二重なるX/輝【かがやき】


フィリップに秘められた力についてくることのできなくなった翔太郎。
Wへの変身すら維持すらもウェザー・ドーパントとの戦いの最中、困難となって…。

『フハハハハ!笑わせてくれたお礼です、派手に消してあげましょう!!』

ウェザーは雷を乱発。
しかしそこへ、

――ブゥゥウウウーーーーー!!――

ガンナーAと合体したアクセル・バイクフォームがそれを遮った。
しかし、ウェザーのパワーを受け止めきれず、機体は吹っ飛ばされてノーマルフォームとなってしまう。

「照井竜!」
『復讐鬼君の登場ですか…』
「井坂ァー!!」

そしてイーヴィルは、

『なんだあれは?Wが…!』

リインフォースの意思はWの異常に驚く。

「分が悪いな」

ゼロもこの状況に危機感を抱く。

『余所見してる暇が御有りですか?』

エレメンタルは隙をつくように、地面から地中深くにある岩石を突出させてみせた。

「おっと!…リインフォース、マキシマムドライブだ」
『了解』

――ガシャン!ガシャン!ガシャン!――

【DARKNESS・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルの右足首からは三本の刃・マキシマムブラッカープラスが生え、イーヴィルは思い切りよく跳躍し、

「『ダークネスクリエイター!!』」

ダークネスデストロイヤー同様に激しくドリル回転しながらつっこんでいく。
マキシマムブラッカーが装備されていることもあって、その威力は確実に上昇していた。

『ドアァァーーー!!』

予想外の力にエレメンタルも咄嗟に氷の壁を作るも、あっと言う間に破壊されてキックを喰らう。
最も、メモリブレイクはさけたようだが。

『……イタタ。仕方ない、ここは一度退くとしましょう』

そういうと、エレメンタルは土煙を起こして退散した。

一方アクセルはたった一人でウェザー相手に戦っていることもあって悪戦苦闘だ。

「フィリップ、もう一度Wに…!」
「もう…君には無理だ」

即座に返された言葉は、翔太郎に深く突き刺さった。
フィリップはサイクロンメモリを取り出して、

「照井竜!」

アクセルになげわたした。

【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】

アクセルは即座にエンジンブレードへメモリを挿入してウェザーを斬り付ける。

――ドゥガーーーーー!!!!――

「なんてパワーだ…!」

ウェザーにもダメージを与えるサイクロンの力にアクセル自身も刹那に戸惑う。

――ザシュ!ザシュッ!ザシュン!!――

なんどとなく繰り返される攻撃。

「……振り切るぜッ!」

そしてトドメの一撃をくらわせると、その衝撃でウェザーはかかえていた熊をおとしてしまう。

『なんということを!えぇーい、クソ!』

悔しがりながらも、ウェザーは仕方なく退散する。

それを見て、アクセルとイーヴィルは変身を解除。

「……助かったフィリップ。このメモリは凄いな」

照井はそういってフィリップにサイクロンを返還する。

しかし、

(照井竜なら耐えられるのか…?)

――貴方の真のパートナーは、左翔太郎ではない――

(まさか、真のパートナーとは…)

シュラウドの言葉も相まって、フィリップはWとしての本当の器(ボディ)は照井ではないかと思い始める。

だが、翔太郎は…。

「俺はもう、Wになれない…」

地面に座り込み、絶望していた。

「左…」

リインフォースは、そんな翔太郎を心配するかのように、カトンボのような声をだした。





*****

ウェザーとエレメンタルによって凍傷にされた尾藤を運ぶ照井。
未だに翔太郎はおちこんでいる。

「ほら、翔太郎君行くよ」
「今はそっとしておいたほうが良い」

亜樹子にそう論ずるリインフォース。

「…それに怪我人の保養が第一だ」

照井も半ばその意見に賛同する。

「取り合えず、僕達だけでも下山しよう」

フィリップがそういうと、

「…私はここに残る」

ゼロが突拍子もないことを言い出した。





*****

「そう…残念ね…」

時は過ぎ、冴子は井坂と堺からの報告を電話で聞いた。

「おい!熊はどうしたんだよ!?代わりに見つけてくれるんじゃなかったのかよ!?」

そこへ無粋に尋ねる有馬。

「谷底に落ちたそうよ」

キッパリと言う冴子。

「使えねえ奴らだなぁ!やっちまうぞ!」

【BEAST】

有馬は相当イラついているのか、ガイアメモリまで起動させる。

「調子に乗らないで有馬!」
「…あんたもキツイ女か。決裂だな…!」
「こっちの台詞よ……消えて」

この夜、有馬と園咲の繋がりが切れた。





*****

別荘。

「なんで残ったんだ?…俺を笑う為か?」
「……探偵の端くれなら、自分の頭脳で推理しろ」

なんの思惑か、別荘に自ら残ったゼロに翔太郎はそう問う。
しかし、まともな返答など帰ってくるわけない。

――薄っぺらい男の人生は痛ェ。今にデカイもん失くすぞ――

「…今度はフィリップかよ…」

師匠を失い、そして今相棒さえも失いかねない状況で、翔太郎は己が身を椅子と背もたれに任せる。

(人間は追い込まれた時、想像絶する力を発揮する。…しかし、この試練を乗り越えん限り、貴様は永遠にWには戻れん。そして、相棒さえも失う)

Wに起きた現象を一種の試練と考えるゼロ。

「進化しろ左。半身が前に突き進むというなら、貴様も一歩ずつ近づいていけばいい」
「……無理だよ、もう…なにもかも…」

最早ゼロの言葉さえ満足に届かない。

「…では、熊はどうする?」
「そう、だな。…Wの務まらねー俺には」

【BAT】

「探偵しかねー…」

バットショットを起動させると、翔太郎は席を立ち、土砂降りの闇夜のなかで捜索を始める。

「…今は何をいっても無駄か」

【VANITY】

「飛竜」

【WYVERN】



二人が捜索を開始して半日が経過。
全ガジェットを動員してもなお、熊は見付からない。

「足がフラついているぞ」
「問題ねーよ」

そう言った直後に、翔太郎は力尽きたかのように其の場に座り込んでしまった。
そこへ、バットショットとバニティーボックスが現れる。

「あったか!?」
「少々時間がかかったな」

二機によって案内された場所には、五機のガジェットに囲まれた木彫りの熊。

翔太郎が拾い上げて調べてみると、

――カシャ――

熊の表面の部品が外れた。

「これは……成程な」

ゼロは事件の謎を解くカギたる物を取り出した。





*****

「尾藤さん…ごめんなさい。御父さんが尾藤さんに遺したもの、失くしちゃって…」
「…お嬢ちゃんのせいじゃねえよ。…あの坊主、旦那のやり残した仕事は、自分の出番とか言ってたよな。…旦那のようには上手くできねえか…」

病院の病室のベッドで横になっている尾藤はそう言った。

雨が未だに降る状況で四人が傘をさして帰ろうとすると、
そこへ傘もささずに翔太郎とゼロが現れる。

「二人とも!」
「よー」
「熊、みつけてきたぞ」

ゼロは片手にもった熊を見せる。

「え!?…なにか手掛かりになるようなものあった?」
「…いや、ただの木彫りの熊みてぇだ。…ああそうだ、この写真と熊、尾藤さんに渡してくれねーかな?おやっさんの形見には違えねーしさ」

そういって翔太郎は写真を亜樹子に、熊をフィリップに渡す。

「じゃあな」
「後で連絡する」
「何処行くの?」
「ちょっとな」
「傘はどうするんですか?」
「別に必要ない」

そうしてまた二人は皆と別れてしまう。

「照井竜、僕と組む気はあるかい?」

フィリップはとんでもない提案をしてきた。

「今の翔太郎の力は弱すぎる。…君はサイクロンのパワーにも耐えたし、どうだろう?」
「フィリップ……つまらない質問をするな。俺は一人で奴らを追う」

だが当然のように照井はその考えを一蹴する。

「フィリップ、左を見捨てる気ですか!?」
「リインフォース、そっちの相棒は君のパワーに耐えられるからそんなことをいってられるけど…翔太郎では最早Wを維持できない。君達もあの弱々しい翔太郎をみただろう?」

フィリップは完全に翔太郎とのコンビ存続を不可能としている。

「弱い弱いって言うけど、それは翔太郎君が心の優しい奴あからでしょ!それってあいつのイイところじゃん。それに、翔太郎君は戦いの道具じゃないんだよ。翔太郎君は、ハーフボイルドだからこそ、なにかやる男なのよ!」

亜樹子はそう力説する。

「…そうだ。翔太郎がああいう顔をするとき、それは決まって甘い考えで無茶をするとき…!」

フィリップは傘を放り出して熊を調べる。
そして尻尾というか尻の部分のパーツを取り外し、なにかが記された紙を取り出した。





*****

有馬宅。

「ガイアメモリについて、聞かせてください」
「警察にも言いました。主人の居場所「野獣(ありま)のことではない。貴様自身のことでな」

【ZONE】

ゼロがゾーンメモリを起動させると、それに合わせて鈴子の首筋に生体コネクタが現出される。

「十年前の事件…あんたは共犯者だった。おやっさんの遺した木彫りの熊。それがあんたのメモリの隠し場所だった。あんたはこれを、有馬はビーストを使い…輸送車を襲った」
「そして、情に訴えることで尾藤が罪を被るように仕向けた…セコイ手口だな」
「中々の名推理ね」

鈴子はいっきに冷めた雰囲気となる。

「それで?私をどうしようっていうの?」

「このまま貴様の『欲望』を喰らって有馬共々刑務所行きにするのは簡単だが、左は貴様の為に多くの時間を自ら投げ打った尾藤に…貴様の悔い改めた姿を、見せてやりたいんだ。……まあ、返事は期待せんがな」

「その通りよ。…こう言うのを、カモがネギ背負ってくるっていうのね!」

鈴子は将棋盤の駒全てを2人に投げつける。
そして、

「十年ぶりに取り戻せたわ」

【ZONE】

鈴子は非人間型でピラミッド型をしたゾーン・ドーパントとなった。

『始めましょ』

部屋には将棋盤のような区切ができる。

『七7』

ゾーンが将棋盤のマス目をいうと、二人は一瞬でマンションの外、空中に移動させられてしまう。
不思議なことにその高さでストップしている。

『驚いた?』
「うおォー!?」
「そうか、この力で現金を…」
『御明察。対象物を一瞬で移動させるゾーンの力を取り戻せば、ダムに沈んだ金は直ぐに回収できる』
「させるものか!」

ゼロはドライバーを装着。
リインフォースの側にもそれが具現化する。

「ゼロ…」

【TRICK】
【LEADER】

「「変身っ!」」

【TRICK/LEADER】

イーヴィル・トリックリーダーに変身。

翔太郎もダブルドライバーを取り出すも、

「ダメだ…いまはWになれねぇ…」
『あんた達はあの世で歯ぎしりしなさい』

ゾーンはそういって空中にある区切りを消して逃げようとする。

「逃がすか!」

イーヴィルは腕を伸ばしてゾーンを捕縛しようとするも、

『待って下さい!彼が…』

リインフォースの意思が左の危険を告げる。
仕方なくイーヴィルは右手を伸ばして翔太郎を掴み、右足を伸ばして電柱に巻き付けた。





*****

園咲家・地下。

「なんの御用でしょうかお父様?…なぜ場所に?」

ミュージアムの、ガイアメモリの起源たる場所に呼ばれた若菜。
ガイアメモリにインプットさせる地球の記憶(データ)を取り出す場所に、琉兵衛はいた。

「お前に見せたいものが、そろそろ現れる」
「見せたいもの?」
「ハッハハ。言い方を変えよう。お前といっしょに見たいんだよ若菜。記念すべきその一瞬をね。ミュージアムの未来をみるのは、お前だ」
「なんですの?益々わからないわ」

――ブォォォン――

その時、メモリの地球の記憶を引き出す炉のような装置から綺麗で淡い緑色の光が…。

「…地球が来人を呼んでいる…」





*****

ダム。

「犯人は現場に帰る。…名言だな」

有馬が誰かをまっているかのようにたちつくしていると、照井とが現れる。
照井の手に見張り役のビートルフォンが停まる。

「さあ、メモリを渡せ」
「…お前か、仮面ライダーの刑事(デカ)っていうのは。だけどそうはいかねー。俺が親分に叱られるからな」

有馬の見上げた方向には鈴子がいた。

「やるわよ、マル」

【ZONE】

「あいよ、ベル」

【BEAST】

互いにかつてのニックネームで呼び合うと、二人はドーパントとなる。

「お前もドーパントなのか!」

【ACCEL】

「変、身!!」

【ACCEL】

ライダーに変身した照井はビーストに立ち向かう。
ビーストは持前の怪力で迎え撃つ。
アクセルはビーストの力に苦戦し、河に落され…。

『始めるわよ』
『あいよ』
『五4』

ゾーンの力によって区切(エリア)を縦横無尽に移動してアクセルを翻弄する。

「なんだ、この速さは!?」
『速さじゃない、言わば瞬間移動よ』
『俺達コンビは無敵なんだよ』

パワーと回復に秀でたビーストをアタッカーとして、ゾーンが能力を使って敵の予想できない動きで攻撃させる。
厄介なことこの上ない。

ゾーンが目玉部分からエネルギー攻撃を行い、アクセルをだらに追い詰める。





*****

「大丈夫か?」
「ああ、御蔭さまでな」

尋ね終わると、イーヴィルは変身を解除する。
そこへ、ハードボイルダーに乗ったフィリップと亜樹子。
そしてイビルホイーラーを運転してリインフォースの身体を運んできたヴィヴィオ。

因みに、ヴィヴィオはミッドチルダでの任務の後に、バイクの運転免許を取得している。

「また真犯人に甘さを見せて、殺されかかったね」
「…相変わらず御見通しか。…やっぱ薄っぺらいな…俺」

しかし、フィリップからの言葉は意外なものだった。

「それでいいんだ、翔太郎。…”完璧な人間など居ない。互いに支え合って生きていくのが”…」
「”人生というゲーム”…おやっさんの言葉」

「…二人とも、ゾーンメモリは気付いても、これには気付かなかったようですね」

リインフォースは熊のなかにはいっていた紙をだした。

紙にはこうかいてある。

「Nobady's Perfect……誰も完全じゃない」
「鳴海壮吉のメッセージさ。尾藤勇へのね…。罪を暴きつつ、心をいたわる。…それが鳴海壮吉のやろうとしていた、厳しさと優しさだった。君は彼と同じことをした」
「でも俺は……無力だ」

翔太郎は意気消沈としている。

「だからNobady's Perfect…だってば。僕は大事なことを忘れていたんだ。鳴海壮吉の意志を受け継いだ仮面ライダーWは、戦闘マシンであってはならない。強いだけのWに価値はない。君の優しさが必要だ、翔太郎」

フィリップは翔太郎に手をさしのべる。

「それがもし、弱さだとしても…僕は受け入れてみせる」
「……ありがとよ、フィリップ…」
「行こう、相棒」

「リインフォース」
「ええ、行きましょう」

Wとイーヴィルの二組は亜樹子とヴィヴィオにヘルメットを受け取り、愛用マシンに跨り、戦いの場へと赴く。

風都の街中から、ダムへと続く一本の道路。
相棒の背を前にしつつ、現場にかけていく。

そして、道中で思い出すのは、あのメッセージを影ながらも隠して遺した一人の探偵のこと。
翔太郎はまだまだ彼には遠く及ばないのかもしれない。だが、だからこそ、フィリップと共に居る。
鳴海壮吉の遺志は紛れもなく、左翔太郎とフィリップ――仮面ライダーWに受け継がれている。

次第に、目的地のダムが見え、そこではアクセるがたった一人でビーストとゾーンの相手をしている。
だが二体のタッグ攻撃におされ、苦戦のまま変身が解けてしまっていた。

二組はバイクを停めて降り、ダブルドライバーとイーヴィルドライバーを身につけ、相棒二人にもそれが現れたと同時に歩みだす。

今一度刻みなおした信念を、その身に背負いなおして。
そう・・・今の彼等に、迷いなど無い!


【CYCLONE】
【JOKER】
【VANITY】
【DARKNESS】

「「変身…!!」」
「「変身…!」」

【CYCLONE/JOKER】
【DARKNESS/VANITY】


吹き荒ぶ旋風と瘴気の渦。
二組は二人の戦士の姿となり、威風堂々と足を止め、Wは左手の指、イーヴィルは右手の指を静かに向けて、恒例の言葉を口にする。


「『さあ、お前達の罪を…数えろ』」
「『さあ、貴様らの欲望を差し出せ…!』」

その決め台詞は、今迄のなかで最も切なく儚げで、最も静けさを漂わせた。

『笑わせるな!』

しかしビーストは無粋な口調で二人の戦士を嘲笑う。

戦いが始まると、Wはソウルサイドからのエネルギーによってボディサイドが不安定となって不調。
イーヴィルは両サイド其々からエネルギーが発生し、力を活性化させている。



「なにをしているの来人?そいつではなにもできない」



Wの苦戦ぶりを遠方で観察していたシュラウドはそういったが…。

『やはり力を抑えるのは難しい…!』
「遠慮すんなフィリップ。お前は全開でいけ!」
『翔太郎?』
「俺がついていくから!」

W…いや、翔太郎は心の叫びをそのまま口に出す。

「こんなトラブル、なんてことねー!耐え切れるさ!」
「流石だな、左。それでこそ貴様らしい」

サイクロンからの逆流も憚らず、翔太郎のジョーカーサイドは必死の蹴りを喰らわせ、イーヴィルがそれを褒めた。

「ああ、そうさ。…フィリップが俺を相棒と思ってくれてる限り、俺は二度と折れねえぞ!」
『大した男ですよ、貴方は』

すると右半身からの有り余るエネルギーの逆流はなくなり、イーヴィル共々ビーストにキックとパンチを喰らわせる。

そして、

――ギイィーーーーッ!!――

「「うおおおォォォ!!」」

イーヴィルとWのセントラルパーテーションから幾重もの色鮮やかな光が発せられる。

それに反応して、

――ウェッ!――

――ギガガァ!――

空にはエクストリームメモリが旋回し、地にはエクセリオンメモリが咆哮あげながら駆けてくる。



「まさか、あの光はッ!?」




シュラウドもその光景に驚くしかない。

「な、何々ーー!?」

亜樹子が驚いていると、エクストリームはフィリップの抜け殻をデータ化して吸収した。

「何が始まるの!?」

ヴィヴィオも慌てる。



Wのスロットがとじるとメモリからは緑と紫の光が、まるで線路のように天へと伸び、エクストリームは滑車のようにして滑り降りてバックルへと収まると同時に、その身を開いてスロットを展開。中からはXの文字が刻まれたガイアディスプレイ。

方やエクセリオンは口から奇妙な光をイーヴィルドライバーのバックルに向けて照射。
ダークネスメモリのブラッドアントラーがレフトスロット側にも出現し、エクセリオンは勢いよく跳躍してそこにガッシリ捕まって首を曲げた。すると機体内に隠されていたガイアディプレイが…!



【XTREME】
【XCELION】



エクストリームのエクスタイフーンと、エクセリオンのエクスハリケーンがXの文字を巻き込んで激しい回転を見せる。

『なんだ、この湧き起る力は?まるで、地球そのものと一体化したような!』
『私も、世界が自分と融合したかのようだ!』
「あぁ!こんな感覚は、どんな、メモリの力とも確実に違う!」
「それだけじゃねー!俺達の…心と体も!」

「『「『一つになる!!』」』」

Wとイーヴィルはセントラルパーテーションに手を掛け、それをこじ開けるようにすると、身体とその周囲からは莫大な量のデータが現出する。
そして二人の仮面ライダーは今、輝きの中で究極の強化変身を遂げて最強の力を得た。

「Wとイーヴィルが開いたぁー!?」
「凄い…!!」
「ッ!!」

亜樹子、ヴィヴィオ、照井は三者三様の反応を見せた。





*****

園咲家・地下。

そこでは先程とは比べ物にならないと言える程の眩い光で照らし尽くされている。

「なんなのこの光?…凄く綺麗…!これが私に見せたいモノですの?お父様!」

若菜が聞くと、琉兵衛は高笑いをしてこう断言した。

「そうだ。この時を待っていたのだ!」

そして、

「エックストリィィィーーーーーム!!!!」

爆発的な勢いで地球の記憶が噴き出す様を見て、琉兵衛はその原因たる存在の名を力の限り叫んだ。





*****

「あの二組が、地球と世界を手にした!今やWとイーヴィルは、地球と世界という無限のデータベースと直結している!」

シュラウドは翔太郎では決して成し得ないと考えていたWの進化に思わず叫んだ。

Wとイーヴィルは、身体の中央にあるクリアシルバーとクリアブロンズで占められた部分・クリスタルサーバーとプラネットサーバーを輝かせる。

「このW、及び敵の全てを閲覧した」
「こちらも検策完了」

複眼は点滅するものの、フィリップとリインフォースの越えにエコーがかからない。

「「プリズムビッカー!」」
「「グレインノヴァ!!」」

クリスタルサーバーとプラネットサーバーからは剣と盾が一体化した攻守一体武器が現れる。

【PRISM】
【GRAIN】

クリアカラーをした二本のメモリを起動させて柄の末端部分にあるマキシマムスロットに差し込んでプリズムソードとグレインソードを抜刀する。

『片づけるわよ。六5』

ゾーンはビーストを瞬間移動で嗾けるも、二人のライダーは先読みしたかのようにビーストを切り裂く。

【PRISM・MAXIMUM DRIVE】
【GRAIN・MAXIMUM DRIVE】

マキシマムスターターを押すと、エクスプリズムとエクスグレインが虹色に輝く。

『五3、四5』

立て続けの瞬間移動も物ともせず、ビッカーシールドとノヴァシールドで攻撃を防ぐと同時にソードで反撃する。

河に落ちたビーストに合わせて、Wとイーヴィルも河に着地する。

『こんな傷………うっ!傷が、回復しねぇー!?』

斬られた胸と脇腹は、そのまま傷痕になった。
プリズムソードの必殺剣・プリズムブレイクと、グラインソードの必殺剣・”グレインデストラクション”の威力がどれほどのものかをものがたっている。

いや、それだけじゃない。
プリズムソードとグレインソードに付けられた”ガイアブレード”を通して、エクストリームとエクセリオンの力がビーストの再生能力を無効化しているからだ。

『マル!!こぉんのー!!』

ゾーンは目玉から光線を撃つも、ノヴァシールドとビッカーシールドによって受け止められてしまう。

二人はソードをシールドの鞘に納めると、メモリをとりだしてマキシマムスロットに挿入。

【CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【HEAT・MAXIMUM DRIVE】
【LUNA・MAXIMUM DRIVE】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

【MAGICAL・MAXIMUM DRIVE】
【SONIC・MAXIMUM DRIVE】
【TRICK・MAXIMUM DRIVE】
【KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】
【BLASTER・MAXIMUM DRIVE】
【LEADER・MAXIMUM DRIVE】


メモリの装填が完了すると、マキシマムスターターを作動させ、プリズムマズルとグレインマズルから十重二十重の光線…ビッカーファイナリュージョンと”ジェノサイドスーパーノヴァ”が炸裂。

ゾーンの創り上げた区切(エリア)を破壊すると、お次はゾーン本体に攻撃エネルギーをブチ当ててメモリブレイクした。

『ベルゥーーー!!』

【HEAT/LUNA/JOKER/CYCLONE・MAXIMUM DRIVE】
【SONIC/TRICK/KINGHT/BLASTER/LEADER/MAGICAL・MAXIMUM DRIVE】

『テメーらぁ…!』

ビーストは二人に攻撃しようとするも、

――ザシューッ!――

Wのビッカーチャージブレイク、そしてイーヴィルの”エターナリティスーパーノヴァ”の斬撃がビーストを仕留めた。

「新しいWになった。俺…お前についていけたんだな」
「ああ、翔太郎。君と僕が、完全に一体化した姿だ。サイクロンジョーカーエクストリーム…!」

「これがイーヴィルの進化した力…素晴らしい、素晴らしいぞ!」
「これこそが、イーヴィルの進化形態。”ダークネスバニティーエクセリオン”…!!」

エクストリームとエクセリオンがバックルからはなれると、変身が解除されて翔太郎とフィリップ、ゼロとリインフォースが並び立つ。

そして…。

『いただきます…ッ!』

――ガブリ!――





*****

戦いが終わり、メモリを失った有馬と鈴子は照井によって手錠をかけられ、連行されていった。

「まさかエクストリームにまで到達なんて…。何処まで私の計算を越えるの?左翔太郎…!」
「それが人間の…いえ、仮面ライダーの本質よ」
「プレシア!」

シュラウドが翔太郎の起こしたイレギュラーに感想を盛らしていると、うしろからプレシアが現れる。

「この世に生を受けて誕生した者全てに…強くなろうとしない生命など、有りはしないわよシュラウド」
「………」





*****

有馬鈴子の犯行が発覚し、事件は幕を閉じた。
だが、それは尾藤さんにとっては最も辛い結末になった筈だ。
俺はなんといったらいいのか…。

「シケタ面すんな!!」

――バチ!――

「イテ!…なにすんだい!?」
「味はおちんだろ!」

デコピン炸裂。
しかし、尾藤の視線の先にはリンゴ飴の屋台。
しかし、そこには…。

「そうだよ翔ちゃん♪甘さが逃げちゃう。ねぇ?」

クイーン&エリザベス。

「てゆーか、なんであんたらがリンゴ飴売ってるの?」
「尾藤さんが一山あてるのよ。CDの次はリンゴ飴をプロデュース」
「恐るべき女子高生だ」
「フィリップ君が食べないなら、あたしが貰ってあげる♪」

エリザベスはそういってフィリップのリンゴ飴を食べた。

「いいか?事務所潰したらいかんぞ、後釜」

――バチッ!――

「……応!」

デコピンされながらも返事する翔太郎。

「あぁ、オメーがくれた旦那の形見…大事にすっからよ」

台の上には写真・熊・メッセージがあった。

俺達は新しい力を得た。
これからも俺は必死に走るしか無さそうだ。
追いつかなきゃいけない人が…沢山いるからな。





*****

「リインフォース、私からのプレゼントだ。受け取れ」
「これって、指輪じゃないですか」

ゼロがリインフォースに渡したのは黒真珠のハマった指輪。

「それの名は”魔性の愛(イビルエンゲージ)”……御互いを完全に同格と見なした証であると同時に、互いを決して裏切ることなく、生涯を添い遂げるという絶対なる誓いを交わす為の物だ」

それが何を意味するかは、誰がどう聞いたとしても明白であった。

ゼロは片方の指輪をリインフォースの左手の薬指に…。
そして、リインフォースも片方の指輪をゼロの左手の薬指に…。

「これからも宜しく頼むぞ、相棒」
「こちらこそ、不束者ですが///」

するとゼロは行き成り、

――バッ!――

「ッ!?」
「……///」

リインフォースを抱き寄せ、唇と唇を重ね合わせた。

「…それから、今後私に対して敬語を使うな」
「は、はい!///」



尚、この光景をこっそり見ていた御霊とヴィヴィオは…。

「ヴィヴィオちゃん、もしかしたら弟か妹ができるかもしれないわよ」
「え、本当?」

など、かなり先走った会話をしていた。



次回、仮面ライダーイーヴィル

Yの悲劇/昨【きのう】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

これで決まりだ!





ダークネスバニティー
ゼロとリインフォースが融合(ユニゾン)を行い、ダークネスメモリとバニティーメモリの力で変身した姿。身体能力はロードメモリの代わりにバニティーメモリを使用しているため、ダークネスロードに比べて些か劣るが、自身の武装に理想的な特性を付加することが可能となっているので変則的な戦法を特異とする。
必殺技は右足首から三本の刃・マキシマムブラッカーを生やしての高速ドリルキックこと”ダークネスクリエイター”。
トゥーズイレイザー=マフラーが存在しない。

マキシマムブラッカープラス
ダークネスバニティーのマキシマムドライブの際、右足首から生える三本の刃。ダイヤモンドや超特殊合金で構成された物質ですら難無く切り裂く程の威力を誇る。

身体能力
身長/200cm
体重/105kg
キック力/15トン
パンチ力/10トン
ジャンプ力/60メートル
走力/100mを4秒
ダークネスクリエイター/破壊力・70トン



ダークネスバニティーエクセリオン
イーヴィル・ダークネスバニティーがエクセリオンメモリの力によって超進化した究極レベル。身体の中央にプラネットサーバーが現出したことで全次元世界という広大極まるデータベースと直結し、必要な情報(データ)をリアルタイムで瞬時に探って常に敵の一歩先を行く戦術は可能となる。
ツインマキシマムを越えた六本同時のマキシマムドライブを発動可能とし、グレインノヴァ・プラネットサーバー・エクセリオンメモリの連携でドーパントの特性を一瞬で検策して攻撃を行うことにより、ガイアメモリの力を無効化する。

エクセリオンメモリ
イーヴィルをDVXへと進化させる恐竜型の銀色の特殊ガイアメモリ。
エクストリーム同様に地球の記憶を持たず、イーヴィルを世界の記憶と直接リンクさせる機能こそが最大の役目。手足を曲げてイーヴィルドライバーと合体した際に手足の銀色のラインがX字型となり、頭部を折り曲げることで機体内に隠されたガイアディプレイが現れ、イーヴィルをDVXに強化変身させる。プレシア曰く、イーヴィルに”完全なる絶対勝利を齎す力”とされている。

グレインノヴァ
プラネットサーバーから生成されるDVX専用の攻守一体型の武器。
”超新星の矛と盾”の異名を冠するグレインソードとノヴァシールドに分離する。グレインソードには常時ダークネスとバニティーの力がこめられているため、強烈な斬撃を行うことができる上に、ノヴァシールドには六つのマキシマムスロットが設けられており、それら全てにガイアメモリをスロットインすることで”ジェノサイドスーパーノヴァ”や”エターナリティスーパーノヴァ”を可能とする。ただし、グレインソードのマキシマムスロットにグレインメモリを挿入しなければ、使用することさえできない。

グレインメモリ
「結晶の記憶」が刻み込まれた水色のガイアメモリ。
グレインソードのマキシマムスロットにセットすることで、グレインノヴァの起動や”グレインデストラクション”を可能とする。通常のガイアメモリと異なり、複数のメモリの力を集束する働きがある。

身体能力
身長/200cm
体重/107kg
キック力/17トン
パンチ力/12トン
ジャンプ力/140メートル
走力/100mを3秒
トライデントエクセリオン/破壊力・100トン

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