IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第七十三話
「ゴーレムとの戦い・2」



 シャルロットと簪が待機していたピット内にもゴーレムVが襲撃してきた。
 突然の襲撃に驚いた二人だったが、直ぐにエクレール・リヴァイヴと打鉄・弐式を展開すると、臨戦態勢を整えて、それぞれの武器を構える。
 ゴルジェを構えたシャルロットは、一気にガトリングレーザーを連射、更に簪は夢現を構えてガトリングレーザーの合間を縫って飛び、ゴーレムVに切り掛かった。

「っ! 速い・・・」

 夢現やレーザーは全て避けられた。ゴーレムVの速度は二人の予想以上ではあるのだが、二人はこれ以上に速い存在を知っている。

「でも、お兄ちゃん程じゃないよ!!」

 高速切替(ラピッドスイッチ)でゴルジェからフシルに武装を切り替えたシャルロットは、高出力のレーザーを連射、正確無比の射撃でゴーレムVの回避ルートを限定する事で簪が攻撃し易いようにする。

「簪!」
「はい!」

 山嵐の一部を発射して、同時に瞬時加速(イグニッションブースト)に入った簪は夢現を構え、レーザーとミサイルを回避していたゴーレムVの回避先に移動、夢現を振った。
 だが、夢現はゴーレムVの巨大ブレードに止められ、ミサイルやレーザーは可変シールドユニットが展開したシールドに阻まれてしまう。

「くぅっ!」
「簪! そのまま抑えて!!」
「っ!」

 一度離れようとした簪だったが、シャルロットの指示を受けて更に力を込めると、ゴーレムVを身動き取れなくする。
 シャルロットは簪がゴーレムVを抑えている間に高速切替(ラピッドスイッチ)によって切り替えたダルクを二本、キラと同じスタイルで構えると、瞬時加速(イグニッションブースト)で一気に突っ込んで、擦れ違い様に巨大な左腕と頭部にレーザー刃を滑らせた。

「まだまだ!」

 左腕を切断され、頭部を潰されたゴーレムVの背後から高速切替(ラピッドスイッチ)でダルクを一本だけ切り替えてグレート・スケールを構えると、その無防備の背中に叩き込もうとする。
 しかし、グレート・スケールの先端は可変シールドユニットのシールドによって阻まれたのだが、簪が至近距離からの荷電粒子砲“春雷”を放ち、ゴーレムVの胴体に直撃させ、シャルロットが離脱した瞬間、その巨体が壁際まで吹き飛ばされた。

「簪!」
「はい!」

 高速切替(ラピッドスイッチ)で再びゴルジェに切り替えたシャルロットは、ガトリングレーザーを、簪は山嵐と春雷を放ち、ゴーレムVに追い討ちを掛けた。
 煙に包まれたゴーレムVは、姿が見えなくなる。既に左腕を落とされ、頭部を破壊されたゴーレムV、これで終わりかと思われたが・・・。

「うそ・・・」
「そんな・・・」

 可変シールドユニットでシャルロットと簪の追い討ち射撃を全て防ぎきったゴーレムVが瞬時加速(イグニッションブースト)で二人の後ろに移動する。
 即座に反応した二人は夢現とダルクを構えて切り掛かってきたゴーレムVのブレードを受け止め、簪は春雷を再び至近距離から放ったのだが、ゴーレムVの速度が先ほどよりも上がっており、瞬時加速(イグニッションブースト)で避けられてしまう。

「さっきより・・・」
「速い・・・!」

 そして、更に驚く事が起きた。
 ゴーレムVは切り落とされた左腕に切断面を近づけると、中からコードが延びて接続、そのまま左腕をくっ付けてしまったのだ。

「うそ!?」
「・・・無人機だからこそ・・・ですね」

 ゴーレムVが復活した左腕のレーザーを連射してきた。
 それを避けながら接近しようとする簪だが、放たれるレーザーの数が多すぎて回避するのに瀬死一杯になってしまう。
 同じく避けながらフシルを構えたシャルロットは、レーザーの合間を縫う様にレーザーを連射、しかしそのレーザーは可変シールドユニットにより防がれてしまい、打つ手無しとなった。

「どうすれば・・・!」
「避けるので、精一杯だなんて・・・!」

 このままではジリ貧だ。何か打つ手は無いのかと起死回生のチャンスを伺っていた二人だったが・・・。

【ミストルティンの槍、発動】

 ゴーレムVの真横から放たれた攻勢エネルギーの水が槍となってゴーレムVを吹き飛ばした事でチャンスが訪れた。

「お姉ちゃん!」
「やほー、簪ちゃん。シャルロットちゃん、今よ!」
「はい!!」

 吹き飛ばされて体制を整えようとしているゴーレムVに向けて、シャルロットはビットを飛ばした。
 ゴーレムVを囲む様に展開された四つのビットが光の輪で繋がれ、輪の中心に居たゴーレムVは突如発生した超重力に押し潰される。

「簪!」
「っ!!」

 楯無とシャルロットが作ったチャンスを逃すまいと、春雷を最大出力で発射する。
 最大出力の荷電粒子砲は身動きの取れないゴーレムVの胴体を貫き、中枢機能とコアの全てを破壊して、ゴーレムVを完全に機能停止させるのだった。


 ゴーレムVのブレードに切り裂かれた筈のラウラだったが、そのブレードの刃はラウラの手で押さえられ、ギリギリの所で止められている。

「本音!」
「了解だよ〜!」

 本音が近接ブレードを構え、ゴーレムVの頭上から股下まで突き刺すと、急いでその場を離脱する。
 串刺しにされたゴーレムVはラウラから離れようとしたのだが、ブレードの刃を握るラウラがそれを逃す筈も無く、その胴体にレールカノンを突き付け、弾丸を発射した。
 レールカノンの砲身は完全に駄目になってしまったが、その弾丸はゴーレムVの胴体を貫いてコアを破壊した。
 動きを止めたゴーレムVをその場に投げ捨てると、眼帯を付け直したラウラはシュバルツェア・レーゲンを解除して安堵の溜息を吐く。

「ラウラウ、お疲れ〜」
「ああ、お前もナイスアシストだった」
「えへへ〜」

 正直、本音の実力には目を見張る物があった。代表候補生クラスとは言わないが、それでも高い実力を持っている。それは本音自身の戦闘能力の高さを示しているのだ。

「まぁ、良い・・・他の皆は、如何しているだろうな」

 とりあえず今は、破壊したゴーレムVを回収することから始めよう、そう思って再びシュバルツェア・レーゲンを展開しようとしたのだが、考えてみればシールドエネルギーが残り少ないことを思い出して、教師が来るのを待つ事にした。


 爆炎に飲み込まれたセシリアと鈴音だったが、絶対防御で命に関わることは無いと炎の中を突き進んだ。
 炎から抜け出ると、ゴーレムVの真上に居た。それをチャンスと思い、セシリアはブルーティアーズ4基からレーザーを発射、偏向射撃(フレキシブル)で死角から直撃させて、更に畳み掛ける様にミサイルを発射、可変シールドユニットのシールドを使わせる。

「鈴さん!」
「まっかせなさい!!」

 既に鈴音はゴーレムVの背後に移動していた。
 連結させた双天牙月を振りかぶり、思いっきり投擲すると胴体を切断、更に龍咆をゴーレムVが機能停止するまで叩き込む。

「このぉおおおおおお!!」

 ゴーレムVの装甲がボロボロになり、両腕や頭部が砕けた所で完全に機能停止した。

「ふぅ・・・」
「終わりましたわ・・・」

 ゴーレムVが動かなくなったのを確認して、二人は漸く一息吐いた。ISを解除することも忘れて、その場に座り込んだ二人は、ボロボロのピット内の天上を見上げ、この後が大変だなぁと苦笑するのだった。


「一夏!」
「おう!」

 シールドエネルギーが完全回復した白式を駆る一夏は再び零落白夜を発動、同時に撹乱加速(テンペストブースト)に入り、ゴーレムVの四方から襲い掛かる。
 ゴーレムVは四人に分身した一夏にAIが対処し切れず、一瞬だがフリーズしてしまい、背後の本物の一夏の斬撃を受けてしまった。

「箒!」
「ああ!」

 一夏が離脱したのを確認して、箒は空裂を一閃、レーザー刃がゴーレムVの左腕を切断する。

「まだまだぁ!!」

 更に箒は雨月を振りかぶってゴーレムVに切り掛かるが、ゴーレムVはブレードでそれを防ぎ、背後の一夏には可変シールドユニットのシールドを展開して攻撃を防ごうとした。
 しかし、零落白夜の前でシールドなど意味を成さず、シールドは紙を切り裂くように簡単に突破され、雪片弐型のレーザー刃が胴体に突き刺さる。

「今だ! 行くぞ紅椿!!」

 トドメを刺す為に気合を入れた箒の呼びかけに、紅椿は新たな力を示した。肩部ユニットがスライドして形を変える。その姿は巨大な矢じりを添えたクロスボウだ。

【戦闘経験値は一定量に達しました。新装備を構築完了しました。出力可変型ブラスター・ライフル“穿千”は最大射程に優れた一点突破型の射撃装備です】
「穿千・・・よし!」

 両肩の穿千の矢じりがゴーレムVに向けられる。PICを全て機体制御に回すと、ターゲットスコープを右目に表示させた。

「一夏!」

 その声に反応して、一夏は雪片弐型を引き抜くとその場を離脱する。
 これで何の憂いも無くなり、箒は穿千をゴーレムVの右腕目掛けて発射した。

「右腕、貰ったぞ!!」

 穿千、展開装甲にも使われている深紅のエネルギーがレーザーとなってゴーレムVの右腕の直撃、ゴーレムVの右腕は一点突破の大出力レーザーによって吹き飛ばされてしまい、これでゴーレムVの武器は全て失われた。

「おおおおおっ!!」

 このチャンスを逃すまいと、一夏が最後の零落白夜でゴーレムVの胴体を袈裟切りで切断する。
 穿千と零落白夜でシールドエネルギーが0になったゴーレムVは完全に機能を停止させ、その場で沈黙するのだった。



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