしなけりゃ何とかなるだろ…」
ウリバタケは頭をかきつつ見ていたが、次の仕事があるのを思い出し、急いで移動を始めた。
『った〜く! やってらんねえぜ!』
『ぼやかない、ぼやかない、数は多いけど〜様は通り抜ければいいんだし〜』
『この通り、抜け作ですから…ククク』
ナデシコの周辺には、無数のバッタが群がっています。
グラビティブラストの掃射によって何度か焼き払われていたものの、その数は一向に減る様子を見せません…
リョーコさん達は得意のフォーメーションを組んで敵を圧倒していますが、数の前に圧され気味…
ナデシコは合流地点への道程の半分を過ぎた所で立ち往生中です。
「方位そのまま、仰角5度。グラビティブラスト、いっちゃってください!」
「は〜い、グラビティブラスト発射しま〜す♪」
再びグラビティブラストの掃射により、前方いにいたバッタやカトンボが撃破されていきます。
でも、連続で放っている為に出力が上がらず、ヤンマクラスは無傷で残っています…
「グラビティブラストの再チャージ、何とかなりますか?」
「ごめ〜ん、今のでエネルギーが底をついちゃった…飛んでるだけで精一杯。ディストーションフィールドの維持もやばいかも…」
「ええ?! そんなに足りないんですか?」
「はい。相転移エンジンは<真空をより低位の真空と入れ替える事によりエネルギーを得る装置>ですから、
大気中では半分も力を発揮できません。その為に、今の出力は40%程度…
全力稼動できる宇宙と比べて、回復には二倍半の時間がかかることになります。
ですので、ディストーションフィールド等を使わなくても後五分程度は回復に要すると思われます」
「五分かぁ…合流急がないと、ジリ貧だね」
ユリカさんも焦り気味…今までに無いくらい、ナデシコピンチです。
私も、データを皆さんに振り分けていく作業をしてはいますが…少し辛いです。
あの人なら…もう一人の私なら、難なくこなしてしまうのでしょうか…?
未だにその事に蟠りを持つのは、間違っていると思 います。
でも…どこかで常に思うんです。
私は必要無いんじゃないか、って…
一人じゃない事は嬉しい…
でも…必要とされない事は実は悲しいのではないかと言う事に、最近気付きました。
「どうしたの?」
「え?」
右を見るとミナトさんが私を見ています。
戦闘機動中なのに、良いのでしょうか?
「私がどうかしましたか?」
「そ〜ね〜…何か、ぼーっとしてる?」
…え?
私が考え事に沈んだのが解ったのでしょうか?
確かに集中力が低下していたようです。
でも、私はどうしたら……
「何を考えてるのか知らないけど、よそ見しちゃ駄目よ? ルリルリ♪」
「…はい」
「それと、一つだけアドバイス。
“優秀な事”と“人に必要とされる事”は違う事なの」
「え…!?」
「ルリルリ…がんばって!」
そう言われて、なんだか少しだけ気分が軽くなった気がしました。
でも、優秀な事と必要とされる事が違うってどういう意味でしょう…?
私は<優秀な事=必要とされる事>と教わってきましたから、良く分かりません。
ただ、ナデシコではその常識が通用しないと思い始めてはいましたが…
だって、みんな優秀なバカですから…
俺はオメガと正面から向かい合ったが、奴もバカではないらしい…自分では動かず、部下に戦闘を任せている。
現在、オメガの部下と思われる2機の小型ジンを相手にしているが…
機動力・判断力共にかなりのレベル にあるその2機は、俺に付け入る隙を与えてくれない。
常に一機が囮として、もう一機がサポートにまわれる位置をキープしつつ戦闘を行っている…
個人戦闘力は並より上といった所だが、バッタを盾代わりに使ってくるのが厄介だった。
消耗戦を仕掛けられた俺はエネルギー残量が少なくなってきていた…
「オメガ…先程の口ぶりにしては消極的じゃないか?」
『ククク…まさか前座でやられたりはしないよな?』
「クッ」
俺はイミティエッドナイフを投げつけ挑発してみるが、バッタが割り込んできて爆発しただけだった…
奴は何を考えている…?
戦況は俺が不利だ。奴が割り込めば決着は付くはず…
その時、オメガはまるで俺の疑問に気付いたように話しかけてきた。
『貴様がここで終わるような男なら、俺は復讐を諦めよう…
だが、貴様はいつもこういう場を凌いで来た…
俺は見てみたいのだよ。貴様がこのピンチを乗り越える所を』
「なッ!?」
『俺を満足させろよ、<Prince Of Darkness>』
コミュニケを展開して、俺の前で口元を歪めるオメガ…
小柄な体格に似合わないほどの狂気が、その顔からにじみ出ていた。
そして、ナノマシンの輝き…
肉体が限界に来ている証拠だろう…奴の体は所々壊死を始め、紫色に変色している。
想像を絶する痛みの中、それでも俺に向かっているその表情は心底楽しんでいることが分かる…
「俺を舐めるな!!」
俺は瞬間的にディストーションフィールドを展開し、収束…そのまま突っ込んでいく。
もちろんバッタどもが群がってくるが、撃破或いは回避し、全てを抜き去る…
奴の目前に迫った時、人型の内1機が俺とオメガの間に割り込んだ。
俺は捻りこむように拳を叩きつけ、その1機を叩き落す。
肩口を爆破された敵機は地上に向かって落ちていく…
俺はそれを無視して再度突撃をかけようとするが、
後数メートルの所で脚部を狙撃され、バランスを崩して下方に流れた…
「クソッ!!」
『やるな…流石だ。だが、一歩届かなかった様だな…
ククク……その調子で俺を楽しませてくれよ』
オメガに向けた拳は一歩及ばず、俺は地表へと落下していった…
途中でなんとか体勢を立て直すものの、オメガとの距離は開き、バッタどもが行く手を塞ぐ。
そして、その中央には先程と同タイプの小型ジン…
しかし、バッタどもを操るその能力…まるでマシンチャイルド…
まさか、クリムゾンもマシンチャイルドを開発し始めたというのか!?
「くそ、無茶は後一回が限度か…」
今の状態では、ディストーションアタックを仕掛けるのは辛い。
やはり…弓で仕掛けるしかないのか…
だが、弓を使えばエネルギー残量が限界を超える…一度っきりという訳だ。
しかも…例えそれでオメガを倒せたとしても、その先の死は免れない。
「流石に賭けだな…」
『もう観念したのか?』
「まさか」
そして再び多数のバッタを挟んで、俺はオメガと対峙した…
「ああああああああーーー!!!」
アタシは夢から覚めた…でも今回は今までと違う…
だって、今まで分からなかった事が分かる。
このままじゃいけない…お兄ちゃんが大変な事になる…
「早くしないと間に合わないでちゅ…
…ッ!!?」
「どうしたの!? アイちゃん!?」
ママが心配して飛び起きまちた…
心配そうに覗き込んでいまちゅ。
もしかして…
「言語中枢がやられたでちゅか!?」
「ええ!?」
異常事態でちゅ。あたちが知識を受け取った際、言語中枢に少し障害を受けた様でちゅ!
ママも何か驚いているみたいでちゅが…語尾の時、さ行が言いづらいでちゅ! 後、文法もなんかおかしい気がするでちゅ!!
「アイちゃん…ごめんね、寂しい思いをさせて…ママがあまり構ってあげられないから…」
「そうじゃないでしゅ!
…今からわたちに起こった事を<説明>す
るでちゅ! よ〜く聞いてくだちゃい!」
「え…ええ…」
あたちはママに事情を説明ちた…
十分ぐらいかけて説明ちたら…ママは呆けたようになったでちけど…
「兎に角、その貴女に“未来の貴女”の知識が宿ったって言うのね?」
「そうでちゅ…
…信じてまちぇんね」
「もちろん信じるわ、だってたった一人の娘ですもの」
駄目でしゅ…口ではああ言ってるでちけど、あの生暖かい目は信じてない時の目でちゅ。
けど…ママがそうなるのも分かる気がちまちゅ。まだ自分でも信じきれてまちぇんし…
でも、あたちは急いでいまちゅ。こんなことをしてる暇はないでちゅ!
「兎に角、ママ、お兄ちゃんから借りてるあのペンダント、大至急出してくだちゃい!」
「え!? 急に何を言うの?」
「急いでるんでちゅ、今は話してる暇はありまちぇん!」
「でも…」
「お願いでちゅ…出してくれないとお兄ちゃんが…」
わたちは、少なくともオメガの動きが分かるようになりまちた。
今まで見たニュース(そのときは興味なかったでちゅけど…)を総合するだけで、火星にオメガが罠を張っていることが分かりまちゅ…
でも、それだけじゃありまちぇん。何とかちないと…
こんな事で泣いてる暇無いでち…でも、目が少し潤んできまちた…
その時、急にママが神妙な貌になったのでちゅ。
「ごめんなさい。そうね…今出してくるわ」
「…? ありがとうでちゅ」
部屋の中であたちは着替えを済ませて待っていまちた。
そこにママが、宝石箱の中からペンダントを出して来まちた…
「!? 一体どうしたの!? アイちゃん!?」
「ペンダント、ありがとうでちゅ!」
あたちは、ママに抱きついて喜びまちた。
知識は兎も角、心までは変わってまちぇんから!
そしてあたちはペンダントを付けてママから数歩さがりまちた。
「じゃあ、ちょっと行って来まちゅ!」
「え!?」
そう言うと同時に、あたちはペンダントの放つ青い光に包まれ…
この星から、跳んだのでしゅ……
ナデシコ周辺…現状では戦闘不能に近いナデシコの変わりに、三機のエステが獅子奮迅の戦いをしていた…
基本的にリョーコが囮をし、ヒカルがサポート、イズミが止めを刺すというポジションを組んでいる。
三人は息の合ったコンビネーションで、既に100機近いスコアをたたき出している。
現在も囮のリョーコが上手く敵を誘導し、イズミやヒカルの射程範囲に動かしていた…
『よし! 行ったぞ!』
『じゃあ、こんな感じでどうかな〜♪』
ヒカルがリョーコの周囲にいるバッタをライフル掃射で片付けていく…
その隙にリョーコはバッタ達から距離をとる。
『私は三途の川の渡し守。私の前を通るものは、全て黄泉路へと向かう定め…』
『イズミちゃんは本当にハードボイルドぶりっ子なんだから…でも、それ系統違うんじゃない?』
『死を待つ罪人に情けは無用、心の隅に名だけは留めよう…』
『わかんない…オリジナル?』
そういいつつも、二人は射程範囲に捕らえたバッタやカトンボを確実に撃破していく。
敵の包囲網に穴が開くのも時間の問題かと思われた…
だが、その時…
超低空から凄まじい勢いで飛び上がってくる機体があった。
『何だありゃあ…人型じゃね〜か…』
『どこと無くゲキガンガーに似てるね…』
『ゲキガンガーって何だ?』
『ほら、ヤマダ君がよく言ってるじゃん。かなり面白いよ? お勧めかも♪』
『いい…ヤマダみたいになるのはごめんだ…』
『私達の背後にも三途の川が迫ってきたわね』
『うお! まだやってのか!?』
『シリアスイズミだね〜♪』
迫ってきた2体の人型は、大きさにしてエステの倍…12m級。
しかしその加速力は、エステに匹敵するものだった…
更に、その周囲にはバッタが盾代わりのように飛び回っている…
『こりゃ、不味くねえか?』
『うっ、うん…あんな大きさであんなにスピード出るなんて、反則だよ〜』
二人は動きを止めて相手の出方を待とうとしたが…その時、イズミが長距離砲撃を加えた。
銃弾は正確に人型の胸部を目指し…ソレにあたるかと思われたその時、バッタが前に割り込んだ。
そして、人型の前で爆発四散する…
その攻撃の後、人型は敵を認識したのか三人のエステに向かって加速を始める…
『あっ、バカ!』
『待ってたって状況は好転しない…なら、火中の栗を拾うくらいの事はしないとね…』
『へ〜イズミ考えてるんだ〜♪ でも〜これはちょっと辛いかも〜』
三人は上手く連携を取りながら戦っているが…それでも、人型を中心にしたバッタどもの猛攻の前に圧され気味だ。
飛び込んでくるバッタをリョーコが払い落とし、ヒカルはバッタが入り込んでくる前に撃ち落とし、イズミが人型の牽制をするという形で戦線を維持して いるものの…
やはり数の上での不利は否めず、段々と押し込まれてきている。
敵人型はリョーコ達に向けてライフルを撃ちながら徐々に距離を詰め、時折バッタ等を盾代わりにしつつ接近してきていた…
『くそ! まともに戦う気はねえのか!?』
『何だかヤバ目だね〜。このままだとナデシコまで押し戻されちゃう…』
『戦闘中よ、私語は慎みなさい』
『うわ〜ん、イズミのシリアス度が上がってる〜(泣)』
『そんな事で泣いてんじゃねえ!』
三人とも気力で持たせているものの、疲れがピークに来ていた…
ナデシコも、現状ではグラビティブラストまでエネルギーが回せない。
このままでは人型がナデシコに到達するのも、時間の問題かと思われた…
エスカロニアはルーミィが抜けたことにより、戦線を維持できなくなりつつあった…
ヤゴコロオモイカネは複雑な戦闘処理を同時にこなしていたが、
小型ジンと20機のバッタ以外にも、元々いたヤンマが接近して来ている。
ヤンマのグラビティブラストは何とか避けているものの、その隙にバッタから攻撃を受ける為、徐々にダメージを蓄積していた…
『ガンポッド3被弾、航行は可能。戦闘力55%を維持…
総合戦闘力:エスカロニア損傷軽微、ガンポッド戦闘可能2、小破1、中破3、大破2により38%。
…後5分程度しか持たせられませんよ、ルリ』
ダイブしているルーミィに実際にデータを送れば、電子戦では不利になりかねない。
ヤゴコロオモイカネはぎりぎりまでそれを行わないつもりであった…
私は今<電脳空間>とでも呼べばいいのでしょうか、そういった場所にいます。
この空間は基本的に心象風景が如実に現れる場所です。
昔アキトさんがオモイカネの思考領域に入った時は、ウリバタケさんが電脳世界を図書館として表示していました…
そういった風に、人間は何らかの形で“認識しやすい世界”を構築して電脳世界を見ます。
私も基本的には同じ。ただ…私の構築空間は平行作業をしやすいように、現実世界と二重写しの様になっていると言うだけの事です。
つまり、私は現状を把握しています。
戦況が不利になっているのは感じていました…しかしそれでも、確認しておきたい事があったのです。
【あなたは誰?】
【…】
【私はルリ、これはお友達のヤゴコロオモイカネ…貴女の名前は?】
そう…目の前の子供は10歳に届かない少女です。
私達ナノマシン強化体質と同じ人間にも 見えますが…
目は赤く、髪は色の全く付いていない白。肌も、血管が透けて見える程の白さです…
いわゆる、白子とかアルビノとかいう体質でしょう。
【話せませんか? ここでは口で話す必要はありませんが…】
【…何故私に話しかける?】
【応えてくれましたね。それはあなたにも意思がある証拠と受け取らせてもらいます】
【…】
【貴女は何の為に戦っているのですか? それをやめる事は出来ないのですか?】
【…私は、マスターの…オメガの為に戦っている。オメガの命令は絶対】
【何故、絶対なのですか?】
【私が“此処にいる事が出来る理由”だから】
【…それはどういう…】
【私達はロストナンバー…不完全体…不完全なものは破棄される…】
【…!!】
【オメガはレベル1ではなく、私達を使ってくれた…】
【レベル1?】
【機密。知らされる必要の無い事】
【なら、貴女達を保護します。ですから…】
【無駄。私達は破棄される時以外に、オメガから離れる事は無い…】
【…それは】
【それに、もう既に貴女の方が限界】
周りを見てみると、エスカロニアのガンポッドは残り1機まで減りこんでいました。
私は急いで意識を元の状態に戻します…
意識が浮上し、視界に映るヤガネのウィンドウが私に挨拶してきます。
『ルリ、おかえりなさい』
「ヤガネ、ご苦労様。待たせてすみません」
『いえ、こちらこそすみません…戦闘力が30%を切りました…』
私は周囲に無数のウィンドウを展開し、現状を把握します。
…予想以上に酷いですね。ガンポッドは使用不能といっても良いかもしれません…
最後のガンポッドは一発だけ弾が残っています。
グラビティブラストのチャージは終了していますが、もし外せばチャージに2分弱かかるでしょう…
そして、ヤンマ級と小型ジンタイプ…どちらを撃っても、その隙が致命的です。
私達は今、確実に追い詰められていました…