とある魔術の未元物質
SCHOOL46 翼 の 折れた メルヘン
―――天使は、必要なとき、やってくる。
必要な時に必要なものがあるというのは良い事だ。ただし必要じゃない時に必要じゃないものがあっても邪魔なだけだ。必要なものは必要じゃない時には必要なりえず、ただの邪魔にしか為りえない。必要な時を見定めるのが重要だ。
ローマにあるホテルの一室で、学園都市の超能力者である垣根帝督は目を覚ました。
二度寝したい欲望を我慢しつつ、ふかふかのベッドから起き上がろうとすると…………どうしたことだろうか。奇妙なことに体が重い。何かが圧し掛かっているかのような。
まさかこれが俗にいう金縛り? とでも思い首を傾けると、
「やむちゃむにゃ……もう食べられないんだよ……」
垣根に抱きつくようにして眠っている大食いシスターがいた。
「チッ。ベターな寝言ほざいてんじゃねえよ」
眠りこけているインデックスの首根っこを掴むと、そのままベッドから放り出す。地面に衝突する際に「むぎゃっ!」という悲鳴が聞こえたが垣根は知らんぷりした。
クローゼットから服を取り出し着替えを済ませる。
朝日がカーテンの隙間から差し込んできた。
本当に良い天気だ。こういう日は散歩でもしたくなる。眠気覚ましがてら、ローマの街を散歩するのも良いかもしれない。
学園都市は内部の者の出入りを厳しく制限している。特に垣根のような表でも裏でもビックなVIPときたら外国へ行く機会などそうはなかった。イタリア語は喋れるもののイタリアには一度も来た事がない。
目的が別にあるとはいえ、折角イタリアに来たのだ。一通り観光地を回るとしよう。
垣根がローマで購入したガイドブックを見ながら、今日の予定を組み立てていると漸くベッドから放り投げられたインデックスが目覚めた。
「むぅ……ていとく。なんで、私は床で寝てたんだろ」
「人は運命には逆らえねえんだよ」
「???」
インデックスが首をかしげたが垣根は気にせず、モーニングコーヒーを楽しんでいた。勿論どこかの第一位のように缶コーヒーを大量購入している訳ではなく単なるインスタントだ。
「うーん。安物のインスタントでも、ローマの街並みを見ながら飲めば……乙なものじゃねえか」
ふとインデックスを見ると、どこかで購入したらしいポテチをパクついていた。
「うーん。ポテチもローマの街並みを見ながら食べると、美味しさが三倍なんだよ!」
「…………珈琲とポテチは違う…………いや。言っても無駄か」
花より団子の権化である暴食シスターにワビサビなどを解いた所で馬の耳に念仏。
猿に曲芸でも教え込んだ方がよっぽど有意義だ。
「なんか失礼なこと考えてなかった?」
「さぁな。それより下で朝食と洒落込むとしようぜ。一つ耳寄りな情報を教えてやると、このホテルの朝食は食べ放題だ」
「!!!!????」
「準備したらさっさと行くぞ」
「了解なんだよ!」
目の色を変えたインデックスは、神速染みた動きで準備を終わらせる。時間にして十秒にすら満たない間。まるで時間停止が起きたような勢いだった。
「ていとく……早く行かないと朝食がなくなっちゃうかも!」
「朝食は逃げやしねえよ」
相変わらずの食欲に呆れ返りながら、垣根も自室の鍵を持って部屋を出る。
エレベータに乗って一分足らず。一階に着いた二人は、朝食が用意されてある広間へと到着した。
出迎えたのはホテルの従業員。恭しくお辞儀をすると、垣根達を案内する…………ところでその顔が交直した。
「へっ………あっ、その……」
従業員が口をパクパクしながら垣根の顔を指さす。
それなりに上等なホテルの従業員とは思えぬ、失礼な態度だ。
垣根も眉を顰める。
「ば……ば……っ」
「ば?」
「化物だぁああああああああああああああああああああ!!」
「はぁ?」
止める間もなく従業員が逃げ去っていった。しかしそれは一人だけのことじゃなかった。他の従業員は客も、垣根の顔を見た瞬間、絶句すると悲鳴を上げたり訳の分からない叫びをあげながら走り去っていく。
「インデックス、俺の顔に何かついてるか?」
「ううん。ていとく、いつもの悪人面だよ」
「悪人面は余計だアホ」
しかしどうしたものか。
数分もするとホテル内には誰もいなくなってしまった。
「……………………どうしてこうなった?」
「そんな事より、誰もいない間にごはん♪」
「お前の能天気さが羨ましいわ」
インデックスが再び食のハルマゲドンを発生させ朝食を全て空にしてから、二人はローマの街並みを散策するためにホテルを出た。
「あっ! 今犯人と思われる二人が出てきましたッ! 一人はシスターでしょうか? 白い修道服を着ています。そしてご覧ください! もう一人の人物を……あれは正に!」
「天使だ! 天使が出たぞォ!」
「エエエエエエエエエエエメエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエンンンンン!!」
「機動隊、バリケードを張れ! ローマ成教の総本山でなんて野郎たちだ」
「発砲を許可する! 繰り返す! 発砲を許可する!」
「ふもっふ」
信じられるだろうか。
普通に起きて普通にホテルを出たら、なぜか警官隊に取り囲まれていた。なんだかTV局のものらしいカメラまである。
「どうしてこうなった」
「ていとく。もしかして食い逃げを……!」
「テメエじゃあるまいし、んなことしねえよ」
「むっ。私も食い逃げなんかしたことないんだよ!」
「ホントかよ…………だが、まぁ。兎に角逃げるぞ!」
白翼を出した垣根が、インデックスを抱きかかえてそのまま空へと逃亡する。
勿論ホテルを取り囲んでいた警官隊とて木偶の坊ではない。逃亡する垣根を追いかけたが、いかせん空を行く垣根と地面を走る警官隊では速度に差がある。
「凄ェ! 空を飛びやがった!」
「やっぱり天使なのか、天使なのか」
「修道女萌えーーーーーーーーーーっ!」
「これはこれは、あれまーなのでございますよ」
「あら嫌だ。濡れちゃいそう」
「卑猥な表現は慎むように」
警官隊に突如として追われた垣根。
ホテルの貯蓄に大損害を与えたインデックス。
二人の未来は、神のみぞ知る!?
近頃、友人におとボク2借りました。
なんていうか、やってる最中にもこの中に垣根とか送り込んだらどうなるかな〜と妄想したりしてましたw 二次創作をある程度書きなれてくると、初見の作品でも「もし、このキャラがいたら」とか「もし、こうだったら」とか考えてしまいますねw
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