第25話『一時の平穏』


 炎の里グラム、ディアス邸の裏山にふたりの男が居た。

ひとりは、年齢は30代半ばくらいだろうか。赤髪と口髭を蓄えた、厳格さを感じさせる佇まいの持ち主。

名はシェイド・ディアス。この里の里長にして、ディアス家の当主でもある。

もうひとりは、10歳くらいの少年。シェイドより濃い赤髪、それとは正反対の青い瞳を持つ。

ふたりの手には、刃を潰した訓練用の剣が握られていた。彼等は実戦形式の試合を行っているのだ。

「せやぁああああああああっ!」

気合の篭った掛け声と共に、赤髪の少年は跳躍してシェイドに斬り掛かった。対するシェイドは、その場から動こうとしない。

少年の剣がシェイドの頭上へと振り下ろされる。

「動きが正直過ぎる」

「ッ!」

だが、その剣がシェイドを襲うことは無い。彼はその場から動くこともなく、振り下ろされた剣を片手で軽々と受け流した。

ディアス流二刃“静流”―――柔らかな剣筋で敵の攻撃を受け流す妙技で、少年の剣は無力化されたのだ。

空中で一回転した後、少年は地面に叩きつけられる。意力で肉体を強化していた為、大事には至っていない。

「少しは意表を突いた攻撃で来ることだ。実戦では、どんな特異なブレイカーが相手になるか分からんからな」

「親父、そんな特殊なブレイカーと遭遇したら命が幾つあっても足りないんだけど」

「―――シオン、我々はセイバーとして戦うことを宿命づけられた一族だ。如何なる脅威が出現しても、対抗していかなくてはならんのだ」

威圧感すら感じさせる父の言葉に息子―――シオンは息を呑む。

ディアス家は始まりの者の血を受け継ぐ、セイバーの中でも最古参の家系。あらゆるセイバーから一目も二目も置かれる存在。

いわば、セイバーの筆頭格ともいえる。無様な姿を晒すことなど出来ない。

「ふむ……もう夕刻か。今日の鍛錬はこれで終わりだ」

鍛錬に集中していた為か、シオンは時刻が既に夕方ということに気付かなかった。ふたりの居る裏山からは、とても綺麗な夕焼けが見えた。

心に焼きつきそうな夕焼けの風景。それを見たシオンの頭の中に、奇妙な光景が流れ込んでくる。

赤い髪の男が胡坐をかいて、3人の子供に何かを指導している光景だった。

3人の子供も全員が赤い髪、男と血縁を感じさせる顔立ちをしている。その内のふたりは男の子、ひとりは女の子。

男は身体から意力を発すると、流れ出る意力を肉体から流出しない様に定着させる。それを見ていた子供達も彼と同じ様に意力を発すると、男よりも時間が掛かったが、何とか肉体に意力を定着させた。

『いいか、集中力を途切れさせるな。意力の制御は基礎中の基礎だが、根幹をなす真髄ともいえる技術だ』

『はい』

『おう』

『ん―――あ、わわっ!?』

女の子の肉体から、定着した意力を溢れ出す。男とふたりの子供は自らの意力の制御を中止すると、女の子の傍に寄る。

男がその子の肩に手を置き、自らの意力でその子の身体を覆う。例えるならば、それは鎧を纏わせるようなイメージだろうか。

溢れ出る意力が停滞し、女の子は息を吐く。

『集中力を途切れさせるなと言った筈だ。一体、どうした?』

『ん―――あれ』

女の子が指差す方向に目を向ける一同。その方角には心に焼きつきそうな夕焼けが見えた。

『何だ、夕焼けに気を取られちゃったのか』

『ま、確かにいい景色だよな〜』

『ん』

『……やれやれ』

男は頭を掻きながら、子供達と一緒に夕焼けを見つめる。

シオンはハッと我に返る―――何だ、今の光景は?夕焼けを見ていたら、突如として頭に流れ込んできた奇妙な光景。

いや、光景というよりも“記憶”といった方が正しいだろうか。どうして、こんな“記憶”が頭の中に流れ込んできたのか。

自分や父と同じ赤髪を持つ男と子供達は一体誰だったのだろう?

「どうした、シオン?」

「親父―――おれの他に子供って居ないよな?」

そう言った直後、父の拳骨がシオンの頭に叩き込まれた。轟音と共に地面に埋まる。

シェイドは息子の頭をむんずと掴むと、地面から引き摺り出す。

「息子よ、それはあれか?私がシズル以外の女性と契りを結んでいるとでも言いたのか?どうやら、今度の修行を100倍にして欲しいらしいなぁ?」

「いやいやいや、そうじゃなくて!つーか、100倍とか勘弁!何ていうか、夕焼け見てたら変な光景が頭に流れ込んできてさ」

「変な光景?」

夕焼けを見ていたら、全く知らない記憶が流れ込んできたことを父に話す。その中に出てきた自分達と同じ赤髪の男と子供たちのことを。

息子の話を聞いた父は、顎に手を当て考え込む。

「まさか、前に父上から聞かされた始祖とその子供達のことか……?何故、お前がそんな遥か遠い昔の出来事を―――」

「親父、何か心当たりでも?」

「ん……いや、何とも言えん。父上が健在なら詳しいことを聞けたかもしれないんだがな」

シェイドの父であり、シオンの祖父でもある先代当主は他界しており既に居ない。長年の戦いによる肉体の疲弊と息子達の死という更なる心労が重なったのが原因だろう。

息子達の死―――シェイドの上には兄がふたり居た。長兄カーライルと次兄テオドール。シェイドは末弟として生を受けた。

立派な兄達だった。里の人々からの信頼も厚く、セイバーとしての実力も次期当主として申し分なかった。

剣才は次兄が一番で、長兄は当主の座を次兄に譲ろうかと言っていた。しかし、意力の技術や人心掌握といった部分は長兄が勝っており、次兄自身も自分は当主の器ではないと語っていた。

シェイドはそんな兄達を支えるのが役目だと自負していた―――その兄達が先立つなど予想もしなかった。

セイバーの生き方は死に直結しているに等しい。兄達はブレイカーとの戦いで命を落とした。

兄達ならば、ドラゴンが数体相手でも後れを取らないだろう。シェイドは、兄達がドラゴンの首を軽々と刎ね飛ばす光景を目にしたことがある。

マスターセイバーの中でも上位の実力者だったふたりが死ぬことなど、余程の事態でもなければ起こらないと信じていた。

だが、起きてしまったのだ。その余程と呼ぶに相応しい事態が。

自然現象に嵐が存在するように、セイバーとブレイカーの戦いにも大きな嵐が存在する。数百年に一度、ブレイカーの破壊活動が最大限まで高まる“活動期”の到来である。

活動期にはドラゴンといった大物どころか、普段は遭遇する機会が少ない変異型ブレイカーまでもが大陸各地に出現する。ブレイカーと戦うことを生業とするセイバーやガーディアンにとっては避けては通れぬ道。

優れた才覚を持つセイバー、練達のセイバーといった面々は活動期が訪れることを事前に察知する。ふたりの兄―――カーライル、テオドールも逸早く活動期の到来を感じ取っていた。

そして、到来する活動期という嵐。当時、15歳だったシェイドからすればそれは嵐どころか天災としか言いようがなかった。

万を超すブレイカーの大群、特異どころではない異形のブレイカーの数々、犠牲者の屍の山々……まるで地獄さながらの光景。

悪夢と呼ぶことすら生温い嵐は、実に2ヶ月に及んだ。連日の戦いで、多くのセイバーやガーディアンが斃れた。

炎の里も大きな被害を被った。カーライルとテオドール、ふたりの兄の活躍で辛うじて里の壊滅は免れた―――代償として、彼等は二度と生きて戻ることは無かった。

数年後、体調を崩していたディアス家当主はシェイドに後事を託し、静かに息を引き取った。

「あれから十数年か……私も歳を取るワケだ」

「親父ー、置いてくぞー?」

「……おい、待て」

何時の間にやら、父を無視して下山しようとしている息子の姿。回想していたとはいえ、あんまりな仕打ちだ。

「息子よ、父を無視して帰ろうとするとはいい度胸だな」

「いや、腹減ったから早く夕飯にありつきたいし」

この後、暫し互いの頬を引っ張り合う赤髪親子。

日が暮れ、夜空の星が輝き出す時刻になった頃―――ところは、ディアス邸。

椅子に腰掛ける黒髪の女性の前で正座させられる赤髪親子の姿があった。彼女こそ、シェイドの妻にしてシオンの母―――シズル・ディアスである。

彼女の父は大陸の東に浮かぶ極東諸島の出身者であり、その血を引くシズルも極東の民の特徴を色濃く受け継いだ容姿をしている。

瞳の色は極東の民には見られない青色だが、これは彼女の母が大陸の出身だからである。武者修行で大陸にやって来たシズルの父は、この大陸でシズルの母となる女性と出会ったという。

不幸にも、シェイド同様に彼女の両親も既にこの世にない。先述のシェイドの回想にあった“活動期”の際に死別したのだ。

「あなた、シオン。子供染みた喧嘩をなさらないでください」

「悪いのはシオンだ」

「いいや、悪いのは親父だよ」

バチバチと目線で火花を散らす父と息子。

「い・い・加・減・に・な・さ・い」

凄まじい攻撃的笑顔で威圧してくるシズル。

「「あ、あい」」

肩を寄せ合い震える赤髪親子。ディアス家のヒエラルキーの頂点に居るのは、この夫人で間違いないようだ(笑)。

シズルは溜息交じりにお腹を擦る。腹部は大きく膨らんでおり、彼女の胎内に新たな命が宿っていることを意味する。

「ふたりとも、仲良くなさって下さい。生まれてくるこの子が悲しみますよ」

「そうだな―――さて、今回はどちらだろうか。私は女の子がいい、息子はひとりでコリゴリだ」

「おれは弟がいいかな。ふたりして、親父をおちょくれそうだし」

「おい」

「何だよ」

「ふ・た・り・と・も?」

「「あ、あい」」

漫才の様なやりとりが幾度か繰り広げられ、夜は更けていく。

自室に戻ったシオンは、ベッドに寝転がって天井を見つめる。彼が想いを馳せるのは、母が宿す新しい命だった。

「赤ちゃんの名前、何がいいかな―――」

シズルは、生まれてくる子供の名前を考えて欲しいと提案してきた。

母は女の子の名前を、自分と父は男の子の名前を考える。

自分の名付け親は母だった。父が好きな名前を付けてくれ、と母に言ったそうだ。

今回は、自分と父にも考えて欲しいらしい。

「親父は、堅苦しい名前付けそうだからなー。あんまり、ゴテゴテした名前だとアレだし……」

ふと、シオンの目に入ったのは愛読している冒険小説。手に取って、パラパラと物語に目を通す。

この物語には複数の主人公が存在しており、彼等が時には協力し、時にはぶつかり合う様を描いている。

遂、数日前に発売されたばかりの最新刊を読み進めていく。

そして、確信する―――おれはこの主人公が一番好きだと。

シオンが読んでいて最も感銘を受けたのは、一番年若い主人公。他の主人公と比べて、実力も経験も劣っている。

しかし、直向きに己を磨いて困難に挑む彼には支えてくれる多くの仲間が存在する。

生まれてくる弟も、この主人公のように多くの仲間に恵まれて欲しい。

「使わせて貰おうかな、この主人公の名前」

その主人公の名は―――。










次に目覚めた時、シオンの目に映ったのは集い荘の自室の天井。今まで見ていたのは夢だと、直ぐに自覚する。

「(随分と、懐かしい夢を見たな。親父とお袋が健在だった頃―――“あいつ”が生まれる少し前か)」

部屋の時計に目を配る。時刻は午前5時前、眠気は既に無い。

ハイブリッドとの戦いから一夜。あの激戦から、まだ一夜―――。

「激戦か……俺も少し鈍っているのかもしれんな。元の時代で、あれ以上の戦いを凌いだことなど幾度とあるというのに」

この時代のセイバーやガーディアンからすれば、先日のハイブリッドの戦いは激戦と呼んでも過言ではない。

だが、シオンからすれば自分が経験してきた数多い小競り合いのひとつでしかない。この時代に来てから、感覚が鈍っているのかもしれない。

「自己鍛錬をより厳しいものに上げるか。それと、アヴェルにも次の修行を与えないとな」

―――同時刻、自室で眠りの世界に居たアヴェルは瞬時に目を覚ました。全身汗だくで、息を荒くして汗を拭う。

何か、悪寒を感じた。恐ろしい災いが降りかかるのを察知したのだろうか。

彼の不安は後日的中することとなるが、今回の話には関係ないので割愛させて頂こう(笑)。










―――セイバー総本部、総長の執務室。

シオンはソファに腰掛け、向かいのソファに腰掛ける総長レイジに先日の戦いの顛末を報告していた。

執務室内には、彼等ふたり以外にアヴェルとクライス、レオの姿もある。

「君達や現地のセイバーとガーディアン達に死傷者が出なくてなによりだ。しかし、ゼルディとジスくんが関わっていたとはな……」

「総長、彼等の処分は―――」

「今は保留だ。ゼルディは一命を取り留めた様だが意識不明の状態。ジスくんは、暫く総本部内で監視する」

内心、アヴェルとレオはホッとしていた。いくら、私利私欲ではないとはいえ、この騒動の一因を作ったのはゼルディとジス親子である。

総長の配慮に感謝したい気持ちで胸が一杯だ。普通なら、牢獄行きか最悪の場合は極刑だろう。

「しかし、シオンくん―――さっきの話は本当かね?」

「間違いない。俺は、黒い剣を持った人型を追ってこの時代にやって来た」

失われた記憶の一部を取り戻した赤髪の元当主が語る。自分がこの時代に来た理由―――黒い剣を持つ人型の“何か”を追ってきたことを。

クライスは息を呑んでいた。シオンが話した“何か”は、間違いなく7年前に出現したあの異形に違いない。

まさか、あの異形が500年前に目の前に居る赤髪の青年と刃を交えていたとは。しかも、話から推察するとシオンはたったひとりであの異形と戦っていた可能性が高い。

彼が現代のセイバーとは比較にならない実力者であることは察していた。が、自分やグレンといった現代でも指折りのセイバーが5人掛かりでどうにもならなかったあの異形をたったひとりで逃亡に追い込むとは……信じ難い。

「アヴェル、レオ―――もし、この記憶が正しいなら俺はどれだけ謝罪しても足りない。俺があの異形を取り逃さなければ―――」

「そのことで思うところが無いワケじゃありません。だけど、シオンさんも予想すら出来なかったでしょう?こんな遠い未来に来るなんて」

確かに予想外もいいところだ。あの異形の逃げる先が、何処か遠方どころか遥か先の未来など誰に予測出来るだろうか。

「自責の念があるのなら―――ひとつ提案があります。アヴェルだけではなく、他の集い荘のみんなや僕とアリスにも御指導を願います」

「レオ……」

「短期間で、アヴェルをあれだけ鍛え上げた貴方の指導力は目を見張るものがあります。是非、御指導をお願いします」

先日のアヴェルとジスの戦いを見て、レオは決心したのだろう。おそらく、自分が戦ってもジスに勝つのは難しかっただろう。

僅差とはいえ、アヴェルはマスターと遜色ない実力を有するジスに勝利した。彼自身の素質と努力は勿論だが、アヴェルを飛躍的に伸ばしたのはシオンの指導、手腕によるところが大きいだろう。

うかうかしていたら、アヴェルとの差はどんどん開くだろう。競争心が激しい性質ではないが、セイバーの先達として黙ってはいられない。

そして、それ以上に衝撃を受けたのはシオンとゼルディの戦い。あれは、最早自分達がどうやっても割って入れる領域の戦いではなかった。

軽く見積もっても、通常時の倍以上の意力を発揮していた暴走状態のゼルディの攻撃を、目の前の元当主は軽々と捌いていた。

一歩でもあの戦いに踏み込んでいたら、大抵の者は即座に戦闘不能に陥る―――最悪の場合は死んだことすら認識できないまま、あの世に旅立っているだろう。

あまりにも次元が違い過ぎる。あんな戦いを見せられては、彼に是非とも教えを請いたい。

「分かった。鍛錬出来る時間を確保する様に努めよう」

「ありがとうございます」

やれやれ、これから忙しくなりそうだ。アヴェル以外の面々にも、修行をつける時間を確保しなければならない。

セイバーである以上、ブレイカー討伐が優先なのでスケジュールの調整は苦労する。

しかし、約束は約束だ。彼等を強くする為の指導をしなくては。

場所はところ変わって、総本部内の医療区画。ここは、理由があって病院に入院させられない人間を治療する為の設備が整っている区画である。

区画内の病室のベッドの上、シオンの治癒術で九死に一生を得たゼルディ・アドバーンは点滴と人工呼吸器を取り付けられた状態で眠っていた。

息子であるジスは、椅子に腰掛けて父を見守っていた。アンリとカノン、アリスも一緒だ。

病室の壁際にはザッシュとソラスの姿もある。彼等は、ジスの監視役だ。

彼が何かしでかそうとしたら、身体を張って止めるのがふたりの役目。内心、溜息をつくふたり。

「(やれやれ、無茶なこと押し付けられたよ……)」

「(この鉄仮面野郎、オレ等より強いんだぞオイ。つーか、この野郎……倉庫街で戦った時に、ブーステッドなんぞ使わなくてもオレに勝てたんじゃねぇのか?)」

先日のアヴェルとの戦いを観戦した結果、嫌というほど思い知らされた。この灰髪の青年は、自分達よりも強い。

少なく見積もっても、マスターであるクライスに近い実力ではないだろうか。よくもまぁ、アヴェルはこんな奴に勝てたもんだ。

『ソラス・アルフォード、倉庫街での非礼は詫びよう。あの時は、ブーステッドの完成度を確かめるのが目的だった』

突然、頭の中に入ってくる言葉。ジスの念話だ。

ソラスだけではなく、周囲の面々の頭の中にも言葉が伝わる。

「いきなり、頭の中に言葉を伝えんなよ……オメーが喋れないのはアヴェル達から聞いてるが、驚くだろうが」

『他に伝える手段が無いから困っている』

「まぁ、確かにね。ところで、ジスくんはこれからどうするんだい?」

『父さんはまだ目を覚ます気配が無い。俺は、総本部内で監視―――要はここから出るなとのことだ』

「ジスお兄ちゃん……」

『そんな顔をするな、アンリ。俺も父さんも極刑を覚悟していたんだ』

言い訳などしない、あれだけの騒動を起こした原因は自分達親子にあるのだ。事が収まれば、自分達は死ぬ覚悟でいた。

こうして、命があるのは総長の恩情によるものだ。

「それにしても、驚いたのは情報収集やら技術開発を行う部下が居たことだよ。そういった人材をどうやって集めたんだい?」

『殆どは父の知己や関係者だ』

「どーいうコネクションを持ってんだ、このおっさん……」

彼等の活動には、ブーステッドの開発や情報収集を行う部下が存在しており、それらはゼルディが若い頃から築き上げたコネクションによって集められたメンバーだという。

セイバー総本部にも、密かに構成員を送り込んで情報操作を行っていたらしい。この親子の活動が今の今までセイバー達に伝わらなかった一因であることは間違いない。

一般への被害は齎してはいないものの、法に触れるブーステッドの製作に関わっている為、それらの関係者にもジス同様に監視がつくことに。

『総長は、特に情報収集していたメンバーに着目したらしい。潜伏する犯罪組織の調査等に協力して貰うと言っていた』

確かにそれは心強い。情報は生命線ともいえる大きな武器、少しでも情報が多い方がこちらが行動する時に有利に働く。

ジスは視線をアリスに向ける。

『アリス、ひとつ質問がある』

「え、何?」

いきなり話を振られ、困惑するアリス。

『ユリウスさんの姿が見えないんだが―――彼は何処に?』

ユリウスという名に、その場に居た面々の表情が曇る。

『何があった?彼が並のブレイカーに後れを取るとは思えない』

「居なくなったの……」

『居なくなった?』

「3年前、ある調査に出掛けてからずっと帰ってきてないの……」

『3年前?まさか―――』

3年前と言えば、自分とゼルディがエリクを保護した時期と同じではないか。

『調査というのは大陸中央から大陸北方へと続く境にある荒野の調査か?』

「どうして、そのことを?」

『俺と父さんがエリクを保護した場所だからだ』

「何だって……オイ、鉄仮面野郎!他に誰も居なかったのか!?」

急にソラスがジスに詰め寄り、胸倉を掴む。

「ソラスさん、落ち着いて下さい!」

「ユリウスの旦那は!?リズ嬢ちゃんは!?ブレイズの馬鹿野郎は何処にも居なかったのかよ!!?」

「ソラスくん、止めるんだ。多分、ジスくんはあの死んだ科学者の彼しか見つけてないよ。そうだろ?」

『発見したのはエリクだけだ。他には誰も居なかった』

「―――クソッ!」

ジスから手を放し、ソラスは病室の壁を殴りつける。そこに―――。

「ごめんなさい、入ってもいいかしら?」

病室をノックする音、そして聞こえてくる女性の声。

「リューさん?ええ、どうぞ」

「失礼するわね」

入って来たのは、皆と馴染み深いリュー。面識が無いのはジスだけである。

「今、病室からソラスくんの大声が聞こえてきたわ。ソラスくん、ここには意識不明のゼルディさんが居ることを忘れないで」

「……悪かった」

バツが悪そうな顔で謝るソラス。リューは視線をジスに向けた。

「初めまして、リュー・トライアングルです。貴方がジスさん?」

『ああ』

「少し聞こえてきたのだけど―――ユリウスさん達のことについて、私から説明してもいいかしら?」

『頼む』

「あれは、今から3年前になるわ―――」









―――3年前、セイバー総本部。

ブリーフィングルームに総長レイジと、当時事務を任されたばかりのリューの姿があった。

この数ヶ月前に意刃を発現させたリューであったが、意刃が戦闘向きではないことと事務処理能力に長けていたことから総長の推薦もあり、総本部の事務仕事を担当することとなった。

室内にはもうひとり、長い黄髪と黄眼を持つ青年の姿が。

「異常地帯ですか?」

「その通りだ、ユリウス。大陸中央と北方の境にある不毛の荒野地帯で、度々強力なブレイカーが出現している」

「こちらになります」

「ありがとう」

緊張した面持ちで、リューがユリウスと呼ばれた青年に資料を渡す。

無理もない。彼女が接しているこの青年は、若くして総本部でも屈指の実力を持つセイバーとして名を馳せているからだ。

資料に目を通すユリウスの表情が険しくなる。

「ドラゴンのみならず、変異型までが多数出没……確かに異常としか思えませんね」

「うむ……看過することが出来ない問題だ。そこで、ここに調査隊を派遣することが決定した。調査隊には、意力の測定装置を使う研究者達が同行する」

「なるほど、私にも調査隊の護衛に参加せよとのことですね?」

「頼めるか?」

「お任せ下さい。若輩の身ではありますが、マスターのひとりとして全力を尽くします」

「うむ、参加するメンバーについては後日連絡する」

一礼し、ユリウスはブリーフィングルームから退室していった。

緊張の糸が切れ、リューはストンと椅子に腰掛ける。

「リューくん、えらく気を張り詰めていたな」

「す、すみません。何と言いますか……天才と呼ばれる方の発する意力は凄いものですね」

「天才か……誇らしいものだよ。私も祖父として鼻が高い」

ユリウス―――本名をユリウス・ラングレイ。

総長レイジ・ラングレイには息子がふたり居る―――長男ロベルトと次男カール。否、正確には『居た』という方が正しいか。

カールは健在だが、ロベルトは既にこの世の人ではない。ユリウスはロベルトの忘れ形見なのだ。

ロベルトは妻と共に遠方のセイバー支部へ指導を行うべく、飛行船で向かっていた最中、ドラゴンの群れとの遭遇。

激戦の末に乗客の殆どは、炎上する飛行船から脱出させることに成功したものの、自身と妻は飛行船の墜落によって命を落とした。

当時、まだ6歳のユリウスは叔父であるカールが後見人となって育てられた。

―――父と母は命を懸けて多くの人を救った。自分も、両親に恥じないセイバーになる。

両親のセイバーとしての在り方は、幼い少年がセイバーを志す原動力となった。

生来から並外れた意力の素養を備え、武術の才能にも恵まれていた彼はメキメキと実力を伸ばしていった。

セイバーやガーディアンの養成機関であるスクールに入学後、その才能は更に大きく開花。在学中に意刃を発現させるという、スクール開校史上4人目の快挙を成し遂げた。

そして、セイバーになって約3年後―――18歳という、近代稀にみる速度でマスターに昇格した天才として一躍その名を轟かせた。

先月、21歳になったばかりだが、既にマスターセイバーに相応しい貫禄を備え、多くの人々から“獅子王の再来”と呼ばれつつある。

「“獅子王の再来”か……」

獅子王―――それは、ラングレイ家に生まれる者にとって特別な意味を持つ異名。

500年前、壊滅状態に陥った大陸中央のセイバー達を纏め上げ、セイバー初代総長の座に就いたメルトディス・ラングレイがその名で呼ばれていた。

ラングレイ家に生まれる者にとって獅子王の名は喉から手が出るほど欲するもの。しかし、メルトディスに並ぶほどの実力と功績を備えた者は現れず、その異名を受け継いだ者は未だ存在しない。

ユリウスは漸く現れた、獅子王の後継者となり得る存在。周囲の者達も大きな関心と期待を寄せている。

「私も若い頃、その名を受け継ぐ為に研鑽を重ねたが……とうとう掴むことは出来なかった。ユリウスなら、再来どころか真に獅子王を名乗れるやもしれんな」

「そうですね。あの人なら、そう呼ばれる日も遠くないでしょう」

ブリーフィングルームを後にしたユリウスは、資料室に向かっていた。調査に赴く異状地帯に関する資料に目を通す為に。

詳しいことは現地に行かなければ把握出来ないが、少しでも情報を得ておくべきだと判断した。

「ユリウス兄さん」

資料室に続く通路で、見知った顔と遭遇。レオとソラス、他にはふたりの男女。

「レオ、ソラス、リズにブレイズも。今日は一緒にブレイカー討伐に行っていたのか?」

「うん。飛行系のブレイカーが多数を占めていたから、殆どはソラスさんとブレイズさんが撃ち落としてくれたよ」

「流石は銃使い同士、抜群のコンビネーション―――」

「オレの方が一匹多かった」

「いいや、オレっちの方が一匹多い」

ソラス、そして彼の隣に居るブレイズという名の青年がバチバチと目線で火花を散らしていた。

その様子にレオは頭を掻く。どうやら、どちらがより多くのブレイカーを斃したかで議論している模様。

「ふたりともいい加減にして下さいよ。兄弟同然の仲なんでしょ?」

「「いや、こいつとは同じ孤児院出身の単なる腐れ縁だ」」

見事にハモるソラスとブレイズ。そう、このふたりは幼少の頃からの付き合い。

アークシティから遠く離れた町にあるアルフォード孤児院。家族を失った共通の過去を持つふたりはそこで共に育ち、院長からアルフォードの姓を貰った。

少年時代、町に居る銃を使うセイバーと知己になったふたりはその才能を認められ、そのセイバーから意力と銃の扱いを学んだ。

やがて、15歳になったふたりはセイバー試験に合格。3年ほどは故郷でセイバー活動に従事した。

1年前、師匠であったセイバーから見聞を広めるよう勧められ、故郷を離れてこのアークシティへとやって来て現在に至る。

今月の初頭、ふたりは揃って意刃の発現に成功し、アドバンスドに名を連ねたばかり。しかも、同じ二挺拳銃だったので対抗意識バリバリもいいところだ。

そんな彼等の肩に手を置くユリウス。

「ふたりとも、勝ち負けにあまり拘る必要はない。人々をブレイカーの魔手から救うことが我々の責務。ふたりの活躍でブレイカーを早々に討伐出来たのならそれでいいじゃないか」

「……旦那がそう言うなら」

「……すんません」

我の強そうなこのふたりが引き下がるのにはワケがある。

総本部に来て早々、赴いたブレイカー討伐で彼等は変異型ブレイカーと遭遇。まだ意刃を発現させていなかった時期、敵の戦闘能力の前に次第に追い詰められてしまう。

一か八か、決死の突撃を仕掛けようとした彼等の窮地を救ったのがユリウスだった。偶然、近くのブレイカー討伐に来ていた彼はソラスとブレイズの意力の乱れを感知して救援に来てくれたのだ。

ユリウスは獅子の刻印が刻まれた双刃剣の意刃で、ソラス達が手も足も出なかった変異型ブレイカーを一瞬で両断して彼等の窮地を救った。

こういった経緯もあって、ふたりは命の恩人であるユリウスには頭が上がらないのだ。

「リズ、君の方は大丈夫だったか?」

「は、はい!他の皆さんの足を引っ張らない様に頑張ってます!!」

リズと呼ばれた少女は、緊張した面持ちで姿勢を正す。

彼女―――リズ・フランジュは、今年セイバーになったばかりのこの面子の中では一番の新米だ。

ユリウスやレオ同様にスクールを優秀な成績で卒業した秀才。卒業前の段階で、ミディアムに昇格する条件である範囲障壁の即座展開や意力の微細な制御技術から一目置かれている有望株だ。

この分だと、意刃の発現もそう遠くないのではと噂されるほどだ。

……ちなみに、何故に彼女がこんなに緊張しているかと言うと。

「(リズ嬢ちゃん、ガッチガチになってんなぁ)」

「(ま、憧れの先輩の前じゃ仕方ないっしょ?)」

ユリウスはスクールの後輩達にとって、今や目標ともいえる存在。

天才と呼ばれ、超然とした雰囲気を纏いつつも気さくに接してくれる先輩を前に彼女は心中穏やかではいられない。

初々しい少女のやり取りを生暖かく見つめていると―――。

「だからさぁ、今度の休みは歓楽街に遊びに行かない?」

「お前という奴は……少しは真面目に剣の腕を磨け!御師匠様も黄泉でお嘆きになるぞ」

「でもさ、ソウマくんもたまには息抜きしないと、根を詰め過ぎちゃ身体に毒だよ?」

「兄弟子をくん付けで呼ぶな!」

何やら騒がしい声が聞こえてくる。丁度、レオ達が来た方向からこちらに向かってくるふたり。

ひとりはザッシュ・シャルフィド。先月から、総本部所属となったばかりの青年だ。

もうひとりは、黒髪黒眼の極東諸島の人間に多く見られる特徴を持つ青年。名をソウマ・リュウドウジ―――ザッシュと同じく、先月からここの所属となった。

ふたりとも同郷で、同じ師の下で剣術を学んだ兄弟弟子。ソラスとブレイズのふたりとは、色々と共通点が多い。

「ザッシュ、それにソウマさんも」

「や、ユリウスくん。それにリズちゃんと、おまけくん達も」

「「誰がおまけだコラ(怒)」」

「落ち着いて下さいよ、ふたりとも。こんなトコで意刃を出さないで下さい(汗)」

おまけ扱いされたことに立腹したソラスとブレイズが二挺拳銃の意刃を発現させる。必死で宥めるレオ。

ありゃま、やっちゃったとペシッと頭を叩くザッシュ。益々しかめっ面になるソウマ。

「ザ〜ッ〜シ〜ュ〜?」

「ハッ!?しょ、しょの声はリューちゃん!ど、どうしたんだい、そんな地の底から聞こえてきそうな不気味な声を出して」

「アンタねぇ……ここは大陸中のセイバーの総本山なのよ。あんま騒ぐんじゃないわよ」

背後に、両腕を組んでザッシュを睨むリューが立っていた。さっきまで、ユリウスに緊張していた姿とは大違いだ。

彼女は溜息交じりに手で額を押さえる。そう、彼女とザッシュ、ソウマの3人は知己に間柄。

ザッシュ、ソウマ、リューの3人は大陸東部の出身である。といっても、幼少の頃から面識があるのはザッシュとソウマのふたりだけだ。

リューはふたりとは違う町で生まれ、15歳になって暫くして東部最大の都市グロウシティでセイバー試験を受けた。

丁度、その時に同じく試験を受けに来たのがザッシュだった。ソウマはふたりよりふたつ年上で、既にセイバーとなっていた。

今思えば、セイバー試験を受ける時期をズラすべきだったとリューは後悔している。そうすれば、このアホと知己にならずに済んだかもしれない。

「何であの時にセイバー試験を受けたのかしら……ハァ」

「何言ってんの、あの時に僕は運命を見つけたんだよ!眼鏡美少女というだけでもドストライクなのに、その上ツンデレでドSを兼ね備えている君と出会うという運命を!」

「誰がツンデレでドSじゃい!」

ちなみに、リューは2年前に見聞の為にここ総本部にやって来た。漸く、頭痛の種から解放されたと思っていたのに僅か2年で再び頭痛に悩まされる日々に逆戻りしたのだった。

唯一の救いは、ソウマというストッパーがついて来てくれたことだ。

疑いなく、このアホを放置するのは危険だと本能で察してここの所属になってくれたのだろう。

騒がしくも賑やかな光景に、ユリウスは笑みを浮かべていた―――この日々が長く続いて欲しい。

しかし、その願いが叶うことは無かった。これより数日後、彼は消息を絶つことになる。

調査に赴いたのはユリウスだけではない。リズ、ブレイズ、ソウマも調査隊の護衛に参加していた。

3年が経った今も、彼等の安否は確認されていない。










総長の執務室。丁度、リューがジスに話していることと同じ話をシオンはレイジ達から聞かされていた。

「レオとアリスの従兄が、その異常地帯で消息を絶っていたのか……」

「ええ、実はその件が気になって昨日徹夜で資料を調べたんです」

そう言って、レオが透明のファイルから資料を取り出す。資料には写真がいくつか掲載されていた。

調査隊のメンバーである研究者達の写真―――その中に、先日命を落としたエリクの姿があった。

しかし、それ以上にシオンが注目した写真があった。護衛に参加していたセイバーの写真だ。

その中の一枚を手に取る。心なしか、アヴェルには写真を持つシオンの手が微かに震えているように見えた。

彼が手にする写真に写るのは、レオとアリスと同じ黄髪の青年。彼こそが、消息を絶ったユリウス・ラングレイその人である。

「この青年がユリウス・ラングレイか?」

「はい、そうですけど……どうしたんですか?」

「……驚いたな、メルトディスの生き写しとしか思えん」

レオとアリスの従兄は、彼が信頼していた幼少の頃からの盟友メルトディス・ラングレイの姿と重なった。

もう少し年齢を重ね、貫禄を身に付ければ見分けがつかないほどだ。

「御先祖様とユリウス兄さん、似てるんですね」

「もし、ここにメルトディスが居て、双子の弟だと言われたら信じるかもしれないな」

会話を挟みつつ、資料に目を通していく。ユリウスの経歴の類を見て、シオンは表情を曇らせる。

セイバーとしての才能や資質、セイバーになってからの評価や功績―――何れも、自分が生きた時代のマスターと比較しても遜色がない。

これだけの人材が、現在の総本部に居ないことは大きな痛手だろう。総長やベテランのクライス達も同じ思いを抱いているのか、表情は暗い。

ユリウス以外に消息を絶ったセイバーも有望な人材が多い。3年が過ぎた今でも、抜けた戦力の補充は出来ていないに違いない。

資料に一通り目を通したシオンは、ソファから立ち上がる。アヴェルは手に汗を握っている自分に気付いた。

これは、ヤバイかもしれないとディアス家次期当主の少年は本能で察した。以前、修行した時のことが脳裏を過る。

否、あれ以上に壮絶なものが待ち受けている可能性大である。

「これだけの人材を失った埋め合わせは数年やそこらでどうにか出来るものじゃない―――覚悟はいいか、お前達?」

元当主の背後に炎のようなものが見えた気がした。アヴェルとレオは頬に伝う汗を拭うことも出来ずに、ゴクリと喉を鳴らした。

「えっと、シオンさん。それは―――」

「今からに決まっている。巡回や遠方への討伐が無い面々は全員だ」

「や、やっぱり……レオさん、遺書を用意しといた方がいいかもしれません」

「え、そこまで!?」

真っ青な表情のアヴェルに、レオは訓練をしてくれと頼んだことを今更になって後悔するのだった(笑)。










そこは、漆黒の闇の中だろうか。光など全くないその場所に“それ”は存在した。

『―――足りない。黒き糧が足りない』

“それ”は飢えていた。自分を動かす為の活力が不足していた。

―――と、暗闇の中に一筋の光が差し込む。もので例えるなら小さな亀裂が生じているとでも言えばいいか。

生じた亀裂から、大量の黒い意力が流れ込む。黒い意力は“それ”に吸収されていく。

“それ”の瞼が開く。銀色の瞳と赤い眼球という異様な眼をしていた。

『あの“捨て駒”も多少は約に立ったか。だが、まだ足りぬ―――このままでは、“奴”が来た時に対抗出来ん』

“それ”が手を頭上に挙げる。亀裂がより広がり、何処かの風景を映し出した。

映し出された景色には、フード付きの外套を纏った4人の人間の姿があった。彼等は、自分達が“それ”に見られている自覚がないようだ。

『期待しているぞ―――“使える駒”達よ』

誰にも認識されない漆黒の闇の中で“それ”は歪な笑みを浮かべた。

今、訪れているのは一時の平穏に過ぎない。新たな戦いの足音は少しずつ近づきつつある。



・2020年12月3日/誤字脱字を修正しました。
・2023年02月20日/文章を修正しました。



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