とある魔術の未元物質
SCHOOL113 二つの物語が交差する時


―――親の罪は子に報いる。
現代でこそ親の罪が子供に連座するなんて事はなくなったが、昔には当たり前のように連座制というものがあった。それは親子関係だけに留まらず、例えば叛乱などの大罪を犯した者は、その罪が一族全てに及び、一族郎党赤ん坊から女まで全員死罪となるなんてザラである。現代人の感覚からしたら有り得ないと思うかもしれないが、当時の人間にとっては常識だった。常識とは時代によって移り変わるものだ。










 インデックスを安全な場所にまで運んだ垣根は、白翼を使いイギリスという国を上空から見渡していた。
 クーデターなので当たり前といえば当たり前だが、あちこちで戦闘が起きている。
 ある所ではイギリス清教派の魔術師と騎士が、またある所では魔女と騎士が。国家のかじ取りをする権利を賭けた壮絶なる戦いを繰り広げていた。

(学園都市がクーデターってことになりゃ、こんな風になるのか)

 もし心理定規が死なず――――それどころか、インデックスと出会わないまま学園都市にいたらどうなっていたのだろうか。
 イギリスの国政、引いては女王エリザードに異を唱え反逆したキャーリサと同じように、垣根もまた統括理事長アレイスター=クロウリーに反逆したのだろうか。
 過ぎ去った歴史にIFはない。IFの歴史は垣根がLEVEL5の超能力者であっても観測不可能なものだ。

(……『運命』ってのは、なんなんだろうな)

 クーデターという非日常的な渦中に身を置いているせいか、嫌に哲学的なことを考えてしまう自分がいた。らしくもなく、感慨に浸っているのかもしれない。それとも罪悪感なんてものを抱きでもしたか?

(アホらし)

 垣根のやる事は変わらない。
 クーデターという電車に乗っかってしまった以上、途中下車は出来ないのだ。終点に着くまでこの電車に乗り続ける義務が垣根にはある。
 その終点が『死』か『栄光』なのかは、これからの垣根や騎士派、そしてキャーリサの奮闘次第で変わってくるだろう。

(だが、勝利の条件は整っている)

 カーテナ=オリジナル。あの剣がキャーリサの手元にある限り、このイギリス国内においてのみキャーリサは天使長としての力を、騎士派はそれに率いられる天使としての力を得る事が出来る。
 国外ならまだしも、国内での戦闘において、清教派は騎士派の足元にも及ばない。しかもクーデターに参加しているのはキャーリサとそれに率いられた騎士派だけではなく、LEVEL5の超能力者たる自分もいる。

「んっ?」

 地面スレスレの低空飛行で飛ぶ航空機が目に留まる。
 騎士派は交通機関のほぼ全てを掌握している筈だ。そしてあの航空機の情報は垣根帝督の頭脳に記録されていない。
 垣根は元々部外者だからと、キャーリサや騎士派から何も言われなかったのか?

(いや、それはねえか)

 騎士派とて同士討ちは避けたい筈だ。幾ら部外者といえど、協力者――――それも一国の軍隊を単体で相手取れるような戦力に報告しないはずはない。
 騎士派の援軍ではないとすると、あの航空機の正体は清教派の刺客。飛んでいる方向から逆算するに、どうやらキャーリサの方へ向かっているらしい。

「まぁ、運がないよな……諦めろ、航空機に乗ってる奴等」

 誰にでもなく呟き、垣根が手をかざす。コォッと光が集まったかと思うと、かざした手から赤黒いエネルギーが放射される。
 光線はあっさりと航空機を貫き、力を失った航空機は地面へ激突し爆発した。黒い煙がもこもこと上がる。アレでは中にいた人間は全員死んでいるだろう。乗っているのが優秀な魔術師だったとしても、無傷ではないはずだ。

「あー、もしもし。俺だ」

 通信機で連絡を取る。
 相手は第二王女キャーリサ。

『どーした、我が母の尻でも見つけたの?』

「ババアの尻なんざ興味ねえ。ンなことより、清教派の乗ってた航空機を撃墜した。場所は……」

 暗記した地図の場所を、キャーリサに伝える。

『そーか、科学サイドの頂点は名ばかりじゃないようなの。学園都市の危険度を上げておこうか』

「心配いらねえよ。俺と同じような事が出来るのは、学園都市でも俺と第一位の糞野郎……もしかしたらで、訳の分からねえ第七位くらいだ」

『超能力者といえば、清教派の女狐の計らいだかで、そっちの第三位が来ているの。騎士にやらせてもいいんだが、相手は毛も生えていないような小娘。下手な連中を差し向けても油断して返り討ちになる可能性もある。私としてはつまらない事で躓くのは我慢ならない。第二位というからには、第三位より強いだろう?』

「超能力者の序列は、能力が齎す価値であって力の上下じゃねえんだがな」

『というと、お前は第三位よりも弱いの? だとしたら評価を下げる必要があるし』

「誰も第三位より弱いだなんて言ってねえよ。ただテメエの間違った知識を矯正してやっただけだ。にしても第三位ねえ。超能力者の女を引っかけるとは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は伊達じゃねえってことか? …………話が逸れたな。ようは第三位を潰してくりゃいいんだろ? 安すぎる御用だ」

 通信を切る。丁度いい塩梅だ。
 保険のためにも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は確保しておきたい。上条当麻とやらを捕えるついでに第三位の御坂美琴を潰しておくのも良いだろう。
 これから先の戦闘には良いウォーミングアップだ。



「ああもうっ! どうしてアンタと一緒だと毎度毎度騒動に巻き込まれるのよ!」

「仕方ねえだろ。上条さんの不幸体質は今に始まった事じゃないでせうよ!」

 上条と御坂はクーデター渦中のイギリスの街を走っていた。
 つい先ほど、裏取引とやらで味方になったオリアナが、暴走状態のシェリー・クロムウェルを止めにいったばかりである。

「返せ! イギリス旅行のプランを考えた私の時間を返しなさい!」

「知るか! そんなものクーデターの首謀者らしい第二王女にでも言ってくれ!」

 常人なら恐怖でパニックになってもおかしくない様な情勢下、こうして夫婦漫才に興じれるのは上条と御坂が良くも悪くも場馴れしているからだろうか。
 
(だけど、早くイギリス清教の女子寮に行かないと!)

 上条は腕の中にいるレッサーを見る。
 彼女は騎士派の口封じにあって重傷を負っていた。学力も低く医療知識なんてない上条には分からないが、このまま放置していいような怪我ではないのは感覚で理解できる。
 レッサーという少女の出自と、こんな状況だ。普通の病院に連れて行った所で無駄だろう。イギリス清教の女子寮には回復魔術が使える魔術師もいるそうなので、取り敢えずはそこまで運ばなければ。
 と、そこで。
 上空から弾丸のような速度で何かが飛来してくる。それは超高速で飛来したにも拘らず、ふわりと、まるで羽の様に着地すると真っ直ぐ上条を見た。
 それは人間。180cmほどの長身に、茶髪と金髪の中間のような髪。顔立ちはホストのように整っているが、目つきの悪さはまるでマフィアのようでもあった。
 
「――――――――――ッ」

 圧倒される。
 心臓が早鐘を打つ。
 この男はヤバい。上手く言い表せないが、これはヤバい。まるで学園都市最強の超能力者『一方通行(アクセラレータ)』と相対しているようだ。

「誰だよ、お前?」

 敵か味方か。
 上条の疑問はそれにつきる。味方なら、上条は幸福なのだろう。彼が味方になるなら百人力だ。実際の実力を見た訳でもないのに、上条はそう確信していた。
 逆に敵なら、これ以上の『不幸』はないだろう。
 そして上条当麻という少年は生まれながらにして『不幸体質』だった。

「……初めまして上条当麻。俺は垣根帝督、テメエの右手を奪いに来たぜ」

 垣根帝督と上条当麻。
 学園都市の住人でありながら、魔術サイドの事件に関わりつづけてきた者達。誰よりも近くで戦いながら、決して出会う事のなかった二人。それが遂に出遭った。

――――――今宵、二つの物語が交差する。
 



上条さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ! 上条さァァァァァァァァン! 上☆条! 上☆条! 上☆条! 

上条!上条!上条!上条ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!上条上条上条ぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!上条当麻たんの黒色ツンツンウニ頭の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 小説11巻の上条たんかわいかったよぅ!!あぁぁ
ああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ映画決まって良かったね上条たん!あぁあああああ!かわいい!上条たん!かわいい!あっああぁああ! コミック9巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃあああああああああああああああ!!!コミックなんて幻想じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… 上条 ち ゃ ん は 幻 想 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!学園都市ぃいいい!! この!ちきしょー!殺してやる!!幻想なんか殺し…て…え!?見…てる?表紙絵の上条さんが僕を見てる? 表紙絵の上条さんが僕を見てるぞ!上条さんが僕を見てるぞ!挿絵の上条さんが僕を見てるぞ!! アニメの上条さんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕には上条さんがいる!!やったよビリビリ!!ひとりでできるもん!!! あ、コミックの上条さぁああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあギル様ぁあ!!青髭の旦那!!イスカンダルぅううううううう!!!言峰ぇえええ!! ううっうぅうう!!俺の想いよ上条へ届け!!学園都市の上条へ届け!


……落ち着きました。そんなこんなで漸く、上条さんと垣根が邂逅しました。思えば上条さんが最初に台詞有りで登場したのが18話、今は113話。ここまでくるのに95話掛かってしまいました。ここまでの道のりは長かったです。電話越しの会話はありましたが。
 最後にローラの口調が難しすぎる。古語なんて知らんわ。なんやねん古典って。古典なんて大嫌いや。まだ英語の方がマシやで。あんなん大嫌いや……そんな風に愚痴りながら授業を受けてたのも良い思い出です。お陰で古語なんてチンプンカンプン。もうローラ書きたくない。でも立場的に書かないといけないというジレンマ。



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