前書き
この作品は、アダルトゲームブランドリリスの退魔忍アサギシリーズを原作としています。型月などと異なり、完全な抜きゲーとなりますが、むしろミリタリー・ガンアクションを描いた作品にする予定です。書いたきっかけは、小説投稿サイトのハーメルンで非18禁のバトルシフトの作品をみたことが理由です。ゲーム本編のアサギ3で敵対組織と組んだ政府の手により、汚名をき」せられというNERVや公安9課じみたと同じ手でjはめられ、パワードスーツを有する海兵隊的部隊に攻められ、壊滅するという作品をミリタリーテイストにするという方向で進めています。
ただ、そこに行き着くまでに設定上アメリカと中国が激突したとなっており、そこが面白そうなのと、日本もおそらくかなり治安が悪化していると思われる状態であり、どうして原作のような世界になったのかを描くために、前日譚的な話から書かせていただきます。ご容赦ください。
なお、原作サイドで詳細や歴史設定やパワードスーツの武装に12.7m重機関銃(M2ブローニング?)が用いられているなどを除き、歴史や銃器についての設定がないため展開はかなりオリジナルでかつ名前だけ治安が悪化していることを表現するために他作品の悪の組織を出すと明記しておきます。
002 台湾危機とそれがもたらした戦い1
その日、世界は震撼した。中華連合が台湾を占領した報が衝撃を伴って、世界を駆け巡った。
台湾は、中国を仮想敵国とし永年に渡って備えてきた。にも関わらず、極めて短い間に占領されてしまったのは、中華連合が巧妙な手を使ったためだ。
中華連合は、対岸に侵攻のための地上戦力の結集させたが、世界のどの国にも演習であると見事に誤解させられた。精々連邦加盟に対する圧力をかけようとしているだけだと。
本格的な侵攻の前に必ず行われる物資の集積や活発な通信をあえて行なわないことにより、侵攻の意図を隠そうという中華連合の策が実ったのだ。
イラクが過去に使った手法を参考に、誰にも気づかれることなく、戦力の集結を終えると、電撃的な侵攻が台湾に行われた。
始めに実行されたのは、斬首作戦だ。元首の総統を始めに台湾の要人を拘束し、国の機能を麻痺させることを狙った作戦であり、実施に当たった中華連合軍陸軍特殊部隊は無事にこの任務を果たした。早速作戦の第2段階が行われた。
中華連合軍空軍機が相次いで飛来し、空爆を開始した。先鞭を切ったステルス機が、防空網を突破し、レーダーサイト、通信施設、空軍基地の滑走路を破壊、これにより制空権を一時的に確保すると次は非ステルス機が地上攻撃を担った。
第3段階では、爆撃機と輸送機が台湾上空に押し寄せ、爆撃機がさらなる破滅をもたらした。輸送機から降り立った空挺兵は、台湾の各所を制圧した。
そして最終段階である第4段階が開始された。対岸に集結した地上戦力が東海艦隊に守られながら、台湾に上陸した。秘匿を理由に侵攻作戦は直前に知らされたために、その動きは鈍く、物資も不充分なため台湾軍が健在ならば、撃退されていたに違いなかった。
だがこの時、台湾軍に組織的に抵抗する力はなく、味方と合流した中華連合軍陸軍は、瞬く間に台湾全土を陥落せしめた。五星紅旗が台湾に翻った。
侵攻の翌日、中華連合は台湾の併合を世界に向け公式に宣言した。台湾の同意の元、分断されていた同胞が
統一を果たしたと述べ、侵攻とは一言も発さなかった。
当然ながら、非難声明が浴びせられ、その中には公式に台湾の独立を認めていない国も含まれていた。
この事態に国際連合は、緊急の安全保障理事会の開催を決定した。
中華連合は、この動きをさして気にしなかった。非難声明を発した国々もそれ以上の行動に出るはずはないと正しい確信を抱いており、安全保障理事会にせよ拒否権さえあれば無力な存在だった。
唯一アメリカ合衆国の反応が気がかりだったが、結局のところ台湾の併合を許容すると判断していた。
中華連合の軍事力は、アメリカ合衆国も対決を躊躇う水準に達しているという妥当な根拠に基づく判断だったが、アメリカ合衆国の態度は強硬だった。
中華連合の即時退去を要求し、指定の期日までに台湾から退去しない場合連邦の総意として武力行使すら辞さないとの通告を発した。
連邦の総意といっても、これがアメリカ合衆国の意向であることは明白だった。
強硬な対応を取らせた理由の一つは、連邦の盟主の地位を失うことへの恐れからだった。最大の国力をもっているにも関わらず、加盟国に対する攻撃を容認したために影響力を喪失するのではないかと恐怖したのだ。
また台湾近海のバシー海峡の存在も強硬な対応に繋がった。これは、世界的な海上通商路の一つであり、中華連合が台湾を領有してしまえば、必然的にその影響が及ぶことになる。
旅客輸送の主力が航空機に移ってから久しいが、依然貨物輸送の主力は船舶のままだ。貨物輸送を行う船舶の通り道が海上通商路だ。 海上通商路に影響力を行使できる国が洋上封鎖を実施すれば、製品輸出の滞りや工業やインフラを支える原油を中心とした資源が手に入らないなど、世界経済に 深刻な影響を与えることも可能となる。
中華連合に世界経済を左右する影響力を握らせるわけには行かず、バシー海峡を元に太平洋に進出しやすい環境を与えるわけにもいかなかった。決して譲れない利害の存在からアメリカ合衆国は、強硬姿勢を見せたのだが、裏には民意に押されたという面も存在した。
大多数の国民が、熱烈に報復を主張し、世論は戦争一色に染まった。ここまで世論が過激な論調を示したのは、中華連合が宣戦布告をせず台湾侵攻を行ったことに端を発している。
宣戦布告なしの侵攻作戦の発動は、かの真珠湾攻撃を
連想させ、国民世論を沸騰させたのだ。アメリカ世論は、台湾解放のための軍事作戦の発動を何よりも求めた。
いずれにせよ、確かなことはアメリカ合衆国は不介入を貫くという中華連合の予想が外れたということだ。
この時点で中華連合が取りうる選択肢は二つあった。一つは、勧告を素直に受け入れ、台湾から速やかに撤退するという選択。この選択を取ったならば、アメリカ合衆国との戦争による被害を被ることはない。
もう一つは、アメリカ合衆国との戦端を開くことである。アメリカ合衆国との戦争で勝利してしまえば、占領した台湾を引き続き領有することができる。
台湾の領有を優先するならば、この選択しかない。
但し、アメリカ合衆国と開戦すること自体が問題だった。世界最大の超大国であるアメリカ合衆国の戦力は、強力極まりないものである。
流石に軍事力の増強に余念のなかった中華連合もアメリカ合衆国との正面対決には逡巡をみせた。
両国ともともに互いが核保有国であるために、台湾を巡る局地戦にとどめたいという共通認識を抱いていたが、中華連合としては局地戦であってもアメリカ合衆国との戦闘は避けたかった。
勝利を得たとしてもそこに至るまでの損害が大きすぎるためだ。
これがブラフであればよかったのだが、アメリカ合衆国は着々と戦争の準備を進めていた。矛を交える気は誰の目にも明らかだった。
中華連合は、どちらの選択を取るかだいぶ迷ったものの、最終的に後者の選択を選んだ。台湾への領土的野心を捨てきれず、アメリカ合衆国と開戦する道を選んだのである。
ここにアメリカ合衆国と中華連合と世紀の対決が実現した。恐らく誰にとっても実現して欲しくなかった悪夢だろう。その悪夢の元、どちらも戦争準備を開始したが、中華連合が最初に交戦したのはアメリカ合衆国ではなく、海を挟んだ隣国、日本だった。
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