「ダークネス。」

その声は、聞こえた。鬱陶しい声、仕事の最中に声をかけてくる耳障りな男の声。

「誰だ?見ない顔だな。新人(ルーキー)か?」

「言うねぇ、テメェよりも先輩・・・ベテランだよ?ダークネス〜。『屍王』ジキ様だ」

『屍王』ジャッカルの一人。
仕事終わりに現れる。獲物を横取りしようとするジャッカルというなの集団。
力が無く『死肉喰らい』とも言われる裏の仕事の中で低俗で狡猾な有象無象達・・・

「あんた、やり過ぎだ。俺の食い扶持まで食いつぶした。」

「お前が弱いからだろ?この世界は強きものが生きる。雑魚は・・・食われる。」

「ははは、その口ぶりはさ。テメエが俺より強いって言ってるんだろ?侮るな?今のテメエに何が出来る?今俺に背を向けているテメエに?
今なら簡単に殺せる。つまり、俺の食い扶持が戻る!仕事が増える!そして・・・。」

ブラスターを構え。嬉しそうに吼える。

「裏最強の名前は・・・プライスレスだ!」

トリガー部分に掛けた指に力がこもる。だが、遅い、なお遅い、撃つ彼にとっては普通の出来事。
しかし、刈られる男にとって相手の動きは、虫一匹の歩み同等の早さ。

ドォン!!

肩を打ちぬかれる。男は、痛さより前に困惑が頭をよぎる。アイツは何をした?俺を打った?いつ?いつ?

疑問は、身体を硬直させる。そして、彼は、銃を構える単なる人形になりはてると黒い疾風は、男の利き腕を刻み口元を歪め
「お前は、子供のように暢気だな。」と一言が彼の脳と心に刻み込まれた。

人には、穴に埋めたい思い出というのが2,3個あるものだろう。
嫌な思い出、苦しい思い出とか・・・負による感情から滲み出るどす黒い闇の塊。

そんなモンは、捨てたりしないと潰されて生きることが出来ない。だから、同価値の幸せを手に入れるのだろう。

だが、捨てることも出来ず幸せも手に入れられない人は?どうするのか?
それは、簡単なことだ。その感情をスッキリさせるために原因を消せばいい・・・ただ、それだけ・・・。


機動戦艦ナデシコ〜MACHINERY/DARKNESS
第11話『パーソナル・リベンジャー(1)』


アスファルトを軽快に駆け出し機械の駆動音と一緒に刃が振るわれる音が響く鋼鉄を貫き舞散る紫電。そして、次々にカマキリ共を駆除され倒れていく。

「コバッタよりも速いが単調な戦闘プログラム。相手が素人ならば問題ないがプロ相手にするなら刺客としては三流以下だな。」

振るわれる鎌を避け一撃で相手の両目を掴み取る。駆動音が響き力任せに引っ張ると敵の首が引きちぎる。

また、一体消される

「だが、ここまでの数が居ると鬱陶しいな。」

紅い眼が暗い路地から光を発する。駆動音の響きが下手くそなオーケストラが奏でる音で路地が騒がしくなる。

(しかし、ここまでの数の無人兵器を何処から出てくるんだ?あまりにも多すぎる。今思えばこいつ等は、俺のところだけしか居ないのか?
この小型無人兵器達は、対人用。なら、ここだけと考えるのがおかしい。ということは・・・。)

何かに気づき身を翻した。自分は、勘違いしていた。自分一人を狙うような真似をするなら他に楽な手立てがあるはずだ。いくら自分が『アレ』に関係している としてもコレはなかった。そうこれは・・・。

「な、何だコイツ!!」

「も、木星蜥蜴よ!!!」

それは。

「新型無人兵器の実験による大量虐殺・・・・。」


そのころショッピングモールでは、カイトとルリが楽しくショッピングをして。

「・・・・・・・・。」

「あ、あの、えっと。」

無理でした。

二人は、ガラスの向こうに見える商品を素通りして行く。ただ、真っ直ぐ進んでいくだけ。

散歩でもウインドウショッピングでもない。ただ、単に歩いているだけで何の面白みも楽しさもない。何も考えず歩いていただけで疲れが蓄積していった。

「ね、ねぇ?ルリちゃん?」

「なんですか?」

戸惑いながら彼女に話しかける。しかし、反応は冷たい。

だが、それは、今日の彼女が異常だったのかもしれない。ナナシを町に誘う。
彼女は、不干渉であり干渉させないという人に壁を張っている彼女は、ナナシを誘うということは、異常な事態だったのだ。

「そのさ・・・どこか行きたいとこある?」

カイトの攻撃

「いえ、別に。」

ミスった。

「それじゃ、なにか好きなものは?なにかないの?」

好きなもので釣る攻撃。

「特には。」

効果が無かった。

「そ、それじゃ・・・どうして、月の町に出ようとしたの?」

ピクッ

一瞬彼女が反応した。やっぱり何かあるんだなと思いカイトは、同じ質問を聞きなおした。

「ねぇ、どうして月の街に出ようとしたんだい?」

「・・・・・・・。」

沈黙して反応しない。ダメかと思いカイトは、ため息をもらす。

「・・・・聴いてくれますか?」

「へっ?」

一瞬聞き間違いかと思い間の抜けた声を発する。そして、ルリは、スッと息を吸い込み。

「私の話聞いてくれますか?」

ハッキリと口に出した。


爆音が響く。炎が広がる。銃声が聞こえる。人の悲鳴、怒号、泣声が奏でられる。

平和は、崩れ落ちる。たった一瞬の出来事で笑いは悲鳴に変わり恐怖がこの場を満たす。

しかし、そんなのは、この場に居る者じゃなければ感じられない。あくまで経験しているものだけが苦痛を味わう。だから、紛争をTVで見ている第三者にとっ ては、「大変だな〜」なんて気楽でいられる。

「うわ〜、地獄絵図ってやつですかねぇ〜。」

争いの当事者でさえ第三者と同じ気楽に無人機たちから送られる映像をみて観戦している。
しかし、彼の顔は、この瞬間をリビングでくつろぎながらTVのドキュメンタリー番組を楽しんでいるようにしか見られない。

「そんなに楽しいか?」

黒服の男が白衣の男に聞く。確かに映像としては、リアルであり映画であるなら楽しめるだろう。だが、今起きているこれは、『フィクション』ではなく『ノン フィクション』つまり、『リアル』なのである。

「なにを言っているんですか。僕は、悲しんでいますよ?こんな罪を無い人たちが次々に死んでいくのを見ていると涙が止まりません。」

ハンカチを取り出し目元にあて涙を拭く演技をする。だが、すぐにモニターに目をもどしニッコリと笑った。

「まっ、でもこれも僕の実験のためなので我慢していただきましょう。可愛そうですが新たな一歩のための尊い犠牲ということで皆さん成仏してくださいね?ナ ンマンダブ、ナンマンダブ。」

そんな言葉をこの男は、いいやがった。勝手に始めて勝手に殺して罪悪感も何も無い。
無害な顔をしているくせに有害、最上級に有害なのである。彼を言い表すならこうであろう『天使のようなデーモン』という男だと。

「ふん、ところで次々に映像が消えていくが?」

「あらら、どうしちゃったんでしょ?不思議ですね〜。あっと、カメラさん。この人を映してあげてください。」

キーボードを叩きながら無人機からの映像がある男を映した。驚くべき瞬間、敵を翻弄し目線があった瞬間に再起不能になる。

「あらら?誰ですかね?無人兵器を生身で壊しちゃうこの人は?」

「コイツは・・・。」

彼は、黒い彼を見て男がにやりと笑った。

「おや?どちらへ?」

「なぁぁに個人的な用だ。俺の汚点を消しに・・・なっ。」


「その時です!私が諦めかけた瞬間に彼が飛び出してきたのです!!」

「へ、へぇ〜。」

喫茶店内では、いつも見せない元気なるルリがいた。その様子に少しひき・・・驚き気味のカイトがいた。

けれど今まで見せない彼女の元気な姿にカイトは、思わず微笑んだ。
ルリの状態は、『正義のヒーロー』を語る少年そのものだった。

「そこで彼は、言ったんです!『君は、女の子だ』ってあの時は、嬉しかったです。
今まで私を女の子・・・いえ、人とすら見てくれない人達しかいませんでしたから。」

「あっ。」

顔の表情がいつもの顔に戻る。それに対してカイトが少し淋しい気持ちになった。彼女の元気な面を見たせいだろう。
もっと彼女は、年相応の女の子らしい元気で明るい面を持っているはずなのに今までみたいな機械のように冷たい顔をする。

だからこそ、カイトは、思う。

(もっと普通の女の子みたいに笑顔をあげたい。)
と・・・。

このような日常的な雰囲気も小さな波紋一つで壊れていく。

「エッサ、エッサ、エッサ、エッサ、ホイッ、サッサッ♪モンキーお宿にちょっと来ておくれ〜お尻が真っ赤で出られないっと♪」

ゴミをゴミ捨て場に捨てる喫茶店の店員。だが、彼は、何かを感じた。後ろに嫌な予感。そして、嫌な予感というものは・・・当たるものであると思い彼は二度 と考えることはなかった。


ドォン!ドォン!!

裏道を駆ける黒猫のように次々に障害物を避けカマキリたちを撃ち落していく。だが、内心では焦っていた。

月には、ナデシコの乗組員が下りているはずなのだ。もしかするとその中には、自分の大切にしている人もいるかもしれない。
その大切なものを守るため彼は、全速力で裏道を駆け抜けようとしていた。

「ヌリャァァァァ!!!」

しかし、それを遮るように彼の目の前に質量が落下してきた。

「なっ!」

後ろに避けるとコンクリートの道は、凹みヒビを生み出した。

「よ〜く、避けたなぁ〜ダークネス〜。」

「お前は・・・。」

黒いスーツ。右目にスコープのようなものが取り付けられており黒髪がオールバックでセットされ独特の香水の臭いをさせていた。
そして、コンクリートを凹ませたパワーを生み出した左腕が駆動音を鳴らし不気味さを生み出していた。

「ふふん。覚えてるかな?この俺を〜。」

男は、笑みを浮かべる。アキトは、『?』マークをつけていた。

「どうやらわからないようだな・・・それも仕方ない。今の俺は、最高級だからな。
聴いて驚け見て驚け!!このスーツ!ブランド品で50万!俺の使う香水、ブランド品で俺のオリジナル!15万円!!俺の身につけた装飾品!占めて120 万!!
そして、最高級の新型機械ボディー!!3500万!!そして、最強の男・・・『屍王』の名前は・・・プライスレスだ。」

誇ったような男に対してアキトは、首をかしげた。

(はて、こんな『変態』知り合いにいただろうか?)

「なんだ?まさか分からないのか?この『屍王』のことを?」

「?」

「ほ、ほんとうに?分からないのか?」

「ああ。」

一時的に時が止まった。が男は、気を取り直し腕を組み笑みを浮かべた。

「むっ・・・まぁ・・・覚えていないのなら仕方がないな。
俺は、『屍王』!!闇に身を置いたなら分かるだろう?『屍王』の通り名を!!」

「ん〜?」

(『屍王』・・・確か獲物を横取りにするジャッカルの中でも有名な通り名。相手が弱ったところを獲物と一緒に横取り独り占めするといったジャッカルの中で も嫌われ者。
『人の屍で飯を食う卑怯な王様』という意味で『屍王』。ただ、最近では、自ら行動に出て屍の山を築くからという話だったな。
そういえば昔、俺を狙って攻撃してきた間抜けが・・・。)

『ああっ。』と思い出した顔をした。

「思い出したようだな。時間かけやがって。そう、俺がテメェも俺の撃墜リストに刻む通称『屍王』・・・・。」

フフッと笑って自分の名を言おうと大きく息を吸う。

「確か俺を狙ってきた『屍王』という通り名を持つ。確か・・・チキンだったよな?」

男の顔がさっきまでと違ってピクッと反応した。

「ふふふ・・・聞き間違いだよな〜。もう一回言ってくれないか?ん〜、俺様の名前を・・・『屍王』なんだ?」

名前を聞きなおす。そんなにアキトに答えさせたいのだろうか?『屍王』耳を傾ける。

「間違えたか。借金だったか?」

「ふぅ〜笑えないぜ〜。違う、違う二文字だ。」

「カキ?「違う!」書記?「全然ちがう!!」ゴキか!「人を黒くてテカテカしてすばやいのと一緒にするな!」死期?
「おしい、もう少し!!」ブヒーだな?「殺すぞ!!」むぅ・・・覚えていない。」

「ふふふ、いいだろ〜ブチブチに・・・ぶっ殺してやるぜダァァクネェェスゥゥッ!!」

「だれだっけ・・・。」

『屍王』の血管が切れそうになる。

「憶えておけ!俺はぁ、『屍王』のジキ、ジキ様だぁ!!脳に刻め!心に刻め!この俺様のネーームをっ!」

「分かったぞ。ウッキー。」

「ジキだ!ボケェ!!」

「あれ?すまん、興味がないからな。」

「ふふっ〜。絶対に滅殺〜〜!」

今ここに人外『ダークネス』VS死体の製作(メーカー)『屍王』が拳を交える。


あとがき
えっと、ギャグですか?ええ、ギャグですかね?ヤヴァイですね〜シリアス雰囲気が微塵も感じられない・・・。
最初は、シリアスなのに・・・次回こそシリアスに決めます!!決めたいなぁ



感想

むぅ、アキトに対して戦いを挑む格下殺し屋と言ったお話ですね〜

いくら頑張っても報われない感が一杯です。

しかし…不思議なのは、月面都市の中にいる木連科学者ですね〜

ヤマザキ風の感じが否めない所ですが、誰でしょう?

ボソンジャンプを普通に出来る時期じゃないはずなんでちょっとおかしい気もしますね。

その辺りも気になる所です。

ただ、ナナシ・アキトと言うキャラの背景がわからない部分が多いので、その辺りを掘り下げる意味では、

話を掘り込んでいった方がいいと思います。



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