仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事!
一つ!刃介たちはグリードのアジトへの奇襲を慣行!
二つ!オーズの大半のコアメダルがグリード側に集結!
そして三つ!完全復活を果たしたメズールを倒した直後、ガメルもまた完全復活を果たした!
映司グリードと重量王と七実の願い
『メズールーぅぅぅううううう!!!!』
その叫び声は、ただただ何か大切なものを失った子供のそれだった。
自分にとって、家族同然だったものを喪失した、そんな虚しい叫び声。
ガメルはひとしきり叫び終えると、自分の手にあるウナギ・コアを見て、
『メズール・・・・・・』
静かに呟いてどこかへ歩いていこうとする。
行き先すら定まっていないその歩みだったが―――
「ガメルくん。そのコアも渡してください」
「今となっては、宝の持ち腐れだからな」
真木と四季崎は、セルの山の中から残った五枚の水棲系コアを回収していた。
『イヤだ!』
「・・・・・・さっきも言ったが、宝の持ち腐れだぞ」
『これは、メズールだから、俺が元に戻す!』
ガメルは駄々をこねるように言ったが、そんなガメルに四季崎は呆れながらこう返した。
「無駄なことだ。大体ソレはウナギだろ。頭であるシャチなら兎も角、そこに魂が発生することは有りえねぇぞ、小僧」
『うるさい!お前ら嫌いだ!』
事実を受け止める心の頭も無い幼稚なガメルに、このような説得は逆効果だ。
猪突猛進の勢いで突進してくるガメルに、四季崎はやむを得ず―――
「拳骨をやんないとわからないようだな、ガキ」
背中にある一本の刀へと手をかけ、
『呪刀「鎮」、限定奥義』
怪物となり、
『封刀呪縛』
その奥義の解放と共に、鞘に巻きつけてある長大な経文が生き物のように動き出し、ガメルの身体に纏わり突いて動きを止めた。
『な、なんだコレ!?』
『呪刀の備える二つの奥義の一つさ。まあ、ただ単に敵の身体と能力を拘束するだけなんだが、思いのほか使い勝手がいい』
デシレは感情を切り捨てた様に無感情な声で語った。
経文はガメルの野太い身体を縛り上げ、このままかと思われたが、
『うるさいっ!!』
ガメルはその時、奇跡的な強運と根性によって、
『うぅあああああああああああああああ!!!!』
――バリバリバリバリッ!!ビリッ!――
『!?―――真木!』
経文に大きな傷が生じ、デシレは真木に向けて叫んだ。
『―――――』
真木は無言でギルとなり、ガメルの駆け寄ると、
――バシッ!――
――ビリッ!――
ギルがガメルの腹部に一撃を与えると同時に、経文がどんどん痛み出す。
そして、
――ビリッ・・・・・・!!――
――ッバアアアアアアア!!――
経文は、完全に千切れた。
さらに、それによってガメルが力任せに放出したオーラが一気に噴出し、デシレとギルを吹っ飛ばしたのだ。
その所為で二人の姿は人間のそれに戻ってしまう。
「ちぃ!やはり、あの時の傷を放置したのは拙かったか」
あの時とは、以前グリード総勢でライダー達に襲い掛かった際、ブライの攻撃を経文で防いだ時である。
「ッッ!!?無いよ!?無いよ!?――あ、あったよ!!」
一方で真木は人形を紛失?したのか、パニックに陥っている。
『俺は、メズールを、元に戻す!』
ガメルはそんな二人の様子など気にも留めずに、ウナギのメダルを持ったまま何処かへと去ってしまった。
「いいでしょう。君の欲望に良き終わりが訪れんことを」
「それは良いけどよ真木。なんで人形に海苔眉毛があんだ?」
そうして、真木と四季崎も何処かへ立ち去って行った。
その数分後、
――ザブン!――
河から大きな音を立てながら、這い上がってくるものが三人。
「くッ―――んッ」
「あぁ・・・・・・チッキショ・・・・・・」
「全く、行き成り泳ぐ羽目になるとはな」
後藤慎太郎、花菱烈火、真庭竜王。
三人は身体も服装もずぶ濡れのまま、陸に上がってくる。
「しかし・・・・・・刃介!刃介!」
竜王が真っ先に手摺に掴まりながら名前を叫ぶと、
「火野!火野!」
「聞こえるか!?返事しろ!」
続けて後藤と烈火も叫ぶが、その叫びは届くことは無く、無駄な時間だけが過ぎて行った。
*****
さて、刃介や映司らが落ちた河は、他の河川がそうであるように、最終的には海へと通じている。
したがって、二人も海の浅瀬へと流れていくことになる。
「――い、――!」
岩に寄りかかる形で意識を失っていた映司に、一人だけだが、呼びかける声があった。
「――い!――えないのか?」
その呼びかけによって、映司の意識は目覚めていく。
「起きろ火野!」
「あ・・・・・・鋼・・・・・さん」
やっと意識が戻り、映司の目には自分と同じく、全身がずぶ濡れな刃介の姿がうつった。
束の間の安堵―――だが、
「ア―――ッ!!」
突如として映司の身体に、恐竜コアのパワーが駆け巡った。
瞳は紫となり、その次は、
「火野・・・・・・」
刃介の驚く視線の先には、グリード化した映司の左腕。
「ぅあ!!?――戻れ!!戻れ!!」
「火野!落ち着け!」
「あぁ!くぁあ!?うぅ!?」
刃介が必死に止めても、映司の動揺は収まらない。
いよいよ以って、完全にグリード化する一歩手前の状態にまで来てしまったのだから。
火野映司の両目に映る世界の色もまた、くすみ荒れていたとなれば余計にだ。
「気を落ち着けろ!時間が経てば、力が大人しくなれば、自分の意思で如何にか成る!」
「ぐィッ・・・!グっ・・・!」
論ずる間にも、紫は映司の身体を侵食し続ける。
「チッ!火野ォ、歯ァ食い縛れーー!!」
――ブン!!――
「ガッッ!!」
刃介は素手の状態で、映司のことを力一杯殴った。
それによって海面に吹っ飛ばされ、浮かぶ映司。
「火野。好い加減、頭は冷えたか?」
「・・・・・鋼、さん・・・・・・俺」
「話は後だ。まずは気を落ち着かせろと言った筈だ」
刃介はザブザブと水を掻き分けるようにして映司に近寄り、右手を差し出した。
映司はそれに応じて、右手を出したが、右手の指が思うように動かない。
(右の手も・・・・・・!違う、震えてる・・・・・・)
映司は、否が応でも、自分がもう人とは違うものであることを、認めざるを得なくなっていた。
刃介はそんな映司の心を察し、彼の手を無理にでも引いて、陸地の岩に彼を座らせた。
「火野・・・・・・ひでぇ面だぞ。なんか喋っておけ。ちったぁ心が軽くなる」
「―――怖いんだ、俺・・・・・・グリードになるのが」
独白は響くことも轟くことも無く、浅瀬の海の波音にかき消されてしまった。
*****
その頃、アンクと七実はというと、
「「・・・・・・・・・・・・」」
コアをグリードらにぶちまけ、メズールとガメルのコアが九枚揃った場所に居た。
そんな時、
『プテラ!』
――チャリン!――
上空をプテラカンが舞い、五枚の水棲系コアを落としていった。
「メズールの奴も・・・・・・」
コアを拾うアンクは言葉の途中で、
”メダルの塊であるグリードに、命などありません”
真木の言葉を思い出した。
「・・・・・・消えたか」
「カザリさんの次はメズールさん・・・・・・この分だと、重量王も」
アンクは自分たちに相応しい言葉を述べ、七実は今後の展開を読む。
”人の身体では大したものは味わえなかったようね。物足りないって顔してるわよアンク”
メズールの言葉を思い出しながら、二人はコアを回収し終え、どこかへ去ろうとしたが、
「「―――――――」」
ふと目についたものがあった。
それは、オーズのメダルホルダーであった。
*****
(何とかして戻らなきゃ・・・・・・)
映司はグリード化した左腕を如何にかしようと、混乱して削れた理性を必死に働かせようとする。
「火野・・・・・・」
さすがに刃介も、これでは話し辛い。
「俺の、欲望・・・・・・」
と不意にでた一言。
紫の力を抑制すると言われた、火野映司個人の欲望。
「ところで、コアまで流されてないよな」
「あ、ちょっと待ってください」
映司は急いでポケットに手を突っ込み、残りのコアメダルを全て出した。
ラトラーターの三枚、ブラカワニの三枚、そしてバッタ。
「よし。一旦町に戻るぞ」
「はい。・・・・・・・・・・・・ん?」
「どうした?」
映司は何か奇妙な違和感を覚えた。
何だと思って自分の身体を何度か叩いて見て確認したところ。
「無い」
「あ?」
「オーズのベルトが・・・・・・」
「な、に?―――ちょっと待て、まさか・・・・・・!」
映司の告げた言葉に、刃介も酷く不安なものを感じて懐や袖に手を入れてみたりしたが、
「クソ、俺もだ!」
露骨に不愉快な表情を曝しながら、刃介はブライドライバーを探し、映司も必死にオーズドライバーを探した。
*****
誰もいないせいか、電灯はおろか電球一つすら点いていない薄闇。
鎮まりかまりかえったクスクシエの厨房にて、勝手に冷蔵庫を開ける者が一人居た。
彼は冷蔵庫から一本の棒アイスを取り出して口にする。
「確かに、暫く、これが物足りなかったな」
アンクは独り言を述べると、アイスを持ったまま店内をフラフラと歩いた。
今でこそはアンク一人の、暗くて静かなこの場所だが、彼と映司が居候していた頃は、鬱陶しくなる程に賑やかで明るい場所だった。
当時は馬鹿馬鹿しいと思っていたが、アンクはその思い出に妙な感情を抱きだしていた。
「―――――」
また再びアイスの味を舌にすり込ませるようにして一口食べると、一見下らない様で愉快な記憶が掘り起こされる。
アンクはカウンターに座ると、電球式ランプのスイッチを入れて明かりを灯す。
小さな明かりの傍には、メダルホルダーが置かれていた。
”食べて見て聞いたんでしょう?どうだった?”
「わからない味だ。お前らグリードには」
と、アンクはただ一人で、前回の会話の再現をした。
「・・・・・・だから・・・・・・」
すると、ドアの開く音がして、誰かが店内に入ってきた。
「―――アンク・・・・・・」
比奈だった。
「・・・・・・・・・・・・もしかして、戻ってきたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
アンクは黙ったまま立ち上がり、比奈に歩み寄った。
「喰いに来た」
簡潔に述べ、アイスを見せる。
「美味かった」
「・・・・・・うん」
「他にも、色々だ。――だから・・・・・・」
アンクは、望みを果たしつつあるのに、自分が満たされない理由・・・・・・自分の中に芽生えた本当の欲望を叶える為の一言を発する。
「この身体寄越せ」
混じりけの無い本音を言い放つ。
「・・・・・・え?」
「寄越せ」
比奈は理解するのにワンテンポ遅れこそしたが、それでも理解したのだ。
アンクの言葉は冗談や洒落でなく、本気であり真剣だと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメ。・・・・・・あげられない」
いくらアンクが本当に欲しがっていても、比奈にとっては代え難い肉親の身体だ。
はいそうですか、という訳には行かない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アンクもこの返答を予想していたのか、ただ沈黙するばかり。
重くなるばかりの空気。
そこへ、
「おはよう」
知世子までもが登場してきた。
「ってアンクちゃん!うそヤダぁ久しぶり〜。どうしたのよもう!心配してたんだから」
事情が知らないとはいえ、何時も通り知世子は明るく振舞うも、それだけで和やかになるほど、店内の空気は生易しくは無い。
「一人?映司くんは?今日はご飯食べてくわよね?」
食材をつめた袋をカウンターにおき、
「ていうか戻ってらっしゃいよぉ!屋根裏、あのまま空けてあるんだから、また映司くんと二人で、ね?」
と言った知世子に、アンクは至極冷徹な口調で、
「どっちかは戻ってくるかもな」
とだけ告げた。
そして、それ以上は何も口にすることなく、クスクシエから出て行った。
「え、どういうこと?ちょっと、アンクちゃん?」
知世子はアンクの言動に気に掛かるも、今のアンクが口を割るとも思えず、ただその後ろ姿を見るばかり。
「―――――、」
だがそのアンクの言動の意味に、浅からず理解してしまった比奈は、床に倒れるように座り込んでしまう。
「ひ、比奈ちゃん?どうしたのよ?」
心配する知世子に構う暇もなく、比奈は泣いた。
用意された残酷な運命と、無力な自分の情けなさに。
*****
鋼雑貨店。
日常品を売り物にしているこの場所に、七実は戻ってきていた。
大して広くも無い売り場を歩いていき、草鞋を脱いで、店の奥にある鋼家の領域に帰ってきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
刃介と一緒に食事を共にした居間。
その食材を調理し、香しい匂いをたたせていた台所。
夜には布団を並べて一緒に眠った寝室。
お湯で身体の汗を流した風呂場。
次々と、見慣れたはずの我が家とさえ言える場所を、まるで初めて来たかのように、七実はじっくりとまじまじと、家の中を見て回った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、我刀流道場。
刃介が初めてブライになった場所、刃介が初めてヤミーと合間見えた場所、刃介が自分を受け入れてくれた場所、刃介が自分に告白した場所。
「―――――――っ」
忘れることは出来ない、大切な想い出の場所。
本物だろうと偽者だろうと、バケモノ刀を愛してくれた人の・・・・・・。
「あ」
気付いた時、七実は自分の頬に伝う感触に従って、指でなにかを拭き取った。
口に運ぶと、しょっぱい味のする一筋の涙を。
「本当に・・・・・・私は・・・・・・」
ここまで、変わってしまった。
そう言おうとしたが、口から出ることは無かった。
生きる事にも殺める事にも無感情で、自らが傷つく事にさえ気にしない冷徹な日本刀。
それが、鑢七実という存在だったはず。
それをコレほど変化せしめたのは、もはや偽者だからというだけではすまないだろう。
いや、そんなのは理由にすらならない。なぜなら此処に居る人形は、原典と寸分の狂い無くつくられたのだから。
ならばもう答えは一つ。
「刃介さん」
恋の暖かさ、愛の優しさを知ったから。
*****
「いかん、さっさとベルト見つけねぇと・・・・・・!ガメルも完全復活している今・・・・・・まずい、拙すぎるぞ!」
刃介は焦りを顕わにして懸命にドライバーを探す。
一方で映司はというと、後藤や比奈に言われた、自分のことも守る、という言葉を思い出しつつも
(ごめん、それはもうちょっと後で。この力は要るから・・・・・・この力だけが止められる)
まるで呪いにでも憑かれたかのように、映司の歪な遺志は貫かれたままだった。
*****
――ズドン!!――
ガメルは街中に堂々と現れていた。
怯え、恐れ、逃げ惑う人々のことなどお構いなく、ガメルは目の前に居た男性に掴みかかる。
男性は怯えた表情のまま、
――ジャリン!――
身体をセルメダルの山に換えられ、哀れな最期を遂げさせられる。
だがガメルはそんなことは気にせず、セルの山に青い布を被せる。
『メズール、戻って』
布にウナギを乗せるも、当然なにか変化が起きる訳でもなく、
『ん?なんでかな?まだ、足りないのかな?』
ガメルは状況を理解しきれず、自分の憶測に従い、次々と逃げ遅れた人間をセルメダルにしていった。
だがそれは、ハッキリ言って悪戯にセルを増やすだけの愚行にすぎない。
その様子を高みの見物で眺めていたウヴァと白兵はというと。
「やはり幼稚でござるな、ガメルは。例えアレに宿るものがあっても、それは本当のメズールではないというのに」
「ああ。もう勝手にやってろしか言えんな。――俺は最後まで生き残らせてもらうだけだ」
*****
一方、竜王たちはいまだに刃介と映司の捜索にあたっていた。
だが、ここはまだ町の川沿いだ。とても映司らの今いる場所とは程遠い。
――ピピピピ!――
その時、後藤の懐にある携帯の着信音が。
「後藤だ」
『柏木西のビルにグリードです。バースの強化改修が終わったんで、コアと一緒に届けます。今どこですか?』
電話をかけてきたのは里中だった。
「西川浄水場だ。十四号ルートで向う」
『了解』
会話が終わり、通話も終了する。
「後藤よ。今の話はよもや・・・・・・」
「ガメルがビル街に現れたらしい。俺は新しいバースを受け取りに行く」
「そんじゃ、俺達の出番ってわけだな」
*****
片や、まだドライバーを探している映司と刃介。
海辺をかれこれ数十分も歩いているが一向に見つからない。
さらに、彼等のグリードとしての気配察知能力が、より面倒な事態を報せる。
「まずい、ガメルだ」
「虫の知らせが当たりやがった」
瞳を紫と金に変色させ、二人は自分等以外のグリードの波動をキャッチする。
より焦る二人だったが、その時になってやっと、
「「あった!」」
二人は嬉々として走った。
漣で常に濡れた、砂浜と浅瀬の境界というべきところに揃って流れ着いた二つのベルトへ。
だがしかし、
その二つのドライバーは、映司と刃介にそれを与えた者が拾い上げた。
「アンク」
「七実」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
*****
後藤たちが十四号ルートと呼称するとある道路。
そこを並行するように、一台の自動車と一台のバイクが走っていた。
双方は、お互いに持っていたドライバーを投げて交換した。
投げられたベルトは自動車の助手席に、もう一方のベルトはバイクの駆り手の腰に巻かれる。
後藤の腰に巻かれた新たなベルトは、通常のバースドライバーと違い、色が銀から黒に変わり、グラップアクセラレーターの色も金から銀なっている。
「後藤さん、これを」
里中は仕上げに、全身装甲が描かれた黒いコアメダルを一枚、後藤に投げ渡す。
「これが・・・・・・。火野たちを探してくれ!」
「そのつもりです。届け物がありますので」
言葉の通り、里中の車の助手席には、ベルト以外にもう一つ、プレゼント用に包装された箱があった。
里中はその応対を皮切りに、里中は別の道へと曲がって行き、後藤はそのまま直進した。
――チャリン――
そして、受け取ったばかりの黒いメダル――アーマー・コアをバースロットに投入し、グラップアクセラレーターを捻ると、バックルのセルリアクターが解放される。
「変身!」
――パカッ――
その瞬間、ライドベンダーを疾走させる後藤の身体を青いフィールドが包み込む。
幾つモノリセプタクルオーブを起点とし、黒い装甲と緑のスーツが後藤の身体に展開されていくと、仕上げに頭部のUフラッシャーが赤い閃光を迸らせる。
再誕の名を冠する戦士、仮面ライダーリバースの誕生である!
*****
「「変身!」」
≪SASORI・KANI・EBI≫
≪SAKANIBI・SAKANIBI!≫
――パカッ――
竜王はクエス・サカニビコンボ、烈火はブレイズチェリオに変身。
「ガメル!無駄なことは止せ!」
『リュウギョク、邪魔するな!メズールが帰ってこない!』
「メズールは死んだんだ!貴様も見たはずだろ?」
『死んでない!絶対に戻る!』
ガメルはクエスの説得に一切応じず、二人に向って突進してくる。
「くっ、やはりダメか」
「倒すしかねぇってことかよ」
二人のライダーが覚悟を決めたその時、
――ブゥゥウウウウウン!!――
バイクの唸り声が轟いた。
「後藤!」
現れたリバースの姿に、ブレイズチェリオは歓喜の声を出した。
『バース?』
だがガメルはそんなのお構いなく、リバースの乗ったライドベンダーを力技で止めた。
ガメルに触れられたライドベンダーはたちどころに大量のセルメダルに還元させられる。
リバースはその直前に跳躍し、ガメルの背後を取った。
――ヴィンヴインヴィンヴィンヴィンヴィンヴィン!!――
バースバスターを連射するも、バスター自体に強化は施されていない為、足止めすらしきれて居ない。
「だったらこうだ!」
≪CORE BURST≫
リバースは手ぶらの状態でコアバーストを発動した。
すると、彼の両足にコアの力が送り込まれていき、
「ハッ!」
リバースは大きくジャンプした、丁度ガメルから見れば太陽と重なり合うようにして。
『うぅっ、眩しい・・・・・・』
「喰らえ!」
ガメルが勝手に怯んだうちに、リバースは右足によるキックを叩き付ける。
だがそれだけでは完全体――それも重厚なガメル身体に傷をつけられない。
そこでリバースは残った左足でガメルを蹴って再び空中へ!
「おぉおおお!!」
――ドゥガッ!!――
『ンアァァァ!!』
最初の一撃を行うと同時に再び空中へ舞い上がり、そして両脚による必殺キックを叩き込む。リバースの新必殺技、リバースリターンズ!
「おー、やるぅ!」
「よし、この機に乗じるぞ!」
リバースの善戦振りを見て、二人は加勢する為に駆けて行った。
しかし、
「先ほどのことといい、多数対一は卑怯でござらぬか?」
そこへ三人に声をかけるものが一人居た。
「錆白兵・・・・・・」
クエスは低い声で名前を告げる。
ガメルを庇うような立ち位置で現れた、日傘をさした堕剣士の名を。
『あれ、ゼントウ?』
「ガメル。今回は助太刀するでござるよ」
『本当?』
「本当でござる。あくまで、この戦いだけでござるが」
白兵はそういうと、一枚のセルメダルを取り出し、投入口が出現した自分の額にチャリンといれると、瞬く間にゼントウの姿となり、身体から一体のヤミーを生み出した。
ワサワサと蠢く腕と足と、長く伸びた鋭い毒針が特徴的なサソリヤミーを。
『これで三対三でござる』
*****
トライブ財閥本社地下駐車場。
「じゃあ、私は刃介を探しにいくけど、戦いはそっちに任せたわよ」
ルナイトは映司にブラカワニの三枚を渡したときと同じく、首から下全てを覆い隠す黒いライダースーツとヘルメットをした姿で、ライドベンダーに跨っていた。
「承知しました。一度は途切れた契約ですが、紡ぎ直してくれるというのなら、今再び力を振るいましょう」
応対しているのは、同じくライドベンダーに跨り、焦茶色の忍び装束を着込み、奇妙なベルトを巻いた女。
「不忘――完遂したら、残ったもう一億お願いしますよ?大仕事には、報酬がつきものですからね」
「貴方らしい言葉ね」
そうして、二人の女は地下から地上へと向かっていった。
一人は探すため、一人は戦う為。
*****
所戻って海岸。
「それ返してよ」
「同感だな」
映司と刃介は、オーズとブライのベルトをもったアンクと七実を睨みながら言った。
「その前にお前に用がある」
「ガメルが暴れてるんだ、返せ!」
「おまけに白兵たちまで便乗してんだ!」
映司と刃介は待ちきれずに走り出す。
当然アンクと七実は、右腕や左腕から炎や妖気を放つ。
しかしそれはかき消された。
妖気は妖刀の右腕で、火炎は恐竜の左腕で。
鳥類の右腕と恐竜の左腕、妖魔の左腕と妖刀の右腕は、まるで鍔迫りあうようにぶつかった。
「お前、正気か?そこまでグリードに・・・・・・」
「身体は兎も角――正気だし、本気だよ。御陰でグリードのことももっとわかったから」
「ほう――で?」
アンクが質問した直後、
「電光石火!」
「鏡花水月っ」
刃介の手刀と七実の掌底がぶつかり、ドン!という鈍い音を立てるようにして衝撃波が発生する。
映司はその隙をついてオーズドライバーを奪還しようとしたが、さすがのアンクもバカではなく、とっさに反応して映司の腕をどかそうとする。
しかしなお食いついてくる映司に、アンクはそのままオーズドライバーを向こう側に投げ、映司の横へと力一杯投げた。可能な限り、ベルトから離すようにして。
「火野!」
「隙ありです」
――ドスッ――
「グァ・・・・・・!」
文字通り一瞬の隙をついた貫手が、刃介の腹に突き刺さった。
「な、め、るなァァ!!」
――ブン!――
「きゃッ」
刃介は七実が腹から腕を引き抜く前に、その血濡れた貫手を掴み、無理矢理にブン投げた。
その際に、七実の手からブライドライバーが離れ、オーズドライバーから2mほど離れた場所に落っこちる。
「七実。前々からずっと言っていたが、俺はお前に惚れてるし、俺にはお前が必要なんだ。だから、ちっとやそっとの理由で、手放すわけにはいかねぇ!」
「はぁ・・・・・・貴方はそういうことには何時も本音で語る。だからこそ、こっちまで本音で喋りたくなってしまいますよ」
刃介と七実は相対しつつ、その果てしない緊張感で空気をピリピリさせる。
そんな中で映司は、
「アンク、俺は・・・・・・コアメダルを砕く!――これ以上誰も、完全復活も暴走もしないように!――信吾さんをメダルの器になんかさせない!」
「思ったとおり、お前の言いそうなことだ。――だから俺も決めてきた。俺が必要なモノのために、邪魔なお前を潰す」
立ち上がる映司に、アンクは火炎を放ち、映司がそれを左腕で防いだ隙にアンクは跳躍して映司の背後に回りこむ。
アンクは映司の身体に拳やけりをいれ、浅瀬へと叩き込んだ。
だが映司もやられっぱなしではない。追撃してきたアンクを掴んで、逆に引きずり込んでマウントポジションをとる。
刃介と七実はというと、刃介が一方的に七実へ突っかかっていき、そのまま掴み合った体勢のまま浅瀬へと足が漬かって行き、そして隙を着いて七実が刃介を押し倒して馬乗りになる状態となっている。
「お前が欲しいものってなんだ?・・・人間か・・・?」
「もっと単純だ!世界を確かに味わえるもの――命だ!!」
「何故貴方はそうも戦いたがるんですか?貴方の願いはとうに叶っていた筈なのに」
「確かに俺は力を得た。だが、これだけじゃダメだ!もっと強い力が要る!」
アンクと刃介は、映司を蹴り飛ばしたり七実を突き飛ばして距離をとった。
「グリードは生きてさえいない。タダの物だ。そのくせ、欲望だけは人間以上ときてる。――喰っても寝ても触っても、絶対満たされない欲望・・・・・・!」
九枚という、欠けた数字によって此の世に現出したグリード。
その運命はある意味、変え難いものであり、耐え難いものでもあった。
「お前にはわかるまい。希望を失い、理想を失い、タダ孤独に欲望しか膨らませられなかった俺の、空虚だった時間がどれほど惨くて苦痛だったか」
刃介にとって、十歳から十五歳までの五年間、二十歳から現在に到るまでのもう五年間。
合わせて十年間は、刃介にとって本当に何も無い、灰塵の一掴みもないものだった。
「それがどれ程のことかは・・・・・・!」
「わかるよ。ていうかわかった。――それでもやる」
「自分はグリードになったからか」
「ああ」
映司は簡潔に答え、叫びながらアンクに殴りかかり、殴り返される。
「感情を空にせにゃやってられん程に、退屈で死にそうなくらい、俺には何も無かった!」
「確かに私にはわかりませんよ。だけど、そんなだから、私は今ここにいるんです」
「俺のためにって奴か?」
「ええ」
七実も簡潔に答え、意を決して刃介に平手を打り、同じように平手を打たれた。
「何がわかっただ映司!お前は何もわかってない!グリードなのに、何も欲しくない顔してんだ。調子乗んなよ!!」
「じゃあ七実、俺のためって何なんだ!?俺はグリードであり人間だ。何時までも悠長に待ってやってると思うな!!」
アンクと刃介はこのうえない激昂をさらす。
「お前は欲しがりすぎなんだよ!!命が欲しいなら、人の命も大切にしろ!!」
「知るか!!お前も何か欲しいと思ってみろ!そうすればわかる!お前、何か欲しいと思ったことあんのか!?」
映司とアンクは互いに殴り合い、言葉はどんどん激化していく。
「テメェには判らない。生まれた時から既に最強無敵のお前には、こんな俺のことなんざ!!」
「なら今直ぐ全てお話します!そうでないと、貴方は何時までたっても口に出さない!」
七実も声を荒げながら、目の前の男をまた突き飛ばした。
アンクと七実は、映司と刃介に馬乗りになって胸倉を掴み、
「あんのか映司!?」
アンクは映司の欲望を問い質し、
「貴方の今は、かつて望んだ満ち足りたモノの筈なのに、どうしてそうも戦いの力に拘るんですか!?惚れたと言うのなら、もっと私のことだけを見てくださいよ!」
七実は己がキャラ全てを覆すような大きな声で、涙とも海水ともとれるものを頬に伝わせる。
「俺は・・・・・・俺は欲しかった。――欲しかったはずなのに・・・・・・諦めて蓋して、目の前のことだけを―――!どんなに遠くても届く俺の腕、力ッ!もっと、もっと!・・・・・・もう、叶ってた。お前から貰ってたんだ」
映司は目の前の女の子さえも助けられない自分の無力さを知って、無欲になると同時に何者よりも渇望していた。例えどんなに酷い状況だろうと、どんな人物にだろうと、どんな場所にだろうと、確実に差し伸べることが出来る救いの手を。
「あぁそうだよ、俺はずっと欲しかった。あんなクソつまらん平凡より、仲間と一緒に派手なバカ騒ぎやったり、惚れた女と一緒に暮らしてガキつくって、そんな凄まじく満ち足りた日常が欲しくて堪らなかった!――七実、お前は俺に力だけでなく、欲しかったモノ全部を、初めて出会った瞬間にくれたんだ!――そして、一度味わった以上もう二度と手放したくない!お前という最高の女も、最高に面白ェ人生も!だから俺は更に欲しくなった・・・・・・この手にあるモノ全てを絶対に守れる、神をも殺せる力が!!」
四季崎の仕組んだ運命によって、奇しくも鋼刃介は今の鋼刃介としてここにいる。
だがその代償に、彼は人の身を失い、平凡な幸せを失い、理想さえも失ってきた。
だからこそ、最後に残ったものだけは何が何でも貫き通さなくては成らない。
「「そういえば、一度も言ってなかった」」
映司と刃介は、急に穏やかな顔つきと口調になると、長らく自分に連れ添ってくれた相方に向けて、たった一言だけの純粋な想いを告げた。
「「七実・・・・・・ありがとう」」
*****
片や、リバースたちとガメルらは。
戦いの場はビル街からスポーツスタジアムの周辺に移っていた。
『お前らのことも嫌いだ!俺の邪魔ばっかりするな!』
怒りを顕わにするガメル。
≪CATERPILLA LEG≫
≪DRILL ARM≫
≪SHOVEL ARM≫
「おおおおおおおおおお!!」
リバースは両腕と両脚にユニットを装着し、真っ向からガメルに突貫していく。
『ンンンンン・・・・・・!!』
「おおおおお・・・・・・!!」
リバースとガメルは互いの武器と豪腕をぶつけあい、互角極まる勝負を演じている。
≪CELL BURST≫
ブレイズチェリオは忍刀『鎖』に六枚のセルを投入・解放し、両手で深く構えると、
「オンドリァァアアア!!」
全力で振り下ろし忍刀両断をサソリヤミーの頭にぶつけんとする。
だが、ガギという音がして、必殺の刃がピタリと止まった。
『危ない』
たった一言だけ、サソリヤミーは呟く。
その頭から、野太く鋭い毒針の尻尾を伸ばし、忍刀の一撃を防ぎながら。
「へッ、上等だぜ!」
ブレイズチェリオはサソリヤミーの実力を見て、より闘志を燃やす。
「流水剣!」
クエスは両腕のカニシザースを双剣代わりとして振るい、その刃をゼントウに向けて切り裂かんとしている。
今となっては竜王しか使い手のいない失われた真庭剣法・流水剣。
今回は邀撃の小流の型をとばし、初っ端から猛攻の激流の型で攻めていく。
しかしながら。
『刃取り』
ゼントウはそれら全ての斬撃を受けきった。
無論、刀身ではない。薄刀はその名の通り、針の如く薄く脆く弱い。
なら何処で受け太刀をしたかといえば、それはもう一つしかない―――鍔だ。
「やはり、簡単には勝ちを取らせてはくれぬようだな」
『当たり前でござろう』
ライダーとグリードは、互いに距離をとり、何時でも攻め込めるよう身構える。
そんな時に、
――ヴィンヴィンヴィン!!――
――ヒュンヒュンヒュン!!――
「後藤ちゃん!見ない間にカッコ良くなったじゃん!」
「それはさておき、私たちの出番は残っているでしょうか?」
バースバスターの弾丸と手裏剣、そして二人の男女の声が場の空気を掻き乱す。
片方は背が高く、服の上からでもわかる筋肉質で、年齢は30代ほどの男、伊達明。
片方は焦茶色の忍び装束を着込み、顔も額金と、襟巻と一体化した覆面で隠し、年齢は二十代ほどの女、鋼金女。
「伊達さん!?」
「金女かっ!?」
思わぬ助っ人の登場に、驚きを禁じ得ない。
伊達と金女はしてやったりと言ったに笑うと、プロトバースドライバーと通常版チェリオドライバーを手に持つ。
「伊達明、リターン・・・・・・!」
「ここからは、不忍です」
ベルトを腰に装着する。
『何だお前ら?』
『ほう。これはまた・・・・・・』
長らく戦場から離れていた二人のことをガメルは半ば忘れていたが、ゼントウは感心するように記憶を思い出す。
「「変身」」
セルメダルをスロットに投入し、グラップアクセラレーターを捻り、二人の姿は転送される分厚い装甲に包まれる。
伊達が変身するのは、正規のバースと同等の姿でありながら、リセプタクルオーブの周囲にデータ収集用の赤いマーカーが施され、Uフラッシャーを緑に閃かせた仮面ライダープロトバース。
金女が変身するのは、黒い装甲に銀色のスーツで身を包み、頭部の額金型のバイザーを青く光らせたくノ一、仮面ライダーチェリオ。
「伊達さん・・・・・・大丈夫なんですか?」
「金女・・・・・・傷はもう良いんだよな?」
リバースとブレイズチェリオがそう訊ねると
「Yes!!」
「不言もがな」
プロトバースはサムズアップ、ブレイズチェリオはピースで答える。
『敵勢増援』
この様子を見て、またサソリヤミーが呟いた。
「さあ行くよ後藤ちゃん!」
「無茶しないでくださいよ!」
「勝ちますよ烈火くん!」
「応よ!先輩!」
「悪いな白兵。この勝負、私たちが制する!」
*****
場面は一旦海岸へ戻る。
そこでは今も尚、刃介と七実、映司とアンクが本音と身体をぶつけあっていた。
そんな彼らの様子を一望できる高所に、二人の男が現れた。
「「―――――」」
それは真木と四季崎だった。
真木は右腕をグリード化させ、体内にあるトリケラのメダルを一枚出して映司に向けて放り投げる。
四季崎も袖から二枚のフォース・コアを手に取り、刃介目掛けて投げ放った。
「「うおぁ!?」」
当然コアメダルは見事二人の身体に入り込む。
「「ぐゥッ、うおあああああ!!」」
侵入してきた異物によって体内のパワーバランスを崩され、二人は大きく苦しむ。
「じ、刃介さ――ガシッ!ブンッ!――きゃあッ!」
七実は刃介に身体を掴まれると、そのまま力任せに海のほうへ投げ飛ばされてしまい、大きな水飛沫を立てる。
映司も左手でアンクの『右腕』を掴み、
――ギィッ!――
紫色の『左腕』で、殴るように何かを掠め取っていった。
その手には、タカ・コアが握られていた。
「「――――――ッ」」
瞳を虹と紫に変色させ、正気を失っている二人を、アンクと七実は信じられないものを見る目で、高所でこちらを見下ろす真木と四季崎を発見し、睨みつける。
*****
そして、五対三の戦いが繰り広げられているこの場所では。
「くッ、このままではジリ貧だな」
「じゃあ、ここは一発、デカいの決めようぜ!」
「うーん、あんま感心できねぇけど、やるしかねぇな!」
クエスが苦い声を漏らすと、ブレイズチェリオが捨て身の戦法を提案し、それにプロトバースが渋りながらも乗ってくる。
「また病院に戻ることになるかもしれませんよ?」
「大丈夫ですよ後藤さん。私も伊達さんも、そんな柔じゃありません」
リバースの案ずる声を、チェリオが宥める。
そして、四人はセルメダルを投入。
≪≪BREAST CANNON≫≫
≪ENTOU・JUU≫
≪GEKITOU・KUROGANE≫
プロトバースとリバースはブレストキャノン、チェリオは炎刀『銃』、ブレイズチェリオは撃刀『鉄』を装備。
≪≪CORE BURST≫≫
≪≪CELL BURST≫≫
≪≪CORE BURST≫≫
≪≪CELL BURST≫≫
≪≪CORE BURST≫≫
≪≪CELL BURST≫≫
さらには繰り返してメダルの力を解放していく。
「充填完了!」
準備は整った。あとは、
『ンンンオオオオオオオ!!』
『シェェアアアアアアア!!』
こちらに突撃してくる二体の異形を充分に引き付けて、
「「シュートッ!!」」
「砲撃刀火っ!!」
「獄炎刀砲ぉ!!」
――ドグァアアアアアアアアアア!!!!――
ダブルブレストキャノンシュートはガメルに、砲撃刀火と獄炎砲はサソリヤミーに直撃した。
「「「「うあああああああ!!」」」」
「ん・・・・・・っ」
だが至近距離で撃ったせいか、爆発によって四人は後方へ吹き飛ばされ、その後ろに居たクエスも踏ん張るのが精一杯だった。
「やったか?」
とプロトバースが確認を取ると、爆炎の向こうには未だにガメルが悠然と立っていた。
それからサソリヤミーの姿は無く、代わりにセルメダルの山がある。
しかしこれだけの成果では、とてもあのリスクの応酬としては物足りない。
ついでにいうと、肝心のゼントウはそもそも突撃すらしていないため、ガメルの後ろで悠々とこちらを見物している。
「く、ダメか」
「丈夫すぎるっしょ・・・・・・」
『お前らな―――ウっ、アっ』
ガメルはなおもライダー達に向っていこうとしたが、そこで遂にガタがきた。
『あれ?なんで・・・・・・!?』
ガメルの異変の理由。
それは言うまでも無く、デシレに封刀呪縛で動きを止められ、紫の一撃を食らわされたあの時だ。
その虚無の力により、サイ・コアとゴリラ・コアにヒビが入ってしまったのだ。
(終わりでござるな)
ゼントウは薄刀『針』を納刀する。
当のガメルは、今の一撃でコアのダメージが臨界点に達し、遂には人間形態になるまで弱体化してしまう。
「あ・・・・・・ぁあ・・・・・・う」
立つ力さえも消え失せ、彼の命はもう一分ともたない事が一目瞭然である。
そんなガメルが目にするのは、自分の手から落ちたウナギ・コア。
「メズール・・・・・・」
ガメルはズボンのポケットに手を伸ばし、
「―――これ、あげるぅ・・・・・・」
一本のキャンディを、ただの物であるコアメダルに差し出したのだ。
”ありがとう”
その瞬間、今際の際にガメルは見て聞いた。
記憶から織り成される完全なる幻聴であろうとも、彼の眼と耳には、優しいメズールの姿と声があった。
――ジャリン!――
――パリン、パリン!――
ガメルの身体はただの物であるセルに分解され、その中からサイとゴリラのメダルが一枚ずつ砕け散った。
人間組の四人はそれを見てベルトからメダルをぬき、変身を解く。
「やりましたね」
「ああ」
「一時はどうなるかと思ったぜ」
「兎も角、今はコアを――って!」
四人が気を抜いた隙をつくように、プテラカンが飛んできてガメルのコアメダルを回収して行く。
「させん!」
唯一警戒と変身を解かないでいたクエスはプテラカンを破壊するべく、頭からサソリニードルを何本か飛ばした。
『それはこっちの台詞でござる』
――チャリ――
だが、その攻撃は全て落とされた。
ゼントウの放った居あい抜き、一揆刀銭によって。
『こう言っては悪いと思うでござるが、今のおぬしで拙者に勝つのは無理でござる』
「なに?」
『今おぬしが持っている九枚は、元々拙者のコアであり、その特性は重々承知している。この場で戦っても勝敗は見えているでござろう』
「・・・・・・・・・・・・」
クエスは口を閉じた。
彼女自身、確かに今のクエスの力には多少なにかが不足してきていることに気付いている。
おまけにそのメダルの提供元に勝てると思うほど、彼女は自信家ではない。
忍者とは自他を過小することも過大することもなく行動することが最善なのだから。
『判ってもらえたのなら、拙者はこれにて失礼する。――爆縮地』
シュンという風きり音を残して、ゼントウはガメルのコア7枚とウナギを持って消えていった。
*****
「四季崎、真木ぃ!お前どういうつもりだ!」
「何故こんな無用な手出しを?」
海岸の漣の音さえももみ消すようなアンクの声と、逆に波の音に混ざってしまいそうな七実の声。
だがその隙に映司と刃介は走り、砂浜に落ちているドライバーを拾い上げて装着した。
今尚その瞳を狂気に染めたまま、二人の周囲を三枚のコアメダルが舞い、勝手にバックルへと収まった。そしてスキャナーも自動的に動き出す。
≪RYU・ONI・TENBA≫
≪TAKA・TORA・BATTA≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫
≪TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!≫
そうしてオーズ・タトバコンボとブライ・リオテコンボが顕現する。
尤も、オーズのタカアイは紫、ブライのリュウアイは虹に変色した、暴走状態ではあるが。
「映司・・・・・・」
「刃介、さん・・・・・・」
相方の変わり様に、アンクと七実はそれ以上言葉が出なかった。
「「うぅぅ――あああああああ!!」」
オーズとブライは獣のように跳び、アンクと七実に襲い掛かった。
最早その動きには正気も理性も一切感じられない。
そんな二人に、
「「―――――――」」
真木はプテラのメダルを一枚、四季崎はフォース・コアを三枚をさっきと同じように投げたのだ。
メダルはそのまま無防備に等しいオーズとブライに入り込んだ。
「「うおッ!?」」
コアの更なる投入によって、二人は限界を向かえ、変身が解けた。
「「うぁぁあああああ!!うぉおおああああああ!!」」
二人は悲惨な叫び声を上げながら、その全身を禍々しい光に呑まれていき、そして―――。
『『ン―――――ッ』』
完全にグリードと化した。
刃介の場合は、口が完璧に開かれて内部の歯牙が剥き出しになった上、身体を彩るラインが虹色に変化している。
そして映司は、真木のそれと似通ってはいるが、体色は暗紫色で頭部の色も髑髏のように白く、肩部分には特徴なマントは無く、毒々しいヒレがついている。
「あ―――!」
「・・・・・・ッ」
暴走した二人の変わり果てた姿に、アンクと七実はずぶ濡れの身体を起こして相対する。
勿論ここまで手が付けられなくなった二人に対抗して、
「うおおおおおおおおおお!!!!」
「はぁ――――!!」
全身をグリード態に変貌させる。
多数のコアメダルやフォース・コアを取り込んだことにより、必然的に完全体と同じ姿になって。
アンクの場合は、今まで不完全だった右側頭部が復活して、金髪状の羽飾りがつけられている。
キョトウの場合は、背中に生えている一対の翼が、三対となってより幻想的な存在となっている。
『『ゥオオ!!』』
『『フッ・・・・・・!!』』
そして戦いが始まった。
いや、それは戦いという言葉で形容するべきかさえわからなかった。
擬音を使うことさえ戸惑うような、絵画や神話でしか拝めそうに無い光景。
ガトウの右腕とと映司の左腕から放射される金と青の波動、キョトウの左腕とアンクの右腕から放射される紫と赤の波動。
それらがぶつかり合い、凄まじい爆発を止め処も無く起こしている。
これから起こる最大の試練を予感させるように、運命の神様は彼等の欲望に狂乱と混沌を―――。
次回、仮面ライダーブライ!
神への進化と満足と昆虫王
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