俺――兵藤一誠は現在、駒王学園のグラウンドにいる。しかも、時間帯は深夜0時。何故、そんな時間帯に俺が学園のグラウンドにいるのか。それは今から俺と堕――駄天使独立愚連隊(笑)の決闘が始まるからだ。
しかも、1on1の決闘ではなく1on30(内4名は駄天使)な上、この決闘内容を冥界上層部(主に四大魔王)とグレモリー眷属、シトリー眷属の一部メンバー。あと、神の子を見張る者上層部(主に総督、幹部級)が見ているそうだ。
駄天使達が俺を殺せたら無罪放免って約束をしているから、堕天使勢の総督であるアザゼルとそのアザゼルと通信を繋いでくれたサーゼクス様が観戦するのは分かる。
俺が所属しているグレモリー眷属が見るのも分かる。百歩譲って、堕天使勢の副総督であるシェムハザ氏とサーゼクス様の公私ともに王妃であるグレイフィアさんが立会人としてこの場に居るのも分かる。
だけど、シトリー会長の眷属や他の魔王様、神の子を見張る者の副総督以下の幹部級がこの決闘という名の処刑を何で見ているのか、俺には分からない。
気分的には『SAO』でやったヒースクリフとの決闘だ。アインクラッド第75層主街区・コリニアのコロシアムで行われたお祭り騒ぎな決闘。KoBの団員が大々的に宣伝して、入場料取って商売していたからな。
共通点はぶっちゃけ見世物って所だ。まぁ、悪魔も堕天使も興味があるのは決闘内容ではなく、今代の赤龍帝がどれだけの力を有しているか見てみたいとか、そんな所なんだろうけど。
あっ!そういえば言い忘れていたけど、実は駄天使独立愚連隊(笑)が俺の家を襲撃してから1週間が経っていたりする。この1週間、色々とあった。
勝手に決闘の約束を取り付けたことについてリアス部長に説教されたり、部長に政務とかで忙しいであろうサーゼクス様へと連絡して貰ったり、サーゼクス様経由でアザゼルと話し合いしたり、俺とサーゼクス様、アザゼルで決闘場や立会人を誰にするかといった話をしたり、その他にも色々と準備とかしていたら、あっという間に1週間が経ってしまった。
ちなみに、さっき俺が居る所を駒王学園のグラウンドと言ったが、厳密には違ったりする。俺が居るのはサーゼクス様が用意したレプリカの駒王学園、そのグラウンドだ。
あと、決闘場でもあるグラウンドには結界で覆われ、決着が着くまで結界内の者は外に出られない上、結界の外に戦いの影響が出ない仕様になっている。
ん?決闘するのは俺と駄天使独立愚連隊(笑)だけだし、立会人は最上級位の悪魔と堕天使で、学園そのものはレプリカだから結界を張る必要はないんじゃないかって?
グラウンド全体を見渡せる新校舎屋上に雛壇式の観客席があるんだよ。しかも、悪魔用と堕天使用の2タイプ。
それぞれの最上段にはサーゼクス様を含む四大魔王様と思しき方々と、堕天使の総督であるアザゼルと思しき顎髭を生やした前髪にメッシュっぽいのが入ったおっさんが居る。
最上段以降の席にも、見覚えは全くないが冥界上層部と思しき悪魔や、白衣を着た研究者肌といった感じの堕天使幹部と思しき者が座っている。部長や会長達も、下の段ではあるけど観客席に座っている。
観客席の作成はサーゼクス様とアザゼルの案だ。なんでも、転生悪魔となった赤龍帝である俺の実力を生で見てみたいとか。こういったセットを作ったのも1週間掛かった原因の1つだ。
そういえば、俺がアザゼルを目視したのは今日が初めてだったりするな。今日までの1週間に行われた話し合いをアザゼルは音声オンリーで参加していたし。
ってか今更だけど、こんな所にやって来るくらいなら、「自分の尻を自分で拭うことを先にしろ」と声を大にして言いたい。それと今までの話し合いを音声オンリーにしていた意味はあるのかも問いたい。まぁ、問いたいと言っても凄く気になるって訳でも無いけど。
そうそう、観客席のある新校舎屋上には悪魔と堕天使以外の種族もいたりする。その人物は両種族の観客席の間に設けられた特別席に座っている。この場に存在することが許された唯一の人間、それはアーシアだ。
今回の決闘という名の処刑で、アーシアは勝者側の商品みたいな扱いだ。駄天使独立愚連隊(笑)が俺を殺せれば、アーシアの身柄は駄天使達に引き渡される。
俺が駄天使独立愚連隊(笑)を全滅させれば、堕天使勢は今後アーシアにちょっかいを掛けることができなくなり、普通の少女として生活を送ることが可能となる。
これはアザゼルも了承していることだ。普通の少女としての生活は俺の両親がアーシアの身元引受人になるか、アーシアを養女にすることを計画していたので、堕天使に狙われなくなれば自動的に送れるようになる。
俺の両親は黒歌や白音並にアーシアのことを気に入っていて、昨日の時点でいつ頃から駒王学園に通わせるか、って話をしていたし。
俺の両親が身元引受人になればアーシアも俺の身内となり、契約によってアーシアもグレモリー家の庇護下に入ることになる。その結果、他の悪魔もおいそれと狙えなくなるから悪魔側の心配も無くなるって訳だ。
っと、そんなことを説明している内に駄天使独立愚連隊(笑)が漸くご登場のようだ。俺から大体30m離れた所で転移魔法陣が使用される時と同じ、独特の発光がいくつも起こり始めた。
そして、光が治まると駄天使が4人、はぐれ悪魔祓いが26人姿を現し、俺は思わず驚いてしまった。……言っておくけど、別に物量に驚いた訳じゃないからな。
俺が驚いたのは駄天使独立愚連隊(笑)の主犯格と思しき駄天使が、SM嬢の着ていそうなボンテージ姿でこんな公衆の面前に現れたことと、現れたはぐれ悪魔祓いが1週間前の襲撃で見たことのない奴らだったことに対してだ。
いや、俺には人の趣味に口出しする権利はないから、どんな姿で現れようと何も言えないんだけどな。
あと、襲撃してきたはぐれ悪魔祓い達が駄天使達の攻撃で再起不能になっていても変ではないんだけど、「そいつらを除いても26人の補充要員がいたのかよ」って突っ込みを入れたい。取り敢えず―――
「俺が止めを刺し忘れた白髪のはぐれ悪魔祓いや、俺の家に襲撃してきて結界に弾かれたお前らの光力で重傷を負ってたはぐれ悪魔祓いはどうしたんだ?療養でもしてるのか?」
俺が何となく質問してみると、主犯女駄天使は「あんた、何言ってんの?」みたいな顔をしてきた。いや、お前がそんな顔をする資格はないから。俺の質問よりお前の格好の方が奇想天外だから。
「あんな役立たず共、治療する訳ないじゃない。日本には有名な樹海がいくつもあるでしょ?そこに転移させる形で廃棄処分したわよ」
……この駄天使、本当に終わっている。一体人間を何だと思ってるんだ?白髪顔芸神父も大概な外道だったけど、この駄天使はそれ以上の外道だ。人間とはいえ、部下だった奴らを廃棄処分って……。
俺は人間だった頃から視力が良かったこともあり、グラウンドから屋上にいる観客の表情が分かるんだけど、駄天使の言葉に部長と会長を含むグレモリーとシトリー眷属の全員が顔を顰めている。
両観客席の最上段に座っているサーゼクス様とアザゼルも、部長や会長達ほどではないが若干顔を顰めているな。他の魔王様方はローブの様なものを身に纏い、フードで顔を隠していることもあって表情は分からないものの、心情はサーゼクス様と似た様なものだろう。
俺と駄天使独立愚連隊(笑)の立会人で神の子を見張る者副総督であるシェムハザ氏と、殆ど表情を崩すことのないサーゼクス様の王妃であるグレイフィアさんも、一瞬ではあったが眉を動かすという形で反応した。
「……人間にも言えることだが、悪魔や堕天使であっても踏み外しちゃいけない道ってのはある筈だ。それを踏み外して罪悪感を抱くことなく、平然としていられるお前らは堕天使でもなんでもない。ただの外道だ」
「悪魔風情が至高の種族である堕天使の私に説教なんてしてんじゃないわよ!何様のつもりよ!!すぐに楽にしてあげようと思ったけど、指先から徐々に切り刻んで生き地獄を味合わせてやるわ!!」
……この女駄天使、自分が廃棄処分した顔芸神父と似た様な事を言い出しやがった。しかも、神の子を見張る者の幹部がいるからって「至高の堕天使である私」から「至高の種族である堕天使の私」に変更して、堕天使そのものをヨイショし始めたぞ。
堕天使側の観客席にいる者達は、総督であるアザゼルを含めて「お前と一緒にするな」と言わんばかりの顔だ。立会人であるシェムハザ氏も嫌そうな顔をしている。そして、そんなシェムハザ氏に同じく立会人であるグレイフィアさんは同情の視線を送っている。
「至高の種族である堕天使?ハッ!お前らは堕ちた天使≠意味する堕天使≠ナはなく、駄目な天使≠意味する駄天使≠セろ。他の堕天使からしたら、お前ら駄天使と一緒になんかされたくないんじゃないか?」
俺が女駄天使の言葉を鼻で笑ってそう言い返すと、駄天使4人組は顔を真っ赤にして激昂し、逆に観客席にいる堕天使達と立会人であるシェムハザ氏は「よく言った!」と言わんばかりの顔をした。
「何はともあれ、さっさと始めようか。観客を待たせるのもなんだしな。……言っておくが、これから始まるのは決闘という名の公開処刑だ」
「そうね。今から始まるのは確かに公開処刑だわ。愚かな悪魔が神の子を見張る者の幹部と四大魔王の前で無様に嬲り殺されるのよ」
俺の言葉に女駄天使――レイナーレは同意し、見下す様な視線を送ってきた。他の駄天使やはぐれ悪魔祓い達も同じ様な視線で、にやけた顔をしている。自分達が勝つことを疑って無いようだ。
「それでは、これよりリアス・グレモリーの眷属である兵藤一誠と―――」
「駄天使レイナーレ率いるはぐれ悪魔祓い連合の決闘を開始します」
「「……はじめ!!」」
無駄に自信満々な態度である駄天使独立愚連隊を無視し、立会人であるグレイフィアさんとシェムハザ氏は決闘開始の宣言をした。ってか今、シェムハザ氏は駄天使って言わなかったか?
俺は『赤龍帝の籠手』と『十戒の聖石剣』、『十戒の魔石剣』を形成し、竜闘気を纏いながらそんな突っ込みを入れる。ちなみに、その間も光剣を持ったはぐれ悪魔祓い達は止まることなく、まるで雪崩の様に突っ込んできている。
一番先頭のはぐれ悪魔祓いが俺を光剣の間合いに捉え、振り下ろしてきた瞬間、俺は片足を軸に体を回転させる様にその攻撃を回避し、はぐれ悪魔祓い達が密集している丁度中心の位置まで一気に移動した。
そして、移動し終えると同時に『十戒の魔石剣』を『闇の鋼鉄剣』から『闇の爆発剣』へと変化させ、刀身に魔力を纏わせた状態で抜刀術の様な勢いで横一閃に振り抜いた。
何も知らない者が見れば、俺の行動は無意味なものとしか思えないだろう。が、魔力の扱いに長けた者が見れば俺の行動の意味が分かる。俺が『十戒の魔石剣』で横一閃した瞬間、刀身に纏っていた魔力が俺を中心とした全方位に一気に拡散したんだ。
『SAO』並びに『SLO』に存在する片手剣ソードスキルの全方位範囲技、『ホリゾンタル』。それが俺の放った技の名前だ。大概のソードスキルは『十戒の聖石剣』か『十戒の魔石剣』の刀身に魔力か霊力、もしくは竜闘気を纏わせることで再現できるからな。
もっとも、今回放った『ホリゾンタル』はオリジナルとは異なるけどな。『闇の爆発剣』の上位爆発剣舞、『デスペラード・ボム』を融合させた特別製だ。分かり易く説明するなら、『シルファードライブ』の全方位範囲衝撃波版、と言えばいいか?
衝撃波に接触した瞬間、接触した対象の体表面が爆発するみたいな感じだ。そうだな、スキル名を付けるなら―――
「全方位広範囲上位爆発剣舞、『デスペラード・ホリゾンタル』」
元々、『デスペラード・ボム』自身がソードスキルで言えば広範囲重攻撃技に相当するからな。それと全方位範囲技を組み合わせれば、死角皆無の凶悪ソードスキルにもなる。まぁ、範囲を絞っている分、ダメージ総量は『デスペラード・ボム』の方が上だけど。
まぁ、人間相手なら『デスペラード・ホリゾンタル』でも十分過ぎる。現に一斉に襲い掛かって来たはぐれ悪魔祓い、総勢26名は爆裂傷を負った箇所から煙を上げながら絶命している。
こう言ってはなんだけど、まだ顔芸神父の方がしぶとかったな。あいつを基準としていたから拍子抜けだ。もしかしたら、あいつは戦士として優秀な部類だったのかもしれない。生き汚いという意味で。
そんなことを考えていると、背後から4本の光の槍が飛来してきた。俺はそれを危なげもなく、『封印の剣』と『闇の封印剣』に変化させた『十戒の聖石剣』と『十戒の魔石剣』で斬り裂き、消滅させた。
駄天使4人組は、はぐれ悪魔祓いが俺に突っ込んだ時点で俺の背後上空へと移動していたんだ。当然、それに気付けない程に俺は油断も慢心もしていないし、精神的にも耄碌していない。
「人間を囮にして相手の背後から攻撃か。至高を自称する駄天使の癖に三下っぽい真似をするんだな」
「はぐれ悪魔祓いといっても所詮は神器も持ってない人間。そんなのこの世に掃いて捨てる程いるじゃない。私達に使って貰えただけでも感謝して貰いたいわね」
「……本当にいい性格してるな、あんた」
「そんなこと、どうでもいいわ。それより、一体どういうことよ?」
俺が皮肉を口にすると、レイナーレは俺を睨みつけながら問い掛けてきた。堕天使側の観客席もざわつき、立会人であるシェムハザ氏も目を見開いている。まぁ、質問と驚きの内容は大体分かるけどな。
「あんたの神器は『聖剣創造』。その禁手の亜種の筈!なのに、何で『魔剣創造』と『龍の手』まで持ってるのよ!?」
「言っておくが、俺は生まれた時から神器を3つ所有していた。あと、お前は2つ勘違いをしている」
「せ、先天的に3つもの神器をその身に宿していたと言うの!?そ、それに勘違い……?」
「1つは俺が所持する魔剣についてだ。俺が所持する魔剣はただの『魔剣創造』じゃない。聖剣――『十戒の聖石剣』と同じ禁手の亜種。一度禁手に至ればその状態を維持し続ける常時禁手型。名称は『十戒の魔石剣』だ。
あと、俺の左腕に形成された籠手は『龍の手』じゃない。現時点でこの世に13種しか存在しない神滅具の1つ、『赤龍帝の籠手』だ」
俺が自分の所持する神器の説明をすると、駄天使共は目を見開いた状態で固まり、観客席では堕天使側だけでなく、悪魔側からもざわつきの声が聞こえてきた。
もっとも、部長から全て聞いていたであろうサーゼクス様と同じ魔王である御三方、サーゼクス様の王妃であるグレイフィアさんは驚いてなかったけど。
ちなみに、神の子を見張る者の総督であるアザゼルは、俺が赤龍帝であることを知っていたが神器を3つ所持していることは知らなかったので、そのことに驚いていた。
っていうか、両種族の上層部は俺が赤龍帝であることを知らずに観戦しに来ていたのかよ!?俺はてっきりそれを知っている上で来ていると思っていたぞ!!
……もしかして、サーゼクス様が中心となった魔王様方とアザゼルは、この場に来ている両種族の上層部にドッキリを仕掛けたのか?
何も知らされていなかった両種族の上層部は、下級同士の死闘を娯楽感覚で見に来ていたとかなのか?いや、それはそれで性質が悪いけど。
……まぁ、いいや。取り敢えず、事情を知らなかった両種族の共通の驚きは、赤龍帝が悪魔陣営に所属していることと、今代の赤龍帝が神器を先天的に3つ所持していたという所だろうか。
「ぶ、『赤龍帝の籠手』……。一時的でも神や魔王を超え、屠ることが可能と言われている神滅具……」
「れ、レイナーレ姉様!私、こんなの聞いてないよ!!」
「神滅具所持者。しかも、2つの神器が禁手に至っている者に勝てる訳が無いではないか!」
「亜種の禁手に至ってるってのは聞いてたけど、話が違うじゃない!いくら禁手に至ってても、4人で掛かればあの悪魔を殺せる。そうすれば、『聖母の微笑』と禁手の『聖剣創造』が手に入るって言うから、あんたの話に乗ったのに!!」
想定外の出来事に駄天使達は混乱し、口論―――というより糾弾か?取り敢えず、一方的にレイナーレを責め始めた。まぁ、ここで仲間割れを始めて他の3人がレイナーレを差し出してきた所で、俺は許してやるつもりも見逃してやるつもりも無いけどな。
『Boost!!』
「「「「!!」」」」
そして、駄天使達が口論している最中に『赤龍帝の籠手』の宝玉から倍加を知らせる音声がその場に響いた。その音声に口論をしていた駄天使達は体を強張らせ、全員が俺の方に視線を向けてくる。
目は口ほどにものを言う。堕天使達は現在進行形でそれを体現していた。恐怖、絶望、生への渇望。だけど、俺はそんな駄天使達の心情を気にせず、一歩ずつ堕天使達へと歩を進めて行った。
「ま、待て!私はお前――いや、あんたが赤龍帝だったなんて知らなかったんだ!今後、あんたの身内には手を出さない!下僕になれと言うのなら喜んでなる。レイナーレの身もあんたに差し出す。だから、命だけは助けてくれ!!」
「ドーナシーク!?」
駄天使達の黒一点――ドーナシークという名の男駄天使は、レイナーレを含む他の駄天使より少し前に出て、怯えた目で俺に命乞いをしてきた。だが、俺はドーナシークの戯言に耳を傾けることなく歩を進めた。
駄天使達との距離は約100m。相手は空中にいるので、飛翔しての直線距離は100mより少し離れているって所だ。俺はその距離を一歩ずつ確実に縮めていく。
命乞いへの返答もせずに3mほど歩を進めると、ドーナシークの目に宿った怯えの色は滑稽に思えるほど深まっていき、ついには俺が歩を進める毎に後退する様になった。
『Boost!!』
そうこうしている内にまた10秒経ったのか、『赤龍帝の籠手』から2度目の倍加を知らせる音声が聞こえてきた。それと同時に霊力と魔力、竜闘気、身体能力を含む俺の全能力値が通常時の4倍にまで跳ね上がった。
俺の纏っている竜闘気が更に膨れ上がったことでドーナシークの恐怖は臨界点を突破したのか、俺に背を向けて仲間であるレイナーレを含む女駄天使達を押し退け、その場から1人で逃げ出そうとした。
処刑場――もとい、決闘場であるこのグラウンドは結界で覆われている為、ドーナシークを含む駄天使達に逃げ場など在りはしないのに。
まぁ、逃げ出したくなる気持ちは分からなくもない。俺は普段、全力の10%程度の竜闘気しか纏わない様にしている。
それは10%でも身体強化と防御力の強化には十分過ぎるからだ。『赤龍帝の籠手』と併用すれば40秒の倍加で160%と、通常時の全力を簡単に超えられるしな。
しかし、今回の決闘で俺が纏った竜闘気の出力は30%。普段纏っている闘気量の3倍だ。それが20秒の倍加によって120%となり、通常時の全力を超えてしまっている。
上級や最上級堕天使を相手にするならまだしも、下級堕天使ならぬ下級駄天使を相手にする出力としてはやり過ぎと言ってもいい。逃げ出して当然だ。
俺は右手に持っている『十戒の聖石剣』を基本形態である『鋼鉄の剣』へと戻し、持ち方を逆手持ちへと切り替える。一方、左手に持つ『十戒の魔石剣』は『闇の封印剣』のままだが、切っ先を駄天使達へと向ける様に構えた。
「上位封印剣舞、『デーモンシール』」
上位封印剣舞、『デーモンシール』。それは『闇の封印剣』の状態の『十戒の魔石剣』に魔力と霊力を喰わせることで、『闇の封印剣』で直接斬ることなく離れた対象の能力を封印することができる技だ。喰わせた魔力と霊力の量に比例して、封印対象の数や規模を増やせたり、封印しておける時間を延ばせる。
今回の『デーモンシール』で俺が『闇の封印剣』に喰わせた魔力と霊力の量は現時点での3分の1。つまり、通常状態で俺が保有する魔力と霊力の総量に相当する。遠距離封印が可能なんだが、その分燃費が悪かったりするんだよな。
それだけの対価を支払って封印する対象は、1週間前に俺の身内に手を出すなど言い、現在進行形で赤龍帝の逆鱗に触れている駄天使4名。封印規模は駄天使達が持つ堕天使としての全能力。封印時間は1時間って所だ。
堕天使としての全能力を封印された当人達は翼を失い、女駄天使3人組は6〜7mの高さから地面に落下。逃亡の為に空中を移動していたドーナシークは落下後、地面を勢いよく転がっていた。
突然翼を失ったことに駄天使達は混乱の極みに陥った。恐らく、自分達に起こったことが理解できずにいるんだろう。それにしても、全能力を封印されて人間と大して変わらない筈なのに、堕天使ってのは随分と体が丈夫なようだ。
女駄天使3人組は6〜7mの高さから衝撃吸収材も無いグラウンドに落下したにも拘らず、ほぼ無傷だ。普通なら骨折をしてもおかしくはないだろう。
ドーナシークも地面を転がったことで無傷ではないものの、人間では考えられないほど軽傷だ。頭から血を流しているけど。
……さて。『デーモンシール』を使ったのも、散々蔑んでいた人間と同じ人外には無力な立場へと叩き落した後に、この世から退場して貰おうと思ったからなんだが、効果はてき面の様だ。
駄天使組で唯一怪我をしているドーナシークはその場から立ち上がると、頭の傷や能力が使えないことを気にする素振りも見せず、俺から少しでも遠くに逃げようと走り出した。どうやら、ドーナシークの頭の中は俺から逃げ延び、自分が生き残ることしか無いようだ。
そんなドーナシークに対して俺は投げ槍の様な体勢を取り、右手に逆手で持っている『鋼鉄の剣』形態の『十戒の聖石剣』を目標目掛けて投げつけた。
投擲した『十戒の聖石剣』は弓から放たれた矢の様な速度でドーナシークの背中へと向かい、脊椎をブチ抜く様な形で切っ先から鍔元までの刀身がその体を貫く。
体を貫かれた当人は『十戒の聖石剣』が貫通した瞬間、走っていた方向に数歩よろけてからその場に膝をついた。
生物ってのは脊椎を大きく損傷すると体を動かすことができなくなる。それは人外にも言えることなのか、ドーナシークはその場から移動するという形で動くことは無かった。
しかし、人外ってのは種族に関係なくしぶとい生き物なのか、ドーナシークは『十戒の聖石剣』で体を貫かれても尚、絶命はしていなかった。まぁ、絶命していないだけで虫の息であることには変わらないんだけどな。
ただ死を待つだけの状態でありながら、ドーナシークは俺に絶望と命乞いの色を混ぜ合わせた様な視線を向けてくる。当然、俺がドーナシークを救うという選択肢を用意する訳が無い。
俺はドーナシークを貫いている『十戒の聖石剣』を消し去り、止めを刺す為ドーナシークに向かって一気に駆け出す。この時、『十戒の魔石剣』を右手に持ち替え、形状も『闇の重力剣』へと変化させた。
『十戒の聖石剣』を消し去ったことでドーナシークの傷口からは大量の血が溢れ出し、『十戒の聖石剣』が刺さっていた時よりも確実に命の灯が尽きる時間が早まっているが、自分の手でドーナシークに止めを刺すことしか考えていない俺にとってはどうでもいいことだ。
俺は女駄天使達の横を駆け抜け、ドーナシークがいる10m手前で空高く跳躍。ドーナシークの命が尽きる前に重力に従って落下し、『闇の重力剣』でドーナシークの頭頂部から股間にかけてを一刀両断にした。
『十戒の魔石剣』で止めを刺したので死体が残ってしまう可能性があるが、この駒王学園自体がレプリカなのでバイサー討伐時とは別の意味で死体処理などを気にする必要はないだろう。
取り敢えず、これで鬱陶しい駄天使をまず1人仕留めることができた。俺は死体に興味はないし、顔芸神父の様に死体を辱める趣味も無いので、縦裂きという形で泣き別れしたドーナシークを無視し、次の標的である女駄天使達へと振り返る。
すると、女駄天使達は呆然とした顔で俺を見ていた。いや、俺ではなくあっさりと物言わぬ存在となったドーナシークを見ているのかもしれない。
俺はそんな女駄天使達を見て、このまま仕留めても別にいいんだけど、必死に抵抗するか、ドーナシークの様な行動をしてくれる方が助かるんだけどな、と思った。
理由はこの場に居る全悪魔と堕天使に対する見せしめになるからだ。俺の身内に牙を向けようとする者は例外なく容赦をしない、ということを行動で頭に刻み付けることができる。
現に立会人であるシェムハザ氏とグレイフィアさんは、悪魔になって1ヶ月程度しか経っていない俺が、駄天使とはいえ人型生物を殺めて顔色一つ変えないことに驚いている。
転生悪魔でも、元が普通の人間なら人型生物に関係なく、血液が流れている生物を殺すことに抵抗感を覚えるだろう。バイサー討伐時のアスナがいい例だ。
けど、俺は普通とは異なる。前世や前々世で人型の人外生物を何百、何千と手に掛けたし、人外の餌食になった被害者の無残な姿も何千、何万と見てきたからな。
……それはさて置き、呆然としている相手が動き出すのを待つっていうのは不毛としか言えない。という訳で、呆けて突っ立ている女駄天使共を仕留める為、女駄天使達へ歩を進めることにした。
呆けて動けない無抵抗の女を、顔色一つ変えることなく手に掛けることができるっていうのも見せしめになるだろう。しかし、仕留める方法に少し悩む。
ドーナシークの様に縦に一刀両断するか、それとも横に一刀両断にして上半身と下半身を泣き別れにするか。はたまた、首を刎ねるというシンプルな方法を採るか。
俺がそんなことを考えながら女駄天使達に歩を進めていると、頭から何かが滴り落ちてきた。そこで俺は漸く自分がドーナシークの血で塗れていることに気付いた。思い返せば、ドーナシークを一刀両断した時、派手に血が噴き出ていた様な気がする。
この時、俺は漸くシェムハザ氏とグレイフィアさんが驚いていた理由を理解できた。たった16〜17年しか生きてない上、裏の世界に積極的に関わっていた訳でも無い。そんな俺が駄天使を顔色一つ変えず殺め、その返り血で血塗れになっても平然としていたら驚くのは当然だ。
しかし、シェムハザ氏とグレイフィアさんの驚きの理由は少しだけ的外れだったりする。確かに、俺はドーナシークを顔色一つ変えずに殺した。けど、別に血塗れの状態で平然としていた訳じゃないんだよ。
俺は前世や前々世で仕事なんかの関係上、人外の体液を被ることが数え切れない程あった。人にもよるだろうけど、ただの水でも服が濡れて体に貼り付いたら不快な気持ちになる。それが体液ともなれば尚更だ。けど、戦っている時は体液塗れになる不快感なんて気にしている暇はない。
その結果、俺は戦闘続行中の状況下で自分に付着する敵対した対象の体液に対し、無意識の内に気にしない―――いや、意識的に気付かない様な習性になっていっただけなんだ。
これは一種の自己暗示とも言えるな。それに俺の場合、一度でも自分が体液塗れになっていることを認識してしまうと、その不快感に対して気付かない振りを続けることができない。
これは俺の勝手な考え方なんだけど、平然って単語はそういった自己暗示を必要としない奴に使われるものだと思うんだ。
そんな訳で、自分が血塗れであることを認識してしまった俺は、現在進行形でかなりの不快感に襲われている。思わず顔を顰めてしまいそうだ。しかし、俺はそれを表に出さない様にグッと我慢し、血塗れになっても平然としていられるキャラを演じることにした。
理由は、そうすることで俺が自分の逆鱗に触れた者に対し、蚊程の慈悲も与えないということをこの場にいる全員の頭に刻み込むことができるからだ。上手くいけば今後、俺の身内が狙われる可能性が一気に減ることにも繋がる。
まぁ、立会人としてすぐ近くにいるシェムハザ氏とグレイフィアさんには、俺が演技をしていることがバレてる可能性があるから、徒労に終わる可能性もあるけどな。2人とも、俺が顔を顰めそうになった瞬間に何かしらの違和感を察することができただろうし。
取り敢えず、ドーナシークからの返り血で服が体に貼り付いて気持ち悪いし、他の3人はさっさと始末することにした。ぶっちゃけ、早く終わらせて部室でもいいので返り血を洗い流したいんだ。服の方も『文珠』を使ってクリーニングしたい。
……ん?『文珠』でどうにかできるなら、この場でやってしまえばいいだろうって?アホか!こんな人目に付く場所で切り札の1つでもある『文珠』を使える訳が無いだろう。この先も敵対する可能性がある種族の前では特にな。
という訳で、残りの駄天使3人には追い詰める様な方法を使わず、手っ取り早く済ませることにした。俺は自分だけでなく、『十戒の魔石剣』の刀身も血塗れになっていることに気付き、『十戒の魔石剣』を大きく横一閃で振るうことで刀身に付着した血を振り払い、女駄天使達へと足早に近付いて行った。
この時、振り払ったドーナシークの血の飛沫が女駄天使達の顔に降りかかったんだが、それによって呆けていた女駄天使達の意識は復活し、その直後に取り乱し始めた。
「「「ヒ、ヒィィィイイィィィィ!!」」」
ゴスロリを着た女駄天使――ミッテルトは腰が抜けた様にその場でへたり込み、水商売系の服を着た女駄天使――カラワーナはレイナーレと共に俺が近付くにつれて後ずさっていく。
レイナーレとカラワーナは己の命可愛さにミッテルトを見捨てたのか、近付いて行く俺に対して動けないミッテルトを助けようともしない。
そして、俺はミッテルトの首を『十戒の魔石剣』で刎ね飛ばせる所まで距離を詰めた。ミッテルトはへたり込んだまま涙目で俺を見上げてくる。
「お、お願い!使用人でも召使いでもなるから命だけは助けて!!使い魔でもいい!あなたの言うことには絶対に逆らわないから!だから、殺さないで!!」
ミッテルトはドーナシークの様な命乞いを始めた。よく見てみると、ミッテルトがへたり込んでいる所に水たま―――いや、気のせいだな。兎に角、相手が女で命乞いをしていても、俺の身内の命まで狙った以上は情状酌量の余地もない。
俺は『十戒の魔石剣』を『闇の双竜剣』へと変化させ、右手に持つ一刀をミッテルトへと向けることで、命乞いへの返答をした。すると、ミッテルトは決闘開始前の余裕顔からは考えられない恐怖と絶望で歪んだ顔になった。
「上位双竜剣舞・アイスサイド、『絶対零度』」
上位双竜剣舞・アイスサイド、『絶対零度』。それは『闇の双竜剣』の氷属性が付与されている一刀で、対象の周辺に存在する水分を利用し、氷塊を形成。その内部に対象を閉じ込めるという技だ。
『闇の双竜剣』で形成される氷――というか冷気は火竜が放つ炎すら凍りつかせるので、『絶対零度』で形成された氷塊も簡単に解凍できるものではない。
まぁ、閉じ込める対象の実力次第では氷塊内部からの脱出も可能だったりするだろうけど。例えば、魔王や各神話体系の主神クラスとか。
それにしても、恐怖と絶望に歪むゴスロリ少女が入った氷塊か。悪魔に変態嗜好の好事家とかが存在したら、高値で買い取ってくれそうだな。中に閉じ込められているのが、ゴスロリ少女はゴスロリ少女でも駄天使。別名:堕天使(偽)な訳だし。
堕天使に恨み辛みがある悪魔は、この無様な姿を鑑賞しながら愉悦に浸ったりする可能性が十分にあるだろう。……うん!マジで高価買取してくれる悪魔がいそうだな。
って、そんなこと今はどうでもいい。それよりも先に、氷のオブジェと化したゴスロリ駄天使を見捨てて逃げようとしている女駄天使2人を殺処分することが重要だ。俺、敵味方に関係なく罪悪感も持たずに仲間を平然と見捨てる奴って嫌いなんだよね。
という訳で、まずは水商売系で人の不幸を蜜の味としてそうな悪女駄天使を仕留めることにした。俺は左手に持つ『闇の双竜剣』の一刀を標的であるカラワーナへと向け、ミッテルトを氷漬けにした一刀とは真逆の属性の技を放つ。
「上位双竜剣舞・ファイアサイド、『煉獄劫火』」
上位双竜剣舞・ファイアサイド、『煉獄劫火』。それは『闇の双竜剣』の炎属性が付与された一刀から、最大火力の炎を蛇の様な形状で対象へと放ち、その体へと絡みつかせて灰すら残さずに燃やし尽くす技だ。
『闇の双竜剣』から放たれた炎の蛇はカラワーナの四肢へと絡みつき、一瞬の内に両手足を炭化させて達磨駄天使と呼べる新しい存在を誕生させた。
火傷も一定レベルを超えると痛覚を感じないと聞くけど、それは堕天使にも該当するみたいだ。四肢を炭化させられたカラワーナは悲鳴すら上げない。その代わりに現実逃避でもしているのか、壊れた様に笑っていた。
「は、はハ…。はハハ……、はハハははハハハ……」
カラワーナの壊れた笑いは肺と声帯の辺りが燃え散るまで続き、燃やした張本人である俺ですら壮絶なものであると思えた。
ちなみに、カラワーナと共にミッテルトを見捨てたレイナーレは、カラワーナが笑い出した直後に足を止め、その壮絶な死に様を見て腰を抜かしたのか、ミッテルトの様にへたり込んでしまった。
「……結局、お前ら駄天使4人組は俺を本気で怒らせた時点で抵抗らしい抵抗もできずに死んでしまうことが決定していたってことか」
俺は少し残念に思いながら『十戒の魔石剣』を『闇の双竜剣』から『闇の爆発剣』へと変化させ、その切っ先をレイナーレに向けながらそう言った。
実は、はぐれ悪魔祓いが全滅した時点で全身全霊の一撃を放ってくる位のことは期待していた。そうすれば、竜闘気を貫いて俺に手傷を負わせることができただろう。
正直、残念で仕方ない。というか既に興醒めな域だ。けど、こいつだけを生かすという選択肢は俺には無い。だって、こいつだけ生かしたら他の3人が可哀想だろう?
そんなことを考えていると、レイナーレは急に命乞い――いや、助けを求め始めた。立会人としてその場にいる神の子を見張る者の副総督であるシェムハザ氏に……。
「シェムハザ様!このままではあの悪魔に殺されてしまいます!どうか、この私をお助け下さい!!」
レイナーレの命乞いに対してシェムハザ氏は静かに首を横に振り、救いを求めるレイナーレを突き放した。
「申し訳ありませんが、この決闘において私は立会人の1人でしかありません。もし、私が貴女を助けようとすれば、魔王ルシファーの王妃と戦うことになるでしょう。 どうしてもと言うのであれば、私達の総督であるアザゼルに助けを求めてください」
シェムハザ氏の無慈悲な返答にレイナーレは顔を青白く変色させてガタガタと震えだし、今度は観客席にいる総督のアザゼルや他の神の子を見張る者の幹部へと視線を向け、助けを求める。
「……あ、アザゼル様!!」
付き合っていた男に捨てられても尚、その男に縋り付こうとする女。俺にはレイナーレがアザゼルに向ける視線がそれに近いものの様に思えた。情に脆く、女に慣れていない男ならその視線にあっさりとやられていただろう。だが、アザゼルは――――
「罪には罰が必要だ。それは神によって天界から堕とされた俺達堕天使が一番身に染みて知っている筈だろ。それすら分からないのなら、お前達は俺達とは全く違う存在だ。さっさと自分の犯した罪を、悪魔へと転生した赤龍帝に罰して貰え」
副総督のシェムハザ氏と同様に、救いを求めるレイナーレを突き放した。他の幹部連中も口にはしていないが、態度が既に突き放すといったものなので助けを求めることができる状況ではない。
希望を全て失ったレイナーレは、ゆっくりと俺の方に光沢を失った目と引き攣った笑みを向けてきた。そして、死ぬ間際のカラワーナの様な笑い声を上げ始めた。
「……アは、あハは。はハ、アハはハ。あハははハハははは―――」
心酔していた存在に切り捨てられたことで心の均衡が保てなくなり、レイナーレは完全に壊れてしまった様だ。そんなレイナーレに、俺は駄天使独立愚連隊(笑)の首魁として派手に散って貰うことにした。
「最上位爆発剣舞、『バレッテーゼ・フレア』」
最上位爆発剣舞、『バレッテーゼ・フレア』。それは『闇の爆発剣』の使用者が指定した空間に大小様々な爆弾を任意で設置し、爆破することが可能な爆発剣舞の奥義だ。使い方次第では相手の動きを封じることさえできるが、その分使用者への負担も大きい。
俺は空間爆弾をレイナーレの身体の内側に十数個仕込み、更に大型の空間爆弾でレイナーレを覆った。そう、内と外からの同時爆破。文字通り、肉片すら残さず派手に散って貰うんだ。
「花火の如く派手に、そして儚く散るといい。……アーメン」
俺は『十戒の魔石剣』を持っていない方の手で十字架を描いてから、フィンガースナップで指を鳴らした。それと同時にレイナーレがいた空間が爆発し、爆炎が晴れた時にはレイナーレの姿形はその場に既になく、完全にその存在を消し飛ばしていた。
駄天使独立愚連隊が全滅したことで決闘という名の公開処刑は終了し、結界が解かれたことで俺は一度部長達がいる観客席に向かうことになった。
早く血塗れの状態をどうにかしたいけど、今回の公開処刑に協力してくれた方々に挨拶はしておかないといけないしな。
取り敢えず、部長を含めて色々と言われそうな気がするけど、どうしよう?あと、アーシアにスプラッターを見せてしまったことで、色々とフォローしないといけない。ってか、嫌われたかもしれない。………本当にどうしよう?
あとがき(旧)
読者の皆さん、超絶久しぶりな月2更新をすることができた沙羅双樹です。いや、本当に初投稿以来な気がするので、約半年ぶりといった所でしょうか?まぁ、来月からはまた月1更新に戻ると思いますが。(笑)
(月2更新は飽く迄目標。目標は常に高く持っておきたいので。(笑)←高く持ちたい割にはショボイ!)
さて、それではここから漸くあとがきの本題です。次話で第一章が完結です。次々話からは第二章:攻略されるフェニックスが始まります!
そして、今回の話なんですがフリードの時以上に一方的な展開だったと自分でも思います。あと、イッセーが容赦無さ過ぎる。(笑)
取り敢えず、誤解されたくないので説明しておきたいのですが、SAHDDのイッセーは敵対した者を抹殺して悦に入るキャラではありません。
ただ敵対者には容赦が無く、身内を守る為には手段を選ばないだけなんです。(みせしめとしてレイナーレ達を殺ったのも、その1つです)
それでも、何も知らない人が見ればイッセーの戦い方はかなりの誤解を生むものだと思います。実際、リアスを含むグレモリー眷属初期メンバーとアーシアは誤解するでしょう。
という訳で、次話ではその誤解をイッセーの前世を知るアスナや黒歌、白音が解く話になると思います。(前世バレは無しの方向で。あと、アーシアの眷属化の話も何とか組み込みます!悪魔の駒が何になるかはその時のお楽しみです)
それでは最後に、今回使われた技をいくつか説明して終了したいと思います。
・最上位爆発剣舞、『バレッテーゼ・フレア』
これはそのまんま、RAVEに登場したダークブリング『バレッテーゼ・フレア』の能力です。最大能力発揮時にはダメージ量が5桁越えする上、相手の動きを封じられます。(笑)
・上位双竜剣舞・アイスサイド、『絶対零度』
これは週刊少年サンデーで連載されていた烈火○炎に登場する氷紋剣の技、『絶対零度』をイメージして頂ければいいと思います。
(作中で死ねない体になった盗賊達を一時的な救済手段として氷漬けにしていましたよね。あれの本来の使用用途と考えて下さい。裏武闘殺陣で木蓮相手にも使用していましたけど(笑))
・上位双竜剣舞・ファイアサイド、『煉獄劫火』
強いて言うなら、週刊少年ジャンプに掲載されていた幽○白書に登場する『邪王炎殺黒龍波』の蛇ver+週刊少年マガジンに掲載されているC○DE:BREAKERに登場する『青色の煉獄業火』の融合型と思って頂ければいいと思います。
もしくは、原作ハイスクールD×Dに登場するヴリトラ系神器、『邪龍の黒炎』の火力強化型と思って頂いても構いません。
語るネタも尽きてしまったので、今回はこの辺りで失礼させていただきます。それではまた次回お会いしましょう。皆さん、ごきげんよう!
あとがき(新)
あとがき(旧)で説明し忘れていましたが、8話本編で観戦に来ている堕天使幹部に、コカビエルとバラキエルは含まれていません。また、白龍皇であるヴァーリもいません。
この3名がいないのはアザゼルの配慮によるものです。コカビエルは戦闘狂の戦争狂。バラキエルは朱乃と家族間不和。ヴァーリは戦闘狂で、歴代の二天龍は互いを殺し合う関係。
一応、駄天使独立愚連隊の最後を見届けることと謝罪を含めて姿を晒しているのに、そんな所に上記の3名を連れて行ったら、バラキエルはまだマシとしても他2名は確実に戦争への引き金になります。
戦争への発展だけはアザゼルは避けようとすると思うので、3名(内コカビエル&ヴァーリは確実)は来ていない設定にしました。
以上が追加のあとがきになります。
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