IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫
第十六話
「タッグマッチ」
リーグマッチが近づいてきた。
現在、一年の間では何故かリーグマッチで優勝したら一夏と付き合えるという噂が広まっており、女子達の視線が休み無く一夏に集中している。
「大変だね一夏」
「キラは良いよなぁ、ラクスと付き合ってるから変な噂を流される事も無いし」
既にキラとラクスが付き合っているという事は学園中に広まっており、昨日はシャルロットがその事実を確認に来て、事実だと知ると意気消沈していた。
「そう言えば、一夏はリーグマッチのペアは決めた?」
「ペア? いや、まだだけど・・・そっか、ペアを決めないとなぁ」
「僕はもうシャルルと組む事になってるから、一夏も早く決めた方が良いよ?」
「あ〜・・・」
リーグマッチがペアでの出場と判って、キラは直ぐにラクスと相談すると、シャルロットと組む事になったのだ。
今のところシャルロットが女だと知っているのはキラとラクスだけなので、万が一の時の事を考えてキラが汲む事になったのだが、ISオペレーター志望のラクスは出場しないと知った女子達が随分と残念そうにしていた。
「鈴か箒かセシリアだな・・・」
「あら、私がどうかしまして?」
「あ、セシリア・・・まだ一夏のペアが決まってなくてね」
「あらまぁ」
如何したものかと思っていたのだが、セシリアもまだ決まっていないみたいなので、これは丁度良いかもしれない。
「良かったらセシリア、一夏と組んであげて?」
「私がですの?」
「前の決闘から、それなりに経ったし、今のセシリアの実力を試合で見てみたい・・・良ければ一夏と組んで、そして僕と試合で戦おう」
「・・・わかりましたわ! 一夏さん! 私が組んで差し上げますから、何が何でもキラさんと戦うまで勝ち進みますわよ!?」
「うへぇ〜・・・」
俄然、やる気を出したセシリアに項垂れる一夏だが、セシリアと一夏のコンビは中々良いコンビだ。近接型の一夏と、後方射撃型のセシリアならペアとしての相性は良い。
これが箒や鈴音だと、箒の場合は完全に一夏と同じ近接戦闘型、ペアとして組むには些かバランスが悪い。鈴音も中距離は出来るが、どうしても彼女も近接戦をメインにしているので、やはり一夏とのペアではバランスは悪い方だ。
「となると、一夏には射撃武器の特性も学んでもらわないといけなくなるかな・・・よし、今日の放課後の訓練は一夏に僕やシャルル、セシリアの射撃武器を使って実際に射撃武器の特性を味わってもらおうかな」
「射撃武器か・・・面白そうだな」
一夏もゲームセンターで射撃ゲームをした経験がある。何となくだがISでの射撃にも憧れが無かったとは言わない。
「じゃあ、放課後を楽しみにしててね」
「おう!」
今までの地獄の訓練と比べれば楽しい訓練になりそうなので、何処か余裕のある笑みを浮かべた一夏だったが、この時はまだ知らなかった。射撃のプロフェッショナルであるキラが訓練をする以上、楽な訓練になる筈が無いという事を。
放課後になり、使用許可を貰った第三アリーナに来たキラ達一向は早速だが一夏の射撃武器の勉強会になった。
「まず、射撃武器なんだけど、これは大まかに分けて三種類。第二世代が主に使う実弾兵器、それとセシリアが使うレーザー兵器、そして僕が使うビーム兵器、これが主な種類になるんだ」
「ほうほう、ビーム兵器ってまだどこも実用化してないよな?」
「そうだね、今のところはストライクフリーダムだけだよ」
だからこそ、ストライクフリーダムのビーム技術を欲する企業や国が多いのだが。
「じゃあ、先ずはシャルル、ライフルを一夏に」
「わかった」
キラに言われてラファール・リヴァイヴ・カスタムUを展開していたシャルロットはライフルを一丁取り出して白式を展開している一夏に渡した。
「あれ? でも他のISの武装って使えるのか?」
「あ、うん大丈夫だよ。このライフルは持ち主である僕がアンロックしてあるから、登録している人なら誰でも使える様にしてあるから」
「そっか、なら!」
早速ライフルを受け取った一夏はキラに指導されながら構えを取り、射撃用のシューティングターゲットに銃口を向ける。
「っ!」
引き金を絞り、発射された弾丸は的の中心から少し離れた所を撃ち抜き、次々と現れるターゲットを一夏は同じ要領で撃ち、トータルを出す。
「うん、実弾兵器は光学兵器よりも反動が大きいから、初めてならこんなものかな」
スコアを確認したキラは次にセシリアに指示を出して、スターライトmkVを一夏に持たせた。
「今度はレーザー兵器だから、実弾より反動は少ないけど、だからこそ余計に集中しないと命中しなくなるから」
「おっけー、っと!」
ライフルをシャルロットに返して、今度はセシリアから受け取ったスターライトmkVを構え、新たに現れたターゲットに向けて撃つ。
「うわ、反動少なくて逆に撃った気がしないな・・・」
「ビームはこれより更に反動が無いからね」
「まじかよ・・・」
スターライトmkVでの射撃結果は実弾ライフルより少し下程度だった。反動が無い分、扱いやすいと思われ易い光学兵器だが、その実、実弾兵器よりも難しいのだ。それが結果として出たので、一夏もこれで理解出来ただろう。
「じゃあ、最後は僕のビームライフルね。片方を貸してあげるから撃ってみて」
高エネルギービームライフルを片方受け取った一夏はもう一度ターゲットに向けて構え、そして撃った。
「これ、本気で反動がねぇのな・・・レーザーより撃ちにくい」
「撃った感触が感じ難いでしょ? まぁ、その辺は如何でもいいんだけど、如何? 銃を撃ってみた感想は」
「ああ、まぁそうだな・・・とりあえず無茶苦茶速いってのが感想かな」
確かに、そうだろう。実弾、光学、どちらでも銃というのは速い。そしてそれを避けるには撃たれてから避けていては到底回避不可能なのだ。
「こりゃあれだ。相手が引き金を引く瞬間に動かないと避けられないな」
「一夏、それ正解」
「へ? マジ?」
「うん、銃を避ける簡単な方法は相手の銃口を見て、引き金が引かれる瞬間に避けるのが一番なんだ。勿論、実戦ではそんな事をしている暇なんて無いから、実戦ではどうやって避けるのか、防御するのか、それを教えていくよ」
この後、一夏は只管キラとセシリア、シャルロットの的にされ、兎に角、回避や防御を徹底的に鍛え上げられる事になるのだった。
「や、やっぱ鬼だ……」
翌朝、タッグマッチの組み合わせとトーナメント組み合わせが発表された。
注目の第一回戦第一試合はキラ、シャルロット組VS鈴音、二組の女子の試合で、第二試合は一夏、セシリア組VSラウラ、箒組の試合となった。
「へぇ、鈴となんだ」
「頑張ろう! キラ」
キラとシャルロットはやる気充分、お互いにオールラウンダーのペアながら、優勝候補とも言えるペアは自信満々だ。
一夏とセシリアのペアは箒とラウラが相手という事で、何か因縁めいたものを感じている。
「一夏さん、箒さんは私がお相手いたします。あなたはボーデヴィッヒさんと存分に戦いなさいませ」
「良いのか?」
「あの方はキラさんも侮辱したのですから、本当でしたら私が戦いたいところですが、あなたは織斑先生の事もありますし、御自分で決着を着けたいでしょう?」
「ああ、ありがとう」
セシリアはキラをも侮辱した態度を見せるラウラに引導を渡してやりたい所だが、一夏も大きな因縁があるみたいなので、ここは手柄を一夏に譲る事にした。
勿論、一夏一人だと勝てる相手でも無いので、箒をさっさと倒してセシリア自身も一夏の手助けをするつもりだ。その為に今日までキラ指導の下、一夏との連携訓練もしてきたのだから。
「必ず勝って、二回戦のキラさんとシャルルさんとの試合まで進みますわよ!」
「おう! 必ずセシリアをキラと戦わせてやるぜ!!」
「期待してますわ!」
一夏がラウラと戦うのにセシリアが協力して、セシリアがキラと戦うのに一夏が協力する。利害が一致しているこの二人は、中々良いコンビだった。
そして、遂にリーグマッチ開催の日になった。
この日の為に各生徒は訓練をして、己が腕を磨いてきた。その成果が今日、ここで試される事になる。
既に一回戦第一試合のキラとシャルロットはビットに待機しており、対戦相手の情報を確認していた。
「鈴のデータはクラス代表対抗戦での試合があるから問題無いね。衝撃砲に注意していれば後は問題ない」
「ペアの子はラファール・リヴァイヴみたい。リヴァイヴの性能は僕が熟知しているから、こっちは僕が戦うね」
「うん、それで良いよ。僕は鈴と戦う」
そろそろ時間だ。キラとシャルロットはISを展開してキラから順番にカタパルトに接続する。
「じゃあ、先に」
「うん」
『カタパルトオンライン、進路クリアー、X20Aストライクフリーダム、発進どうぞ!』
管制室にいるラクスの声を聞き、キラは両足に力を入れ、発進する。
「キラ・ヤマト、フリーダム! 行きます!!」
発進したキラに続き、シャルロットもカタパルトに接続すると、先ほどのキラが発進するときに言っていた事を思い出した。
「僕も、言ってみようかな・・・」
『続いてラファール・リヴァイヴ・カスタムU、発進どうぞ!』
「シャルル・デュノア、ラファール・リヴァイヴ・カスタムU! 行きます!!」
リーグマッチの幕開け、果たしてどの様な結果が待ち受けているのか、それはまだ、誰にも判らない。
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