黒き蝗

輝鬼の世界に別れを告げてまた一歩と使命を果たしていくディロード一行。
来訪した次なる世界は…。

「で、この世界での役割は…」
「流姫の服装からすると…」
「……///」

現在、流姫はサッカーのユニフォーム姿だった。

「着替えてくる…///」

流石に恥ずかしくなったのか、家の中へととくさに入ってしまう。

「仕方ねえ、俺達でこの世界の事調べるか」
「それしかないね」

流姫無しで二人はあちこちに歩き回ってこの世界のことを調べるが、表層上この世界は今のところ大した事件は起きていないらしい。

「収穫ゼロ」
「参ったね、これは」

通りかかった公園のベンチで一休みする二人。
そこに、

『ギジュウゥゥゥ!』
『キシャアァァ!』

「ワーム!?」
「ワームってことは、こいつの世界か…」

廻は一枚のブランクカメンライドカードを取り出した。
そこには”GRAIZ(グライズ)”と記されていた。





世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?





廻はブランクカードをしまい、ベルトを装着して変身しようとする。
その時、一人の厳格そうな男が現れた。

「ワーム…俺が相手だ!」

男は腰に巻かれているベルトのバックルに何処からともなくやって来た黒色のイナゴ型メカをセットする。

「変身!」

≪HENSHIN≫

甲高い音声と共に重厚なアーマーが身を包む。

「あれが、グライズ。この世界のライダー…」
「ま、今は手を出さないでおこう。所詮相手はサナギ体だ」

二人はマスクドフォームでも十二分に対処できるサナギ体故に今は変身すること無く、グライズの戦いを観戦していた。

「フンッ!ハッ!テリャ!」

防御とパワーを誇るマスクドフォームはサナギ体をその鉄拳で倒していく。
だが、途中で生き残ったワームは脱皮を行って、テントウムシのような成虫ワームとなった。

「…キャストオフ」

グライズはライダーベルトに納まっているグライズゼクターの下向きとなっている触覚部分”ゼクターアンテナ”を上向きにした。

≪CAST OFF≫

身体を覆うマスクドアーマーは凄まじい勢いで飛散した。
アーマー飛散後、頭部から触覚のようなアンテナ…”グライズアンテナ”が定位置にまで伸びる。

≪CHANGE LOCUST≫

音声が発せられ、赤い複眼と黒色のライダーアーマーをその身に纏い、右脚と左腕にキックホッパーパンチホッパーのそれと同型のアンカージャッキが備え付けられている。”ライダーフォーム”となる。

「黒い…イナゴ?」

グライズのライダーフォームを見た信彦はそう言った。

「クロックアップ」

グライズはサイドバックルのスイッチを入れた。

≪CLOCK UP≫

するとワームも同時にクロックアップに入って二人は視界にすら映らないほどの超高速移動…クロックアップ状態となる。

クロックアップしたワームとグライズには通常の時間を生きる者全てが止まっているように映っている。
そのなかでグライズは勝負を一気に決めるべくゼクターの前足部分”ゼクターレバー”を動かした。

≪CHARGE≫

電子音がすると、ゼクター内部にため込まれたタキオン粒子エネルギーが右腕に送り込まれていく。

「ライダー、パンチ!」

ゼクターレバーを元に戻した。

≪RIDER PUNCH≫

右腕に送り込まれていたタキオン粒子は波動へと変換された。

「ハアァァァ!!」

――ズガッ!!――

必殺のライダーパンチによってワームは爆発する。

≪CLOCK OVER≫

それと同時にクロックアップの終了たるクロックオーバーが訪れた。

「成程、流石ってところか」
「……誰だ、君は?」

クロックオーバー直後に評価を下していた廻にグライズは問を飛ばす。

「お前と同じ仮面ライダーだ」
「仮面ライダー!?」
「…兎に角、積もる話はほかの場所でしよ」
「それなら、俺がいつも使っている廃工場がある」



***

案内によって二人はグライズこと雨原修(あまはらしゅう)が使っている廃工場に来た。
そこには彼の愛車と思われる、銅色のバイクが一台あった。聞くところによると、このバイクの名は”グライズエクステンダー”と言うらしい。

「それで、君達は異世界を幾つも旅していて、この世界にも足を運んで来たと言う訳だね」
「そうだ。この世界で何か変だと思ったことはないか?俺達のなすべきことが見つかるやもしれん」

廻の質問に修は少し間を置いて考えた。

「………一か月前に、俺をサポートしていた親友、星野明(ほしのあきら)……がワーム側になった」

それを聞いた瞬間に二人はかなり驚いた。

「俺達の役割はそいつをなんとかすることか」
「でも、どうしてワーム側に…?」
「わからない。あいつは子供のころから誰よりも優しく正義の味方を絵に描いたようなやつだったのに…」
「正義の味方…ねぇ」

修は苦い表情でいた。
廻はそれに対してどうすれば良いのか今一わからず、信彦は何か複雑な心境でいるような顔だった。

(信彦も昔色々あったからな)

秋月信彦は次元を越えるたびに同行する以前、暗黒結社ゴルゴムによって親友たる南光太郎(みなみこうたろう)と共に改造され、仮面ライダーBLACKと世紀王シャドームーンとして戦わされたことがあった。ゴルゴムは当時BLACKによって既に滅びたが、信彦にとってはシャドームーンとして生きていた間、多くの人たちを傷つけていた事実もあってか、彼にとっては思い出したくない過去だった。だが、それと同時に忘れてはならない過去とも言える。

「とりあえずはワームを片っ端から潰していけば、そのうち向こうから現れるかもしれん」

と言って廻は廃工場の出口にまで歩いていく。

「廻、本当に大丈夫なのかな?」
「俺達はグライド…雨原を助けるのがこの世界での使命。力添えくらいはしてやれる」

と、信彦の心配に廻はそう言った。



***

その頃、着替えを終えて流姫は家で信彦と廻の帰りを待っていた。

「…………暇ね」

と一人時間を持て余していた時、

――ガチャ!――

いきなり一人の男がドアを開けて入って来た。

「誰?人の家に入って来るならお邪魔しますくらい言うものじゃないかしら?」
「………」

男は返答すること無く、腰に装着されたベルトのバックルを開いてこう言う。

「変身」

その宣言と同時に銀色のイナゴ型メカをセットした。

≪HENSHIN≫

電子ボイスと同時に男の身体は緑色の複眼を覗かせるマスクドアーマーに包まれていった。

「仮面ライダー…!?」

目の前の男がライダーであることに驚くも、対抗する為にディガイドライバーをスタンバイする。

≪KAMEN RIDE…≫

「変身…!」

≪DI‐GUIDE≫

ライダーに向けて発砲し、撃ち出されたライドプレートが衝突して牽制効果を生み出した。
そして現れた像が重なり、ライドプレートが装備されてディガイドに変身する。

「ここじゃあまり動けないわね」

そう言ったディガイドはカードを一枚装填する。

≪ATTACK RIDE…EXTRA SLASH≫

刃はエネルギーを纏い、ディガイドはそれを利用しての鋭い突きを繰り出す。

「ドアァ!!」

ライダーはドアから家の外へと吹っ飛ばされた。

「勝手に入って来た罰よ」

≪KAMEN RIDE…G3-X≫

トランスドライバーにカードを装填することでディガイドは”DG3-X”となる。

「火力のあるやつを使ってやろうかしら?」

≪ATTACK RIDE…KERBEROS≫

トランスドライバーへのカード装填で手元にガトリングガン型武器”GX-05ケルベロス”が出現した。

――ズドドドドドドドドド!!――

凄まじい連射にライダーは必至になって耐える。

「長引かせるきないから、止め」

≪FINAL ATTACKRIDE…G・G・G・G3-X≫

ケルベロスの側面にハンドマシンガンのGM-01スコーピオン、円形に並ぶの銃口の中央にGX弾が合体してG3-X最強ミサイルランチャー、”GXランチャー”が完成する。

――ズドォォォォォォォォン!!――

引き金を引いた瞬間にGX弾が撃ちだされ、DG3-Xの勝利が決まると思われたが、

「キャストオフ」

≪CAST OFF≫

ライダーは攻撃命中直前にアーマーを飛散させてGX弾を防いだ。
キャストオフした結果、ライダーフォームとなり、マスクドアーマーに隠れていた銀色のライダーアーマーが露になる。両腕と両脚にはアンカージャッキが装備されていて、さらに頭から触覚のような物が伸びてきた。

≪CHANGE LOCUST≫

それを見た時、DG3-Xはディガイドに戻った。

「そうくるわけね…」
「…クロックアップ」

≪CLOCK UP≫

ライダーはクロックアップに入ると、ディガイドに攻撃を加えるでもなく、その場から去って行った。

「……あのライダーは一体?」



***

そして、逃げ去ったライダーは…。

「舞い戻ったか、タイラント」
「はい」

とある廃屋のなかでタイラントと呼ばれたライダーと初老辺りと思われる男の声がした。

「魔王の力はどうだった?」
「…私の前に現れたのは魔王の仲間、ディガイドです」
「ほ?、まあ良い。今一度聞くが、その力は?」
「強いです」

聞かれた通りに答える大乱と。

「お前がそう言うのならば、ディガイドやもう一人の仲間を含めて魔王ディロードは総じて手ごわい相手のようだな」
「………」

「だが、奴らには消えてもらう。我らワームの繁栄のため。
タイラント、ディロードの前にグライズの息の根を止めて来い」
「御意」

≪CLOCK UP≫

命令を了承してタイラントはクロックアップした。



***

再び修の廃工場。
今修はバイクの整備を行っていた。

――シュッ!――

「グライズ」
「!!?」

突然聞こえた声に修は声の主、タイラントに顔を向ける。

「お前を倒す」

タイラントは構えを取る。
しかし、修は変身しないどころか戦いを拒むような顔をする。

「止せ!何故おれたちが闘わなくてはならないんだ、明!!」
「………」



次回、仮面ライダーディロード

「止めてくれ明!」
「俺とお前は闘い合う…運命だ」
「悪趣味だな」
「きっと大丈夫。明を助ける方法はある」

”銀の蝗”

全てを救い、全てを砕け!

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