機動戦士ガンダム〜転生者のコロニー戦記〜






第十話 ジオン対策会議



とりあえず、兵器案のプレゼンをするために、ジオン対策会議に出席する事になった。

資料を一通り用意したので、無視される事はないだろうが、情報硬度を疑われる可能性はある。

特にエルラン少将あたりは危機感が高まると困るだろう。

確定と言う訳ではないが、ジオンとのつながりはあるだろうから。


しかし、MSを作る計画であるRX計画。

スパロボのあれと同じようなネーミングだが、これを前倒しする事によって更に有利にもっていける。

ボール改修計画をRX計画に提供すれば、ブラッシュアップしてくれるだろう。

それに、ザクは無理だが、MSを作るために一つ試案がない事もない。

ようは、宇宙空間や地上で戦えればいいのだ。

ザクとのキルレシオを1対1以上に持っていくのは難しいだろうが、局地戦で挽回できる性能であればいい。

戦場の主体がMSに入れ替わるのは一年戦争後でも構わないのだから。

その間のつなぎになるMSを用意すればいいのだ。


そして、核バズーカ対策として用意できる案は2つある。

一つ目は敵艦隊をサイド1到達前に叩く方法。

もう一つは、核ミサイルを暴発させてやる方法だ。

どちらも難易度はそれなりに高いが、上手くすればザクを自滅させられるのだからやってみる価値はある。


これらの案を発表するかどうかは、会議の状況次第ではあるが、RX計画との連携はぜひとも取りたいものだ。

そのためにも、会議で凹まされない立ち回りをしなければな。





ジャブローにある大型の会議室の一つ。

そこには、ゴップ大将以下将官達や各派閥の将官が座り、来れない者はリモートで参加している。

各派閥もレビル派、いわゆる主戦派のレビル中将、ダグラス中将、ティアンム少将、コーウェン少将。

コリニー派、穏健派というか見下し派、コリニー中将、パウルス中将、ハイマン中将、エルラン少将。

ワイアット派というか艦隊派、ワイアット中将、バッフェ中将。


残りはほぼ軍政家というやつであり、ゴップ派が主流ではあるものの、対抗派閥も存在している。

俺はゴップ派に属している事になるので、一応最大派閥の一員という事になる。

ただ、軍政が出来る人間と言う訳ではなかったようで、サイド1の防衛という軍務についているわけだ。


因みに、彼らのメンツは他メディアに出ていた者もいるため、純粋なアニメのメンバーでない事は間違いない。

一応、アニメ以外で知っている将軍としては。


ダグラス・ベーダー中将は地球連邦軍第6艦隊司令官、レビルの死後ア・バオア・クー戦を引き継ぎ猛将と謡われる。


フリードリヒ・パウルス中将はヨーロッパ方面司令官、戦争を消費活動と目している危ない思考の持ち主。

一年戦争においては命を消費してでも郷土防衛をするよう兵員を鼓舞した。


ハイマン中将はアフリカ方面軍司令官、ジャミトフと被っているので紛らわしい。

スペースノイドに対する差別思想を持つ、大兵力を投入しアフリカにおけるジオン掃討作戦の指揮をとった。


バッフェ中将は連邦海軍幕僚長、常に前線に立ち兵を鼓舞する昔ながらの軍人気質を持った人物。

財閥一族の出身で通信業や運送業とも大きな繋がりを持っているそうだ。


彼らはそれぞれ派閥に影響力を持つ重鎮ばかりだ。

中将が多いのも、それだけ重要な会議だと目してくれているのだから、ありがたい話ではある。

説得のほうは資料の力で何とかごり押ししていくしかないだろうな。


「司会進行役は彼、ヤシマ少将にお願いするとしよう」

「……その前に少し、いいかね?」


動いたのはレビル将軍、流石の貫禄だな……俺にはきついプレッシャーだ。

だが、ひるんでいても仕方ない、レビル将軍の眼光をまっすぐ受け止める事にした。

感じる圧力は流石の一言に尽きる。

俺がゴップ派に属しているからだと思われる。


「君はジオンが動く確証があるのかね?」

「そうですね……持ってきた資料ですが、これを見ていただけるでしょうか?」

「ふむ……ッ!?」


幸い資料には事欠かない、

ジオンを多方向から観測しているため、大量の映像資料がある。

まあ、役に立たない資料が大半だが。

しかし、敵の艦隊規模やMSの配備状況、及び要塞化した隕石コロニー等一通り資料はそろっている。


「裏付けはあるのかね?」

「軍の情報で裏付けがあるものの方が少ないのでは?

 兵達を出頭させてそれらの内容について話させる事は可能ですが。

 他のルートでの情報に関しては、あなた方の方がよくご存じのはずだ。

 裏付けを取るのはむしろ、そちらの仕事かと思います」

「……ッ! ……わかった」


レビル中将は意見を下げた。

ジオンに関する情報を入手していないのは、ここにいる軍人たちの大部分に共通するものだ。

エルランと関係者だけは別かもしれないが、どのみちそれを口に出しはすまい。

情報硬度が低いと責める可能性はあるが、どちらにしろ押し切るしか方法はないだろう。


「さて、資料は行きわたったかと思います。

 こちらで独自に調べたジオンの現状をお話したいと思います」

「先ほど信用できないと決まったのではないかね?」

「いいえ、この上なく情報硬度は高いです。

 仕事をしても報われない情報部よりはね」

「……どういう事かね?」


エルランの突っ込みに関して俺は疑惑で返す。

鋭い視線を返してきたが、それに対して俺は肩をすくめるにとどめた。

あえて口には出さない、出しても証拠がないからだ。

それでも、睨む視線は消えないが、知った事ではない。

どうせ俺は直ぐにいなくなる、彼がどう思おうと知った事ではない。

それに、こちらにいる間はゴップ大将の目が光っている以上俺をどうこうできないだろう。


「さあ? ただ、これらの情報は多数のサイドに散らばって電子望遠鏡で拡大撮影した写真です。

 全く近づいてはいないですが、サイド3周辺、及び彼らの活動範囲はほぼ把握しています。

 現在ジオン公国を名乗る者たちの展開する軍勢は、サイド3内において艦隊326隻。

 アステロイドベルト近辺で82隻、サイド1に向けて加速中の隕石コロニーに33隻。

 月の近くに向けて加速中の隕石コロニーに38隻確認されています。

 もちろんあくまで今まで確認できた範囲なので、これで全部ではないでしょうが」

「確認しているだけで450隻以上か……いちサイドの保有する艦隊としては多すぎるな」

「ええ、倍以上の人口を抱えるサイド1防衛艦隊が現状150隻である事を思えば、大きすぎる艦隊です。

 恐らく、出てきていない防衛用の艦隊等を加えれば600隻を超えるのではないかと予想します。

 さらに言えば、それらは連邦軍ではない訳ですしね」

「その通りだ」


連邦軍が抱える全艦隊を合わせても1800隻程度だ。

サイド1,2,4,5,6の合計でようやく850隻

サイド6は中立を宣言したため、連邦艦隊を追い出した。

そのためにルナツーには現在800隻の艦隊がひしめいている。

残る150隻はどこにあるのかと言えば、大部分がグラナダ基地である。

本来はサイド3を防衛するための艦隊だったのだが、サイド3を監視する艦隊となっている。

各月面都市はどうしているのかと言うと、規模の大きいグラナダとフォンブラウンを除けば艦隊は配備されていない。

フォンブラウンは戦場になる可能性の低さから20隻程度しか配備されていない。


「そして、アステロイドベルトでの訓練と思しき艦隊運動の途中で、電子望遠鏡では確認できなくなりました。

 広域の電波妨害である事はあきらかです。今までの演習においてこれらの事象は毎回起こっています。

 そして、私が地球へ降下する際において、奇襲を仕掛けてきた敵艦もまた同様の電波妨害を行ってきました。

 これらの事から、私の持ってきた情報は情報硬度が高く、ジオンにおいて邪魔であると考えられます」


まあ、証明にはならないが、それでも言い負けるのは問題だろう。

押し通す力は軍において必須でもある事だしな。


「それで、どの様に対策すべきと考える?」


次の質問者はバッフェ中将。

今までの成果と延長線上の話をする必要があるな。

ここからが正念場と言うところか、連邦が生産体制をつけてくれなければ自前で用意できる分だけになってしまう。

そんなので逆転等夢のまた夢だろう、ジオンの核バズーカ攻撃に対して確実に防ぐ手も急ぐ必要がるっていのに。


「お手元の、資料の一つである生産準備表を確認してください。

 それらが、私の計画している対ジオン兵器達です」

「セイバーフィッシュ及びトリアーエズ強化案、ブースター計画?

 作業用宇宙ポッド改修によるボール改計画……。

 小型MSRG−35E改修によるMS戦力化計画。

 モビルアーマー開発計画?

 艦隊強化案?

 随分と大量の計画を練っているようだね」

「はい、現在ジオン軍の主力兵器であるザクはザクUに量産体制が移行しつつあります。

 ザクUはザクTからパワー、スピード、旋回力等全体的に1.2倍程度強化されている事が確認できています。

 ザクのキルレシオは通常トリアエーズに対し1対3で勝利出来る事が確認できています。

 ザクUなら更に開いて1対4となる可能性が高いでしょう。

 そして、広域電波妨害状況下において誘導兵器が使えない事を鑑みれば、トリアーエズは火力がほぼなくなります。

 正面機関砲では傷つけるくらいが関の山でしょうし、セイバーフィッシュでも倒すのは厳しいと言えるでしょう。

 そこで最初に考えたのが速度及び武装強化が可能なブースターを追加する事で戦力を維持する方策です」


ブースター計画の骨子と性能を騙りながら周囲の反応をうかがうが、今一反応に乏しいようだ。

やはり、資料だけでは信用ならないか……。

一応レビル将軍は反応を示しているから、有効性をある程度理解してもらっていると考えられる。

しかし、票をある程度とりまとめてもらっているゴップ派ですら反応が薄い。

ジオンを脅威と考えていないのだろうか?

いや、実際否定はできないところだ、現在の世界人口は100億人を軽く超える。

対して、サイド3の総人口はわずか3億人である、人口比較で33対1となるわけだ。

つまりは、ジオンがいくら強大であろうとも、資金力、資源、人材等あらゆる面で戦争にならない。


そう、現時点での連邦の大半はジオン公国を敵とは判断していないのだ。

せいぜいが、治安を乱すマフィアグループ程度の扱い。

そりゃ軍も動かないわけだ。


現状のプレゼンテーションはそれなりに印象に残るもの、だったと思うが、それだけでは動かない。

袖の下攻勢により軍政家はゴップ派が多く、それぞれに挨拶回りをしてあるから問題はないはず。

しかし、実働部隊の長達に関しては興味を示しているのはレビル派くらいのものだろう。

他の派閥はコロニー派はゴップ支持のあるこちらに対して反発が大きい。

軍政家の反ゴップ派閥と組んでいる可能性がある。

そして、ワイアット派は無関心と言ったところか。


「口先では何とでもいえるだろう、君の家が売り込みたい商品はなにかね?」

「捉え方は心外ですが、ジオンのモビルスーツに対抗するための計画があると聞いています。

 そこに加えていただきたい計画ならいくつか」


パウルス中将に促されるような形で、俺はレビル中将肝いりのRX計画に売り込みをかける。

まあ、既に草案そのものは送ってあるので驚かせる事が出来るかと言われると難しいが。


「先ず、ボール改修計画。モビルポッドを改修する事で宇宙専用の機動兵器とします。

 これとブースターは試作機が既に届いているため、問題なく使える事を保障します。

 パイロット達による実働及びシミュレーションデータを送っておりますのでご確認ください」

「ふむ……ボールとやらのほうはスペックの割には安く仕上げているが、ブースターはそうでもないな?」

「それは新型核融合炉のせいですね。しかし、それによるメガ粒子砲の威力は砲弾とは比べ物になりません。

 それに、ブースターによる加速及び航続距離はブースターなしに対し1対5のキルレシオが可能です」


基本性能においては、アニメのコアブースターとそう変わらない。

ただし学習型AIがついていない分、現在進行形で運動性が上がっていくというわけにはいかない。

機動パターンは今までのシミュレーションや実働を元にブラッシュアップしていくしかない。

だがそれでもこれが量産されてセイバーフィッシュの頭数だけでもそろえばかなり戦いに影響するだろう。

2門のメガ粒子砲は、撃ち尽くしても核融合炉からエネルギーを補充できる。

MSなら打ち尽くした時に機動力にも影響が出るがブースターは基本水素燃料を放出して飛んでいる。

つまり、核融合炉のエネルギーはメガ粒子砲主体となり本体出力低下等の影響は出ない。

撃ち放題とまではいわないが、エネルギーが回復するので補給を必要としないのだ。

まあ、ミノフスキー粒子の偏光力場を利用している関係上コーティングが剥げると使えなくなるが。


「それで、最後のドラッケンEとやらの戦力化だったか?」

「はい、最初からザクを上回るものを開発するにはザクの鹵獲が必要になります。

 もしくは設計図の確保か、どちらも現状では難しいでしょう。

 戦争が始まればその機会もあるでしょうが、被害が出てから、つまり後手にまわってしまいます。

 ならば、代用品として使えるものを先ず用意すべきでしょう」

「それがこれか、しかしサイズが5mでは18mのザクに対抗する事はできないだろう?」

「ドラッケンEの性能は確かに大きくありません。

 ただ、サイズの関係でコロニー内等での戦闘になった場合、役に立つでしょう。

 そして内部に収められないものは外部につければいい。

 単体での宇宙空間移動能力は大きくありませんが、ブースターの上に乗る事が可能な設計にしています。

 武装の制御も可能になっています。また、ゼロ式無反動砲の搭載により、火力もある程度確保可能です」


無反動砲、弾丸を発射するタイミングで反対側の炸薬を爆発させ発射の衝撃を相殺する砲である。

5mしかないドラッケンEが相応の火力を出すには大きい投射武器が必須だ。

機体を巨大化するという手もあるが、ノウハウがない状態でやっても上手くいかない。

ザクを手に入れるか設計図を手に入れる必要がある。


一から作っていく以上段階を追って大きくしていくしかない、となると火力が不足する。

火力を補うためにはバズーカよりも大きい兵器が必要になる、ザクマシンガンよりはマシな火力にしないといけない。

構造上連射はできないのだから、ザクマシンガンの倍以上の火力が必須だ。

となると発射の反動は機体の制御ではどうにもならないレベルになってしまう。

その対策となるのがこの兵器というわけだ。



「ドラッケンEをベースに大きくしていく以上、当初はどうしても無理が出るでしょう。

 早期にザクを鹵獲し、反映させていくしかないと思われます」

「しかしね、モビルスーツとやらは必須なのかね?」

「敵の使う強力な電波妨害の中で戦うためには目視攻撃の自由度が必須だと思われます」

「目視攻撃の自由度とは?」

「敵の使う電波妨害に関しては、こちらの冊子に書かせてもらっています」


エルラン少将はどうしても俺の情報の信頼度を落としたいのだろう。

だが、対策は練ってきている。

ミノフスキー粒子による電波及び短波光線の遮断についての冊子を出す。

今までこういう使用法がなされていなかったのには理由がある、ミノフスキー博士が隠したのだ。

ジオンと連邦の戦力差ならそれでも勝てると思ったんだろうが……。

核バズーカに関しては知らなかったのだろう。


「検証は出来ているのかね?」

「はい、冊子の方に結果を書いています。

 しかし、それを見るまでもありません、マゼランの核融合炉を見れば一目瞭然でしょう。

 核融合炉に使われている機器のほとんどがミノフスキー粒子でコーティングされているのだから。

 放射線や紫外線といった有害な光線を遮断しているのがわかるはずです。

 それに核融合炉内部では通信等がつながらないため、壁に設置してある有線の電話を使うでしょう?」

「それは……」

「そういう事です。ミノフスキー粒子には色々なものを遮断する効果があるという事ですね」

「だが、電波を遮断しているのがミノフスキー粒子かどうかはわからん!」

「電波を遮断しているのがミノフスキー粒子である事は私も聞いている」

「は?」


横入りのように、レビル中将が話に入ってきた。

エルランはなんとか取り繕おうとしているが、どうやら言い返せないようだ。

流石は天下のレビル将軍と言ったところだろうか。


こちらとしてもありがたい。

RX計画の中に組み込んでもらえる可能性が出て来たという事だから。



それから時間ほど色々な説明を行ってどうにか会議は終了する。


流石に疲れた……。












あとがき


一応序盤の山場である、ジャブローの偉いさんに伝えるを乗り越えました。

とはいえ、サイド1の窮状とか、グラナダのやばさとか、サイド2についてとか、端折った所も多いですが。

それもやると前後編にするしかないですしね。


また、当然ながら地味過ぎる挨拶回り(買収)等は書いておりません。

こういうのも金がものを言いますな・・・ほんと。


本格的な開発等はまだ先なので、そろそろサイド1の方へ戻るべきかなと考えております。


投稿ペースが遅いので、なかなか進まないですがこれからもお付き合い頂ければ嬉しいです。



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