悪夢なH/眠【ユウウツ】
ミッドチルダから戻ってきた仮面ライダー達。
数日の間はなにごともなく平和であったが、
――パクパク・モグモグ――
無限一家の女性陣が食卓をかこんでいた時、
「美味しー♪御霊さんって家事はホントプロ級だよね」
「ま、昔から自分で身の回りのことをせざるを得ない環境だったから」
ヴィヴィオが褒めると、御霊はちょっと切なげに答える。
リインフォースは逸早く食事を終えると、
「ちょっと台所使いますね」
「どうぞー」
台所にたち、食材や調味料を揃えて手に包丁をを持つと、鮮やかな手付きで料理を始めた。
「ただいま」
そこへゼロが帰ってきた。
「あ、お帰りなさい。…その、ゼロ///」
「…何のようだ?」
「料理つくってみたんですけど…食べてくれません?」
そういうと、リインフォースは顔を赤らめながら手料理(和食)をゼロにだした。
「…私は『欲望』以外の食糧を喰っても腹はふくれん。貴様もよくわかっているだろ」
だがゼロが一蹴した。
「パパ!折角ママがつくってくれたんだよ!食べなきゃダメ!」
でもヴィヴィオがそういうと…。
「………はあ、仕方ない」
ゼロが折れた。
――パクパク…モグモグ…――
料理をハシでたべていき、完食する。
「…ほう、知らぬ間に腕をあげたな」
とだけいって席を立ち、自室に戻った。
(や…やったぁーーー!!)
リインフォースは心の底から喜んだ。
其の時、電話が鳴った。
御霊はすぐさま応対する。
「はいもしもし…。あぁ、亜樹子ちゃん。…フンフン、分かった。つたえておく」
――ガチャン――
こうしてまた、ゼロは動き出すこととなる。
*****
風都大学
亜樹子からの連絡によって風都大学に駆け付けたゼロ。
探偵事務所に依頼してきた雪村姫香によると、大学で同じ研究室にいた男子学生七人の内六人が夢に現れる怪物によって眠りから覚めなくなってしまい、自分も被害に遭うんじゃないかといういう不安感からマトモに眠ることができないらしい。
翔太郎達と合流し、雪村の案内で夢に関する研究をしている”赤城 脳科学研究室”に訪れる。
「ここか…」
翔太郎が閉め切った研究室の窓の前に立つと、
――シャーーー――
「「ウオオオオ!!」と子供が言った!」
原始的な格好で行き成り姿を見せた男に驚く翔太郎。
そいつはなにかいっていたようだが翔太郎の悲鳴のせいで今一聞き取れなかった。
「戦ったのかと父が聞くー!…嫌なので逃げたと答えると…次は逃げるなと父は命じた!」
(なんだこいつ?なにがやりたいんだ?)
ゼロ達はそう思いながら研究室に入った。
研究室には明らかに夢や脳とは殆ど関係のない置き物だらけ。
「なぜだかわかるかね福島くん?」
男は白衣を着たマトモそうな学生に聞いた。
「わかりません、教授」
「夢のなかに恐怖に打ち勝て!それがセマイ族の夢を操るための、心得だからな!」
(教授って、こんなのが教授?ネウロから聞いた人種とは大いに的外れだ)
ゼロは人間界で始めてネウロの魔力を枯渇させた電人HALのことは勿論、その起源である天才・春川英輔のことを思い出す。
「夢を、操る?」
「そう!」
翔太郎の呟きに教授は反応する。
「マレー半島に住む彼等は、訓練を積み、自分の意思で夢をコントロールできるのなら…実に素晴しい!」
翔太郎達が何者なのかさえきくことなく、教授は翔太郎に妙な置物を渡す。
「探偵の左翔太郎です。少し質問を…」
「質問は俺がする」
高笑いをする教授に翔太郎が質問しようとすると、聞こえたのは照井の声。
「竜君」
照井は真倉共々研究室にはいってくる。
「風都署超常犯罪捜査課の照井です」
「真倉です!」
「探偵に、警察…!?」
自己紹介が済み、福島は同時にやってきた人達の職業に驚く。
「…赤城教授。眠り病になった学生は全て、貴方の教え子だそうですね」
「その通り。彼等は私と共に、明晰夢の研究に打ち込んでいた」
「「明晰夢?」」
赤城教授の言った単語に翔太郎と亜樹子が首を傾げる。
「ルシッド・ドリーム。自分が夢をみていると、自覚できる夢のことだ。我々は睡眠中の人の脳波を調べて、明晰夢の謎を解き明かそうとしていたんだ」
白衣を着た赤城はそのまま簡易テントに入り、枕を頭を置いて睡眠準備を整える。
「そして学生達は実験台になり、二度と目覚めなくなった…」
「単に疲れが溜まって眠り込んでるだけだよ!!私の研究はハードだからね〜」
翔太郎の推測に対して赤城はオーバーリアクションに返答する。
「その、装置というのはどれですか?」
「これです。被験者が熟睡すると、こちらのコンピューターに脳波データが送信されるようになっているんです」
真倉が質問すると福島が装置を出して説明する。
「ではそれを…我々にも使用させて貰えますか?」
「ダメですよ!そんなことをしたら、夢のなかの怪物が…!」
照井の考えは明らかなものであったこともあり、雪村は断固反対する。
「御心配なく。真正面から立ち向かって、怪物を退治してみせますよ」
「だったら俺もやるぜ」
照井と翔太郎の二人がそういうと、
雪村は感銘を受け、照井に抱き付き、運命の王子様とかいっている。
「それ、誰にでもやるんかい…」
亜樹子は近くにあった狸の置物を撫でながら、冷たい瞳をしながら関西弁でそういった。
翔太郎が困惑していると、福島はあれが彼女の優しさだと説いた。
*****
深夜。
研究所で装置を拝借したゼロは記憶の魔導書で解析魔法で調べるも、これといって異常がないことを確かめる。
「それでは頼むぞ、御霊」
「でもなんで私が?」
装置を使うことになった御霊は布団にくるまっている。
「………貴様を信用しているからだ」
「今の間は何?私ならヤバいことになっても収拾がつくってこと!?」
「うるさい。兎に角眠れ」
――ドゴッ!!――
ゼロは御霊を殴って眠らせた。まあ気絶という表現もあるが…。
「さて、私もいくか。魔界777ッ能力…異次元の侵略者」
ゼロは左手を変貌させると、御霊のつけている装置と接続したノートパソコンの画面に手を侵入させ、身体と意識の一部を装置を通して夢のなかに潜入(ダイブ)する。
*****
一方そのころ赤城脳科学研究室では、何者かがコンピューターに映し出された三人のデータをみていた。
翔太郎は未だに眠っていない故か、画面にはNO SIGNALと表示されていたが、照井と御霊は眠っていたので脳波データがでている。
そして、研究所にいるその者は一本のガイアメモリを起動させる。
【NIGHTMARE】
悪夢の記憶が眼を覚ます。
*****
御霊の夢の中。
「あれ?…ここって…」
そこは何処にでもあるような極々普通な一軒家。
――ガシャーーーン!!――
ガラスの割れる音。
「あなた止めて!」
「やかましいーーー!!」
「うえぇーーーん!!」
明らかに飲んだくれでろくでなしにしか見えない男と、それを止めようとする妻。泣きわめく子供。
「御父さんに、御母さん?…それに私…」
それは紛れもなく、御霊の両親と過去の自分だった。
最初は妻も必死になって夫を止めるも、次第に力尽きていき…。
「おら泣いてんじゃねーぞ!」
――バチッ!――
夫を止める唯一の存在である母が床に伏せて以来、父のどうし様もない暴力の矛先は御霊にむかっていた。最初はただただ泣きわめいていた御霊だったが、そのうち暴力に対して自分なりの防衛策として、自ら無感情な人間になっていった。故に学校においても、誰しもが相手をしたくてもできないような孤独が続いた。
そして中学を卒業した直後の時期に父がアルコールの過剰摂取によって肝臓を自分で破壊し尽くし、此の世を去った。一家には当時の御霊を引き取ってくれるような縁者も友人もいなかった。さらに左前家の財産は殆ど父がストレス解消の趣味に使い果たした結果、御霊は居場所を完全に失い、半年もの間浮浪者同然の生活を余儀なくされてしまったのだ。
そんな時、偶然にも通りかかった一人のセールスマンから残った金銭全てを渡して購入したものこそがゴーストメモリ。
それを使ってゴースト・ドーパントに変身した御霊は超高級マンションの一室に住み着き…。
「イヤ!止めて!折角忘れてるのに掘り起こさないで!!お願いだからこれ以上私の心に入り込まないで!!」
見せ付けられた過去の映像。
『(フッフフフ!大分参ってきたな。あの刑事同様に、こいつも捕まえやる)』
怪しい影が御霊に迫ると、
――ガシッ!――
『なに!?』
――ドゥガ!!――
『グァァァァァ!!!!』
「ん?この叫び声………私、悪夢の明晰夢を見せられてたの?」
御霊はようやく気付いた。
『だ、誰だ!?』
「やかましいな。顔面が二つあるだけのことはある」
ナイトメア・ドーパントを殴り飛ばしたのはゼロだった。
「フーン、ディアンの話したドーパントと似ているな」
ゼロは以前ディアン=ネイルがアクセルとの共闘で倒した別のナイトメアのことを思い出す。
最も、その時のナイトメアの基調色は黒だったが、いまここにいるナイトメアは白い。
能力も違うことから、ミッドのナイトメアは亜種のようなものなのであろう。
「まあいい。兎にも角にも、貴様を夢から締め出すとしよう」
次の瞬間、腹黒いドS顔で…。
「ボロ雑巾同然にしてな…!」
『な、なめるな!』
ナイトメアはゼロに殴りかかるも、逆に殴られた。
『ど、どうしてだ?思い通りにならない…』
「念のため、御霊の脳髄には、私の魔力をある程度注入しておいた。だから貴様のテリトリーである夢であろと、好き勝手できない」
(いつの間にそんなことを…)
御霊はさっきまでの悪夢すら忘れて呆れる。
その後、
――バギ!ドガ!グチョ!ベギャ!――
『も、もう勘弁――ドゴ!――ゴハァ!』
「勘弁?冗談であろう。ラストに跳びっきりのを用意しているのだからな♪」
ゼロはそういってまたナイトメアを踏んだり蹴ったりする。
『ぐ、グ…グウゥ…』
「おや。まだフザケタ夢から目覚めていないようだな。良し、私が夢も打っ飛ぶような素敵な一曲をくれてやる。魔界777ッ能力…拷問楽器「妖謡・魔」」
――ギガアアアアァァァァァ!!ギゴギゴギゴギゴ!!ギイイイィィィィィィ!!――
『オオオォォォォォォォアアアァァァァァァァァァァ!!!!』
(ひえ〜!悪夢のフルコース…!御大事に…)
魔界能力によって絶叫するナイトメアに御霊は合掌する。
『こ、こんな奴が入ってくるような夢!二度と来るものか!!』
ナイトメアはそういって逃げ去っていった。
*****
翌日の朝。
照井がドーパントにやられ、眠りから覚めなくなったという連絡を受けたゼロ。
他の学生達同様、照井の額にはH型の痣があったという。
ついでに翔太郎は眠気を誘発するために時代劇のDVDを鑑賞していたら、逆に眼が冴えてしまったことでナイトメアの被害を被らずにすんだわけだが…。
『キーワード夢。風都大学、、眠り病、H』
地球の本棚で検策を行うフィリップ。
しかし、四つのキーワードを入力しても幾つかの本棚が残ってしまう。
『ドーパントの正体を特定するには、まだキーワードが足ない』
「だったら俺が眠って照井の仇を…『待ちたまえ翔太郎!』
急く翔太郎を止めたフィリップ。
さきほど検策役をリインフォースとバトンタッチした。
『敵の能力も分からずに跳び込むのは危険だ!』
「じゃあどうしろってんだよ!?」
『もう少し検索を続けてみる。なにか対策が掴める筈だ』
しかし翔太郎は気だるそうに外へでようとする。
「ちょっと、どこいくの!?」
「やっぱじっとしてらんねぇ。俺はもういちど姫香ちゃんに会ってくるぜ」
亜樹子に聞かれた翔太郎は、そういって屋外にでていった。
*****
園咲家。
食事の時間において、一人際立って若菜はかなり上機嫌である。
尚、井坂の異常な食欲も相変わらずだが…。
「どうした若菜?やけに楽しそうじゃないか」
「最近と〜っても気分がいいんですの♪」
琉兵衛に対して明るく応える若菜。
「食事中よ」
冴子は若菜のハイテンションに不快な感情を抱き始める。
「だってお姉様!ミックが丸まってるんですもの!」
しかも下らない理由で若菜のテンションは最高潮である。
冴子と琉兵衛は何時もとは違う若菜を見て顔を見合わせる。
そして手足をバタつかせて笑いまくっていた若菜は行き成り静かになると、
「御馳走様でした」
いっきにテンションが低くなったかと思えば、
「アハハハハハハハハハハ!!」
笑いながら自室に戻っていった。
「…あれも君がした悪戯の影響かな?」
「御心配なく。彼女の幸せに満ちた状態は、より高いレベルでメモリと適合した証です」
「毒素に負けなければドライバーは必要ない。それが君の持論だったね」
「えぇ。ドライバーでは、完全な力は引き出せません」
若菜の豹変じみた状況に、琉兵衛は井坂とガイアメモリとメモリドライバーについて話す。
「成程。だが、一つだけいっておこう。父親にとって、娘は宝物だ。…若菜になにかあったら、其の時は覚悟しておきたまえ…!」
威圧感を漂わせて琉兵衛は井坂に警告する。
だが井坂は無表情で押し通した。
*****
風都大学。
翔太郎・亜樹子・ゼロ・リインフォース・ヴィヴィオがやってくると…。
「探偵さん!無限さん!もうこの事件から手を引いて下さい!」
雪村は翔太郎にそういった。
「一体どうしたんだい?」
「さっき、つい転寝したら、夢にまた怪物がでてきて言ったんです」
――探偵と髪飾に手を引かせろ。さもなくば、あの刑事のように、探偵を眠り病にしてやる――
髪飾=ゼロというのは皆さんお分かりでしょう。
ついでに眠り病にする標的に翔太郎を指名していることから、前回の一件でナイトメアはゼロを恐怖の象徴としているようである。
「姫香、怖い。…怖いです〜」
「大丈夫。どんな危険があろうと、依頼人を決して見捨てない。それは探偵の…いや、俺の鉄則だ」
「つーか、あのドーパントも見た目程強くなかったしな。再び……フハハハ♪」
ハードボイルドにカッコつける翔太郎とサド心に火のついているゼロ。
「なんて頼もしいの!」
雪村はゼロに抱きついた。
「もしかして、貴方は私の運命の王子様?」
「王子…?」
応じという単語にゼロは、なにか昔の記憶を懐かしむように、遠い目をしている。
そこへ、
「雪村さん…!私のゼロから、好い加減離れてくれません…!」
「ヒッ!」
リインフォースをみた雪村は思わず悲鳴がでた。
それもその筈、今のリインフォースは余りの無表情だった。正しく感情すら失くしたかのように…。
しかしその眼に宿るヤバいなにかがダダモレであった。
「あれ?リインフォースさんって……」
「ママ…何時もの優しいママに戻って…」
亜樹子とヴィヴィオもなんだがおびえている。
リインフォースは雪村を無理矢理ゼロから離れさせると、
「ゼロ、貴方も貴方です。私は貴方の女ですけど貴方も私の男なんですよ。わかってますよね?」
なんだか独占欲全開な台詞を吐きまくる。
しかしゼロは未だに遠いを目をしている。
其の時、翔太郎のスタッグフォンが鳴った。
「検策の結果、作戦が一つだけ見つかった」
フィリップだった。
大きな風呂敷袋になにかを詰め込んで風都大学の敷地に入ったあたりだ。
「すぐに実行してみよう」
スタッグフォンで会話するフィリップの上空を謎のガジェットが飛びまわっていたことを、フィリップは未だにしらない
*****
大学のグラウンド。
「翔太郎。君の枕をもってきたよ」
フィリップは風呂敷につつでいたものを翔太郎に投げわたす。
「おぉ、サンキュー」
「ちょっと、なにするき?」
亜樹子が聞くとWの二人とヴィヴィオは頭を枕に乗せて横になる。
「Wに変身した状態で眠れば、僕も翔太郎の夢のなかに入れるかもしれない」
「私も翔太郎さんの装置を回線にして夢のなかに入れるデバイスで、いってくる」
「いつのまにそんなものを作ったの…?」
「昨夜から今日の明け方になるまで徹夜して完成させた」
ゼロが自身満々にいうなか、翔太郎とフィリップとヴぃヴィオはドライバーを装着してメモリのスイッチを押す。
【CYCLONE】
【JOKER】
【HOPPER】
「「「変身…!」」」
【CYCLONE/JOKER】
【HOPPER】
三人はWとホッパーに変身すると、早速装置とデバイスを使って眠りにはいろうとする。
「それじゃあ、ちょっくらいってくるわ。夢の世界に」
『御休みアキちゃん』
「御休みなさーい」
「えぇー……あ」
そこで亜樹子はちょっと気付く。
「そういえばゼロさんはイーヴィルに変身して眠らないんですか?」
「…イーヴィルに変身している間、私は瘴気の恩恵によって睡眠欲が殆ど掻き消える」
そうこうしている内に、二人の仮面ライダーは夢を見る。
*****
風の中、誰かの咽び泣きが聞こえる時、ズバリ!名推理が冴えわたる…!
俺はこの町を愛する、ハードボイルドなー岡っ引でい。
――ポン!――
岡っ引の格好でカッコつける翔太郎に和服を来た亜樹子らしき人物が、
「イテッ!…なにすんでいお亜樹!?」
「御免よ。お前さんがあんまりカッコつけるもんだから、つい…」
「だからって…!」
殆ど現実世界と変わらない遣り取り。
というより、江戸時代にハードボイルドという単語を出すのは無理がある。
「御助けくださいませ!眠れないんです〜!」
そこへ雪村に該当する人物が翔太郎を訪ねる。
「おっと、お姫ちゃん。また巷で噂の眠り病かい?」
「夢のなかで、怪物が…お姫、怖いです!」
翔太郎に抱き着くお姫を見て、お亜樹は姑みたいに苛立った声と表情になる。
そこへさらに…。
「大変だ、大変だ!」
「事件だよ!」
「おー、どうしたい?フィリッ八にヴィヴィオ嬢」
そこへ同じように岡っ引の格好したフィリップ…いやフィリッ八と、正しくとある王国の御姫様が着るであろう綺麗で豪華なドレスを着たヴィヴィオ。
「船着場に、土左衛門が!……って、なにをやらせるんだ翔太郎?」
「これって、貴方の夢だよね?」
二人がそう指摘すると、
「え?…あー、そうだった。昨日あのDVD徹夜で観ちまったから。時代劇になっちまったのか」
「余計なことを…」
微妙にヴィヴィオが刺のある言葉を口にする。
そして現場に向かうと、そこには服装と髪型以外は完全に照井としか思えない人物が
「おー、きたか」
「これは、照井の旦那。…で、仏さんの身元は?」
十手を腰から抜いて尋ねる翔太郎。
「大道芸人の、三田だ」
亡骸を隠す覆いをとる照井。
「寝不足で足滑らせて溺れたらしい」
「つーかこれ、サンタちゃんじゃねえか?」
「しかも笑顔。実に興味深い」
するといきなり三田が起き上がった。
「笑顔じゃなくて、恐怖で引き攣った顔。で、僕を溺れさせた犯人は…」
――ピューーーグサッ!――
「うッ!」
「吹き矢!?」
三田の首筋に命中した吹き矢に驚くヴィヴィオ。
「……二人とも、あそこだ」
フィリップが指さした先には、
『私の姿を見たら、もう帰れないぞ』
吹き矢を持ったナイトメア。
「でたな…ドーパント」
『なんでお前の夢に彼女が!?』
十手でナイトメアを指し示す翔太郎に構わず、ナイトメアの注意はお姫にむけられている。
ナイトメアは吹き矢を巨大吸引チューブに変化させてお姫を吸い込み、小さくして籠のなか入れてしまう。
『あーばよ』
ナイトメアはそういって去るも、見す見す見逃す彼等ではない。
「二人とも、仮面ライダーに変身だ」
「ああ、だがあまり期待できない」
「どうしてなの?」
変身に少し苦い表情をするフィリップ。
それも其の筈。
【疾風】
【切札】
【飛蝗】
「つかなんじゃこのメモリ!?」
「なんで木札?ガイアウィスパーも漢字表記だよ…」
こんな感じだからだ。
でもヤルしかないので…。
「「「変身!」」」
【疾風/切札】
【飛蝗】
変身の際、メモリを挿入する際に三味線の音がしたり、変身直前において翔太郎の顔が歌舞伎役者風のメイクになっていたり、サウンドメロディもどことなく和風だったり、吹き荒ぶ旋風に桜吹雪はまじっていたりしたが…今は気にしないでおこう。
「逃がさねえぜ!」
*****
ナイトメアを追いかける二人のライダー。
Wはハードボイルダーで追いまわし、ホッパーは忍者の如き瞬足で建物の屋根を走ってナイトメアをおっている。
『来るな!』
ナイトメアは建物を瞬時に移動させて道を塞ぐも、Wはお構いなしに突っ込んでいく。
『退け「好い加減諦めなさい!」
怖れ慄く人々を無理矢理退かして進むナイトメアにホッパーは屋根の上から跳び蹴りをかました。
その衝撃でお姫がとじこめられていた籠が放り出され、Wがそれをキャッチするとなかにいたお姫が元通りの状態ででてくる。
「答えて!なんで学生さん達を眠り病に?」
『全ては、彼女のためだよ』
「姫香ちゃんの?どういうことだよ?」
『運命の出会い。私こそが、彼女の王子様だからね』
Wとホッパーは問いただすと、ナイトメアはそう答える。
「はあ?」
「王子様だっていうなら真正面から向き合うべきでしょ!」
ホッパーがそう説いた瞬間、
「おぉっと!姫香ちゃん……えぇーーー!!あんた誰!?」
いつの間にかお姫と他の女性が入れ替わっていた。
ホッパーもそれをみて驚いている隙、
「イデデデデ!痛い!足退かして!」
「え!あの、その…。ご、御免なさい!今退かします!」
ナイトメアを足で踏んでいたハズなのに、何故かそこらの町人といれかわっている。
『バーカ。じゃあね』
本物はしっかりとにげていく。
完全に二人を虚仮にしている。
そんでもって再び鬼ごっこ再開である。
漸くおいついてきてWがハードボイルダーでナイトメアに突進すると、ナイトメアはわざとらしい悲鳴をあげて…。
『なーんちゃって、ハッ!』
ナイトメアが手をむけると、ハードボイルダーは何故か自転車になってしまう。
「なんじゃこりゃー!?」
「有り得ない…夢だからって…」
Wは必死になって自転車を走らせる。
ハッキリいってシュールだ。
『邪魔だ消えろ!』
ナイトメアは町を歩く町人達をいっきに消して逃げ易くする。
それを見たホッパーは、
「そんなことできるなら、どうして最初からやんなかったの?」
『………』
聞かれたナイトメアはいきなり黙る。
「…気付かなかっただね?」
『余計な御世話だ!』
そしてとうとう立派な御屋敷の庭にまでやってっくる。
でもそこには、
「検策奉行様!ご出願!!」
その屋敷には”検策一筋”と達筆でかかれた掛軸。
襖が開くと、何故か御奉行の格好をしたフィリップ。
「やいやいやい!待ちやがれ!よもやこの顔、見忘れたとは、言わせねえぜ!……って、またなにをさせるんだ翔太郎!?」
そこへ漸くWとホッパーも到着する。
『うざいお前。消えちまいな!』
ナイトメアはフィリップに手をむけるも、依然としてフィリップは存在している。
『なに?何故だ!?』
困惑するナイトメアを余所に、フィリップは着物を脱いで普段と同じの服装になる。
「君と同じで僕も、この世界では特別な存在だからね」
『他人の夢に入り込めるのは、この私だけの筈だ!』
ナイトメアは鳥の頭のような箇所から攻撃を行うも、フィリップには意味を成さない。
「無駄だね。さあ、答えたまえ。君は誰だ?赤城教授なのか?」
『赤城?違うよ。奴ならもう眠らせてやったぜ』
ナイトメアの言うとおり、現実世界では赤城教授が額にHの痣を刻まれながら眠り病になっているところを雪村が発見して悲鳴をあげていた。
*****
「今の悲鳴は?」
「どっかで聞いたことのある声…」
亜樹子とリインフォースが悲鳴に気づいた直後、
「ナイトメアを訪ねてきたのに、面白いものをみつけたぞ」
「貴方は…」
やってきたのは井坂。
「こんな場所で仮面ライダーが御昼寝とは、中々シュールな光景ですね」
【WEATHER】
井坂はメモリを起動させて身体に挿すと、ウェザー・ドーパントとなる。
【MAGICAL】
【LEADER】
「「変身ッ!」」
【MAGICAL/LEADER】
それに対抗してイーヴィルが現れる。
『貴方とはじっくり御相手したいが、そのまえに…』
ウェザーはイーヴィルと戦う前にWに雷攻撃を行う。
「させるか!」
イーヴィルはそれを防ごうとするも、
「それはこっちの台詞ですね」
「だ、誰?」
聞き慣れない声に亜樹子が怯える。
『おー、漸く来ましたね…堺君』
登場してきたのは白いYシャツに茶色のネクタイ、黒いズボンを着用した二十代後半の男だった。
「助太刀しますよ院長。副院長として」
『堺君。今となっては我々は院長でも副院長でもない』
「だとしても、僕としてはこの呼び方が気に入ってましてね」
堺はポケットから銀色のガイアメモリを取り出す、
【ELEMENTAL】
そして喉仏のコネクタに挿し込むと、堺は焔・嵐・稲妻・土煙・冷気に渦巻かれ、元素の記憶を宿したエレメンタル・ドーパントとなる。
*****
再び夢世界。
「赤城教授じゃないなら…君は一体、誰なんだ?」
そういった直後、フィリップは夢から消えた。
「なに!?」
「消えちゃった!?」
そうウェザーの攻撃によってWの変身が解けてしまい、フィリップの魂が肉体に戻ったのだ。
起き上がったフィリップはウェザーの姿を見て急いで立ち上がる。
「井坂深紅朗…!?それに新しいドーパントまで!」
『私は楽しみの邪魔をした人間を…決して許さない主義でしてね…!』
イーヴィルがエレメンタルと戦っていて余裕のない時に、ウェザーは雷を落とすも、そこへファングメモリが現れてフィリップを護る。
一方イーヴィルも、戦いの最中…。
『このドーパントは此の世に存在するあらゆる元素を操れる能力がある…!強敵ですよ』
「なら早速こいつの性能テストに取りかかるとしよう」
イーヴィルはバニティーボックスを取り出す。
【VANITY】
――ガシャ――
「ハヤブサ」
【FALCON】
バニティーボックスはハヤブサ型のファルコンモードとなる。
イーヴィルはバニティーボックスにエレメンタルを攻撃させて時間を稼ぎ、
【MAGICAL/KNIGHT】
マジカルナイトにハーフチェンジ。
ナイトグレイブとファルコンモードと合体させた。
「良し、行くぜ」
イーヴィルがナイトグレイブをブンブンと振り回すたびに、マジカルメモリの魔力が斬撃波となったエレメンタルに襲い掛かる。
『…いいんですか?僕ばっかにかまっていて?』
「なに……そういうわけか」
『フィリップ!』
エレメンタルは時間を稼ぎウェザーがゆっくりフィリップを始末できるようにしていたのだ。
無論ファングメモリも必死になってフィリップを護るも、ウェザーの起こした竜巻によって吹っ飛ばされてしまう。
「ファング!」
『まずは自分の心配をしなくちゃ…!』
ウェザーは天に指差し。
逃げるフィリップと、抜け殻になったリインフォースの身体に雷を命中させる。
『ッ!!?』
それによってイーヴィルの右半身の動きが異様に悪くなったかと思えば、変身までもが解かれてしまう。
『フフフ♪大成功』
それを見たエレメンタルはほくそ笑みながら呟く。
「貴様ァ…!!」
ゼロは相棒を傷つけられ、激怒に燃える。
亜樹子も重傷を負ったフィリップを抱き抱えて何度も何度もよびかける。
そして夢のなかではナイトメアと悪戦苦闘を強いられるWとホッパー。
最悪な逆境に立たされた仮面ライダー達。
彼等はこの窮地を脱することができるのか…?
次回、仮面ライダーイーヴィル
悪夢なH/誰【おうじさま】
「この『欲望』はもう、私の手中にある…」
これで決まりだ!
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪