―――イレギュラー。
予想外の出来事。予期していなかった事。
またまた、全く予想していなかった事。
さて、これはそんな想定外が起きてしまった場合のIFのストーリー。




ちゅういじこう!

・これはIFストーリーです

・ルルーシュ皇帝陛下とレナード中将閣下が妙な場所に飛ばされちゃいます。偽ゼロのせいで。

・本編とは一切関係ないです。

・ようするにジョークです。






穏やかな風に揺られながら、その男は、レナード・エニアグラムは目を覚ました。
 そこは、見たところ公園のようだった。ブランコや滑り台、それに砂場などといった遊具が揃っている。ただ、その遊具で遊ぶ子供はいない。それはそうだろう。公園の時計で確認すると現時刻は午前二時。子供がこんな時間に遊んでいる筈ない。今頃温かいベッドで熟睡中だろう。
 
「!」

 漸く意識が覚醒する。
 状況を確認。周囲の景色からして、どうやらあの洞窟ではない。
 あの仮面の男ゼロもいなかった。

「どうなってるんだ? それより…………」

 自分の主君であり悪友であるルルーシュの姿がない。持っていたライフルや銃などは地面に散らばっている。しかし幾ら周囲を探しても、ルルーシュだけは見付からなかった。

「状況がさっぱり分からない。兎に角、通信機のようなものを探そう。
友軍と合流すれば、この状況も説明がつく…………かもしれない」

 通信機を探す。一応の目的を見出したレナードは、歩き出そうとする。

「良い夜ですね。ですがこんな時刻に一人歩きは危険ですよ」

「!」

 圧倒的な死の気配。
 思わず飛び退き、銃を構えた。居たのは一人の女。

「おや、それは銃というものですか。
確かこの時代の戦士達の主武装でしたね」

「なんだ、お前は……」

 明らかに異常だった。その紫色の長髪。目元は良く分からない眼帯のようなもので塞がれてはいるものの、彼女の妖しい美貌までは隠しきれてはいなかった。いや、そんな些細な問題じゃあない。
 その女の存在が、既に桁違いの怪物だった。

「随分と失礼な言い回しですね。初対面の女にお前とは」

「失礼。無礼を許して欲しい、ミス。それともミセスかな?」

「ミスですよ。特定の男に首を落とされた事はあっても、心を落とされた事はありませんので」

 首、という単語に不審さを覚えるも彼は警戒を解かない。
 その銃口を真っ直ぐに女の眉間に向けたままだ。

「あー。それではレディー。私としても度重なる異常事態に些か参っていてね。
そうだな。手始めに貴女の所属をお聞かせ願いたい」

「それは言えません。私のマスターの名を教える訳にはいきません」

「マスター?」

「その反応。どうやら本当に無関係のようです。
魔力を発していたので、もしかしたら魔術師かと思ったのですが、違ったようですね」

「魔力、それに魔術師だって? ふざけているのか」

「到って真面目です。でも、貴方には関係のない事ですよ」

「何故だ?」

「貴方は此処で、私の糧となるのですから」

「動くなッ!」

 こちらに近付こうとしてきた女を威嚇する。
 この距離だ。外す事は有り得ない。

「無駄ですよ。何の魔術も込められていない弾丸では、私を倒す事は出来ません。
ふふふ。一般人でありながらもその魔力。貴方の血はさぞ美味でしょうね」

「もう一度言う。両手を挙げろ。
さもなければ、そのキュートな顔に風穴が開くことになるぞ」

「では私ももう一度言いましょう。無駄です」

 銃声が響く。正確に女の眉間を狙った弾丸は、彼女を……。

「馬鹿、な」

 貫く事はなかった。
 弾丸はまるで、そこに何もなかったかのように女をすり抜ける。
 そのまま凄まじい速さで接近してくる女。再び発砲するが、その全てがすり抜けてしまう。

 女は当初はそのまま噛み付こうとしたが、レナードの背丈は190cm。対して女のほうは170cmほど。当然ながら届かない。
 だからやや嬉しそうに、女は両手をレナードの首に回すと、そのまま押し倒した。倒れたレナードの顔に女が抱きつくように近付いてくる。

「グゥ、な、何を!」

「大丈夫ですよ、痛いのは最初だけです」

「そう言う事はレズの女にでも言えッ!」

「直ぐに痛みなんてなくなりますよ。では」

 女は小さい舌でぺロリと首を舐めた後、がぶりと噛みついた。
 首筋に痛みが奔る。注射とは比べ物にならない刺激。
 抜かれていく。体から力が奪われて……。

「ふふっ。見込み通りです。
貴方の血は私の人生の中でも極上ですよ。あら、血管がピクピクしています」

「が――――ギッ――――――」

「可愛い反応ですね」

 このままじゃ不味い。
 命の危険は勿論、危ない性癖にも目覚めてしまいそうだ。
 そうなる前に行動する。確か、そうこの辺りにあった筈だ。手がどうにか目当ての物に触れた。
 そう、予め騎士服に隠してあった武器弾薬。それ等のうちの一つを手に取った。
 
 銃が効かなくても、これならば。
 瞬間。眩しすぎる光をレナードと女の周りを襲った。

「うっ……!」

 スタングレネード。偶然にも持って来ておいてそれはどうやら効いたようだ。しかし至近距離でやったせいで自分の目までがチカチカする。
 だが今がチャンスだ。力が緩んだ隙に、女の手から逃れ地面に散らばっていたサブマシンガンを回収。そのまま脱兎の如く逃げた。

「たっく、どうなってんだ! あの女。
まさか新手の逆レイプマニア? …………な訳ないか。それにしては戦闘力が異常だ」

 銃がすり抜けるだなんて悪い冗談だ。まさか自分は幻覚でも見ているというのだろうか。
 それにしては、やけに現実感のある幻覚だが。

「逃がしませんよ」

 どうやら視力が回復したらしい。
 驚くべき事に建物と建物の間を跳躍しながら追ってくる。

「ど、どうなってんだ! 黒の騎士団が人造人間でも造ったのか!?」

 自分でも場かな、と思う。しかし今実際に発生している事は、そんな馬鹿げた理由でしか説明のつかないことばかりだ。


―――――――――見つけた…私の……


「!」

 なんだ。誰かが呼んでいるような。そんな気がする。
 声がしたような方向を見る。

「あそこか」

 レナードはまるで導かれるかのように走り出した。
 気付けば雨が降っている。肌に当たる雨水が冷たいが、ロシアの雪ほどではない。
 道を駆け抜け、漸くそこに辿り着く。
 そこに一人の女性が横たわっていた。現代風とは言えない神秘的な何かを感じさせるローブ。手にしていた歪な形の短剣には血が付着していた。固まっていない。恐らくは最近の物だろう。突然降り注いだ雨で短剣の血は徐々に消えていっている。

「――――――――――まさか、サーヴァント!」

 どうやら、もたもたしている時間はないようだ。
 もう直ぐ底まで、先程自分を襲った女が迫っている。
 どうしようか迷ったその時、自分の腕を倒れていた女に握られた。


――――終わりたくないのね、貴方は

 これは、お前が話しているのか。

――――貴方には生きるための理由があるそうね。

 理由……そうだ。俺は一刻も早くアースガルズへ帰らなければ。
 それにルルーシュだって探さないと。

――――力があれば生きられるのかしら。

 力だと。そう、俺には力がない。あの女に襲われて何も出来なかった。

――――これは契約。貴方の杖となり力となる変わりに私の願いを一つだけ叶えてもらう。

 お前の願いを? それに俺の力になるだと……

――――契約すれば貴方は、もはや逃れられなくなる。この血生臭い殺戮ゲームからは。

 見える。そこは巨大な空洞。
 四人の人影が儀式を行おうとしている。

『大聖杯は起動した。
根源へと到るための大儀礼。
神話の再びの始まりだ!』


 決意は決まった。
 そう、自身が成すべき事は唯一つ。

「いいだろう。結ぶぞ、その契約!」


 ゆっくりと立ち上がる。
 目の前には、追ってきた眼帯の女がいた。

「まさかサーヴァントとの契約を……」

「なぁ一つ質問していいか?」

 先程と違い幽鬼のような雰囲気のレナードに、眼帯の女は一瞬だけ気圧される。
 しかし彼女もまた人間を超越した者。この程度で腰がすくむなどは有り得ない。

「なんでしょう」

「お前の名は、なんだ?」

「言えません。真名は伏せなければなりません」

「名はその存在を表すもの。
お前がそれを明かせぬというのであれば、俺は一つの存在を示そう」

 ゆっくりと謳うように、彼は唱えた。
 自らの存在を。

「私は、ジェームズ・エニアグラム公爵が長子にして、神聖ブリタニア帝国第九十九代唯一皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア陛下の僕たる十二騎士、ナイトオブラウンズが筆頭、ナイトオブワン、レナード・エニアグラム」

 宣言する。
 自らの存在を。俺は、此処にいると。

「神聖ブリタニア、それにナイトオブツー? まさか貴方は……!」

 女が踵を返す。

「ほう、逃げるのか?」

「勘違いしないで下さい。
私は魔力を補給せよとの命を受けただけ。
サーヴァントとの戦闘は命令範囲外です。なので今日のところは見逃しましょう」

「………………」

「では、いずれまた」

 女の姿が透明になり見えなくなった。
 気配もない。どうやら本当に退いたらしい。

「マスター」

 振り向く。
 そこにローブを着た女が立っていた。先程まで力尽き、倒れていた女性が。




 その頃。
 レナードと同じように、この異世界に飛ばされたルルーシュはというと。

「うぅ……」

 目を開くと、そこは知らない天井だった。
 アースガルズの自室でも、独房の中とも思えない。
 確かこれは…………日本に人質として送られた時に見た、日本式家屋の天井に近いような。
 そして自分の寝かされている布団の隣に、人影があった。

「君は?」

 どうやら布団に寝かされていたらしい。
 側には、恐らく日本人と思われる少年。年は14か15だろう。いや、人種のせいで幼く見えているだけかもしれない。だが少なくとも二十歳以上という事はないと思う。

「え〜っと。外国の人だから…………。
Nice to meet you. My name is Emiya Shiro.
こんなんで、いいのか?」

 やや堅いブリタニア語で少年、いやエミヤシロウが言う。
 どうやらブリタニア語が満足に使えないようだ。

「……私は日本語が使える。
無理して慣れない言語を使う必要はない」

「そうか! よかった。
でも……どうして、あんな場所で倒れてたんだ?
着ている服だって、その……」

「――――――――」

 整理しよう。
 この家屋と言語からして、此処が日本だというのは殆ど間違いではない。
 しかし仮に日本だったとしても、自分の顔を知らないのは妙だ。
 なにせ日本人にとって、今のルルーシュは英雄ゼロの前に立ちふさがる障害の一つ。中華連邦での事もあってルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名と顔は世界中に轟いているといって過言ではないだろう。
 なのに、この少年は口振りからして自分を知らない。しかもこの服装を見れば、ブリタニアの貴族や皇族に名を連ねる人間だと一目で分かる筈なのに、そんな様子もない。
 はっきり言って、意味不明だった。
 混乱したルルーシュは、最終手段を採る事を決定する。
 左目にあるコンタクトを外す。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが問いに答えろ」

「…………分かった」

「此処は何処だ?」

「日本○○県冬木市にある俺の家」

「お前は黒の騎士団……いや、質問を変えよう。
お前の所属と俺を助けた目的を言え」

「穂群原学園2年C組。
目の前で人が倒れてたから取り合えず家に連れて帰った。正義の味方を目指しているから、目の前で困っている人を放っておけない」

 正義の味方、という言葉に眉を顰める。
 自分も嘗て仮面を被り、正義の味方を演じた事があるが、まさか本当に目指しているような奴がいるとは思ってもいなかった。
 しかしルルーシュの目的はこの少年の思想じゃなくて、現状を把握することである。
 
「お前は黒の騎士団や超合衆国の関係者か?」

「………………」

(答えない、という事は知らないのか? 黒の騎士団を。
そんな馬鹿な! 黒の騎士団を知らない日本人などいる筈がない。
いや、しかし)

 その時、ルルーシュの脳裏にゼロが言った言葉が思い起こされた。
 それは大した事じゃないと流したこと。

――――――――無数にある可能性世界。何処へ行くのかは私でも分からぬが、せめて幸福に生きるがいい

 まさかとは思う。
 しかし確認しなければならない。
 ルルーシュは半ば祈るような気持ちで問いかけた。

「この世界にブリタニアという国は存在するのか?」

「存在しない」

「!」

 それは、最悪の返答だった。
 だが尚もルルーシュは訊ねる。

「今の年号は何なんだ?」

「西暦2002年」

 決まりだ。
 ルルーシュは呆然と呟いた。

「平行、世界」




































…… ああ… この小説が矛盾していたら良かったのに……
――――――――――by 巴

この物語をNGです。
――――――――――by 翡翠

別に、コレを没にしてしまっても構わんのだろう?
――――――――――by アーチャー



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