再会と別れ

オーディンとの一騎打ちから数日後。
世間ではオーディンとディロードの存在はテレビの生放送によって、未だに話題にされることが多い。
特にディロードの話題になると、ゲスト陣は口をそろえてこう言った。

「彼は、悪人ではないだろう」

と言う言葉だった。
ディロードの備える強大極まる力。それを危険視し、恐れる者もいる(特に怪人)。
だが、仲間を救おうと必死に戦い、敵であったオーディンとすら友情にも似た関係を築き上げる熱き心。彼こそ本当のヒーローという意見もあるほどである。

更にはディロードという存在の登場と戦いはこの世界に滞在するライダー達にとっても刺激的なこと、この上ないものになっただろう。



***

まあ、そんな前置きはさておき。
今回は劉子と和雄が暇つぶしがてら、缶ジュースを飲みながら散歩していた時のことである。

「ふ〜、暇ですね」
「ホント、暇ね」

廻・流姫・信彦は景綱達765プロダクションの手伝いをしていたが、この二人はその話の来る少し前に散歩に出かけてしまったので、廻達が働いていることすら知らない。

『おい、そこのカップル。こっち向け』

品の無い声が聞こえてきた。
振り返るとそこには、スコーピオンファンガイアとフライオルフェノク。

「誰がカップルだって?」
「勘違いしてますよ、完全に」

と言いながら二人はツールを装着。

「「変身ッ!」」

≪NEGA FORM≫

「お、お前等は!」
「ディロードの仲間!」

自分たちが対峙していた者の正体にようやく気付いたようだ。

「そうよ、オレ達「オーディンに磔にされたうちの二人だ」………」
「あぁ、負けた連中だ」
「………」

フライオルフェノクとスコーピオンファンガイアの実直な物言いに、二人のライダーは黙り込む。
ヤバいオーラを出しながら。

≪FULL CHARGE≫

いつの間にかデンガッシャ−・ロッドモードを手にしていたネガ電王。
フリーエネルギーの伝達されたそれを、まずスコーピオンファンガイアに投げつけると、六角刑の亀甲状エネルギーが発生し、対象を捕縛。
ネガ電王はジャンプすると、空中前転を行い右足を突き出す。

――ガシャアァァァァァン!!――

砕け散る音が鳴り、”ネガソリッドアタック”と”ネガデンライダーキック”の連撃が決まる。

「ひ、ヒィィィィィ!!」
「逃がさねえぜ…!」

怯えて逃げるフライファンガイアにネガ電王は再度ライダーパスをターミナルバックルにセタッチ。

≪FULL CHARGE≫

「オレの必殺技…!!」

ソードモードを手に構えるネガ電王。
オーラソードは本体と分離、フリーエネルギーと繋がった状態でネガ電王は右から左へ、左から右、ラストに真上から猛スピードで必殺の”ネガストリームスラッシュ”を決めた。

「…あれ、見せ場なし?」

ネガ電王一人に敵を片づけられたG4は一人虚しく、そう呟いた。
その直後だった。

≪KAIZIN RIDE…NEWT IMAGIN≫
≪KAIZIN RIDE…GECKO IMAGIN≫

濁りきった電子ボイス。

「「!!?」」

二人は驚いた。
なにしろそこには、二体の怪人。
ニュートイマジンとゲッコ−イマジンがいるのだから。

「ここは私が!」

G4はギガントを出現させると、一度にミサイルを二つ発射してゲッコ−イマジンを爆破すると、続けざまにニュートイマジンに照準を合わせ、残り二つのミサイルも発射。

相手が弱かったこともあってか、二人は楽勝だった。

「あのイマジン達は一体?」
「電子音も聞こえましたよね…」

二人は、これから訪れるかもしれない新たな事態を予見し、不安を募らせていた。

「おい!君達!」

突然にも聞こえてきた男の声。
それは…。





世界の救済者、ディロード。幾つもの世界を巡り、その心は何を映す?





翌日の765プロダクション。

「俺達がライブ!?」

廻の叫びが響いた。

「はい。折角ですから、廻さん達に一度舞台に立って欲しい。と言うのが僕達の意見です」

景綱は爽やかスマイルでそういった。

「ライブ、ねぇ…」
「あんまり目立つことは…」

流姫と信彦は返答を渋る。

「「………」」
「おい、お前らは?」
「「………」」
「聞いてんのか?」
「「ハッ!!」」

先程から上の空状態だった劉子と和雄は廻の呼びかけで気づいた。
まだ先日のことが気になるのだろう。

「そう…ですね」
「ボクはちょっとなぁ…」

二人も返答を渋った。

「……仕方ない。俺が出てやるか」

結果として、意外にも廻がライブに参加することとなった。
プロダクションのメンバーは「え…?マジ?」みたいな顔をしていたが、廻がそれを瞬時に見抜き、「何が言いたいんだ?」とでも言うような顔をして返すと、皆は「何でもありません」と答えた。



***

昼ちょっと前ごろ、早速ライブの準備の為に一同はせっせと働いていた。
特にライブに特別出演する廻は…。

働いている間にあっという間に時間は過ぎて行き、昼食を食べることとなった。

「せ〜んせ♪あ〜ん♪」
「頂きます♪」
「十兵衛さん♪」
「うむ♪」

この二組のバカップルは相も変わらず、イチャイチャしている。
それに対抗しようと…。

「廻♪ほら、口開けて♪」
「ボクが食べさせてあげるよ♪」

流姫と劉子は廻に身体をくっつけて食べ物を食べさせようとしていた。当の廻本人は鬱陶しそうだが。

其の時…。

「すいませーん!誰かいませんかー!」

棒読みな呼び声が。
廻がその対応に向かう。

「はいはーい、誰だ?……お前は…」
「久しぶりだな、廻」

ドアの向こうに居たのは、モスグリーンの髪をした一人の青年。

「何故お前がここにいる……(りょう)!!」

その大声に他のメンバーも驚き、廻の方に視線を集中し、流姫は廻の叫んだ名前に最も反応していた。



***

「…という訳で、廻と流姫の旧友…坂木了(さかき りょう)だ。ま、今度ともよろしく!」
「あの……ちょっといいかな?了たん」

会って間もない内から既に”たん”付けで呼んでいる夏海。

「なんだい?」
「廻さん達の旧友って言ってたけど、了たんもライダーなの?」
「その通り」

了は懐から刀型のツールを少しだけ見せた。

「了…お前いつの間に仮面ライダーの力を…」
「…俺達の故郷の最期の日…」
「………」

廻・了・流姫。
同じ世界出身の彼らは忌まわしき日のことを思い返した。

「あれ…なにこのシリアスな雰囲気?」

唐突に現れた了が原因して、辺りの空気は真面目なことこの上ないものになっていた。



***

夕暮れの黄昏時。
ライブ会場には多くの人たちで賑わっていた。

「さて、それじゃ行きますか」

黒を基調とした衣装を着こなす廻は気合いに満ちていた。

「お前がライブとは…変わったな、廻」

舞台を前にする廻を目にした了は旧友のかつてとの変化に、昔の記憶と照らし合わせていた。

「そう、廻は変わったわ。色々な意味で…」
「…そうか」

流姫の肯定する言葉に了は僅かな声を出した。



***

今日のライブで特別に出る廻は他の765プロのメンバー達の出番が終わった後、つまりトリの舞台で景綱とタッグ出演することになっていた。
観客一同も、見たことも聞いたこともない廻の名前に疑問を感じていたが、何分個性の強い765プロのライブなので大して気にもしなかった。

そして、あずさの”Journey through the Decade”が終わると、とうとう景綱と廻の出番となった。

「廻さん、出番ですよ」
「ああ、そうだな」

本番前で緊張しているのか、無表情となっている廻は静かに答える。

二人の歌う曲は”W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜”。

「さあ皆さん!今日は僕達の親友を招いた特別ライブ!骨の髄までしっかりと楽しんでください♪」

先にステージに上がった景綱がそういうと会場はまだ見ぬ廻の存在に期待して盛り上がった。

「それじゃあ、出番ですよ!!」

景綱の呼び掛けによって、廻が登場する。
しかも、超人的なジャンプ力で、舞台袖から一気に景綱の傍らに来るという方法で。

予想外の登場方法に観客は歓声を上げた。
特に女性客は廻の美しい容姿に黄色い声を上げまくる。

廻は適当に挨拶を済ませると、景綱と頷き合って歌い始めた。

それは未だ、廻は出会っていない仮面ライダーを物語る歌。
そして、何れ景綱と夏海の二人がなるであろう仮面ライダーの歌。

二人は声を揃え、見事な歌声を披露する。

二人は声を発するごとに会場は熱気に包まれていく。

そして、ラストスパートの終わり。

曲が終わり、会場は歓声しか聞こえない状態と化し、歌った当人たちも満足感のある爽やかな表情を浮かべていた。



***

ライブが終わり、景綱と廻は近くの公園のベンチに座っていた。

「お疲れ様でした」
「おぉ」

二人は手にカップ酒を持ち、一緒に飲んでいた。
そこへ、了が現れて廻の隣に座った。

「よ。…上手く行ってよかったな…廻」
「そいつは…ありがとよ」

了は廻に祝福の言葉を投げかけた。

「あの、了さん」
「ん、なにかな?」
「貴方の変身する仮面ライダーって…?」

未だに了が変身するライダーは廻も姿どころか名前すら知らない。
故に景綱は了自身に問うた。

「それなら…もう直ぐ見られる」
「「…?」」

了の言葉に二人は首を傾げた。
そして了は後ろを指さす。そこにいたのは…。

他にも仮面ライダーベルデ、仮面ライダードレイク、仮面ライダーレイ。
そして、大きな二つ、周りに六つの小さなものの計八つの黄色い複眼。その姿は忍者を連想させた緑色のアーマー。トリッキーな戦法に長けた仮面ライダースパイズだ。
その後ろには鳴滝がいた。

「鳴滝!」
「鳴滝さん…!」
「鳴滝のおっさんか…」

「終焉者ディロード、片倉景綱。そして”開闢者(かいびゃくしゃ)”。……丁度良い。三人まとめて葬ってやる!フッハハハハハ!!」

鳴滝は笑いながら消えて行った。

景綱と廻は変身ツールを取り出す。

≪KAMEN RIDE…≫

「「変身ッ!」」

≪DEROAD≫
≪STANDING BY…COMPLETE≫

デルタとディロードが姿を現す。
しかし、了がそれに待ったとでも言うかのように前に出た。
二人は何故か息をのんだ。

「二人とも…見てろ。俺の力を!」

了は懐から刀型変身ツール・ディルードライバーを取り出した。
そしてカードを刀身の根元部分に備え付けられた金色のカバーをずらして装填口を露にする。

≪KAMEN RIDE…≫

濁りきった電子ボイスが鳴った。

「変身…!」

≪DI‐RUDO≫

了は電子ボイスの鳴った直後に刀を構えて、切先を天空に向けてグリップのスイッチを押した。
すると、切先からライダークレストが打ち出されると同時に幾つものヴィジョンが現れ、了の身体に重なっての鎧となり、最後には九つのライドプレートが頭部にへと扇状に突き刺さる。
無個性な白色のアーマーはたちまち漆黒に染まった。

「ディルードだと…!?」
「…!?」

二人は了の変身したライダーに驚くしかなかった。

「とどめはお前たちに譲ってやるから、俺は奴らを消耗させといてやるよ」

≪KAIZIN RIDE…TITAN≫
≪KAIZIN RIDE…KERBEROS≫
≪KAIZIN RIDE…SATORI≫

ディルードはKZR(カイジンライド)によって三体の怪人を召喚した。

「な!?」
「アドベントやリモート以外にも怪人を呼び出す方法があったのか…!?」

廻はアドベントカードをベントインすれば契約モンスターを降臨させ、ラウズカードのクラブ10のカードを使えば封印されたアンデッドを解放できることを知っていた。解放したのが下級アンデッドなら操ることもできた。

しかし、ディルードの力はそれとは全く違うもの。

召喚されたティターン。ケルベロス、サトリは三人のライダーに戦いを仕掛ける。
ディルードはその様子を楽しげに観察していると、一枚のカードを刀身に装填した。

≪FINAL ATTACKRIDE…DI・DI・DI・DI‐RUDO≫

その音声に気づいたスパイズは自分のライダーブレスにある蜘蛛変身ツールの”スパイズゼクター”に命令を出した。

その時、スパイズゼクターから金属性の糸が吐き出され、ディルードに向かおうとするが、既にベルデを片づけていたティターンによって防がれてしまう。

スパイズは二丁のゼクトクナイガンを取り出して白兵戦に持ち込んだ。
途中ティターンは姿を消す能力でスパイズを惑わしたが、あちこちに糸で蜘蛛の巣状の足場を作り、手裏剣やクナイを飛ばすことでティターンの居場所を察知。

≪RIDER BRAKE≫

そしてスパイズゼクターのスイッチを押してゼクターから糸を射出し、ティターンを含め既に他のライダーを倒していたサトリとケルベロスごと捕縛。

糸を引っ張ると同時にタキオン粒子の波動エネルギーによって強化された脚力による必殺の一撃こと”ライダーブレイク”が炸裂した。

だが………。

「御苦労さま…。さようなら」

召喚怪人を倒したのも束の間、ディルードの必殺斬撃”ディメンションフラッシュ”によってスパイダは消え去った。

「ふ〜、悪いな。全部倒しちまった」
「凄い…!」
「………」

ディロードとデルタはディルードの実力に眼を疑った。
いや、正確に言うと我が眼を疑っていたのはデルタだけだが。

「んじゃ、もどろっか」

陽気な声でディルードはそう言った。



***

翌日の昼。

「もう行っちゃうんですか?」
「ちょっと寂しいな…」
「仕方ないわ。旅をすることがアタシ達の生甲斐であり必要なこと何だから」
「そうそう、それにもう会えない訳じゃないし」

あずさと千早と別れの挨拶をする劉子と流姫。
765プロのメンバー中、この二人は流姫と劉子と一番仲良く接していたと言っていいだろう。

「和雄さん、縁があったらまた会いましょう♪」
「えぇ、ありがとうございます」

翔一やと和雄も別れの挨拶を交わしている。

「また会える時を楽しみにしているぞ」
「そうだね、また会いましょう」

信彦は十兵衛と別れの挨拶を。

「一緒にまたライブできるのを楽しみにしていますよ」
「そいつはどうも」

廻も片倉夫婦と別れを済ませた。



***

家に戻り、ドアを閉めた瞬間に次元の壁が出現した。

「お迎えが来たね」
「そうみたいですね」

その言葉を言ったのは劉子と和雄だった。

「お迎え?」
「彼らの居るべき世界へと帰る時ってわけ」

廻が首をかしげると、了がいつもの陽気な声を出した。

「どういうことだ?」
「彼らの世界はちょいとヤベーことになってる」

今度は真面目な声。

「怪人達がリュードの世界で…これまでにない規模で暴れているらしいんです」
「ボクのネガの世界も怪人達が規律を失って好き勝手してるみたいで…」

和雄と劉子は暗い声でそう言った。

「………そうか。ならば仕方ない」
「ちょ、廻!?」
「そんなあっさりと!?」

信彦と流姫は廻の反応に衝撃を受ける。

「俺はいるべき世界を失った。だから、帰れる場所があるというのは、気づかない者は多いが幸せなことだ。…帰るべき場所を守るのも仮面ライダーとしては立派な役目じゃないのか?」

それを聞くと、二人は黙ってしまう。

「行って来い。そして、お前等の居場所を守って来い」

優しい顔で廻はそう言った。

すると、劉子が突然流姫の目の前でこう言った。

「…廻のこと頼んだよ。ボクが惚れた男を譲るんだから…絶対他の女には盗られないでね♪」
「…うん!」

和雄も信彦もこう言った。

「信彦さん、いろいろお世話になりました。これからも、頑張って!」
「ありがとう!」

爽やかな空気が漂う。

そして、劉子と和雄は次元の壁の前にまで行くと、一旦足を止め…。

「さようなら、廻さん」
「また会おう、ボクの愛する人」

と言って自分たちの世界に帰って行った。

「「…廻…」」

少し寂しいのか、信彦と流姫は沈んだ声で呼びかけた。

「…行くぜ!新たな地平へ!」
「立ち直り早いのは変わってないな」

廻はいつものように振舞い、了はそんな廻の一面に変化がないことを再認識した。
そして廻は背景ロールを操作した。

――ガラララララララ…ピカーン!――

出てきた新たな絵には天を飛ぶ巨大要塞と地に刺さる銀の杭がある絵だった。

次回、仮面ライダーディロード

「我が名はアポロガイスト」
「大いなる大組織、大ショッカーだ!」
「俺は全てを破壊する…」
「仮面ライダーBLACK RX!!」

”太陽の子・月の超子”

全てを救い、全てを砕け!



新キャラ紹介
坂木了(さかき りょう)
廻や流姫の旧友で同じ世界の出身者。
陽気な性格の持ち主で、モスグリーンの髪が特徴。
年齢は廻と流姫と同じである。容姿は上の中。
世界が消滅する間際、偶然にも訪れた大ショッカーの一員と遭遇して組織の一員となったが、大ショッカーからディエンドライバーと共に開発されたディルードライバーを盗み出して逃亡。故に大ショッカーからは目の敵にされている。海東大樹とも面識があるもよう。

仮面ライダーディルード
了の変身する仮面ライダー。基本色は黒。
カイジンライドとカメンライドによる召喚と剣術を主体とする戦法を得意としている。(カメンライドの変身はできない)
次元を行き来する者からは”世界の開闢者(かいびゃくしゃ)”と呼称されている。
身長:194cm
体重:80kg 
キック力:18トン
パンチ力:16トン
ジャンプ力:50メートル
走力:100メートルを3秒

ディルードライバー
刀型の変身ツール。刀身の根元部分にある金色のカバーをスライドさせ、カードを装填する。次元エネルギーを封入して一気に放つことにより、近接戦だけでなく、中距離戦をも可能にする。さらには刀身を鞭状に変形させることで変則的な攻撃が可能。ライダーカードを装填し、グリップのスイッチを押すことで使用者をディルードに変身させる。

ライダーカードホルダー
ベルトサイド部に備え付けられたライダーカードの無限貯蔵庫。

所有ライダーカード
九人のメインライダーのカードとダークライダーのKR・AR・FR・FAR・FFR。
九つの世界の怪人のKZR(カイジンライド)

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