各隕石コロニーらが地球圏に到達したのを見計らい、ジオン艦隊は前進する。

サイド1に向けて進むのはサイド3とクラナダに駐留させている艦隊を除く全て。

警戒のために周辺に展開していた船も根こそぎ動員した。


艦隊司令はドズル・ザビ。

艦隊は先ずグワジン級戦艦が5隻、総旗艦グワラン他、グワリブ、グワメル、ガンドワ、アサルム。

大型空母ドロス1隻

チベ級重巡洋艦40隻

ムサイ級軽巡洋艦600隻

輸送艦(バプア級、ヨーツンヘイム級等)100隻

という陣容である。

艦隊を見る限り、サイドTの戦力と砲撃戦をすれば互角がせいぜいのレベルだ。

しかし、搭載機でそれを補っている。


MSは主力としてザクTを1300機、指揮官機としてザクU500機。

そして突貫でリミッターを付けたヅダを200隻、一部の望むパイロットに渡している。

総数2000ものMSを搭載している。

更に宇宙用複座型戦闘爆撃機ガトルを1000対艦攻撃用に配備している。

月面にあった旧式突撃艇の改修はまだ始ま他ばかりであるためジッコは配備されていない。

陣容は旧式主体であるものの、ミノフスキー粒子下での制圧力は圧倒的になるはずであった。


「聞けい! サイド1には我らの理想を阻む元凶がいる。

 ジオン公国独立のために、奴らを消して許すな!

 サイド1壊滅作戦開始する!」


ドズルがそういうと同時に、艦隊の周辺にソロモン、アクシズ、ペズン、ロードスという4つの隕石が飛来する。

ソロモン、アクシズはサイド1に向けてさらに前進を開始し、ペズン、ロードスはそれらから距離を取って追従する。

ジオンは当初予定していたより少ない戦力を補うために隕石コロニーを要塞化して前線基地とする事にしたのだ。

大型のソロモン、アクシズは艦砲射撃に対する壁としての役割も持つ。

ただしア・バオ・アクーはサイド2側に置かれたためこの場にはない。


『壮観ですな』

「……後は敵側のMS対策がどの程度のものか、判断するのはそれからだな」


通信を開いてきたコンスコン少将に対しドズルが返す。

彼は若干27歳の艦隊司令だ見た目はともかく若すぎると言っていい、コンスコンはその補佐を務める人間だ。

そんな彼がこのタイミングで通信してきたのがお世辞のため等という事はない、彼が本当に言いたい事はわかっていた。


各サイドの壊滅作戦、これはジオン独立のための戦いではあったがそれだけのための戦いではない。

例え独立に成功したとしても、周辺勢力が全て地球連邦の管轄下にあるサイドのみでは商売すら成り立たない。

ダンピングや関税により干上がらされてしまう可能性が高いのだ。

そうなれば、再度連邦に頭を下げなくてはならず、独立後であればある程度の保証すらない。

最低限連邦以外の勢力で月周辺の経済活動が可能にしておかねばならない。

それが表向きのジオン軍に対する発表であった、それも核攻撃などを行う事を知っている人間に対してのだ。

軍部でも実働に関わらない人間や一般人には何も伝えていない、

サイド3は外部との経済活動はほぼ政府を通しているため一般人が本当の事を知ることはない。

それは負けた時に国民に責任が行かないための保険である。

ここまでが表向きの作戦の事情だ。


だが、作戦の根幹に関わる事になるザビ家の人間(ガルマを除く)と一部の将官は知っている。

この戦いで反ジオン勢力の基盤そのものをボロボロにし、ジオンが管理しやすい程度まで人口を減らす。

実質的にザビ家主導による世界支配のための作戦である事を。


現状とりあえず裏でジオン側につく事を明言しているアナハイム率いる月勢力とサイド6は攻撃を行わない。

しかしそれも今の所はだ、月は最近混乱しており場合によっては追加で壊滅作戦に入れる可能性がある。

サイド6もジオンの軍事力を前に風見鶏を決め込む事にしただけだ。

つまり、最終的には世界の人口の7割以上を殺す事になる可能性すらあった。

眩暈がする数字だ、悪魔ですら生易しい。


ドズルとてこの様な作戦に賛成したいわけではなかった。

だが、サイド3の現状は既に詰んでいると言っていい。


連邦の圧政等と言っているが、それにも理由がある。

実の所宇宙に上がる時の契約として何世代かかろうとコロニー建造費を納める事を約束したのが始まりだ。

つまり、サイド3に限らずコロニー市民は住んでいる場所がレンタルでしかないのだ。

コロニーを自前で建設する事が出来る様な一部の企業や金持ちを除けば、毎年建造費の一部と利息を払い続けねばならない。

更には、コロニーに住む以上、維持修理は必須であり空気も洗浄し循環させなければならない。

それらが全て税として取り立てられる事となれば自動的に税が高額化するどのコロニーも2〜3割は税が高くなるのだ。


それでも他のサイドはそれなりにやってはいた、しかし、サイド3は月の裏側という立地の悪さがあった。

そのせいで流通が悪く輸出入する品は高くなる。

また、初期移民だったため閉鎖型コロニーが多い事も問題だった。

ソーラーによる発電が開閉型よりも少ないのだ。

このため、その分を核融合炉で補わねばならずその維持のため電力の高額化が起こっている。


つまりそう、サイド3は他のサイドと比べても生活が厳しい。

その厳しい生活の中で爆発的人気を獲得した男がいた、それがジオン・ダイクンだ。

彼はニュータイプ論を掲げた、何かと言えば結局の所俺達は新しい人類で高尚なのだと言う程度だ。

分かりあう事のできる高度な人類、そんな理想論によって団結したサイド3市民は熱狂的だった。

それだけ生活のうっ憤が貯まっていたのだろう。


しかし、ジオン・ダイクンは任期を全うする事もなくこの世を去った。

どの勢力が行ったのか、それをドズルは知らない。ありそうなのは連邦かそれとも……。

結果とした残ったのは何時暴走するかわからない暴徒寸前のサイド3市民と警戒する連邦という構図。

このまま放置しておけばサイド3は荒れ下手をすれば暴徒鎮圧の名目で大量の死者を出していただろう。

そうなればサイド3は連邦から見捨てられた可能性すらあった。


それをまとめ上げたのが公王と成ったデギンであり、ギレンであった。

第一にジオン公国とする事でジオン・ダイクンの遺志を引き継いだ事とした。

これにより高まった権威を使い国家構造自体を再構築。

情報を集約する事による思想理念の統制、周辺サイドへの根回しや策謀等ギレンは手早く行っていった。


そして今サイド3市民達の貯まりに貯まった鬱憤をぶつける場としての戦場を用意した。

例えここでドズルが反対してももうジオン軍は止まれないだろう。

ならば、毒を食らわば皿までであるとドズルは考える。

自分が地獄へ落ちる事は仕方ない、いずれ生まれてくるだろう子供達が安心出来る世の中にするために。

そう思いを押し殺してドズルは目の前をにらみつけた。


「進撃開始!」


葛藤等は無かったかの如く、ドズルはサイド1方面をにらみつけた。



機動戦士ガンダム〜転生者のコロニー戦記〜





第十九話 戦端



あれから1時間ほど所定の位置につき終わった艦隊を眺める。

敵艦隊の捕捉は各サイドの電子望遠鏡部隊が行っている、

ミノフスキー粒子を散布しながら移動されると面倒だったが、幸いにしてそういう事はなかった。

粒子量にも限度があるため戦闘区域に近づいてからやる気だろう。

この分だとこちらにつくまで3時間といった所か、要塞を用意したのが足を遅くしている。

現状を鑑みてそろそろだと判断した俺は、複数個所同時にピンポイントで通信を行う。

一種のレーザー通信だ、現状電波妨害が無いため通信先の位置は問題ない。


「設定は終了したか?」

『はっ、しかし少々勿体ないような気もしますが』

「そりゃな、時間的に間に合うのならそれもよかったが、間に合わない以上次善の策で行くしかない」


時間さえあればと思わなくもないが、同時に時間が無いのはジオンも同じであると理解している。

ジオン軍は一年戦争でザクを8000機も運用したと言う。

戦争開始後は新型開発を行ったのでザクの生産は先細りしている点もある。

そのため本来の開戦時には6000機以上のザク系が投入された可能性が高い。

サイド3やクラナダ、ア・バオ・アクーの防衛にも残していただろうから実数3000〜3500といった所か。


それと比べれば現状は間違いなくザクUは生産開始から差ほど経っていない事もありそれほどの数はないだろう。

ザクは少なくとも1500機以上はやってくるだろうが、流石にまだオッゴは開発されてないよな?

とはいえ、ガトルやジッコが出てきてもおかしくはないからな数の優位はあまり期待できない。


だから、こちらの取る作戦はハラスメント作戦による敵の戦意低下を狙うべきだろう。

幸いこちらは防衛側、機雷などの敷設もすでに始まっている。

それと同様に、いくつか嫌がらせや度肝を抜くギミックくらいは用意してやった。

通信相手もそれの一つというわけだ。


「設定が終了したら順次離脱を開始してくれ」

『いえ、微調整もありますので戦場近くまでは続けるつもりです』

「君たちに機動兵器があるわけじゃないからな、戦場には絶対入るなよ」

『当然です』


なんか凄い熱意だな、どういう事だ?

まだジオンは虐殺を始めてはいないはずだが……。


因みに宇宙機雷には識別信号が組み込まれている、これを電波でやっても意味がないため赤外線でやる事になった。

試行錯誤はあったものの、機能は確認されているためセンサーの付け替えで業者がいくつも徹夜という様な事態になったらしい。

おわびと金の増額はしておいたが、ありがたい話ではある。












サイド1、1バンチ シャングリラ

現在暴動によって、政府機能が停止状態に陥りつつあるサイド1の首都コロニー

正式に移民された最初のコロニーであり、後に改修工事等を経て大型化したため人口3000万を要する。

しかし、旧式化が進んでおり首都コロニー移転の話が出ていたところであった。


そのためだろう、元々サイド1政府に対し不満を持つ市民が多く、裏でジオンが暗躍する温床となっていた。

首都である意味は大きい、各コロニーの産物は殆んどがシャングリラに運び込まれており商業が発展している。

更に流通に税を課すシャングリラ自治府(市議会の様なもの)の利益も大きかった。

移転となれば、シャングリラが寂れるのは目に見えておりその事に不満を持つ人間は多くいた。


ジオンはそこに付け込み、自治府と市民達に対し硬軟織り交ぜた抱き込み工作を行った。

その結果、サイド1議会の与り知らぬままシャングリラ市民は親ジオンが多数派を占める事となった。

そして、今に至る。


暴動は主に政府関係の建物及び宇宙港に集中しており、他の場所にはあまり集まっていない。

これは、市民そのものに対する敵対ではないという暴動側の主張による所である。



「宇宙港の占拠はまだ出来ていない様だな」

「どういう事ですか? ラルさん」

「ああ、宇宙港を占拠したならビーコンは出ないだろうからな。

 それに、警備艇等を出して入港を妨害するだろう」

「ですが……」


不安そうにするセイラにラルは頷き、艦橋にいる人間に言う。


「ああ、安全かどうかは別問題だ。ミノフスキー粒子の散布状況はどうなっている?」

「今急速に広がっています! 戦闘濃度まで後3分!」

「入港次第AT部隊の展開を急げ!」



揚陸用のコロンブスを使っての強制突入が必要になるかと思われたが、入港が可能な様なので入港する事となった。

ゆっくり入港するも特に爆発等は起こらず普通に入っていく事が出来た。

管制に従いドックに固定し、コロンブス改は扉を開いていく……。

格納ハッチの扉を。


『待て! 先ずは入港確認のための人員の受け入れを……』

「悪いな、急いでいるんだ」


そうしてハッチから現れたのは4m級のMS。

いや、ヤシマ少将命名AT(アーマードトルーパー)は重心の高さ似合わぬ高速機動で飛び出す。

踵部についている車輪はエンジン直結であり、パワーのある加速を生み出す。

新型バッテリーとガソリンエンジンの併用によるMSの運用。

僅か4mでは核融合炉が入らない事は解り切っていたため、当初開発は難航した。

元々のバッテリー駆動では戦闘機動をするにはパワー不足であり、戦闘可能時間も短い。

代用エネルギーが必要になり旧来からの安定した発電システムとトルクパワーを持つガソリンが選ばれた。

そして、エンジン出力の高さを生かし、車輪の回転に利用するシステムが考案されて現在に至る。


モーター音と共に現れたそれらの小型MSは続々と宇宙港内に展開していく。

30機程のそれらが港内に出現しきるより前にそれは現れた、緑色の18mの巨体。

そう、ザクである。

数は3機、とはいえ格納庫内をこのサイズの兵器が歩行して行き来するようには作られていない。

そのため、浮いたままほぼ一列になって入ってくる。


「やはりな、もう入り込んでいたか」

「あれがジオンのMSですか……大きいですね……」

「被害を出さずに制圧するのは厳しいかもしれませんな」

「そんな……」


ラルは小型MSのパイロットに部下達を使っていた。

とはいえ部下の数はそう多くない、ATのうち6機が部下で残りは連邦兵だ。

部下はこういった変則的な兵器による戦闘は得意としている。

何故なら元々ゲリラ屋だからだ。

しかし、連邦兵は元戦車兵がほとんど新兵よりはマシだがこういった戦いは得意ではないだろう。


「これより戦闘指揮を執ってきます。幸い私専用のATも用意されておりますしな」

「死なないでくださいね」

「当然ですな。ゲリラ屋の本領見せてやりましょう」


ニヤリという悪い顔で出て行ったラルをセイラは何とも言えない気持ちで見送った。

その後、陸戦隊の展開を指揮していたブレックスが戻ってくる。


「セイラ嬢か、ラル中佐は?」

「先ほどAT隊の指揮を取りに行きました」

「そうか。彼なら大丈夫だろう。それで君はどうする?

 このままブリッジで待つか、シャングリラ内部に突入するか」

「そうですね……、市街のほうに行きましょう。

 暴動を指揮しているのがジオン軍である事は明白です」

「ッ!? 今までその言い方は避けていただろうに」

「いえ、ザビ家が付け込んだのは事実ですが、父のやった事も今にして思うと無責任だったと思います」


彼女の父であるジオン・ダイクンは確かに宇宙市民に希望を見せた。

しかし、彼は具体的なプランを示したわけではない。

いたずらに連邦を刺激しただけで、それ以外の部分はからっぽだった。

政治家ではなく思想家と評される事が多いのはその為である。


それ故に、ザビ家が具体的なプランとして独立戦争を始めた事を批判しようにも立脚点がない。

幸いにして、ジオン軍が信用するに値しない理由の方はいくらでも出てきたが。

彼女の言いたい事はそういう事ではない。

このままでは世界は悪い方向に向かうのは目に見えていた。

不満だけが蓄積され、原因の究明や改善等が行われなければ不満は爆発し、戦争の絶えない世界になるだろう。


「戦争は終わらせなければなりません」


それが彼女の結論であった。







ラル中佐は各分隊を自分の部下達に率いさせ、自分は統率を行いながら単機で牽制をしていた。

自分は専用の青いATに乗り込み、囮を買って出ている。

確かに10倍いても質量的には敵わないが、宇宙港の凸凹した構造を上手く使ってヒット&ウェイを繰り返していた。


『それにしても、思ったより動きが良くないですね』

「当然だ、そのまま運んでいれば途中で発覚して戦闘になっているはずだ。

 つまり、分解して運んでいたという事」

『分解ですか、ザクをね、言われてみれば装甲に線が入ってる様な』

「つまり、このザクの装甲はツギハギだという事だ」


溝からグレネードで射撃して逃げるチームを横目にラルは突貫し、ロケットランチャーから発射する。

ザクの装甲は簡単に割れるはずがないのだが、爆発により一部が吹き飛ぶ。


「やはりか、ミノフスキー・イヨネスコ・核融合炉をそのまま持ってくるのはリスクが大きい」


分解した核融合炉を持ってくる事自体あり得ない話だが、見つかれば一発でダメになるだろう。

そもそも、当初案ではこういった暴動をする予定ではなかったはず。

後から持ち込まれたのなら、ヤシマ少将の張った警戒の目を掻い潜らないといけない。



『という事は』

「恐らくこちらと同じ様なエンジンだろう」

『そうなると、あのサイズでは長持ちしませんな』

「その通りだ」


同じエンジンで4m級と18m級を動かせば18m級のほうが先に動かなくなるのは目に見えている。

そして、10倍の数がいる以上動き回るのが難しいザクはひたすら削られていった。

だが連邦兵は何人かマシンガンや拳の直撃をもらい亡くなったりしている。

それでも、ザクはどんどん削られていき、とうとう追い込まれてしまった。


「ラストだ!」


こうして宇宙港での戦いは終結し、歩兵部隊がどんどん敵を確保していく。

組み立て式ザクは連邦のMS作りの基礎として研究される事になるだろう。

連邦兵の大隊に一通り引き継ぎを済ませたラルは小型MS隊を率いてセイラを追いかけるのだった。










あとがき



後半かなり端折ってしまいました。

ATとザクの戦闘って巨人との戦いみたいになるのできちんと作ると長くなりそうですし(汗

ATですが基本はモビルワーカーを装甲で覆い、モノアイの代わりに通常レンズや望遠、赤外線のついた複合レンズに。

ATらしくローラーダッシュが出来るようにしておきました、完全に趣味丸出しです。

八洲望も、そっちは見ていたという事で(汗


でも戦闘機動をするならパワー不足かと思いガソリンエンジンのハイブリッドにしてみました。

この時代化石燃料なんてもう使ってないので、残ってるのか心配ではありますが。

メイン武器はマシンガンかショットガンをお好みで、大物相手は無理ですが。

大物用にはグレネードやミサイルポッドを使うしかないですね。

もちろん囲んで戦う事が前提ですが、対MS戦も想定して作られています。


アームパンチはどうしようか迷っています。

個人的にロマンがあって好きなんですが、

ルナチタニウム製でもなければサイズも小さいため当てたら拳が砕ける気がするんですよね(汗

射程も密着でないと使えないからMS戦はきついというのもありますし。

どうするかなー。

次回においてはもう少し描写を頑張ってコロニー内戦闘をやってみようかと思います。


後、申し訳ないのですが今後の戦いでフラグを立て忘れた兵器が出てくるかもしれませんがご容赦を。

まあ、さほど難しい改修ではないはずなので多分、問題ないハズ……(汗



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