IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫
第七十二話
「ゴーレムとの戦い・1」
突如、襲撃してきた5機の無人機、それぞれは分かれて各アリーナに落ちてきた。
前に襲撃してきた無人機、鋼の巨人という言葉がピッタリのゴーレムTとは違い、このゴーレムVは何処かスマートで、戦乙女という言葉が似合いそうな姿をしている。
女性的に見えるスマートな漆黒の装甲版、バイザー型ライン・アイはゴーレムTの時の複眼レンズよりも広い視野を確保しているのは明白、羊の巻き角の様なハイパーセンサーアンテナが特徴的で、右腕は肘の所から巨大なブレードになっており、左腕はゴーレムTと同じ巨大な腕になっていて、その掌には四門の超高密度圧縮熱線を放つ砲門が追加されていた。
「一夏・・・」
「ああ、前に襲撃してきた無人機の発展型、だな」
第四アリーナで既に待機していた一夏と箒は、襲撃してきたゴーレムVと対峙して、それぞれの武器を構えていた。
ゴーレムVの姿を見て、ゴーレムTの姿を思い出したが、間違いなく以前よりも強くなっているのは明白で、油断ならない相手に一瞬の隙も見せられない。
「だけど、こっちだって前より強くなっている。私は紅椿を手に入れ、一夏は白式が二次移行(セカンドシフト)を果たしているのだからな」
「そうだな、前みたいな無様な戦いはしないぜ!」
気合充分に一夏と箒は左右に分かれて挟み込むようにゴーレムVに接近した。
【単一仕様能力:零落白夜、発動】
一夏は先手必勝とばかりに零落白夜を発動して、雪片弐型の展開装甲をオープンすると、レーザー刃を展開、黄金の光に包まれながら瞬時加速で一気に切り掛かる。
同時に、箒は雨月と空裂の二刀を構えて瞬時加速に入り、展開装甲のビットを射出して、合計4つの刃で切り掛かった。
「なっ!?」
「そんなっ!?」
だが、二人の刃は空を切る。何故ならゴーレムVは瞬時加速でその場を離脱して、二人の攻撃を避けたからだ。
まさか無人機が瞬時加速を使えるとは思っていなかったので、数瞬だけだが二人に隙が生まれる。
その隙を狙ったかの様にゴーレムVの左掌から放たれたレーザーが二人に襲い掛かり、シールドエネルギーを大幅に削られてしまった。
「ぐぅ・・・ほ、箒・・・大丈夫か?」
「くっ、ああ・・・問題ない。シールドエネルギーは半分ほど削られたが」
一夏のシールドエネルギーも零落白夜を発動していた為、三分の一まで減ってしまった。先ほどのレーザーの威力を考えると、このままでは危険だ。
【単一仕様能力:絢爛舞踏、発動】
このままでは負けると考えた箒はこの日の為に楯無に頼み込んで練習に付き合ってもらい、自在に発動可能になった絢爛舞踏を発動した。
紅椿が黄金の光に包まれ、シールドエネルギーを完全回復させると、そのまま白式に触れて、白式のシールドエネルギーも補給をする。
「サンキュ、箒。これでまだ戦えるぜ」
「ああ、行こう。一夏」
まだまだ勝負はこれからだ。一夏と箒はそれぞれの武器を構え、再び瞬時加速に入ってゴーレムVへと切り掛かるのだった。
「このおおおお!!」
襲撃してきたゴーレムVに対して、鈴音は双天牙月を大きく振りかぶり、切り掛かる。
ガギンッ! という大きな金属音と共に、ゴーレムVの右腕・・・肘から先のブレードに止められるのだが、その勢いを殺す事無く、鈴音はゴーレムVの横腹に蹴りを叩き込み、そのままピット内の壁まで蹴り飛ばした。
「こいつ、性懲りも無く何の用よ!!」
壁際まで蹴り飛ばしたゴーレムVに対して、追い討ちを掛ける様に肩部ユニットである衝撃砲“龍咆”を何発も撃ち込んだ。
この狭いピット内での衝撃砲連射を壁際で叩き込まれたゴーレムVは、普通なら粉々になっていてもおかしくはないのだが、ゴーレムVは龍咆が直撃する寸前に機体の周りに浮遊していた黒い球状の物がゴーレムVの前に並んで強力なシールドを発生させ、龍咆を完全に防ぎきるのだった。
「何なのよコイツ! 前のとは違って防御型ってわけ!?」
「鈴さん、下がって!」
聞こえたセシリアの声に反応して、鈴音はその場で身を屈め、低くする。
その瞬間、鈴音の頭上をセシリアが乗るブルーティアーズが飛び抜き、一回転して空中静止すると、その手に持つスターライトmkVを連射した。
「ぐぅ! なんて硬いシールドですの!? ・・・・・・ですが!」
ブルーティアーズの周囲に展開していたビット、ブルーティアーズ4基がレーザーを一斉射する。そのレーザーはゴーレムVに向って真っ直ぐ・・・行かず、明後日の方向へと飛んでいってしまった。
「いただきましてよ!」
だが、それこそセシリアの狙い。ついっ・・・とセシリアが指を宙に滑らせると、ブルーティアーズから放たれたレーザー全ての軌道がグニャリと曲がり、無人機の死角から一斉の襲い掛かる。
偏向射撃、これこそがBT兵器の真骨頂、BT兵器の精神感応制御だ。
今まで、セシリアは偏向射撃は使えなかった。だが、マドカが駆るサイレントゼフィルスとの戦いからずっと訓練を続け、遂に偏向射撃を会得したのだ。
死角から襲い掛かったレーザーに対して、ゴーレムVの搭載されている人工知能は可変シールドユニットの展開は間に合わないと判断する。
仮に間に合ったとしても、レーザーを防御すれば衝撃砲が襲い掛かるのは確実なので、防御を捨てて回避を選択、襲い掛かるレーザー全てを空中で踊るように身をくねらせる事で避け切った。
「じょ、冗談でしょう? あの防御力で、あの機動力ですの!? それに・・・」
無人機だからこそ出来る複雑奇怪な回避を披露したゴーレムVは、セシリアと鈴音に向けて巨大な左腕を向ける。
その掌にある四つの砲門からはチャージを開始したレーザーの光が覗いていた。
「火力もありそうねぇ・・・」
セシリアのセリフに被せる様に鈴音が呟くと、爆発がビット全体を揺るがし、二人の姿は爆炎の中に消えるのだった。
ラウラと本音が居るピットにもゴーレムVが襲撃してきた。
シュバルツェア・レーゲンを展開したラウラと、打鉄を展開した本音が迎撃に当たっているのだが、ゴーレムVの高い機動力は第二世代の打鉄と、第三世代の中では機動力が最も低いシュヴァルツェア・レーゲンでは追いつく事が出来ない。
「クゥッ、この!!」
接近して切り掛かってきたゴーレムVを、ラウラはプラズマ手刀で迎え撃ち、ゴーレムVの背後から本音が近接ブレードを構えて切り掛かる。
「うそ〜!?」
だが、本音の近接ブレードは可変シールドユニットによって展開されたシールドに阻まれてしまう。しかし、本音は少し驚いた程度で、直ぐに目線でラウラに合図を出した。
「了解だ!」
ラウラは右肩のレールカノンを至近距離からゴーレムVに向けて発射、背後の本音を抑えているゴーレムVは無防備の状態で胴体にレールカノンの砲弾の直撃を受ける。
レールカノンがゴーレムVに直撃した瞬間、本音がその場を飛び退くと、ゴーレムVはそのまま吹き飛ばされ、本音の打鉄に後付装備として装備されたアサルトライフルの一斉射を浴びた。
「やったか・・・?」
「どうかな〜?」
アサルトライフルの着弾による煙に包まれたゴーレムVは、その姿が見えなくなった。
油断無く煙を睨みつけていたラウラだったが、煙の一部が膨らみ、中からゴーレムVが出てきたのを確認した。
だが、そのゴーレムVが瞬時加速を使ってきた事に驚き、決定的な隙を作ってしまう。
「しまっ!?」
「ラウラウ〜!」
一気にゴーレムVがシュバルツェア・レーゲンに肉迫してきて、右手の巨大ブレードがレールカノンの砲身を切り落とし、零距離からのレーザーを胸の装甲に直撃させた。
絶対防御が発動したものの、その熱、衝撃は殺せる筈も無く、ラウラの意識が一瞬だが飛んだ。そのままラウラはピット内の壁に叩きつけられ、その場に座り込んでしまう。
「ラウラウっ!?」
本音がラウラに駆け寄ろうとした。しかしそれはゴーレムVのレーザーが襲い掛かってきた事で阻まれ、第二世代の打鉄に出せる限界の速度で回避しながら、ラウラの様子を伺うと、ラウラは眼帯をむしり取っていた。
「やってくれたな・・・鉄屑がああああ!!!」
ヴォーダン・オージェによって反射速度が劇的に上昇したラウラはAICを最大出力でゴーレムVに向けて展開する。
本音に切り掛かろうとしていたゴーレムVの動きは最大出力のAICによって凍り付いたかの様に急停止し、そこにラウラの大口径リボルバーカノンの連射を砲身を斬り落とされて尚、無理やり叩き込んだ。
「うおおおおおおおおおっ!!!!」
本音もラウラに続く様にアサルトライフルを連射して、一気に勝負を決めようとする。
これで決まった。二人がそう思った時だった。AICによって動きを封じられていたゴーレムVが急に動きだしたのだ。
それも圧倒的な出力を誇る瞬時加速を使って。
「ラウラウ〜!!」
「っ!? 不味いっ!?」
リボルバーカノンを連射していたラウラは、瞬時加速で接近してきたゴーレムVの動きに対応出来ない。
本音は動けるのだが、打鉄の性能ではゴーレムVに追い付けず、ゴーレムVは大型ブレードでラウラの身体を切り裂いた。
あとがき
ゴーレム戦途中まででした。
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