銀河英雄伝説 十字の紋章
第二十話 英雄の策を見る。
ヤンの懸念を受けて俺は情報網を駆使して可能な限り敵軍の事情を探った。
流石に相手の細かい編成まではわからなかったものの、エルファシル駐留軍は特に聞いたこともない大将が据えられていた。
その間に作戦が始まり、既に艦隊はエルファシルへ向け動き出している。
しかし、イゼルローン駐留艦隊司令にミュッケンベルガー上級大将が着任したという情報が入ってきたため早速分艦隊会議にかけることとなった。
「ミュッケンベルガー上級大将ですか……」
「ああ、頭の固いタイプではあるが、応用力も高い。
駐留艦隊16000を上手く使ってくるだろうな」
「確かに、彼ならエルファシルへの応援部隊を既に出している可能性があります」
ヤン少佐は俺の言に頷く。
エマーソン以下艦長達は今の所口出しはしてこない。
普通は分艦隊でする会議ではないと言えなくもないが、この議題は上伸すべき議題だ。
ドーソン中将を説き伏せ、さらにドーソン中将から他の提督にも作戦の変更を提案させなければならなくなる可能性が高い。
「ヤン参謀、どう見る?」
「そうですね、エルファシルの駐留艦隊司令に変更はないんですね?」
「ああ、こちらで集めた範囲にはそういう情報はなかった、100%とまでは言わないがかなり確率は高いだろう」
「だとすれば、ミュッケンベルガー上級大将は奇襲に打って出る可能性が高いでしょう」
「ほう」
「順序を入れ替えての攻撃と言ったほうがいいかもしれません。
ミュッケンベルガー艦隊はこちらの第十、十二艦隊を迂回し、こちらの背後をつくよう動くのではないでしょうか」
確かに決まれば強いが、エルファシル駐留軍が十分に粘って、こちらの攻撃が長引かなければ成立しない。
それに、ミュッケンベルガー艦隊は背後に第十、十二艦隊を残す事になり見つかれば殲滅されるだろう。
リスクの高さのわりに、成功率が安定しないようにも思える。
「迂回して攻撃か……可能なのか?」
「先ほども言いましたが、ミュッケンベルガー上級大将は恐らく、着任と同時に動いているでしょう。
それに高速で動ける艦だけで先行している可能性もあります」
「なるほど、確かに間に合うかもしれん。対策はあるか?」
「はい、これは司令が使った方法の焼き直しですが、有効かと……」
「ほう」
ヤンが語った方法は俺の使ったものを再利用するというものだ、規模の関係からかなり金はかかるが……。
確かに、有効と言えば有効だろう。
ならば……俺のする事は決まっている。
「ドーソン司令、少しばかりお時間をいただいて宜しいでありましょうか?」
『ほう、君から連絡とは。着任挨拶以来ではないかね?』
「中節の折一度挨拶させていただいております」
『ああ、そうだったな。少しばかり最近は忙しくてな』
「いえ、司令がご多忙である事は理解しております。そんな折に連絡等申し訳ない限りではあるのですが」
ドーソンに対する対応としては、少し急ぎ過ぎたか?
もう少し、体面に気を使うべきだったかもしれない。
なかなか気難しい人だが、きちんと手順を踏めばやり手だし、いい人ではあるのだ。
小市民だが。
まあ、俺も小市民なのではっきり言って彼のことを言えない。
「はい、情報部のつてで分かったことなのですが、ミュッケンベルガー上級大将がイゼルローン駐留艦隊司令に着任しております」
「ほう。しかし、それがどうしたのかね?」
「もちろん、ドーソン指令にとってみれば今更な事をとお思いでありましょう。
しかし、かの男は上昇志向が強く、手柄を欲しております。
よってとるものもとりあえずエルファシルへ直行している可能性が高いと思われます」
ミュッケンベルガーが実際に手柄を急いでいるかと言われれば疑問だが、そう言っておいたほうがいい。
相手をあまり褒めるのもドーソンにとっては気分の良くないものだろうから。
それにどのみちヤンがそう考える以上、恐らくミュッケンベルガーは来る。
その理由が皇帝への忠誠だろうと、昇進するための手柄欲しさだろうとそんなことはどうでもいい。
その結果に対して対処するのが俺の仕事だ。
「むう、それはつまり。我らへの奇襲を狙っていると?」
「間に合うかどうかはわかりませんが、第十、十二艦隊を迂回してくる可能性はあるかと」
「だが、我らはエルファシル奪還のためにもエルファシル駐留軍を叩かねばならん」
「はい、ですので艦隊を使うのは勿体ないかと思われます。それでですが……」
俺は、ヤンの作戦をドーソンへの美麗麋竺をはさみつつ語った。
あくまでドーソンはこんな作戦既に思いついているだろうがという体で語るのが基本だ。
手柄もあくまで、自分たちは補佐をするだけで上げるのはドーソンという形をとるのも忘れない。
彼は褒められ、優遇されるとお返しをせねばという考えが働く、結果として意見はすんなり通るし、手柄も分けてもらえるわけだ。
原作のヤンはその辺りの機微をどうでもいいものと考えていたせいで、余計上から睨まれたのではないかと思う。
『わかった、確かにその作戦も考えてはいたが、ミュッケンベルガーが来るとは考えていなかったからな。
ちょうどいい、返り討ちにしてやろうじゃないか。作戦を許可する』
「ありがとうございます」
通信画面が閉じ、また会議室が元の状態に戻る。
ヤンも艦長達もほっとしているようだ。
まあ、今回の作戦は第八艦隊だけでもやれなくはないため、ドーソンがほかの艦隊に通達するだけで出来るのはよかった。
そうでなければ、もう一度上手く乗せて第七のクブルスリー中将の説得法まで伝える必要が出てくる所だった。
流石にそれを気分よくやってもらうにはかなりしんどいヨイショが必要だ。
「これで一応作戦は決まった、後は対処のタイミング次第だな。
そちらは任せていいか? ヤン参謀」
「貴方は私に階級以上の事を望みすぎです。指揮は提督の仕事ですよ」
「能力に見合っていると思うがね」
「英雄にその評価をもらえるのはありがたいですが……自分の手柄は偶然です」
まあ、この当時のヤンならそうかもしれないな。
実際、適当なところで辞める気まんまんだったからな……。
互いに責任の押し付け合いになれば、階級が上の俺のほうが不利だし、今回は引くとしよう。
「偶然とは思えないが、まあ今はそれでいいだろう。では会議はここまでとする。
明日は戦場だ、きちんと休んでおく様に」
会議室から全員引き上げたのを確認して、俺も執務室の方へ引き上げる。
副官達が片付けを始めたので邪魔をしてもいけないだろう。
そうそう、作戦こそ今決まったようなものだが、物資のほうは既に分艦隊と行動を共にしている。
旧式の巡洋艦を改装した補給艦を100隻ほど分艦隊に同道させていた。
今回はこれのテストも兼ねている。
上手く行ったら高速輸送艦計画をぶち上げるつもりだ。
「ま、取らぬ狸の皮算用にならないようにしないとな」
現状、コバンザメ計画のほうは上手く行っている。
このまま行けば、それなりに活躍出来るだろう。
今回だけで准将から少将になれるかと言われると難しいとしか言えないが。
それでも手柄は必要だ、そのためにも徹底的にコバンザメしなければならない。
惑星エル・ファシル、テラフォーミングの結果かなり住みやすいと判断された惑星は、今人がほとんどいなかった。
帝国軍に占領され半年近くたつが、占領した所で人がいなければ何も生産されず、当然補給もできない。
捕らえた同盟軍兵士を働かせて少しは生産させているものの、微々たるものだ。
占領時は2万の艦隊は士気も高く、更に戦線を押し上げるつもりであったが、派閥の問題が出てきた。
援軍を渋られたのだ、皇帝派と貴族派の確執のせいで、援軍が3ヶ月以上遅れている。
最近ようやく首都星オーディンを出たという報告があったが、同時に敵にも情報が渡った可能性が高い。
つまり、援軍よりも先に奪還軍が来てしまう、それが分かっている司令官はイゼルローンと連絡をつけるつもりでいた。
だが、いざ連絡してみると、既に着任した上級大将ミュッケンベルガーは既に艦隊を動かしたというものだった。
艦隊司令は正直判別がつかない、本当なのか、罠なのか。
帝国軍の秘匿通信を使っているのだ、罠の可能性は低いはずだが、それでもあまりに早い。
しかし、現状はそれを信じるしかないのも事実だった。
だがそうなると、また彼は選択を強いられる事となる。
エルファシルを放棄して合流するか、援軍を信じて防衛に徹するか。
出来ればエルファシルの放棄は避けたい。
せっかく手に入れた前線基地だ、ここで放棄したら何のために来たのかわからなくなる。
しかし、いくら素早く動いてくれたとしてもミュッケンベルガー艦隊が到着するまでに戦闘になる。
数の差はそう多くはないものの、補給が安定しないため万全とはいいがたいこの艦隊ではいずれは負ける。
そもそも、この周辺には防衛陣地として使える様な障害物もない。
エルファシルそのものを盾にするという手もなくはないが、惑星の影に隠れるといってもレーダーには映る関係上さほど利点はない。
ましてや同盟軍に守るべき民が残っていない以上、惑星攻撃も抵抗なくやってのける公算が高い。
理屈ではどう考えても合流を急ぐべきだ。
だが、それをしてしまうと派閥の問題もあり後々降格どころか下手をすれば首が飛びかねない。
だから、艦隊司令は防衛を選ぶしかなかった。
ミュッケンベルガー艦隊が間に合う事を祈りながら。
ミュッケンベルガーは焦っていた、もちろん彼の艦隊行動は基本的に堂々と隙の無いものを好む。
しかし、今回はそれでは間に合わないと感じたからこその行動だった。
今回、リヒテンラーデ率いる皇帝派の傘下の艦隊がエルファシルという反乱軍の奥地を乗っ取る事に成功した。
実際の所、イゼルローンと反乱軍の中枢の中間よりは少しイゼルローン寄りといった場所だが、それでも快挙だった。
だが、そうなると面白くないのは対抗派閥であるブラウンシュバイクやリッテンハイムを中核とする貴族派。
彼らはコネを使ってなんとか援軍を出させまいと出し渋り、とうとう占領してから3ヵ月以上援軍どころか補給すらしなかった。
結果として、占領軍は弱体化しており、ミュッケンベルガーはその事に気づいたため急いでイゼルローンへ向かった。
着任処理もそこそこに、そのまま占領軍の援軍として急いではいるが、手続きや移動で時間がかかり遅くなった。
結果として既に半年近くになっており反乱軍の艦隊のほうが先に到着しそうな始末だ。
そして、援軍として動かしたこのイゼルローン駐留軍は練度があまり高いとは言えず最前線とは思えない艦隊である。
ここの所イゼルローンの防衛はトゥールハンマーへ敵を誘引するというだけの仕事と化しており、緊張感がなくなっていた。
今まで4回の反乱軍による攻撃において、一度とてイゼルローン要塞に敵が取りついた事はない。
そのため、安心感が彼らの弱体化の原因となっている。
この事はいずれ上伸しなければならないと感じた。
だが今は、それどころではない。
このままではエルファシルに折角築いた前線基地が崩れ、また元の木阿弥になってしまう。
それをすれば戦争がまた数十年長引く可能性が高い。
折角の戦争終結のための一歩を無くすのは御免だった。
しかし、今敵艦隊と接触するのは不味い。
この艦隊の正面にはなった偵察艇が敵艦隊、それも恐らく二個艦隊の影を捉えた。
となれば、こちらは迂回して発見されるのを防ぐしかない。
ここで合流する前に戦いとなれば、一万六千対二万六千という数字になり、先ず勝てない。
勝つにはまず先に合流し、敵を各個撃破するしかない。
そのためには迂回しなければならないが、そうなると敵のもう一隊のほうがこちらより先に接触する事になるだろう。
だが、ここで戦うわけにはいかない以上、そうするより他はなく、難しい賭けに出なくてはならなくなった。
オーディンからの援軍三個艦隊は、普通に来る限りでは間に合わないだろう、一週間以上の距離の差がある。
だが、ここにいる艦隊ならなんとかなるだろう。
今放置したところで、援軍が対処する公算は高い。
だが、その間エルファシルを守る事ができるだろうか?
「忌々しい……」
味方の足並みが揃わなかった事は今までも多くあったが、今こそ攻勢をかけるべき時であるというのに。
綱紀粛正を行うほうが攻め込むよりも先であったかもしれないと考えるミュッケンベルガーだったが、今それを考えても仕方ないと思い直した。
どちらにせよ、貴族として踏まえる所は踏まえなければならない。
反乱軍のようになってしまわぬためにも。
そう思い直し、彼はまた艦隊の指揮に戻った。
「高速艦のみで先行する! 追いつけない艦も可能な限りの速度でエル・ファシルへ向かえ!」
かなりの無茶であることは分かっていたが、高速戦艦と巡洋艦、駆逐艦の編成のみ先行する形を取る事となった。
残りの戦艦や空母、補給艦や工作艦などは後方を追いかける形になる。
この時間差がどう結果をもたらすのか、ミュッケンベルガーにも把握できてはいない。
第七、八連合艦隊はエル・ファシル宙域に到達しつつある。
敵艦隊の捕捉は終わっており、主砲の射程に入り次第戦闘が開始される。
第八艦隊は第七艦隊の真横につけており、このまま行けば半包囲の形をとって敵艦隊と対する事となるだろう。
「高速補給艦部隊は8時の方向に展開。
ミュッケンベルガー艦隊がレーダー圏内に入った瞬間、コンテナごと放出して離脱せよ」
『コンテナごとで構わないので?』
「ああ、どうせ自動で展開されるだろうし、コンテナそのものにも使いみちがある」
『了解しました!』
高速補給部隊を率いる先任艦長に指示を出し、俺たちはエル・ファシルを占領している帝国軍に向かって進む。
俺の乗艦である、戦艦バトラントは艦隊の中央近くに位置している、ドーソンはそれだけ俺の事を気にかけてくれているという事だろう。
中央部は狙われる事も多いが、それ以上に弾幕が激しいため、被弾率は低い。
トゥールハンマーのような長射程の兵器でもない限りこちらまで攻撃を飛ばすにはそれなりに損害を覚悟しなければならないだろう。
「帝国艦隊その数18500。聞いていたものより少し少ないですね」
「伏兵は考えられないか?」
「可能性はゼロではないですが、物資の不足がある様ですから修理が間に合っていないのでは?」
「ドーソン司令の周りにはそういうのを進言しそうなのが結構いるが……、備えはしておくべきだろう」
「どちらにせよ。1500が後方に回り込んだ場合はアレにかかるでしょう」
「まあそうなるが……その場合はミュッケンベルガー艦隊に対処するのが難しくなるな」
「はい、ですので……」
「結構なリスクを伴いそうだが」
「あくまで、後方に1500が回り込んだ上で、時間差でミュッケンベルガー艦隊が現れた場合です」
「なるほど」
低いと見るかどうかは正直わからない。
しかし、最悪を想定するのは軍において当然だろう。
だが、不安を見せる事も出来ない。
最悪の事態に対する対処はヤン大明神に祈るのみだ……。
そう考えている間にも、第七、八連合艦隊は敵艦隊を射程に捉える。
真ん中を三角錐の陣形(鋒矢陣形を立体化させたもの)で抜けようとしているが、鶴翼はもとよりそれを潰すためのもの。
ただ、全体としては有利だが艦隊司令部の守りが薄くなりがちという欠点もある。
だが、初撃においてはほぼ圧倒した感じである。
三角錐の頭が崩れ去り、陣形の再築をしなければ再突撃は難しいだろう。
実の所、一隻あたりの性能は同盟のほうが少し上だ。
技術革新が起こりづらい、というか放置しておけば退化すらする帝国と違い、同盟はバージョンアップを繰り返している。
まあフェザーンから帝国に流れるのでそれほど大きな違いにはならないのだが。
ただ逆に旗艦の性能においては帝国のほうが高い場合が多い。
採算度返しの一点ものばかりだからだ。
下手すると性能は普通の戦艦の3倍くらいになったりもする。
値段は当然開きがあり、ちょっとしたカスタムで倍、完全に専用に作ったブリュンヒルデとかになればニ十倍くらいの値段だろう。
ブラウンシュバイクやリッテンハイムがフジリュー版でやってたようなのだと巨大さなどもあり五十倍近い値段になるかもしれない。
量産品ばかりの同盟とはその辺りは違っている。
そんな敵の旗艦が前に出てきて陣形が再築される。
当然敵旗艦に集中砲火が行われるのだが、前方の装甲が分厚いタイプらしく、あまり効果をあげられない。
いわゆる盾艦みたいな感じの旗艦のようだ。
艦隊の距離が詰まってきて互いに艦載機が放出される。
とはいえ、相手の狙いは一点突破。
こちらの薄い部分を抜いてミュッケンベルガー艦隊と合流するつもりだろう。
それまでにどれくらい削る事が出来るかで勝敗が決まると言っていい。
「不味いですね。第八艦隊の左翼に陣形の乱れがあります」
「敵の分艦隊か?」
「いえ、これはエルファシルからの攻撃のようです」
「そんな兵器があるとは聞いてないが……」
「恐らく、帝国軍が運び込んできたのでしょう」
「もとより占領するつもりだったということか」
だとすれば、当然帝国軍は矢の先端をそちらに向けるだろう……。
だが、逆にそれはチャンスにもなりうる。
司令部のある中央部に横腹をさらす事になるのだから。
そう考えていた時、ズシンッという地震でもあったような衝撃が来る。
敵のワルキューレ部隊がここまで来たという事か!
「残存艦載機は本艦の直掩に回れ! それと、分艦隊全てに通達! 敵旗艦が横腹をさらしたタイミングで全力射撃だ!」
「了解! 射撃準備整いました!」
「撃て(ファイヤー!)!!」
横腹をさらした敵旗艦に向けて、巡洋艦を中心とした2000隻による一斉射撃を慣行する。
正面には厚いその装甲も横に対してはそれほどでもないらしく、数秒で火球に変わる敵旗艦。
それにより、敵艦隊の足がまた止まった。
結果として、包囲殲滅が再開される事となる。
「旗艦の識別がつきにくい同盟のほうがこういう場合は有利だな」
「それは言っちゃ不味いですよ」
ヤン・ウェンリー参謀にツッコミを食らう。
基本的に体面を気にしないヤンに突っ込まれるとは、俺も偉くなったものだ(汗
恐らく司令官を引き継いだのだろう、艦隊にまた統制が生まれたが、勢いが無くなった艦隊は脅威ではない。
だが、警戒を解くわけにもいかない。
予想通りというべきか、既に背後から敵艦隊が迫っていた。
「背後から敵艦隊! おおよそ1万!」
「高速の艦だけの先遣隊ですね。恐らく姿の見えなかった1500もそこに合流しています」
「まあやることは変わらない。高速補給艦部隊はどうか?」
「コンテナを放出して撤退していきます」
「よし」
撤退といってもこちらに合流するのではなく、敵艦隊から離れる方向に向かっているだけだ。
そのまま近くの基地のある惑星まで逃げる事になっている。
方向は敵が来た方向によって変わるため決めてはいなかった。
「コンテナ、物資排出後、ブースターに点火!」
「コンテナ、加速。敵砲撃射程に突入、全機破壊されました!」
「チャフの展開率はどうか?」
「芳しいとは言えません、敵艦隊正面中央のレーダーは誤魔化しましたが、恐らく5分もすればチャフの範囲を抜けます」
「それで十分だ」
まあ当然、チャフの量が十分でない以上それが限界だろう。
それでも十分役割は果たしている。
「敵、後続部隊レーダー圏内まで到達! その数3万っ!!」
「何っ!?」
3万だとッ!?
ミュッケンベルガー艦隊の規模を考えれば多くても1万に届かないはず……。
残り2万以上、一体どこから湧いたというんだっ!?
予想外の一手に俺は一瞬思考が真っ白になるのを覚えた……。
あとがき
便利にヤンを使おうとして使い切れていないジュージの話です。
今までと違い多少安心感等があったせいで、余計に意表を突かれたり。
まー艦隊規模の戦いではよくあることと思われます(笑)
しかしまあ、ようやく20話。
原作はまだ始まっていませんけどね(汗
まあ準備に手間取るのは仕方ないんですが、実際のところ仕込みが出来ていないと同盟に勝ち目はないと思ってしまいます。
ラインハルトが運命に愛され過ぎてるのでw
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m