ようやく、ライダーを出せました……ただし戦闘シーンがちょっと不安です。
『ショッカー』
それは、かつて裏で世界征服を企んだ秘密結社。
組織の最大な武器である技術力――人間の骨を、脈を、肉を、内臓を強靭なものに作り変えるという技術力。兵器へと造り変えた人間たちを、
自らの尖兵――『改造人間』として活動させるものだ。
その組織は、かつて一人の少年を拉致し、その身体を改造人間・ホッパーにさせた――それがショッカーの終わりを告げる者だと知らずに……。
* * * * *
「ひ、ひぃ!」
サイズマンティスはOLに向けていた先ほどの気迫は、どこへ行ったのかというぐらいに、酷く脅え、一歩後ずさりする。
それを追いかけるように、心――仮面ライダーも追いかけるように一歩進む。
「……」
「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ヤケになったのか、サイズマンティスは走り出し、右腕の大鎌を左右振りまわすが一歩も引くことなくあるいは避け、あるいは弾いたりなどを
して、ライダーはサイズマンティスの攻撃を対応した。
やがて、振り回していくのに疲れが出たのか、サイズマンティスはついに攻撃の手を緩んでしまった。
「おおぉぉ!」
その隙を見計らい、ライダーは右手を手刀の形に変え、サイズマンティスの右腕にある大鎌を叩き折った。
「な、なぁぁ!?」
叩き折られたことに動揺するサイズマンティスに更に追撃を加えるため、次にサイズマンティスの腹部に強烈な拳を叩きつけた。
「うぶ……っ!」
苦しげに声が漏れ、跪くような形になるサイズマンティス。
しかしライダーはすでに次の攻撃に移っていた、サイズマンティスの首を片手で正面から掴み、もう片方の腕を添えてそのまま上方へ持ち上げ、
背面から地面に叩きつけた――所謂プロレス技のチョークスラムというものである。
「ぐぶぅぅ!」
「次は……これだ!」
倒れたサイズマンティスの両足首を脇の下に挟み込み、抱え上げ、回転しながら相手を振り回す。
「ぬぅうおおおおおおおおうぅ!?」
「せいっ!」
そして、思いっきりサイズマンティスを上方へ持ち上げ、先ほどのチョークスラムと同じように、地面に叩きつけた。
「ぐは……ぁ!」
本日二度目の強烈な地面の叩きつけを喰らってしまい、さすがの改造人間であるサイズマンティスも大ダメージを受けただろう。 サイズマン
ティスは倒れたまま、動く様子も無い。
ライダーはパンパンと手を払いながらも、油断無く倒れたサイズマンティスを見下げる。
そして、ライダーはサイズマンティスに疑問を投げつけた。
「……どうして人を襲うんだ?」
「…………は?」
その言葉に、サイズマンティスは呆けた声を出した。
「もうショッカーという存在はない、それに君には
「ふっく、ふふふふふ、あはっははははっははははっははは!」
ライダーの言葉に、サイズマンティスは思わず笑ってしまった。
どうして人を襲う? 普通の人間として生きていける? 何を言っているんだろうか、この男は?
サイズマンティスは仮面の中で嘲りの笑みを浮かべながら、彼を見る。
「君は愚かだね、仮面ライダー! 普通の人間っ!? くうははははは、つまらないねぇ!」
「……」
「僕たちはかぁいぞう人間なんだよぉ!? この力を隠して何になるのさぁ、ただの人間として生きるだなんて、真っ平御免さ! それにねぇ
……疼いてんだよ」
サイズマンティスはゆっくりと身体を起き上がらせる……しかし先ほどのダメージが効いているのか、フラフラとだが。
「手が! 身体が! 感覚のすべてが! 血を浴びろってねぇ! そして……人を殺せと!」
「……」
「くふくうふうふふふふうふふふふうふははははははっ!」
両手を大きく広げ、狂ったように笑っている姿は、もはや狂ってるとしかいいようが無かった……もはや目の前にいるサイズマンティスはすで
に人間の心をなくしてしまったのだろう。
しかし、それは無理も無いかもしれない――常人の心では耐えられないのだ、この身体は。
人でありながらも人ならざるもの、どんな死に様をさらすのか、その孤独や恐怖は心を蝕んでいく――目の前にいるサイズマンティスはそれに
耐えることが出来なかったのだろう、だから狂ってしまった。
その狂った心を取り戻すには、方法はもうひとつしかない。
サイズマンティスを倒すことだ。
「はぁああぁぁぁあ!」
狂ったように笑っているサイズマンティスに一気に接近して、ライダーは拳を振り上げるが。
「ひゃぁはぁ!」
「っと!」
左腕から大鎌が飛び出し、ライダーを切り裂こうと左腕を振るったが、仮面ライダーは身体に当たる寸前で大鎌を片手で掴んだ。
サイズマンティスは振りほどこうと暴れまわるが、仮面ライダーの力が強く、上手く振りほどくことが出来ない。
「おぉ!」
仮面ライダーは大鎌をさらに力強く握ると同時に、大鎌は無残に砕け散り、自分の武器がなくなってしまったサイズマンティスは先ほど暴れま
わったことで身体がつんのめってしまった……。
「とぉう!」
「ぐへぇ!」
その隙に、ライダーはサイズマンティスがつんのめった身体の腹部に膝蹴り――原典では、ライダーニーブロックといわれる技――を喰らわせ
た。
「……ごめん」
ライダーは跳躍し、その跳躍の勢いに任せた渾身の飛び蹴り――ライダーキックをサイズマンティスに打ち放った。
ドガァッとキックが命中したサイズマンティスは地面に激突すると、まるで助けを求めるかのように両腕を弱弱しく宙に伸ばす、だがすぐにそ
れは地面に着き、爆散した。
ライダーは自身の仮面とクラッシャーを外し、亡くなったサイズマンティス……名前を知らない彼に黙祷を捧げた。
* * * * *
「…………ん、あれ?」
OLはゆっくりと身体を起こし、あたりを見渡す……どうやらここは海鳴公園出口付近にあるベンチの上だった。
「? う〜ん、いったいなにがどうなったんだっけ?」
手を頭に添え、ゆっくりと考えるが、何も思い出せない……思い出せるのは。
「駄目だわ……酔っ払ってここに入った程度だわ……」
酔っ払って、その辺りで寝てしまったというオチだろうと決め付け、OLは自分がまるで中年親父みたいだとも思い、情けなくも思った。
「いつつ……さっさと帰ろ」
OLは頭に響く頭痛に耐えながら、気を取り直し、今度こそ帰路に立つ。
OLの後ろ姿をサイクロンに跨っている心は見送っていた。
その姿が見えなくなると、心はサイクロンのエンジンを蹴り、そのまま自分も帰路に立つ。
* * * * *
朝を迎え、チュンチュンと小鳥の囀りをBGMに、心は風芽丘学園を着用していく。
制服に着替え終えた心は姿見で自分の姿を確認し、どこか変じゃないかと確認する。
「問題ないかな」
ネクタイ、ブレザー、ズボンのチャック、すべてを確認した後、心は「よしっ」と頷く。 そして自分のそばに置いといたバックを手に取り、
玄関先に向かう。
腕時計を確認すると七時四十分……時間にはまだ余裕があるのだが、初日早々遅刻は正直御免なので、心は余裕を持って通学したいので、この
時間帯に出たい。
「それじゃあ、風芽丘学園の初日デビューと行こうかな」
玄関のドアを開くと同時に春の心地よい風と太陽の光が溢れ、心はそれらを感じながら、外へ出た。
そして、キチンと家の鍵を閉めて、心は風眼丘学園に向かうため、歩き出す。