「やはり、バイザーが無いと変なのか? まあ、仕方ないな」
そう言って黒目がね…いえ、アキトさんが言うにはバイザーでしょうか…を胸のポケットから取り出して付けようとします。
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
「ごめんなさい、呆然としちゃって」
「ああ、何が変だったのか分らんがバイザーをかければ大丈夫だろう?」
「そんな、勿体無いよ!」
「そうね〜、折角の色男なのに〜にゃは♪」
「うぅ、俺自信なくした…」
「まあまあ、アニキ…アキトになら負けても問題ないよ」
「ぐは!?」
カイルさんたちが漫才を始めたようですが、私たちはまだアキトさんに釘付けです。
いえ、仕方ないですよ…こうまでギャップがあると…
だって普段はニヒルに笑う渋い人なんですよ。
それが…バイザーを外すとこんなに可愛い人になるなんて…
私たちは結局アキトさんが逃げ出すまで鑑賞し続けていたのでした。
Summon Night 3
the Milky Way
第五章 「一歩目の勇気」第三節
私、最近趣味にしている事があるんです、
この島についてからは私の仕事である、ベルフラウちゃんの家庭教師ではお金をもらう事はできませんし、お金があっても、メイメイさんのお店でしか使えませ
ん。
メイメイさんのお店は雑貨はそろってますし、食料もあるんですが…
食料はやっぱり、日持ちのするものしかおいてません。
まさか毎日干物を食べる訳にも行きませんしね…(汗)
もちろん食べ物はソノラちゃんと私で大抵作っていますが、食材は殆どが海賊船に残っていた物と、集落の皆さんからのおすそ分けです。
正直これでは肩身も狭いですので…私は時間が空いたときは釣りをするようにしているんです。
もともと、釣りは好きでしたし、皆さんの役にも立てますから、一石二鳥です!
アキトさんやカイルさん達はいつもの如く船の修理を行っていますから、釣りをする人間は少ないんです。
これでも釣りはちょっとした腕なんですよ♪
そういうわけで、今日もカイルさん達から釣竿を借りて浜辺に向かいました…
「さあ、今日もばっちりはりきって、お魚を釣っちゃいましょう♪」
そう言って、私は釣り糸をたらします。
今いる海岸は、船から少し北に行った所です。
この辺りは少し岩場なんかもあるので影になる部分も多く、良くお魚が釣れます。
でも、私としては初日にアキトさんがモリで釣ってきたタイを食べたいな〜とか思っています。
不思議な事に、この島で釣りを始めて以来一度もかかった事がありません…他のは良く釣れるんですけどね…
一度なんて…カジキマグロが引っかかって海の中に引っ張り込まれた事もあります(汗)
人間の手だけであれは釣れませんよね…マグロ漁船でもあれば別ですけど…
この島は近くに海溝になる部分があるらしく、普通ならよって来ないような魚まで近くに来ていると言う事のようです。
まあ、海生召喚獣も関係があるのかもしれませんが…
そんなこんなで、釣りを続けて必要な量は釣ったのですが、今日は時間も早いですしもう少し場所を変えて釣ってみようと場所を変えることにしました。
先ほどの所から北に少し行った所に大物が良く来る場所ががあるので、そこに向かう事にしました。
目的の場所までもう少しの所でふと私は違和感があるのに気付きました。
「あれ?」
釣り場にしている岩場の所にある浜の部分に何かが乗り上げています。
見た感じ、船のマストのようですね…って
あ!
マストの横に転がるような形で誰か人が倒れています。
「……」
「どうしたんです!? ちょっと、しっかりしてください!?」
「う、あ…」
私はその場に駆け寄り、その人の状況を確認します。
息はしてる…でも、身体が冷えて弱ってる…
多分、私たちと同じ船に乗っていた人でしょう、とりあえず命に別状は無さそうです。
水も飲んでいないようですし…このマストにつかまってここまで流されてきたんですね…
でもこの体温の低下はかなり不味いです。
このままでは、体力的にもう限界でしょう。
「急いで、手当てをしないと!」
私は、釣った魚をその場においてその人を背負って帰ろうと思ったんですが…
この場所なら、機界の集落ラトリクスの方が近いと判断して運び込む事にしたんです。
ラトリクスについて直ぐ、私は運良くクノンに出会う事ができました。
クノンは、何か他の人(?)たちに色々指示を出しているみたいです。
本来なら少し待ってから声をかけるべきなのでしょうが、背負っている人の事もあります。間を置かず話しかける事にしました。
「すいませんクノン! 倒れていた人がいるので急いで手当てしたいんです!」
「…」
クノンは私たちに気付くと、少しの間私たちを観察しました…
私はじれてもう一度声をかけようとしましたが、それより前にクノンは一つうなずくと。
「了解しました、今自走型ストレッチャーを呼びましたのでもう少しお待ちください。その間簡単な検査を行います」
「は…はあ」
私は良く分かりませんでしたが、手当てをしてくれるみたいです。
クノンは私が背負っていた人を両手で抱えあげてだっこしました…そうしながら、その人を観察しています。
しかし、クノンって案外力強いんですね(汗)
「極度の疲労、及び栄養失調による衰弱などが見られます…それと体温の低下が起きています…今確認できる上ではそれだけです。
詳しい事はメディカルセンターについてからもう一度検査しますが、今すぐ死ぬと言う程ではありません」
「そうですか」
私は一息つきました。
どうやら、間に合ったようです…線の細い人でしたが、はやり男の人なのでかなり重かったんです。
安心したら、かなりの疲労感が襲ってきました…
しかし、安全と決まったわけでもないので、私もメディカルセンターについていく事にしました。
メディカルセンターはアルディラさんの住んでいる中央管理施設の一角にあります。
クノンがその人を運び込んだ後、アルディラさんも顔を出しました。
クノンに聞いたところによると、おおよそラトリクスでおこる事についてはアルディラさんに必ず報告が行く事になっているそうです。
それからアルディラさんと話していたのですが、暫くしてクノンは私たちを診療室に迎え入れました。
「どうですか?」
「細かな外傷は認められますが、生命活動に支障をきたすようなものではありません。極度の疲労で衰弱しているのでしょう、今はこのまま安静にしておくべき
かと」
「良かった…ありがとう、クノンが居てくれて助かりました」
「いえ、当然の事です」
「それにしても、こうも次々と人間がこの島に流れ着くとはね」
アルディラさんは少し深刻そうにその事を語ります。
確かに、この島には人間を嫌っている人も多いですが…それでも、少し悲しいです。
でも…私たちの船…どうなったんでしょう…
彼はマストにつかまって生き残ってみたいですが、考えてみれば私たちの乗っていた船は船員及び船客、帝国兵を含めれば100人程度は乗っていた筈なんで
す。
でも、流れ着いたのは帝国兵と私たちだけ…全体からすれば3割程度にしか過ぎません…
「私たちの乗っていた船の大きさから考えたら、これでも少ないですよ…」
「失言だったわ、許してちょうだい」
「この患者の身柄は私が責任を持っておあずかりします。病状が回復次第お知らせしますので」
「よろしくお願いしますクノン」
私は少し沈みそうになっていたんですが、クノンがタイミングよく話しかけてくれたので、少しだけ気が晴れました。
もしかして、気を使ってもらったんでしょうか?
それは分りませんが、私はその人をクノンにあずけて、船に戻る事にしました。
でも、帰ってから釣りをしていた事を思い出して釣竿とかを取りに戻ったんですが…
釣った魚は逃げ出していました(泣)
全く釣れなかったのでは悲しいので、もう一度日が暮れるまで釣りをしていた事は人には言えない秘密です(汗)
昨日たまたま魚料理が少なくなった…
まあ、別にそれはどうでもいいのだが、少しばかり妙な展開になっていた。
何気なくカイルとスカーレルがそんな話をしていたのを、キュウマがたまたま聞いたというのが真相らしいが、問題はそこでもない。
キュウマがその話をついでとばかりその主に報告したらしい。
するとその主は、風雷の郷で今日の食事を食べて欲しいという申し出をこちらに持ってきたのだ…
もちろん、カイルたちは一も二も無く了承し、風雷の郷に向かう事になった。
当然、昨日釣りに出ていたアティはおかんむりである。
「今度は絶対タイを釣り上げて皆さんをあっと言わせて見せます!」
「あはは…別にそんなに気にしなくてもいいよ」
「そうだぜ、たまには変わったメシを食いたいって言うだけだからな」
ソノラとカイルが慰めるものの、余り上手くいっていないようだ。
まあ、考えてみればカイルがそんな事を言ったのが原因なのだから、本人に対して多少わだかまりもできると言うものである。
本人に自覚は無いにしても…
それから、ベルフラウは今回の申し出を断った…
多分まだ吹っ切れていないのだろう、何かきっかけが必要だな…
一応スカーレルとヤードが残り食事を作る事にしている。
ヤードは元からあまり出歩く事が好きではない、特に現在は研究の途中の為参加は見合わせたいと最初から言っていた。
スカーレルはヤードとベルフラウに食事を作る為に残ってくれたようだ、
俺が残ると言ったのだが、「それじゃ周りが許してくれないわよ」と軽くあしらわれてしまった。
そういった世慣れた部分においては俺はスカーレルにまるで敵わない、こういうのも性質の違いかとは思うものの…
ある種同質の暗さを持っているだけに、扱いに困る。
スカーレルと言う男は一筋縄では行かないらしい、そう心には留めておく。
ハサハは、まあ当然と言うか俺についてくるらしい。
俺の護衛をすると意気込んでいるが、風雷の郷がシルターンの集落だと言う事で少し気になっているのだろう。
因みに今の俺はメイメイの店で買った服装を着ている。
ただ、前回の失敗を踏まえバイザーだけは外していないが。
そういったことをつらつらと考えている内に風雷の郷に着いたらしい。
俺達は、ミスミの屋敷に直接向かう。
俺達はそれなりに歓待されているらしく、郷に住んでいる者達は俺たちを見かけると挨拶する程度には警戒心を解いている。
やはり、アティの行動には意味があったと言う事なのだろう、彼女は気さくに挨拶を返し微笑みかけている。
彼女の行動は俺が見た事のあるどの人間よりも勇気あるものだ。
自分が幾ら好意を向けても相手がそれに答えてくれるとは限らない。
人間自分の行動に答えが出せなかったり、正反対の答えを返されれば傷つき戸惑う。
一人や二人に対してそう言った行動をとる事さえ勇気が居るというのに、彼女は自然に誰にでもそれをしてしまう。
それは、稀有な才能なのか、無限の勇気なのか…
俺には眩しすぎる心の持ちようだ、昔の俺でさえここまで底抜けに信じる事は出来なかったろう。
ミスミの屋敷に入った時、ふと横に気配を感じたので振り向く。
「キュウマか…」
「さすがアキト殿。気配を消していたつもりですが…」
「鬼の気は普通よりも猛々しいようだな、どうしても消しきれていない部分がある」
「やはり、それは我々の性質上仕方ないのかも知れませんね」
「人間とは異なると言う訳か」
「はい、私は鬼の中では比較的気を断つのが上手いほうであると思っていますが、やはり達人クラスの人間相手には役に立たない、
人の忍びの中には我等では及びも付かないものも居ます。やはり、我等はあまり忍びに向いていないのかもしれませんね」
「自己を否定するつもりか?」
「いえ、そんなつもりはありません。戦闘力であれば人の忍より上であると考えていますので」
「ほう、なるほどな」
確かにキュウマは戦闘力に関しては達人級に到達しつつあるようだ。
だが、それは忍びとしての能力が高いという意味ではない。
忍びとはスパイであり、泥棒であり、暗殺者だからだ。
俺は今まで忍びを直接知っているわけでは無いが、それだけは間違いないことだろう。
「もう、ついた途端に殺伐としたお話をしないでください!」
「ああ、そうだな」
「申し訳ありません」
アティに諭されキュウマの案内の元大き目の部屋に通される。
20畳(田舎畳で)ほどの座敷だ、ミスミは既に部屋の中で待っていた。
俺達は、座敷の上に敷かれた座布団の上に座る。
本来なら後三人呼ばれていたので座布団があまる。
この座布団もかなり凝った刺繍がなされているな…こういったものを作り出せるならシルターンと言う世界もそれほど技術力は低くないのかも知れないな。
「よくぞいらしてくれた、このミスミ、心より歓待致す」
「こちらこそ。お招きいただきありがとうございます」
ミスミとアティが挨拶を交わす。
こういった場合どうしても彼女がリーダーになる場合が多い。
立場もあるが、人格だろうな。
「さて、このまま歓談など致すのもよいが、今宵はシルターンの料理を心ゆくまで味わって頂ければ重畳じゃ」
そう言って、ミスミはかしわでを打つ。
すると、数人の女中が入ってきて、俺達の前に料理を並べていく。
会席料理だな…漬物、ごはんに、刺身に、すまし汁、小芋を中心とした煮物に、茶碗蒸し。
後から運ばれてきたのは、鯛の姿焼き…
かなりの飾り付けだ、ここまでのレベルになると本格的な料亭等でないと食べられないのではないかというような出来に俺も少しうなる。
「ほほう、気に入ってくれたかえ?」
「さあな、食べてみなければ料理はまだ分らん」
「ふふふ、ほんに強情な男よのう。もしかしたら、性格も似ているのかもしれんな」
「また俺を誰かと比べているのか?」
「さあの、それよりも並べ終わったようじゃ、いただくとしようかの?」
「はい」
「よっしゃ! 待ってたぜ!」
「あたし、これ頂き!」
「…いただきます」
カイルたちがそう言って料理に手を伸ばす。
しかし、残念ながら箸を使った食べ方はなれていないらしくあまり食事は進んでいないようだ。
アティはシルターンの自治区とやらで一通りそういった作法を学んでいるのか、それなりに堂に入った食べっぷりだ。
ハサハは、元がシルターンなのだから問題ない。
「所でアキトよ、その者はそちの護衛獣か?」
「ああ」
「ふむ、可愛い妖弧よの、名はなんと申す?」
「…ハサハ」
「そうか、ハサハと申すか。ふむ、そなたの身におうた良い名じゃの」
「うん」
ミスミはハサハに向かって微笑みかけ、頭を撫でる。
ハサハも最初は少し緊張した物の、撫でられて嬉しそうにしている。
アティが時折俺に目を向けているのが気になるが、まあこういったのも良いかも知れないな。
「そういえばそなた等、ユクレスの広場でスバルと会ったそうじゃな?」
「ああ、確かにな…しかし、殆ど話したのはアティだけだったが」
「まあ、あの時アキトさんの格好は少し怖かったでしょうし…」
「そうだろうな、子供達の反応もそんな所だった」
「でも、スバル君は一番アキトさんに動じてませんでしたね」
「うむ、そうじゃろうな」
「え〜っと、もしかしてミスミさまスバル君と親しいんですか?」
「…」
アティ案外鈍い所もあるんだな、服装だけでもある程度判断がつくだろうに。
スバルの服は明らかにシルターンのものだったうえに、名がな…
昴、二十八宿の一、昴宿(ぼうしゆく)の和名だったか、星の名だな。
ここの出身だろうことは誰でも見当がつく、更にスバル自身が自分が鬼神の末裔だと言っていた。
だとすれば血筋は…
「なんじゃ? まさか、気付いておらんかったのか?」
「???」
「親しいもなにも、あれはわらわの息子じゃぞ?」
「ああ、なるほど…ってええ!!?」
アティが驚く、しかし、驚いた質は何か少し違うらしい、指折りで何か数え始めた。
「こらこら、指折り数えるでないわ。物の怪とて女は女、そなた等と同じでこれでも気にしておるのじゃぞ」
「あわわ…っ! ご、ごめんなさい! つい、驚いて…」
「スバルはのう、今は無き我が良人の忘れ形見なのじゃ」
「え?」
「わらわが嫁いだリクトという男はな「轟雷の将」と名を馳せた豪傑でのう…一国一城の主として申し分ない男であったが、
この島に召喚されてからも島の鬼達を束ねる立場にあったわ…
島で起った最後の戦で、討ち死にをしてしまったがな…」
リクト…この名を聞いた時、俺の体の温度が数度上がったような気がした。
身体的に、異常は無いようだが…
しかし、島で戦争?
何を、いや誰を相手に戦争をした?
…
ハッとして周囲を見れば、まだミスミは話を続けていた。
いつの間にか皆話に引き込まれている。
カイルやソノラもすまし汁を啜りながら大人しく聞いている。
「キュウマは、あの人の腹心の部下でな、わらわに…
その最後を伝えてくれた…
以来ずっと、わらわたちの事を気にかけてくれておる…
亡き主君の恩義に報いる為、とな」
「そう…だったんですか」
「あんたも、結構辛い目にあっているんだな」
「ごめんね、勝手に聞いちゃって」
「…ミスミだいじょうぶ?」
ミスミの顔色が悪くなっているのを感じたのだろう、皆は口々に謝罪を述べる。
しかし、ミスミは気丈に微笑みながら、身の上話をしてしまった愚を後悔しているようだ。
「ははは、すまぬ…つまらない身の上話を聞かせてしもうたな」
「あまり、気にすり事は無い。話す事で楽になることもある」
「…その気の使い方、
妖気のこともそうじゃが…
おぬし、本当にリクト殿ではないのか?」
ミスミは目を潤ませ、俺を見る…
周囲はシーンと静まり返り、俺の言葉を待って居るようだ。
俺は、言葉を紡ぐ為呼吸を直す。
「俺には、お前の言っている事は分からん。だが、死んだ者は決して生き返りはしない。
そして、転生とやらが本当にあったとしても、転生した人間はもう別人に過ぎない」
「そう…じゃの、すまぬ…」
ミスミは悲しそうに目を伏せる。
だが、俺は…彼女の言葉に答える事など出来はしない。
これで彼女の俺に対する興味も失せるだろう。
「すまぬ、わらわは気分が優れぬ、少し外の空気に当たってこようと思う」
「あっ、はい…」
ミスミは部屋を辞し、外に出て行った、彼女の目に何か光る物があったように見えたが…俺は無視した。
ミスミは何か俺に期待していたのだろう、だが俺はそれにこたえる事など出来はしない。
もちろん、気になる事はある。
さっきからリクトと言う言葉になにか、体が反応しているかのように体温を上げている。
出来れば早くこの場を去りたい…
そう思っていると、アティと目があった。
「アキトさん、一体どうしてそんな事を言ったんですか?」
「何の事だ?」
「あれじゃミスミ様が可哀想です。ううん、アキトさんも…分っている筈です」
「知らんな」
「じゃあ、何で痛いと思っているんですか! 分ります。私…アキトさんの心が痛がっているのが…」
「…」
「お願いです、ミスミ様を追いかけてあげてください。きっと待ってますから」
「…はぁ、本当におせっかいだなお前は」
「はい、それと…ミスミ様の後は私の所にも来てくださいね」
「?」
「ねッ!!」
「…ああ」
アティから何か凄まじいプレッシャーがはなたれていた気がするんだが…
まあ、置いておこう。
俺はミスミの後を追って屋敷を出た。
人探しは得意分野ということになるだろうか、俺はミスミの気の流れの後を追って向かった為直ぐに追いつくことが出来た。
ミスミは、里の外れにある泉の淵に佇んでいた。
泉の前で沈んだ表情を見せるミスミはまるで一枚の絵であるかのようだった。
時間が止まってしまったような、不思議な空気が漂っている。
俺は、一瞬出るべきかどうか戸惑ったが、このままにしておくわけにもいかない、俺は彼女の背後から声をかけた。
「たそがれているな」
「ふん、わらわを笑いにきたのかえ?」
「俺がそんな男に見えるか?」
「…そなたは意地悪じゃ、わらわに希望を持たせて…」
「それは、俺の知るところじゃないな」
「そうじゃの、しかし、どこまでもぶっきらぼうなおのこじゃ、リクト殿も良く似た所があっての。大抵そのような言い回しになる」
「そうなのか」
「ふふ…じゃからかのう、おぬしを見たとき最初に本当に似ておると思った」
「そう言えば、最初から俺に味方だと言っていたな?」
「そうじゃ、それは今でも変わらぬぞえ。お主はまだわからんじゃろうが、必ずわらわを必要とするときが来る筈じゃ」
「何か俺の事を知っているのか?」
「いや、わらわが知っているのは少しだけじゃ、しかし、今はそれをお主に言う訳には行かぬでな」
「取り決めか?」
「護人のな…まさかわらわが破る訳にも行くまいよ」
「なるほどな」
「聞かぬのかえ? おぬしの為なら話すやも知れぬぞ?」
「今は特に聞きたい事でもない、その時に分かれば問題ない類のことだろう」
「ふん、つまらんのう…からかいがいの無い」
「ふ…どうやらもういいようだな…あまり柄にも無い事はしたくないんでな」
「そう言うな、そなたの事、良く分るぞ? リクトと同じではないのかも知れんが、しかし…良いおのこじゃ」
「…」
ミスミは俺の胸に頬を寄せ顔を隠す。
俺は動く事ができずにいた、ミスミは泣いていた…
リクトという存在の大きさが伺える、彼女にとって全てだったのかも知れないな。
俺の胸の中で泣く彼女は少女の様に幼く、そして純粋だった。
俺は、彼女をただ見ている事しかできなかった。
「すまぬな、じゃが、おぬしの胸温かかったぞ。これからも時折貸してくれぬか?」
「返答に困る事を言わないでくれ」
俺が困っているのを見て、ミスミはころころと小さく笑う。
どうやら落ち着いた様子だが…
今度は俺をからかうのが楽しいのだろう、表情はかなり和らいでいたが、代わりに俺は渋い顔をするしかない。
それを見て、またミスミは嬉しそうに、俺をからかう。
「ふふふ、そなたとなれば良いかのう…いずれわらわの物にしてくれようぞ。首を洗って待っておるがよい」
「…勘弁してくれ」
「ふふふ」
俺がうんざりと言った表情で唸っている。
ミスミは完全に復調していた、やった事は間違っていないのだろうが…
居心地が悪い事この上ない、俺は、女と言うのは相変わらず何を考えているのか分らないと思った…
なかがき
なかがきとあとがきがごちゃごちゃになりつつある昨今(爆) 皆様いかがおすしでしょうか?
私はまた〜光と闇に祝福を〜とナデライド(汗)をサボっております。
時量師さん申し訳ない(汗)
このSSは最近ふくらかし粉の様に膨らんでなかなか進んでくれません、書きやすいのであがるのも早いんですがね…
兎も角、今回はミスミ様に出番をという煎り豆さんのお言葉に従ってみました。
いや、この作品じたい煎り豆さんのリクですからね…
メインに食い込んでこない程度なら聞いておこうと思いまして。
でも、少し意外な展開に出来たのでは? と喜んでいます(爆)
いつも単調な追いかけっこでは面白くないですから、逃げる方と追いかけるほうを逆転してみました。
面白いと感じてくださったのなら幸いです。
WEB拍手ありがとう御座います♪
Summon Night 3 the Milky Way
は5月7日正午から5月15日午前10時までにおいて、153回の拍手を頂きました。大変感謝しております。
コメントを頂きました分のお返事です。
5月7日21時 次回も楽しみにしています
ありがとうございます! 次回も頑張らせていただきますね♪
5月7日21時 いい仕事してますね〜♪
嬉しいです♪ コネタは結構良く出てきますのでこれからも封入なせて頂きますね!
5月7日22時 アティの嫉妬イベントも見たいです
むむぅ、あんまり派手に嫉妬イベントを入れるとメインに食い込んできそうですので、少し手控えているんです。
後半に向けて少しずつそういったシーンも入れていく予定ですのでごゆるりとお待ちください(爆)
5月7日22時 アキトがかわいいって言われてる!?元が童顔だからか!?
ははは…アキトがルリにバイザーをとって見せたシーンは正直目でかすぎ! と思いました。
あれで渋いキャラは無理です。なので、バイザーとったら可愛い路線と言う事で(爆)
5月7日23時 ゆけぃハサハ!アキトの笑顔を大量生産するのだ!
ハサハは出番を大量にすると、話が全然進まなくなりますので、出番を削ったりする事もあります。
もちろん、プッシュする回も入れていきますのでよろしくです♪
5月8日0時 ハサハはいいカップリングだと思います。でかくなると美人だし、アキトの心機一転に一役買えますね(笑)
そうですね、今すぐどうこうと言う事は無いですが、そういったイベントも入れて行きたいと思っております。
大人ハサハの資料誰か教えてくれ〜!!(泣)
5月8日1時 今回の彼女らに一言、眼鏡(?)をはずすと美形と言うのはこういう物語のお約束ですよ〜w
ははは…その通りですね、目がねっ娘のお約束を忠実に守ってしまいました(爆)
5月8日6時 おもしろいです 続きに期待
はい、今後も頑張らせて頂きます♪
5月8日8時 アキト服チェンジ!楽しく読ませて頂きました♪これからも頑張ってください♪
そう言って頂けるとうれしいです! これからも精進しますのでよろしくです!
5月8日10時 店が「見せ」になってました
むぅ、探してみたのですが見つけられませんでした、私はミスを見つけるのは苦手ですので…出来ればどの辺りなのかも教えてください(泣)
5月9日0時 この調子で行くと、ミスミ+クノン+ハサハ=修羅場? しかも候補がまだ増えそうな・・・
いや、まあそう直ぐに修羅場と言う事はないと思うのですが…っていうかクノンは今の所アキトをそれほど意識していないと思いますが…
今後クノンも少しポイント稼いで行く事にしましょうか(ニヤリ)
5月9日21時 サハサが護衛獣とは・・・。カップリングにアキト×ベルフラウを希望
え〜っとアキトとベルフラウにそれなりのイベントシーンは入れるつもりです。カップリングに関しては現在どれとかはあまり考えていません。今後次第ですの
でよろしくです。
5月9日21時 そういえばどこぞのHPでアキトのお玉で召喚した物がナデシコでしたなぁ〜 このノリでサモン2かサモクラ2を見てみたいですねぇ
最大手ですな、私も知っていますよ(笑) あれを見たとき3も誰か書かないのかな〜って思いました。まさか自分が書くことになるとは思いませんでしたが
(爆死)
サモン2は結構ありますけど、完結作品は無いですね〜まあ、クロスオーバーものを完結させる事ができる人そのものが少ないですから…
クラフトソードは多分しんどいと思いますよ、出てくるキャラが多すぎますし、必然性がどうしても少なめですからね(汗) やるとなればかなりアレンジがひ
つようでしょう。
5月9日23時 ハサハとかクノンといったような感情が表に出にくいキャラとアキトの絡みが楽しみです。
はい、頑張らせていただきます。今後そういったカラミも増えていきますからね。フラーゼンにも感情をあげたいですし(爆)
5月9日23時 最高です!!!
ありがとうございます! 今後とも頑張らせていただきます♪
5月11日11時 アキトが、自分を亡霊と強調しすぎている気がしますが、それを除けば、すごく面白いです。
ははは…面目ない、つい言いすぎてしまいます。自分で確認する意味もあったり(汗) 今後もがんばりますのでよろしくです!
5月11日19時 アキトの戦闘シーンが見たい!
何れは戦闘をさせるつもりですが…何だかキャラ同士のからみだけでお話の大半が埋まってしまいそう(汗)
駄作家の面目躍如ですな…
5月11日21時 面白かったです、続きを楽しみにしています。
はい、今後も頑張らせていただきます! 面白い作品になるよう努力しますのでよろしくです!
5月11日22時 いっそのこと、アキトにシャルトスみたいな武器を持たせてみたら・・・
むむ! 良い目をお持ちだ、企業秘密ですが、それに近いことを私も考えています。
5月12日11時 今回もとても面白かったです。ちなみにアズリアのアキトラブイベントはあるんでしょうか?あってほしい・・
アズリアですか…出てくるだけでもかなり先ですのであまり深くは考えていませんが、ネタは入れていくつもりです。ラブになるかどうかは展開次第(爆)
5月13日12時 アキトバイザーをとりましたか まあ、童顔ですからカワイクみえるのもしょうがないですね
はい、そういったイメージで行かせて頂きました、カッコいいとも思えますが微妙な所ですよね。
5月13日23時 アキトの銃は?
それは、どうしようかと思ったんですがあまり必要ないと判断しましたので今の所出現予定無しです(汗)
5月14日21時 今回もとても面白かったです!!
ありがとうございます! 今後もがんばって続けて行きたいと思います♪
それでは、他のお返事は、作品が出たときにお返事させて頂きますね。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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