第6話
私は、ルーナ・スプリングフィールド。
英雄、ナギ・スプリングフィールドの娘。
現14歳。弟に9歳のネギがいる。
私の容姿は、金髪のオッドアイ。
お父さんと似ても似つかない為、恐らく母親に似ているのだろうが、母親は、正体不明。
もしかして、正体が分かってはいけない人とか?
まあ、どうでもいいけどね。
そんな私は、今日、魔法学校を卒業する。
私は、はっきり言って落ちこぼれだ。
ネギに才能を全部もっていかれたようだ。
まあ、その分、武術とかは凄いけど……学校のお父さんの信者がウザいことこのうえない。
ネギを洗脳しようといらんことを吹き込もうとしたので、ぶちのめしてやったわ!
主席のネギが卒業証書をもらって、さっさとその場を退散する。
ナギ教のアホがネギを洗脳する前に、ネカネ姉さんとアーニャと逃げる。
アーニャはネギのことを好きな元気っ子。
隠しているけどバレバレだ。
そして私の部屋で……
「ルーナお姉ちゃん。何て書いてあったの? ボクが先に見ていい?」
ああ! なんて素敵な笑顔! 純粋無垢! 頑張って良かった! あの信者どもが接触していたらもっと歪んでいただろう。
ただでさえ、あの雪の日のことがあるのだ。
「う〜ん。アーニャとネギと3人で同時に開こう。いいでしょ、ネカネ姉さん?」
「まあ、別に決まりなんてないから、早くしたら? 私、古代の研究がしたいのよ」
「ネカネさん……相変わらず変わり者よね。古代なんて、お金をまったく稼げないのに……」
「アンナちゃん。ザラシバガギ!」
出たよ。グロンギ語という変な古代語。
ネカネ姉さん、これさえなければ完璧な女性なのに……
変なタペストリーやら汚いベルトまで持っているし……
「ヅビンゴググゲバギゾゴグゲギグスンジョ!」
「あ〜。じゃあネギ、アーニャ。せーの」
『そーい!』
うん? 同じ?
「え? 日本で先生をしながら月と太陽と歩むこと? なにこれ? ルーナお姉ちゃん、分かる?」
「いや、ネギに分からないのに私に分かるわけないでしょ? うーん……アーニャ。占いでナニカ分かる?」
「それが、タロットがね……必ず月と太陽しか出ないの。こんなことあり得ないわ」
すると……
「月? まさか! 創世王? ひゃあーーーーーー! 古代の石版のとおりだわ! 日本ね? 日本なのね!? 私も行くから! 行くったらイくね!」
『え〜……』
「ギラギビラグジョ、ヅビンゴグ」
と、いうわけで、私たち4人は突貫で日本語を勉強する。
当然習得は私が一番遅い。弟に習うしまつ。
う、情けないよ〜。
時が経ち……
日本の麻帆良学園都市に向かう。
じいさんがここに行けって……あと月と太陽は知らないらしい。
私はあまりの人の多さに驚愕する。
ネギとアーニャもだ。
ネカネ姉さんだけがブツブツ五月蠅い。
なんとか案内を頼りに、麻帆良学園都市に到着する。
「ここも人が多い……うん? ネギ?」
ネギがいない?
「ぎゃーーーーー! 痛いよ〜! ルーナお姉ちゃん助けて!」
なにがあった!?
私の剛脚がうなりを上げる。
瞬時に声の元に……すると、馬鹿そうな同年代の女がネギの頭を片手で持ち上げていた。
「うちの弟を離しなさいよ。馬鹿ヅラ」
「あん? あんた……こいつの姉? ふーん……あんたの方が馬鹿そうじゃないのよ」
「ギラ、バンデギダダ!?」
「へえーやっぱり馬鹿じゃない。変な言葉」
「あ、こ、これは違う。たまたまよ」
う、ネカネ姉さんのせいでグロンギ語が出てしまった。
「だいたいあんたの弟、失礼なのよ! いきなり失恋の相が出ているって言ったのよ! こっちはやっとホントの恋を自覚したばかりなのに……酷いでしょ!」
「あ、ごめん。ネギが悪いです。謝りなさいネギ」
「う〜ん、でもね。ルーナお姉ちゃん。この人、それはそれは相が悪くてね。ボクは親切で……」
「あーごめんなさい。私たち田舎から来たので、都会の文化とかルールとか知らないの。この子も友達が少なくてね。許してください」
「あ、う。分かったわよ。で、あんたらなに? この先は女子校エリアよ。あんたは分かるけど、そっちの子供は無縁のエリアよ」
「明日菜が無縁とか難しい言葉を……ウチ、感激!」
こちらの子は天然風。
「いや、待ち合わせ。学校の先生をやるんだ。私が体育。こっちのネギが英語。で、あっちから来てる赤髪の子がネギの補佐。あの金髪の古代民族風の衣装を着ている変人が世界史」
「はぁ? 何言ってるの? 全員まだ成人してないでしょ! 教員免許は!? どこの大学を出たのよ!?」
こ、こいつ……痛いところを……じいさんがすべて偽造しているから、私は知らないんだよ!
「いや、いいんだよ。アスナ君」
うん? やや!? アレはウチのお父さんの熱狂的な信者のタカミチ?
まあ、こいつは、信者の中でも大人しくて礼儀のある信者だから私達と関係はある。
何を隠そう、こいつに居合い拳を習っていたこともあった。
「おひさー! タカミチ!」
「タカミチー!」
「ウェイ!? あんたら、高畑先生の知り合いなの?」
すると、タカミチが息を吐くように嘘をつきはじめる。
オックスフォードだとか、飛び級だとか……こいつ、外道だな。
まあ、それのおかげで助かったけどね。
結局、この、神楽坂明日菜と近衛木乃香に案内されて私達4人は学園長室に……頭が長いじいさんがブツブツ喋っているが、聞いているのはネギだけだ。
私は、ぼおーと。
アーニャは、ここに向かう途中のお店で買った、いろいろなカードに夢中。
ネカネ姉さんは、相変わらずグロンギ語でシャウトしている。
意味は、サタンサーベルの覚醒が近いとか……意味が分からない。
それから教室に……4人でひとつのクラスの担任をするらしい。
なるほどね……流石に天才とはいえ、9歳ひとりに押しつけるほど馬鹿ではないか……
私が先に扉を開ける……うん? 黒板消しトラップ? しゃらくさいわ!
「ふん。アッパー!」
『おおーーー!』
「甘い。ネギのミルクティーより甘し!」
決まった。私達4人は教室の前で挨拶する。
当然……
『嘘をつくな! 未成年じゃん!』
しかし、源しずなと言う教員も流れるように嘘をつく。
結果……
『なんだ、そうなのかー』
馬鹿ばっかだよ……ここ。
でも、まー。4人で協力をして一日を乗り切る。
その後、4人で話しながら歩いていると、目の前に顔を赤くしているクラスの生徒……宮崎のどかが男と歩いていた。
男は、中肉中背……いや、細いが分かるぞ。
体幹が恐ろしく整っているし……隙がない。
瞬間――
瞳が交差する。
「あ、月?」
真っ黒な瞳だというのに私が連想したのは月光だった。
短い髪型……鋭利な瞳……悪いところがない顔。
そして、優しく包みこんでくれそうな雰囲気……貴方は……誰?
「のどか。彼女達は?」
「光くん。新しい先生なの。教育実習生」
「そうか……千雨。頭を抱えてなかったか?」
「む! 光くん! 今日は私と約束したよね? なのにさっきから長谷川さんのことばかり……酷いよ……酷すぎるよ……」
「す、すまない。そんなつもりはなかったんだ。のどかの笑顔を奪うつもりはなかった。許してくれ」
「じゃあ……また、こうやって付き合ってね」
「あ、ああ」
うん。宮崎のどか……策士。
女の涙は最大の武器だな。
しかし……あの光と呼ばれた男……気になるな。
私は、意を決して話しかける。
「あ、あの……」
「なんだ?」
え? いきなり視線が鋭くなった?
まるで猛禽類のような感じだ。
ナニカしたか?
だが、その均衡は簡単に崩れる。
「ボクは、ネギ・スプリングフィールドって言います。好きなモノはハーブティや紅茶……それに、アンティークなモノを集めること……でも、もっと好きなモノがあるんです……それは、ルーナお姉ちゃんです。みんなは落ちこぼれって言うけど、ホントは優しくて、頼りがいがあって……だから……ルーナお姉ちゃんにそんな瞳を向けないでください」
ネ、ネギ……やばい……目頭が熱くなる。
すると……
「君は……小さいのにしっかり者だ。無礼をした。オレは月野光と言う。誠に申し訳ございません! 貴方方のお名前も教えてください」
あ、紳士……ちゃんと自分の非を認めて謝れる人なんだ。
素敵……それは基本的なことだけど、とても大切で大事なこと……
時間が止まればいい。このままずっと光さんの瞳を見ていたい。
だが……
「ルーナ……あんた、なにしてるのよ! 光くんから離れてよ!」
「うん? 明日菜か?」
「ひ、光くん……げ、元気? あ、そうだ。飛輪の馬鹿とは最近どうなの?」
「ふむ。そんなに飛輪が気になるかい? オレで良ければ力になるが……」
おいおい……光さん……あんたの弱点、発見したよ。
鈍感……いや、なにか……可笑しい。
この人……気づいていて……距離を?
なぜだ?
確かに明日菜は馬鹿だが、容姿は整っているし、性格も明るく元気。
なのに……なぜ? 気づかないふりをするの?
思えば、のどかにもそうだった。
ぐるぐる考えるも理解が出来ない。
普通、モテたら嬉しいでしょ?
なんで……そんなに悲しそうに……笑うのよ。
「明日菜。なにか用があったのでは?」
「あ、そうだった! そこの4人! 歓迎会をするから来なさいよ。あ……光くんもどう? 飛輪の馬鹿も呼んで――」
「いや、流石に女子校の校舎には入れない。すまない」
「あ、ですよね〜。じゃ、じゃあまた今度!」
「ああ、明日菜」
そして、ショボーンとする明日菜。
微妙な雰囲気のまま、教室に……
元気がない明日菜を皆は気になるようだ。
私は先ほどのことを告げる。
「あー……悪い。今からあの馬鹿に連絡するから。ちょいまち」
えーと……長谷川千雨?
なんでこの子が?
「おい! 光。どういうつもりだ! 女の子ひとりの笑顔も守れないで、それでも男かよ……このヘタレ! あん? 反論あんのか! 聞こえないよ、でかい声だせ! で? よし。それでいい。どうせ麻帆良は変なんだ。女子校エリアに男子がいてもいいんだよ! 5分で来いよ! ふーう。あいつ、飛輪を連れて来るってよ。良かったな、おまえら」
『流石、幼馴染み!』
へーえ……幼馴染みか……なるほど。
5分後。どでかい巨人と光さんが現れた。
「よっす! 呼んでくれてありがとう! そっちは初めまして。大和飛輪って言います!」
身長190センチぐらいあるか? 体重も重そうだ。そしてこの人も……強い。
飛輪さんか……魔法で強化しても勝てないな。
何者だ?
観察していると……
「おっと、姉ちゃん。そんなにオレ……気になっちゃう? まあ、オレは光以外に負けるつもりないから……姉ちゃんもやるようだけど……負けねーぜ」
「へーえ。言うじゃない……光さんといい、貴方といい……ここは面白いわ」
飛輪さんとにらみ合っていると……
「おら! さっさと謝れよ、馬鹿の光!」
「明日菜。おまえの親切を踏みにじった。申し訳ない」
床に頭を擦り付ける光さん……おい。
「光くん。私のこと嫌いなの?」
「いや、決してそのような感情は持っていない! むしろ好ましいと……だから……オレは……」
修羅場か!
すると、さらなる爆弾が現れた。
「ふふ、神楽坂。分かっただろ? 光はすでに私のモノなのだ! 残念でした! プギャーー! 私は光の裸を見たこともあるんだぞ! どうだ? 悔しいだろ?」
「私が説明します。マスターは無理やり泣きながらわがままを言って光の入浴を邪魔しただけです。そもそも、マスターは幼児体型ですので、光から、女性と見られていません」
「ちゃ、茶々丸!? 貴様……このオンボロが!」
「私は、いつも光達の手によって進化を続けています。マスターの矮小な頭脳では分からないと思いますが……ぷ」
「貴様……ロボの癖に笑ったな!」
「ですから、ガイノイドですって……はあ、イライラするんだよ」
「あー! また光の知識をひけらかす! 貴様のそういうところが気に食わない!」
「ふーん。では……さぁ! お前の罪を数えろ!」
「きいーーーー! この! 巻いてやる……巻いてやるぞ!」
「いえ、もう今朝、光に補充されています。結構です。マスター。ヘタですし……」
うわぁ……混沌だわ。
しかし、なんだか、雰囲気が良くなった。
あ、ネギとアーニャが食べ物を持ってきている。
ネカネ姉さんは何やら光さんを真剣な顔で見ている。
でも、口からグロンギ語が漏れて、はっきり言って不気味だった。
そんなこんなで私達の歓迎会は、無事終わった。
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