悪夢なH/誰【おうじさま】


夢の中、フィリップがいなくなったのを機に悪戦苦闘するWとホッパー。
ナイトメアは二人を眠り病にするべく、夢空間拘束器具・ドリームキャッチャーをとりだす。

そこへ、

「お前さーーーん!!フィリッ八が大変なんだよ!」
「フィリップがどうしたって!?」
「兎に角大変なんだよ!」

お亜樹が乱入してきてフィリップのことを断片的に知らせる。

「起きて私!起きろ〜〜〜!!」

ホッパーもフィリップの急を聞いて必死になって目覚めようとするも、

『無駄だ。俺が支配するこの夢のなかで、お前等の意思で目覚めるのは不可能だ。…大人しく、消えちまいな!』

ナイトメアはドリームキャッチャーを投げるも、Wとホッパーは素早く避ける。
しかし、夢のなかではナイトメアに勝つことは特殊な例外を除いて不可能。

このまま二人がやられるかとおもったとき。

『…掃除?後でいいよ。…おい!ドア勝手に開けようとしてんじゃねー!』

明らかにナイトメアは場違いな発言を前触れなくしてきた。

「…あれ?誰と話してるの?」
『あぁもう!余計な人間が紛れこんだり…。お前等の夢は危険だ。二度と入らないぞ』

そういってナイトメアは姿を消し、夢の世界も消えて二人は目を覚ます。

「………起きれた」
「……危なかった」

しかし、直後に二人の耳に聞こえたのは…。

「フィリップ君!フィリップ君!死んじゃヤダよぉー!」

フィリップによびかける亜樹子。

――ドガーッ!!――

『グァァァ!!』
「許さん…!我が誇りに土をつけた上に相棒まで傷つけた貴様等だけは…!!」

激怒に燃え上がるゼロは生身のままでエレメンタルを圧倒する。
魔力を集中させた拳は上位のドーパントである筈のエレメンタルに多大なダメージを与える。

『御目覚めのようですね。丁度今、君達の片割とお母さんに止めをさすところです。堺君、これがすんだらそちらに加勢します』

ウェザーは再び天に指差し、

「おい!やめろ!!」
「ママ!!」

二人の言葉も虚しく、ウェザーは雷を落とした。
その時、

――ウェッ!!――

突如、鳥型のガジェットがフィリップに降り注ごうとした雷を弾いたのだ。
さらにもう一方の雷はバニティーボックスが行き成り命令無しで、

【WYVERN】

飛竜型のワイバーンモードに変形。
リインフォースの危険を察知したかのような自律的な動きである。

バニティーボックスと謎のガジェットが奇妙な緑色と銀色の光を発すると、フィリップとリインフォースの身体はデータ化・吸収される。

吸収し終えたガジェット達は何処かへ飛び去ろうとする。

『おい待て!そいつらは私の獲物だ!』

ウェザーは雷を複数落とすもガジェット達は大した苦労もせず、雷を受け止める。
それをみたウェザーは竜巻を引き起こすも、ガジェット達はその竜巻をはね返してウェザーにお返しする。

『い、院長!?』

エレメンタルがウェザーを追うと、、ガジェット達は今度こそ何処かへと飛び去った。

「おい亜樹子!…これって、夢じゃねえよな?」

翔太郎がそういうと、亜樹子はスリッパで叩く。

「イテッ!…夢じゃねえか…」

翔太郎は現実であることの確認をすると、サイクロンメモリの欠けたダブルドライバーに手を置く。

(フィリップ。俺の声が聞こえるか?)

フィリップによびかけた時、翔太郎の脳裏には謎の鳥型ガジェットのシルエットが浮かぶ。

「あいつの意識を感じた」
「…本当?」
「フィリップは死んじゃあいない。…生きてる」
「本当?…だったらもう泣いてる場合じゃないよね」

亜樹子はネクタイで涙を拭おうとするも、翔太郎がやめさせる。

「姫香ちゃんに危機が迫ってる。今回の事件の真相が何となくみえてきたぜ」





*****

俺達は、再び風都大学に赴く。

夢のなかに入り込むドーパント。
それに怯え眠れなくなった夢見がちなお姫様。
彼女の依頼から今回の事件が始まった。…だが。

「姫香ちゃん…。”運命の王子様”。…君はその言葉を研究室の仲間全員に言った。そうなんだろう?」
「そ、それは幾らなんでも、ねえ?「はい!」嘘ッ!」

雪村はあっさりと認めた。

「優しくされると、つい、そう思い込んじゃうんです〜」
「とんだ八方美人だな」

ゼロは冷え切った表情で言い切る。

「君のその言葉を真に受けて、怪物になってしまった人間がいる。恋敵たちを眠り病で排除しようとした、王子様が」

それを聞いた雪村の表情は辛そうだった。





*****

研究室。

「……僕になにか用ですか?」
「あぁ」

福島は掃除のおばさんが部屋の置物に叩きをかけているのをみると、

「ちょっと!勝手に触らないで!」
「すいません!」

おばさんは血相をかいて部屋からでた。

「で、なんでしたっけ?今スッゴク眠たいから。できたら後にしてもらえませんかね」
「じゃあ単刀直入に言う。君がドーパントなんだろ?」
「どうなのよ?黙ってるってことは、観念して認めちゃってるわけ!?」

福島は沈黙を守る。

「おい、なんとか言ったらどうだ?」

翔太郎が福島の身体を動かすと、額にHの痣があった。

「ウソー!!」
「……頭を思いっきり握れば「起きるわけじゃないからやめてくれ」……チッ」

結果として、福島も入院することとなった。

「彼じゃなかった…。じゃあ一体誰がー!?」

亜樹子は子供のように喚く。

「参ったぜ。やっぱり俺達が夢のなかで確かめるしかないか…」
「二人はダメ。だって言われたんでしょ?”お前の夢には二度と入らない”って。それにゼロさんだって、御霊さんの夢でドーパントをボコボコにしたせいで警戒されてるんでしょ」

魔人であるゼロは通常、瘴気が極端に薄い地上において、イーヴィルにさえ変身しなければ、大体2〜4時間あたりは眠ることができる。しかし、御霊を眠り病にしないためとはいえ、ナイトメアをボコボコにしたのも事実。

すると亜樹子が自分を指さす。

「「はぁ?」」
「決まりね♪私が眠るっきゃ、ないっしょ!」

「危険だ!ぜってーやられる。つか、、もし仮になにか掴んだとしても、俺達に伝える方法がねえだろ」
「あるわよ!」

自信満々な亜樹子。

「ならいってみるが良い」
「寝言よ」

アバウトな答えがかえってきた。





*****

園咲家。

「鳥の形のガイアメモリ?アッハハハ!ヤダァー超ウケルーーー!!」

未だにハイテンションな若菜。

「仮面ライダーを助けに来たかのようでした。いやえらい目に遭いました」
「ゼロという男も、生身で僕を圧倒しましたしね」

井坂と堺はパスタを食べながら話す。

「エクストリームのメモリか…」

琉兵衛は、その謎のガジェットの正体たる名前を口にする。

「エクストリーム?お父様、それはなんなのですか?」
「そうか…。遂に動き出したのかあいつが…」

冴子の質問に答えることなく、琉兵衛は薄っすらと不気味な微笑みを浮かべた。





*****

――来人…来人…――

謎の声によって目覚めたフィリップの居た場所は、周囲のモノ全てがデータで構築された不可思議な空間であった。

「僕を呼ぶのは、誰だ?……ここは一体、どこなんだ?」

すると謎の空間には、ある人物のホログラムが現れる。
もっとも、帽子やサングラスにマスクをしているせいで、素顔がわからないが。

「ここは、エクストリームメモリの中」
「メモリの中?……傷が完全に治っている」
「貴方はまだ、死んではいけない。この地球(ほし)にとっても、私にとっても…必要な存在なのだから」

今度はホログラムではなく、実体を持って彼女は現れる。

「君が…シュラウドか」





*****

――起きなさい、リインフォース――

「……誰だ?私を呼ぶのは…。それに此処は…?」

リインフォースがいる場所もフィリップのそれと同じ、周囲のモノ全てがデータで構築された不可思議な空間。そこでも、リインフォースの酷い傷は跡形もなく治癒されていた。

「ここはバニティーメモリの内部よ」

そして、バニティーボックスの開発者、プレシア・テスタロッサが現れる。

「プレシア・テスタロッサ」
「…貴女は死ぬべきではない。全次元世界と、私の罪滅ぼしのためにもね…」





*****

探偵事務所。

装置を使い、ベッドで眠る亜樹子。

「ここは大阪」
「ッ!?」

いきなりの寝言に翔太郎はビクッとする。

「うちの生まれ故郷や」
「…スゲークリアな寝言だなオイ。確かにこれなら…」
「単純な精神構造だな…」





*****

亜樹子の夢。

うちは鳴海亜樹子。
お父ちゃんはメッチャハードボイルドな探偵で大好きやけど、滅多に家に帰ってこうへん。
せやからうちもこうして働いてるわけや。

夢世界に大阪でたこ焼きをつくる亜樹子。

「アキちゃん。今日も精がでるな。そんなに稼いでどないすんねん?」
「ほっといてやー。うちは働くのが趣味やねん」
「はぁ〜それは偉いわ。感心するわ」

そこへチャライ格好と関西弁で喋る照井とフィリップが登場してくる。

「フィリップ君こそ、最近検索のほうはどうなん?」
「ぼちぼちやな。最近はあんまゾクゾクせえへんねん」
「竜君は?」
「俺に質問するなや」
「相変わらずクールやねー!」

なんかもう、色々な意味でズレテいる気がする。

「おおー!」

そこへ、白いスーツにソフト帽を被った一人の男が。

「お父ちゃんや!お父ちゃーーーん!」

しかし、鳴海壮吉かと思われた男は…翔太郎だった。

「おい亜樹子!お前自分の目的すっかり忘れてるだろ!?」

現実において亜樹子に怒鳴り付ける翔太郎。
どうやら現実での怒鳴りが夢に影響しているらしい。

「あ、そうや。うち夢ん中でドーパント探すんやった。どこにおるんやろう?」

目的を思い出して周囲をみわたすと、

「あァーーー!!あんなところにおったァー!!」
『私の姿を見たな。もう、帰れないぞ』

建物の屋上でナイトメアがそうつげると、亜樹子は険しい表情になり、

「翔太郎君!うちと一諸に変身や!」

無論それは寝言となっているので、しっかりと聞いた翔太郎は余りに突拍子のない発言に呆れ果てる。

一方夢では、亜樹子が翔太郎にサイクロンメモリを渡し、自分はジョーカーメモリをもっている。

「はいこれ!」
「って俺こっちかよ!」
「いくで!」

【JOKER】
【CYCLONE】

「「変身!!」」

亜樹子は転送されたサイクロンメモリと手に持ったジョーカーメモリを不慣れで不器用な上、ぎこちない動きでセット。

【CYCLONE/JOKER】

変身のさいも、”なにわの美少女仮面”という、明らかに自分(あきこ)を美化するような文章が浮かびあがった上に、サウンドメロディも妙に甲高い。

Wに変身した亜樹子は素早く建物の屋上にジャンプして、

「さあ、お前の罪を数えろー!」

などといいながら、本当に”お前の罪を数えろ”なんてかかれたスリッパを突き出す。

「はーやっちゃった!」

緊張感もへったくれもない。

「行くわよ!」

Wは一気にナイトメアに駆け寄り、スリッパで連打すると…。

【HEAT/METAL】

ヒートメタルにハーフチェンジ。メタルシャフトを振り回す。
まあ、背景に大阪万博の太陽の塔があるが…本編に関係ないので無視だ。

【LUNA/TRIGGER】

今度はルナトリガーとなり、トリガーマグナムから追尾式のエネルギー弾を発射。
今度の背景は大阪城だったりするが…。

ナイトメアはドリームキャッチャーを投げ、Wは空かさず射撃を行うも、攻撃は全て効かない上にトリガーマグナムまでもが吸いこまれてしまう。

「リボルギャリー!!」

必要のないポーズをとりながらリボルギャリーを呼ぶW。
すると本当にリボルギャリーが大阪城から跳びだして来ると、ナイトメアに突進して吹っ飛ばす。

そして再び、最初のステージへ。

【CYCLONE/JOKER】

勝負を決めるべく、ナイトメアに突撃するも、逆にナイトメアに顔を殴られた途端、今までの勢いを失くして…。

「痛いやんかもォーーー!!」

変身が解除されてしまい、鼻を抑える亜樹子。

『この世界は、私以外は単なるイメージの存在でしかない。お前が変身した、仮面ライダーもな』
「貴方、一体誰なの!?どうせ、姫香さんに、好かれてるって勘違いした、憐れな男なんでしょ!?」

亜樹子は標準語にもどり、何時もの勢いを取り戻してナイトメアを問い詰める。

『な、なんだと!?』
「やーい!悔しかったら名乗りなさいよ!」

亜樹子のこの言葉は寝言として現実世界につたわっている。

「オォー!良いぞ亜樹子!その調子で聞き出せ!」
(…人間、一つくらいは取り柄があるものだな…)

そんでもって夢世界。

『いいだろう。教えたところ、どうせ誰にも伝えられやしないからな。…私の正体は…』

ナイトメアはドリームキャッチャーで亜樹子を捕縛する寸前に、自らの本名を明かして…。

「アァぁぁぁぁぁぁ!!」

亜樹子はナイトメアの正体を寝言にした直後、絶叫をあげる。

「よくやった亜樹子。直ぐに連れ戻してやるからな」
「夢を見ながら、期待して待っていろ」

ゼロと翔太郎は風都大学に急いだ。




*****

エクストリームメモリ。

「助けてくれたことは感謝します。でも、僕はすぐ戻らなければならない。翔太郎がまっている」
「いってはいけない」

シュラウドはフィリップを止める。

「左翔太郎。あの男は、貴方にとって不吉な存在。一諸にいてはいけない」
「………」





*****

バニティーメモリ。

「一体貴女は、どうやって?」
「今はその言葉に返答することはできないわ。でも、何時か必ず真実を教える」

プレシアに疑惑の眼差しをむけるも、その言葉と瞳に嘘偽りがないことを悟り、元の優しい表情も戻る。

「…わかりました。では、ゼロのところに帰してくれませんか」
「言われずとも、わかっているわ」





*****

風都大学のとある教室。
雪村はホワイトボードに、王子様に抱っこされた自分の絵をかいていた。

「ふぁ〜…王子様〜、早く姫香を迎えに来て〜」

あくびをしているところからみると、相当眠たいのがよくわかる。

「それが君の夢なんだね」
「少女にありがちで、ありきたりな理想(ゆめ)だな」
「探偵さんに無限さん」

そこへ二人が現れる。

「姫香ね。子供の頃から、何度も同じ夢をみるんです〜。
王子様の夢!…彼、姫香がピンチになると現れて、優しくこう言うんです」

――僕らは、運命の糸で結ばれている。だから何時か、出会えるよ♪――

ジェスチャーを交えながら説明する雪村。

「だから優しくしてくれる人には必ず、”貴方は運命の王子様ですか?”って聞くわけか」
「でもそれがいけなかったんですね。姫香の言葉が誰かを傷つけて、怖ろしい怪物にしてしまった…」

雪村自身、この事件の発端となっていることに罪悪感があるようだ。

「君を護るために真実を伝えにきた。…夢のなかで君を苦しめていた男。……そいつの名前は――――」

雪村姫香は眠りにはいっていた。

「って、えぇェーーー!!?」
「説明してる傍から眠った。相当貴様の前触れが詰まらなかったんだろうな」
「んなこと言ってる場合か!…このまま姫香ちゃんまで眠り病に…」





*****

「王子様ー!どこにいるの?答えて。王子様ァー!」
『ここだよ』

夢で雑木林を歩く雪村。
服装が絵本に登場する白雪姫みたいなドレスであるけど、今はどうでもいい。

むこうがわから聞こえた声。
そちらに振り向くと、

『私の姿を見たな。もう、帰れないぞ』

濃霧のなかより、ナイトメアが現われる。

「キャアァーーー!!」

雪村は悲鳴をあげ、走って逃げる。

『フッフフフ♪今日は本気だ。今日こそ君を、捕まえちゃうぞ♪』

いやがる雪村を意思に反し、ナイトメアは彼女を追いまわす。
すると、雪村はうっかり転んでしまう。

『チャーンス。”コレ”を一諸に被ろう。そうすれば二人は結ばれる。この夢の世界で、永遠に…!』

ドリームキャッチャーを手に、ナイトメアはそう語る。

「助けて!王子様ーーー!!」

その瞬間、

――シャキーーーン!!――

突如、何者かが投げた剣がドリームキャッチャーを樹木共々に突き刺さる。

「か弱き乙女を……泣かせるもんじゃ、ねえぜ」

剣を投げたのは、王子様の格好をした翔太郎。

『ナニ!?』
「貴方は、もしかして…運命の王子様!?」
「いや、違う。俺は…」





*****

脳科学研究室。

「この街を愛する、探偵だ」
『貴様!どうしてここへ?』

扉を開けた翔太郎とゼロ。
部屋のなかには夢にいるはずのナイトメアがいた。

「おっと…まずは俺から質問するぜ。被害者達の額のHの文字…あれはお前のイニシャルか?福島元!」
『違うよ』

ナイトメアはメモリを排出して福島のすがたに戻る。

「僕と姫香さんのイニシャルさ」
「…亜樹子から正体を聞いたときは驚いたぜ。…お前はここで眠り病になったはずだからな。でも、病院に連絡したら、最後の一人は目を覚まして帰ったって教えてくれたよ」
「どうせ疑われると思ったから、偽装したのさ」
「だからあの時、激痛をあじあわせていればいいものを…」

ゼロは呆れた表情である。

「…じゃあ次の質問だ。どうして姫香さんを怯えさせた?好きなんじゃねえのか?」

「わかってねーな。好きなのは、彼女のほう。彼女が僕を運命の王子様と思ってるわけ。…なのに他の男共に笑顔を振り撒く。例えばあの刑事や、お前らだ。あんな変人の教授にまで…。それが辛くてさー。僕は何日も眠れない夜を過ごした。だから、同じ思いをさせたくなったわけよ。彼女にも、眠れない苦しさを一諸に知ってもらいたかったんだ」

「…そんなチンケな動機など、どうでも良い。取り合えず貴様の『欲望』は頂くぞ」
「おいおい…、なに上から目線になってんだよ」

【NIGHTMARE】

『スゲームカつく』

福島は再びナイトメアと化す。

「口を閉じろ雑魚」

――ボガッ!――

ゼロは生身でナイトメアを殴り飛ばした。

「場所が悪い。外にでるか」
(やっぱり、こいつを敵に回すと終わるな…)

ナイトメアを超握力で掴みながら外に引っ張るゼロに翔太郎は冷汗を流していた。
そして屋外にでると、

『は、離しやがれ!』
「わかった」

――ビュン!…ドガン!――

ナイトメアの要望通り、ゼロは手を離した。
投げ飛ばしたという言い方もできるが。

「それじゃ、行くぞ左。三面野郎をぶちのめす」
「あ、あァ…」

二人はメモリドライバーを装着。





*****

翔太郎のダブルドライバー装着に連動して、フィリップにもダブルドライバーが装着される。

「翔太郎」
「来人…もう、あの男とは別れなさい。………そうしなければ……大変なことになる」
「僕は行くよ。相棒がピンチなんだ」

フィリップがそういうと、シュラウドの姿はデータ化されて、エクストリームメモリのなかから消えた。





*****

「…ゼロ…」
「行きなさい、リインフォース。あの魔人(ゼロ)こそが、貴女に秘められた力の全てを…引き出すことのできる唯一の存在」

イーヴィルドライバーが連動装着されたリインフォース。
プレシアは意味深な台詞を口にする。

「ありがとうございます」
「…頑張りなさい」

そういって、プレシアはいなくなった。





*****

「オラオラどうした?もうバテたか?」
『(こいつ…現実でも、バカ強い…)』

ゼロは魔人としての圧倒的強さでナイトメアを圧倒し続ける。

「エゲつねぇ〜」
「なにを言う?…これからだぞ♪」
『今だ!』

翔太郎との会話(すき)を狙い、ナイトメアは光弾を発射してゼロの捕縛から逃れる。

『喰らいやがれ!!』

ナイトメアは体勢を整えて再び光弾を発射するも、


――ウェッ!――
――ギュゥ!ギュゥ!−−


現れたエクストリームメモリとバニティーボックス・ワイバーンモードが攻撃を弾いた。
そして、その二機は内部よりフィリップとリインフォースを出現させると、バニティーボックスはガジェットモードとメモリとなってゼロも手元に戻った。しかしエクストリームメモリだけは何処かへ飛び去ってしまう。

「やあ翔太郎。遅くなったね」
「ゼロは、只今馳せ参じました」

二人は御互いの相棒に笑顔でそういった。

「フィリップ」
「リインフォース」
「再会の挨拶は後にして、まずはあいつを倒し、皆を目覚めさせる」
「用意はいいですね?」

【CYCLONE】
【JOKER】
【MAGICAL】
【LEADER】

「「「「変身ッ!!」」」」

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

二組は流れるような動作でWとイーヴィルに変身する。

『貴様ら、本物の仮面ライダーだったのか!?』
「今更気付いても…」
「もう手遅れだがな」

驚くナイトメアに、二人のライダーは勝利を確信した台詞を吐くと同時に戦いを始め、ナイトメアをあっと言う間に追い詰める。夢では無敵でも、現実での戦闘力は並のドーパントと大して変わらないナイトメア。

『夢の中じゃなきゃ、もう負けはしない』
「『さあ、貴様の欲望を差し出せ…!』」

フィリップが右複眼を点滅させながらそういい、イーヴィルが決め台詞を口にすると、Wとイーヴィルは同時にとび蹴りを行う。

ナイトメアは戦意喪失して敵前逃亡しようとする。

「逃がすか」

【LUNA】
【TRICK】

二人はルナメモリとトリックメモリを起動させ、

【LUNA/JOKER】
【TRICK/LEADER】

ルナジョーカーとトリックリーダーにハーフチェンジ。
右腕を伸ばしてナイトメアを縛り上げる。

『う、腕が伸びた!?反則だ!!』

半ばパニックに陥るナイトメアはエネルギー弾を発するも、全てWとイーヴィルの伸縮自在の腕によって防がれる。

【METAL】
【LUNA/METAL】

Wはルナメタル。

【KNIGHT】
【TRICK/KNIGHT】

イーヴィルはトリックナイトとなった。
追加発射されたエネルギー弾を鞭のような動きで伸縮するメタルシャフトとナイトグレイブで撃墜したうえにナイトメア本体にも攻撃を仕掛ける。

『皆、メモリブレイクだ』
「あぁ…決めるぜ」

【METAL・MAXIMUM DRIVE】

Wはメタルメモリをマキシマムスロットに挿入。

【VANITY】

「ハヤブサ」

【FALCON】

イーヴィルはバニティーボックスをファルコンモードに変形させてナイトグレイブと合体。

【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

Wはメタルシャフトを円を描くように振り回し、黄色い円盤状のエネルギーを複数生成。

イーヴィルはナイトグレイブを高速回転させながら、マキシマムドライブによる多大なエネルギーをバニティーボックスを通して、ナイトグレイブの刃に蓄積させていく。

「『メタルイリュージョン!!』」
「『ナイトファルコンヴィジョン!!』」

掛け声と共に、Wは複数生成した円盤状のエネルギーを自在に弾き飛ばし、イーヴィルも高速回転させていたナイトグレイブの回転を止めると同時に振り下ろしてリングの形状をしたエネルギーの刃を飛ばしてみせた。


二つの必殺技が決まり、ナイトメアは人間・福島元の姿にもどった。


「…姫香リン。…二人で、楽しい夢を…」
『これで、皆眼が覚めるはずだ』

フィリップがそう告げた直後、ナイトメアメモリは完全にブレイクされ、福島は力尽きたかのように倒れた。

そして…。

『いただきます』

――ガブッ!――





*****

「王子様!…どこですか!?王子様!」

――さあ、君もそろそろ眼を覚ますんだ――

(え…?)





*****

一方、風都大学では眼を覚ました照井によって福島に手錠がかけられ、護送されていた。
それを一般の生徒が野次馬根性丸出しにしてながめていた。

「よく寝た。…これでやっと事件解決ね」

眠りから覚めた亜樹子は翔太郎とゼロと共に、福島の護送を見届けにきていた。

「お前のお蔭で久し振りによく眠れたよ」

照井は皮肉のこもった言葉を福島に贈りながら、福島共々車に乗った。
そこへ雪村が真倉を押し退けて現れる。

「福島君……ごめんなさい」
「え?」
「待ってます。運命の王子様じゃなくて、福島君が帰ってくるの…」
「姫香リン…。刑事さん…だしてください」

雪村の言葉に涙を流した福島は照井にそう頼み、雪村の見送られた。

「ビックリ。これどういうこと?」
「ま、なんにしても悪くないラストシーンだ」
「……フン」

三人が帰ろうとすると、

「「「「「「「姫香リン!!」」」」」」」

眠り病から目覚めた研究室の学生達と赤城教授がでてきた。

「いやーまた君の笑顔が見られて良かった」
「ありがとう!姫香、皆皆大好き!」
「え?一番好きなのは俺だろ?」
「いや、俺だ!」
「違う俺だ!」

なんか妙な喧嘩になってきている。

「皆喧嘩は止めて。姫香、皆同じくらい大好きです〜」

「全く変わってないじゃん…」
「天然は何処までいっても、天然というわけだな」
「はぁ〜…さあ、お前の罪を数えろ」





*****

報告書。

事件は終わった。
これで雪村姫香はぐっすり眠ることができ、良い夢をみるだろう。
それにしても、きになるのは…。



「なあ、フィリップ。お前あの鳥といっしょに何処にいって何してたんだ?」

フィリップはそれを聞かれると、

――来人…もう、あの男とは別れなさい――

シュラウドの言った言葉が頭を過る。

「今は、まだ言えない。…でも、これだけは言える。僕の相棒(パートナー)は翔太郎、君一人だ」

真剣な顔でフィリップはそう断言した。

「……今更なにいってんだよお前?」
「あァー!もしかして照れてる?」
「バーカ、んなわけねーだろ」
「でも顔真っ赤じゃん」

亜樹子の言うとおり、翔太郎の頬は紅くそまっている。

亜樹子が茶化す笑いをすると、翔太郎はハードボイルドなど微塵も感じさせない、何時もの雰囲気で怒りだし、フィリップはその様子を微笑ましそうにみていた。





*****

無限宅。

――あの魔人(ゼロ)こそが、貴女に秘められた力の全てを…引き出すことのできる唯一の存在――

「私に秘められた力…」

リインフォースはプレシアに告げられたことを思い返していた。

「なにを考えこんでいる?」

そこへゼロが問うと、

「ゼロ…やはり私の生涯を捧げられる相棒は、貴方しかいませんね///」
「…今頃なにを当たり前のこといっている?早く飯でもつくれ」
「え?まさか、ゼロも?」
「二度同じことを言わせる気か?」

ゼロの言葉から感じられた意思を悟ったリインフォースが喜々とした表情で、

「期待して下さいね!」

幸福満面の笑みで、食事の支度にとりかかった。

その日から無限家の食卓では、今まで殆ど顔を出さなかったゼロが三回に一回(リインフォースが当番の時)だけは、他の家族と共に食卓を囲むようになった。



次回、仮面ライダーイーヴィル

風が呼ぶB/獣【やじゅう】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

これで決まりだ!


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