IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第七十八話
「新たな力とは」



 一夏と箒がSEEDに覚醒する為の訓練が始まった翌日、早速だが二人への訓練は激化した。
 昨日以上のビームの嵐が二人に襲い掛かり、最早回避する余裕すら無い状況の中でも極限まで集中して避ける方法を模索する、そこから反撃する術を見つけなければならないという訓練は、正直に言って地獄以外の何物でもない。

「はい、今日もこれで終わり」
「「・・・・・・」」

 訓練を終えた後の一夏と箒はグロッキー状態で、言葉を発する余裕も無かった。
 指一本、その指先すら動かすだけの体力も無くなってしまう程の訓練を、見学していたセシリア達はというと、絶句を通り越して見ていられなくなってしまう。
 本当にこれが一夏と箒の為になるのかという疑問も湧いてくるのは、SEEDの事を聞かされていないからこそなのだが、それは仕方が無い。

「じゃあ、二人は立ち上がれる様になったらシャワーを浴びて寮に帰って良いよ。僕とラクスは束さんの所に行ってくるから」
「それでは、お疲れ様でした」

 未だにアリーナの地面に倒れて返事をする事が出来ない二人を放置して、キラとラクスはシャワーを済ませると、束が待っている学園地下の極秘開発室に向った。
 極秘開発室、此処はキラがエクレール・リヴァイヴを造った場所でもあり、束に与えられた研究室でもあるのだ。

「束さん」
「お疲れ様です」
「あ、やっと来た〜。もう、遅いよ〜」

 先に一夏達のISのデータを開いて眺めていた束は、部屋に入ってきた二人の方を振り向くと、少し頬を膨らませる。

「すいません。それより、如何ですか?」
「う〜ん、このブルーティアーズとエクレール・リヴァイヴ、それから打鉄・弐式に関してはキー君に任せるよ〜。甲龍とシュヴァルツェア・レーゲンは束さんとラーちゃんでやっておくから」
「まぁ、適任でしょうか。フリーダムと同じ戦闘タイプのブルーティアーズと、キラが手掛けた二機は、キラが一番やり易いでしょうし」

 ならばと、早速だがキラはブルーティアーズのデータから展開を始め、新しく第四世代として改造する為のプランを練り始めた。

「BT兵器に関しては操縦者の空間把握能力に依存しないドラグーンのデータを応用して作り直すとして、展開装甲を如何しようかな・・・」

 ブルーティアーズのデータを片手でスクロールさせながら、もう片方の手では設計図を作成していく。
 二つの作業を同時進行させているのだが、キラにとって、この程度は朝飯前の作業だ。

「BT兵器に搭載してみるのも面白いかな。射撃一辺倒にするんじゃなくて、紅椿みたいに展開装甲でレーザーの刃を展開しながら射撃をしたり突撃させたりするのも・・・」

 いっそ、BT兵器をドラグーンとして作り直しても良いのだが、それだと第五世代にしないとキラの気が済まないので、あくまでBT兵器として考える。

「スターライトmkVも改造しておこう。いっその事、インターセプターの刃をレーザー刃に変えて、ライフルに接続して銃剣の様にして使える様にしてみるのも有りかな」

 もしくは完全にインターセプターとライフルを一緒にしてしまって、銃剣として作り直すのも良い。そうすればインターセプターの分の容量が空くので、新しい銃型の兵器を搭載出来る。

「よし、後はブースター周りを展開装甲にしておけば速度も今まで以上に出せるから、射撃ポイントへの移動もスムーズになる。これでブルーティアーズは決定かな」

 次にエクレールリヴァイヴだが、これは正直、キラが全霊を込めて造った機体だから、弄りようが無い。なので、紅椿と同じ全身展開装甲にしてしまう事にして、次は打鉄・弐式だ。

「これはブースターと夢現を展開装甲にしてしまえば良いかも」

 夢現は雪片・壱型や弐型の様に展開装甲を使った武器にして超振動の刃とレーザーの刃、二つを使い分けられる様にしてしまう。

「うん、これで打鉄・弐式も完成」

 ブルーティアーズはキラが手掛けた機体じゃないので、色々と改良する点が見つかったが、その他の機体に関してはキラが関わった機体なので、特に弄る必要は無い。
 束とラクスの方は如何なのかと見てみると、甲龍は双天牙月に展開装甲を使ってレーザー刃を展開出来る様にしただけで、特に変化は無かった。
 シュヴァルツェア・レーゲンは全身展開装甲にして、レールカノンの部分を実弾のレールカノン、レーザーのレーザーカノンと、両方を使い分けて発射出来る様にしている。

「キー君の方は設計終わった?」
「ええ、後は・・・」
「白式と紅椿、それから暮桜・真打ですわ」

 第五世代としてバージョンアップさせる三機、特に白式は二次移行(セカンドシフト)を果たした機体なので、細かい調整をしながら第二形態のまま第五世代としてバージョンアップさせなければならない。

「まず、レーザーの部分は全部ビームに変更、紅椿と暮桜・真打にはビームシールドを搭載して、白式にはパワーエクステンダーを搭載しようと思うんだ〜」
「いっその事、白式と紅椿はエネルギーを全てデュートリオンエネルギーにしてみては如何ですか?」

 インパルスの様にデュートリオンエンジンを搭載して、紅椿には絢爛舞踏を発動すると、白式へのデュートリオンエネルギー送電システムが発動する様にすれば、よりスムーズにエネルギー補給が可能になる。

「暮桜・真打にもパワーエクステンダーを搭載して、デュートリオンエンジンも載せる?」
「そうですね、これで第五世代としては完成ですね」

 ただし、もう一つ白式には搭載した兵器がある。それは掌に雪羅以外の武装として搭載したパルマフィオキーナ掌部ビーム砲の事だ。

「それから、第五、第四全ての機体をTP(トランスフェイズ)装甲にしてしまえば実体兵器は効果が無くなります」

 PS(フェイズシフト)装甲やVPS(ヴァリアブルフェイズシフト)装甲はISのエネルギーでは不可能、第五世代にする三機なら可能だろうが、燃費の悪い三機には不向きなので、全機ともTP(トランスフェイズ)装甲にしたのだ。

「設計図、けっこう簡単だったね〜」
「まぁ、僕はこの後もブルーティアーズに新しく搭載する武器のアイデアを練り上げなければならないんですけど」
「銃系統ですか?」
「うん、セシリアには完全に遠距離型に固定してしまう事にしたんだ。精々スターライトが銃剣になった程度しか近接戦闘手段は無い」

 だが、それで良い。元々、ブルーティアーズは一対多を想定されている機体だが、セシリアは学園に来てからは仲間と共に多対一の戦闘が多くなったのもあり、どちらにでも対応出来る機体にしてしまった方がセシリアも使いやすくなるのだ。

「まぁ、後は実際にバージョンアップしていくだけだねぇ。改造が楽しみだよ〜」

 基本設計が完成したので、一先ず作業を終える。
 後は特にやる事が無いので、キラが淹れた珈琲を飲みながら(ラクスは自分で淹れた紅茶)、それぞれのバージョンアップ作業日を決める為の話し合いを行った。

「一番時間が掛かるのは白式、紅椿、暮桜・真打、ブルーティアーズですので、キラはエクレール・リヴァイヴを、束さんが打鉄・弐式を始めては如何でしょう?」
「その後で僕がブルーティアーズを、終わり次第、束さんが先に始めているであろう第五世代へのバージョンアップに加わる形かな?」
「だね〜」

 作業日程も凡そ決まり、後はのんびりとお茶を楽しむ。
 三人の後ろでは、束が作っていたのであろう第六世代型ISの設計図が、静かにディスプレイに表示されていた。
 篠ノ之束専用、第六世代型IS。コードネーム・・・・・・“楽園の兎”。




あとがき
続きお待たせしました。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.