IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第三十九話
自由(フリーダム)VS天帝(プロヴィデンス)



 嘗て、キラが殺した筈の男、ラウ・ル・クルーゼが生きていた。
 クルーゼはISと化した新たなプロヴィデンス、レジェンドプロヴィデンスを駆り、キラの前に降り立つ。

「はぁああ!!」

 キラは両手にビームサーベルを構えてクルーゼに切りかかる。
 クルーゼは右手にビームシールドを展開して受け止めると後ろに飛び、二人は校舎の外に飛び出していった。

「ほう? 以前のフリーダムよりも速いのだな」
「はぁっ!」

 クルーゼはストライクフリーダムのスピードに若干感心を示すが、キラのビームサーベルの嵐に思考を中断すると、自分も両手にビームジャベリンを持って迎え撃った。

「なるほど、君自身の腕もあの時以上か」
「僕は、あれからオーブ軍准将として戦って、そして今はザフト軍の白服だ!」
「フ・・・私と同じ地位にいたのか」

 面白い、とクルーゼは哂うと全てのドラグーンをパージした。
 パージされたドラグーンの数は全部で48基、嘗てのプロヴィデンスやレジェンドを大きく超える数のドラグーンが一基につき三つのビーム、合計144ものビームを放つ。

「っ! グゥッ」

 直撃しそうなビームはビームシールドで防いだり、ビームサーベルでビームを切るなどして対応していたが、それでは間に合わないとビームサーベルからビームライフルに持ち変えると、スーパードラグーンをパージしてレジェンドプロヴィデンスのドラグーンを何とか減らそうとした。

「甘い、甘いよキラ・ヤマト! たった8機のドラグーンでは、私のドラグーン48基に対応し切れまい!!」

 事実、スーパードラグーンは瞬く間に落とされ、キラ自身の被弾も増えていく。

「・・・キラ君、いつまで無粋な枷を填めているつもりかね?」
「気付いていたんですね」
「待っててやろう、さっさとリミッターを切りたまえ」
「・・・・・・」

 キラはリミッターを切る為にキーを立ち上げると高速タッチで作業を始めた。
 しかし、その作業中に思いもしない人物の乱入があった。キラが苦戦しているのを見て参戦しようと思った楯無だ。

「会長! 駄目だ! 今すぐ逃げてください!!」
「あら、私だって伊達にロシアの代表じゃないわよ。ヤマト君も苦戦してるみたいだし、二人で戦った方が良いでしょ?」
「あなたが敵う相手じゃない!!」
「それは私を甘く見すぎよ・・・まぁ、何してるのかは知らないけど、時間稼ぎくらいはしてあげる」

 蛇腹剣(ラスティー・ネイル)を構えた楯無はクルーゼと対峙して優雅に微笑む。クルーゼと自分の実力差を、見抜けていないのだ。

「ふん、無粋なお客様が、私とキラ君の因縁に横槍を入れるか・・・雑魚は下がっていたまえ」
「言ってくれるわね、ロシア代表をあまり舐めない方が身の為よ?」

 瞬時加速(イグニッションブースト)でクルーゼに接近して、一気に懐から切り掛かろうとした楯無だったが、クルーゼは鼻で嗤ってビームジャベリンを一閃、蛇腹剣(ラスティー・ネイル)が一撃で砕かれてしまった。

「っ! 嘘っ!?」

 ならばとナノマシンの霧をレジェンドプロヴィデンスの周りに展開しようとしたのだが、その瞬間、楯無は全方位からドラグーンによる一斉射でシールドエネルギーを一瞬で0にされる。

「きゃあああああっ!!!」
「っ! リミッター全解除完了!」

 ISが解除された楯無をキャッチして隣に来たラクスに託すと、直ぐに一夏の所へ戻るよう指示を出した。

「キラ、お気をつけて」
「何とか、やってみる」

 オルタナティヴが校舎に入ったのを見届けて、キラはクルーゼを睨みつけた。

「てっきり、ラクスを狙うかと思ってました」
「ふん、それも良かったのだが、今は君との戦いに集中したかったのだよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

 一瞬の静寂、そして・・・。

「行けぇ!!」
「受けて立とうではないか!!」

 キラのハイマットフルバーストに対してレジェンドプロヴィデンスのドラグーン一斉射が炸裂した。
 リミッターを切った事で先ほどよりも威力の増したビームやレール砲はドラグーンのビームを相殺していく。
 更に、キラはドラグーンから放たれるビームの嵐の中を飛び、レジェンドプロヴィデンスに接近すると、近距離から胸部の複相ビーム砲を発射した。

「スピードが桁違いか・・・それにこの威力、イージスのスキュラ以上と見ていい・・・成る程、確かに強くなったよキラ君も、フリーダムもなぁ!!」

 キラとクルーゼの実力は互角、勝敗を決するのはお互いの機体の性能差になるだろう。ストライクフリーダムとレジェンドプロヴィデンス、ドラグーンの数こそフリーダムは負けていて、既に全てのスーパードラグーンを落とされているフリーダムは、勝ち目が無い。

「そうだ、一つ教えておこうか。このレジェンドプロヴィデンスは元々、ISに変化したプロヴィデンスが二次移行(セカンドシフト)した機体なのだよ!」
「っ! 二次移行(セカンドシフト)!?」
「見たところ、君のフリーダムはまだ二次移行(セカンドシフト)をしていない様だ、今の状態では私には勝てんよ!!」

 すると、レジェンドプロヴィデンスが黄金の光に包まれた。単一仕様能力(ワンオフアビリティー)を発動した証だ。

「さぁ、このレジェンドプロヴィデンスの単一仕様能力(ワンオフアビリティー)、ジェネシスを受けるが良い!!」
単一使用能力(ワンオフアビリティー):ジェネシス、発動】
「っ! ジェネシス!!?」

 最悪な展開になった。
 幸い、ここは学園上空で、ストライクフリーダムとレジェンドプロヴィデンスの高度は並んでいる。地上に放たれる事は無いが、ジェネシス・・・あのγ線レーザーを放たれれば如何なストライクフリーダムと言えど、無事では済まない。

「その前に!!」

 レジェンドプロヴィデンスの持つビームライフルが変形して小型のジェネシスを思わせる形に変化したのを見て、ビームライフルを連結させ、発射した。
 だが、レジェンドプロヴィデンスは余裕で回避して、ドラグーンを操作するとキラを再びビームの嵐に曝す。

「くっ、うわぁ!!」

 先ほど以上の連射で避けきれなくなった。右足と左腕が被弾して大破、翼も左が落とされてスピードがガクンと落ちる。

「ふははははははははは!!!! これで終わりだ! キラ・ヤマト!!!」
「っ!!!! くそぉおお!!」

 発射されたジェネシス。緊急展開されたビームシールドに全エネルギーを注いで受け止めると、機体の彼方此方から火花が散った。

「ぐぅうううううううううううっ!!!!」
「ほう? だが!!」

 更に威力が増した。ビームシールドを展開している右腕の装甲が融解を始めて、機体ダメージがレッドゾーンを知らせている。

「だ、めだ・・・・・・ごめん、ラクス・・・・・・」

 ジェネシスが止むのと同時にストライクフリーダムが爆散した。
 ギリギリでキラが核エンジンを停止させてシャッターを下ろした為、核爆発はしなかったものの、ストライクフリーダムが爆散して解除された事で、意識を失ったキラは真っ逆さまに地上へ向けて落下していく。
 それを見下ろしていたクルーゼは何を思ったのか踵を返し、瞬時加速(イグニッションブースト)で立ち去った。

「キラぁああああああ!!!!」

 ストライクフリーダムが敗れ、爆散したのを見ていた一夏は一目散に飛び出し、落下するキラを受け止める。
 全身ボロボロで、頭から血を流して意識を失っているキラは、一目見ただけで重傷だという事が判った。

「ラクス! 千冬姉に連絡してくれ!! キラが不味い!!」
「っ! はい!!」

 ラクスも急いで一夏に追い付いて来て、キラの状態を見て涙を流しながら青褪めていたが、一夏の指示を受けて急ぎ千冬に連絡を取る。
 学園、それどころか世界最強と信じて疑わなかったキラと、ストライクフリーダムの敗北、それは一夏たちと、知らせを受けて医務室に駆け込んできた箒たちに、大きな動揺を与える事になるのは、当然の結果だった。




あとがき
続きです。
すいません、すっかり忘れてました。



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