「私を化け物みたいに言うんじゃない。これは変装用の着ぐるみだ」
そう言った木男――トンボーグは曰く“木の着ぐるみ”を脱いでいった。
その着ぐるみがどんな構造なのか気になるところではあるが、今はそれどころではない。
「一体何なんだテメェは……」
「聞いてなかったか? 私はキャプテントンボーグ。スターピース争奪戦を取り仕切る審判だ」
「審判て……スターピースを手にするのに、いちいち面倒な勝負をしなきゃいけねえのかよ!」
「その通り。スターピースは誰の手にも得られる権利はあるからな。勝負によって決めれば公平だろう」
胸を張って言うトンボーグに対し、コブランダーが憤慨する。
「んな面倒なことをいちいちやっていられるか! 邪魔だ、引っ込んでろ!」
そう叫び、コブランダーはトンボーグに拳を振るった。
だがその攻撃を軽々とトンボーグは避け、眼を光らせた。
「神聖な審判に暴力を振るってはいかん! お仕置き!」
その一言と共にトンボーグはコブランダーの尻尾を掴み、勢いよく振り回した。
まさしくそれはジャイアントスイング。回転の速度は徐々に増し、眼で追えば眼を回しそうである。
更に速度が上がる度にコブランダーの悲痛な悲鳴が聞こえる。カブタックが恐ろしさに身を縮めた。
「あ、兄貴〜〜〜ッ!?」
「もう許したってや! 兄貴はもうバテバテやで!?」
子分のガニランとスパイドンが土下座せんばかりにコブランダーの許しをこいた。
「ふむ」と小さく頷いたトンボーグは、振り回しながらコブランダーに訊いた。
「反省したか? コブランダー」
回転中でよく聞こえないが、微かに「ごめんなさ〜い!」とは聞こえる。
反省の声がトンボーグの耳に届いたのか、徐々に回転が弱まっていく。
そして最終的にコブランダーはジャイアントスイングから解放された。
ガニランとスパイドンが駆け寄る。コブランダーの眼は完全に回ってしまっていた。
「これからは心を入れ替え、審判には礼儀正しくあるように。勝負の際は審判である私がルールだからな」
「何かとっても横暴な物を見た気がするカブ……」
「気のせいだ。そんなことよりカブタック、そのスターピースは勝者への贈呈品であるから私が預かっておく」
ここで逆らってコブランダーの二の舞になるのは真っ平御免である。
カブタックは大人しくスターピース本を審判である彼へと渡した。
「カブタック〜ッ!」
「あ、ネギ。それとさっきの女の子達も」
「ごめん。神楽坂さんと宮崎さんに事情を話してて……」
どうやら今の今まで彼女達に事情を説明していたようである。だがそれも仕方の無い事だ。下手な説明では先程の現象は説明が出来ない。
「ま〜た変なのが増えてるわね。先生からあんたのことはだいたい聞いたわ」
「まだ半信半疑ですけど……あの、お手伝い出来ることがあるなら……」
「ありがとカブ。それでトンボーグ、何で勝負するんだカブ?」
カブタックにそう訊かれ、トンボーグはキャプテンスティックを宙にかざしながら答えた。
「今回は記念すべき第1回目と言うことで、シンプルにかけっこで勝負とする」
「「「「かけっこ〜〜〜ッ!?」」」」
「文句は一切受け付けない。ではルールを説明する」
・スタートとゴール地点はここ(広場)。勝負は3回戦。一対一のガチンコバトル。
・広場からスタートし、麻帆良学園中等部の下駄箱に貼ってある【トンボーグシール】にタッチしてここに戻ってくる。
・最終的に一番早く戻ってきた方の勝利。1得点が与えられる。
・シールにタッチしたかどうかはトンボーグの持つセンサーで判る。ズルをしようとしても無駄。
「説明は以上だ。では第1回スターピース争奪【お先に失礼、炎のかけっこ対決】を開始する」
トンボーグが左腕に装備されているゴングを鳴らし、勝負の開始を宣言した。
1回戦、コブランダーチームからはガニランがスタート地点に立った。
一方ネギチームは人数が1人多いので、回戦毎の出場選手を決めていた。
「あ、あの……私運動が苦手なので、応援に回ります」
のどかが自主的に辞退。チームの応援に回った。
そして相談の結果――。
「よ〜しッ! 頑張るぞ!!」1回戦はネギ。
「バイトの新聞配達で鍛えた脚力を見せてあげるわ!」2回戦は明日菜。
「一生懸命頑張るカブ!」3回戦はカブタックの順になった。
初回のネギがスタート地点に立ち、意気込みを露わにする。
そんな様子をガニランは小馬鹿にしたような口調で言った。
「よお眼鏡坊や。子供だからって手加減はしないぜ」
「(むっ……)僕だって負けませんよ!」
「ネギ〜ッ! 頑張るカブ〜ッ!」
「先生ッ! そんなカニ、ぶっちぎっちゃいなさいよ!」
「せ、先生〜……ふぁいとです〜!」
「絶対に負けるんじゃねえぞ!」
「ガニラン、お前のド根性を見せたれ!」
それぞれの応援を受け、ネギとガニランは体勢を整える。
「では第1回戦、よ〜い――」
トンボーグが左腕のゴングを鳴らし「ドン!」と叫んだ。
ネギとガニランがほぼ同時にスタート地点から駆け出す。
その2人の背中を待機組は応援しながら見送った。
――かけっこ途中経過・その1――
「あ、ネギ君。学園長がすぐに学園長室へ……」
「ご、ごめんタカミチ。これが終わったら行くから!!」
「ま、待てッ! なかなか速いじゃねえか!!」
颯爽と過ぎ去って行った友人とカニ(?)を見て、タカミチは徐に頬を掻いた。
「え〜っと……追いかけっこ?」
――かけっこ途中経過・その2――
下校途中の生徒達に色々と質問されながらも、ネギとガニランは下駄箱に無事辿り着いていた。
「あった! シールってこれですね!」
「退け退け! 先にタッチするのは俺だ!」
争いながらも同時にタッチした2人はゴールである広場に向かう。
だがネギの方が若干リードしていた。その事に焦りを見せたガニランは――。
「こうなったら……秘儀・カニ走り!」
そう叫ぶと同時にガニランが正面から横走り(所謂カニ歩き)にスタイルを変化させた。
その走り方は見た目とは裏腹にかなり速度が増している。
あっと言う間にガニランは、開いたネギとの距離を詰めた。
「わっ! 速い!」
「どうだぁ! ガニラン様の足の速さを舐めるんじゃねえぞ!」
――ゴール地点――
「見えてきたカブ!」
「先生〜ッ!」
「ガニラ〜ンッ!!」
2人の姿が徐々に見えてきていた。待機組が応援をする。
ネギとガニランの距離は無く、ほぼ並んでいた。
「負けませんよ〜ッ!」
「俺だって〜ッ!!」
瞬間、2人がゴール地点に到達した。
これは同着か――息を飲む待機組。
トンボーグが暫く無言の後、胸の得点盤を回した。
「左腕が先にゴールに入っていた為、腕の差でネギチームの勝利!」
「「「やったぁぁぁッ!!」」」
得点盤に『1』と表示された。これでネギチームが一歩リードしたことになる。
「ま、マジかよ〜……」
「このバカニランッ!! あれほど負けるなって言っただろ!」
「それでは第2回戦、選手はスタート地点に」
第2回戦は明日菜対スパイドン。
トンボーグが左腕のゴングを鳴らし「用意ドン!」と叫ぶ。
刹那、明日菜が物凄い勢いでスタート地点から駆け出した。
そのあまりの速さにスパイドンとの距離がドンドン離れていく。
「ちょ、速すぎるだろ!? 良いのかあれは!」
「彼女の純粋な身体能力だからな。反則ではない」
コブランダーの抗議もすぐさま蹴られてしまうのだった。
「ぐぬぬ……こうなったらスパイドン、俺達ビーロボの力を存分に見せてやれ!」
「了解や、兄貴! スーパーチェーンジッ!!」
瞬間、スパイドンのやや肥満型と言った体型からスマートな人型へと変形した。
ネギとのどかが驚く間も無く、変形したスパイドンが明日菜の後を追っていた。
コブランダーがニヤニヤとこちらを見てくる。どうだと言わんばかりの態度だ。
「あ、あの蜘蛛さん、変身しましたよ!?」
「あれが僕達ビーロボ共通の能力、スーパーチェンジだカブ。普段僕達はエネルギーの消費を抑える
ノーマルモードなんだけど、いざと言う時には活動型のスーパーモードに変形することが出来るんだカブ」
「それじゃあその……カブタックさんも出来るんですか?」
「勿論出来るカブ。でも僕は初期型のビーロボだから、自力でスーパーチェンジするの無理なんだカブ。するには“ある物”が必要なんだカブ」
ネギとのどかが首を傾げた。
「まだ出会って全然日は浅いけど……ネギ、君にこれを渡しておくカブ」
「えっ……? 僕に……」
ネギはカブタックから、赤いコントローラー型の装置を手渡された。
そのコントローラーの名は“友情コマンダー”と言った。
――かけっこ途中経過・その1――
「よしタッチ! これで後はスタート地点に戻れば良いのね……」
「待たんか〜いッ!」
背後から声が聞こえ、明日菜は自然と後ろを振り向いた。
すると視線の先には見慣れない人型のロボット。
自分と勝負しているのは肥満体型の蜘蛛ロボットではなかったか?
「あ、あんた誰よ!?」
「ワテはスパイドンや! あんたの勝負の相手やろ?」
「えっ……? だって全然姿が違うじゃない!!」
「スーパーチェンジしたんや! ……あ〜、もう! 説明が面倒やわ!」
スパイドンは明日菜を退かし、トンボーグシールにタッチした。
「ほな、さいなら〜」
「あっ!? ちょっと待ちなさいよ!!」
「へへっ、待てと言われて待つ馬鹿は……」
瞬間、スパイドンは振り向き、追ってくる明日菜に向け――。
「おらんやろ!!」
「――きゃあ!?」
掌から無数の蜘蛛の糸を放出した。
蜘蛛の糸は明日菜の身体に絡み付き、身体の自由を奪う。
そのせいで明日菜は全く身動きが取れなくなってしまった。
「ちょ、何よコレ! あんた卑怯よ!!」
「これも作戦、卑怯とちゃうで。ほなな〜」
「待ちなさいよぉぉぉッ!!」
結果、身動きが全く取れなかった明日菜はスパイドンに敗北した。
勿論トンボーグにこの事を抗議したのだが、見ていなかったとのことで却下。
――神聖な勝負を仕切る審判にあるまじき言動であった。
この結果でネギチーム、コブランダーチームに各1点ずつ。
両チームが同点と言う結果になった。そして最終戦となる3回戦――。
カブタック対コブランダーの戦いが始まる。
「コブランダー、お前には絶対にスターピースは渡さないカブ!」
「それはこっちの台詞だ! ボッコボコに負かしてやるぜ!」
かけっこ対決最終戦――カブタック対コブランダーの勝負である。
両者はそれぞれ位置に着き、走る体勢を整えていった。
「「兄貴〜ッ! ファイト〜ッ!!」」
「カブタック! 頑張れ!」
「絶対に勝ちなさいよ!!」
「が、頑張って下さ〜い!」
トンボーグが競争者、応援組をそれぞれ見つめた後、キャプテンスティックをかざした。
「では第3回戦、よ〜い――」
トンボーグが「ドン!」と叫び、左腕のゴングを鳴らした。
カブタックとコブランダーが同時にスタート地点から駆け出す。
走る速度はほぼ互角。始まったばかりだが、良い勝負である。
「良いわよカブタック! その調子調子ッ!!」
「ば〜かッ! 兄貴はまだ本気じゃねえんだよ!」
「行け行け兄貴ッ! 頑張れ頑張れ兄貴ッ!」
――かけっこ途中経過・その1――
「カブッ! カブッ! カブッ!」
「キャッ!? な、何!?」
「オラオラ邪魔だ! そこ退けぇ!」
「うわっ!? な、何だ何だ!?」
下校途中である麻帆良学園の生徒を押し退け、コブランダーはドンドン先へ進んでいく。
一方のカブタックは生徒達の波を上手く避けながら下駄箱へと向かった。
「コブランダーッ! ちょっと乱暴すぎるカブ!」
「うるせえ! 勝たなきゃ意味がねえだろうが!」
――かけっこ途中経過・その2――
「シール見つけた。タッチカブ!」
「シールってこれかぁ! タァァァッチ!」
下駄箱へと辿り着いた2人は目当てのトンボーグシールを見つけ、すぐさまタッチした。
そしてゴール地点へと戻ろうとした瞬間、コブランダーが叫ぶ。
「ここまで来たんなら一気にケリをつけてやるぜ! スーパーチェンジッ!!」
コブランダーの姿が変形し、スマートな姿のロボットへと変わった。
動きがノーマルモードより遥かに軽快になり、走る速度が上った。
カブタックを押し退け、先へ先へと進んでいく。
「じゃあなカブタック! この勝負、俺が貰ったぜ!!」
「ああッ!? 待つカブ〜ッ!?」
――突然、ネギが手に持っていた友情コマンダーから高音のアラームが鳴った。
驚いてコマンダーのトリガー部分を押し込むと、そこからカブタックの声が聞こえてくる。
どうやら今現在、危機的状況に陥っているらしかった。彼の声色からそう窺える。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ!?」
「先生……」
その音を聞き付けた明日菜とのどかも、ネギの周りに集って彼の声を聞いていた。
「カブタックッ! 僕はどうしたら……」
『僕の事を信じてほしいカブ。必ず勝つって……そう思いながら【チェンジ・スーパーモード】って叫んでほしいカブ』
「君の事を信じて……分かった! やってみるよ!」
友情コマンダーを握り締め、ネギはカブタックの言った通りに叫んだ。
彼がこの対決に勝つ事を信じて――。
「チェンジッ! スーパーモードッ!!」
――カブタックの取り付けられた通信装置からネギの声が響いた。
『チェンジッ! スーパーモードッ!!』
その一言でカブタックの鼻の部分が青く光り、眼付きが変わった。
「カブ〜ッ! スーパーチェェェンジッ!!」
カブタックの頭部パーツが外れると同時に逆立ちの姿勢を取った。
続いてノーマルモードの手が足に、足が手へと変形していく。
そして最後に背中からスーパーモード用の頭部がせり出し、変形が完了した。
「君の勇気がこの胸に、熱く響いて良い感じ! ビーロボの一番星・カブタック!!」
決め台詞とポーズと共にスーパーモード・カブタックが誕生したのだった。
「――っと、こんな事をしてる場合じゃなかった! 待て、コブランダーッ!!」
ノーマルモードからスーパーモードに変わった事により、パワーも出力も飛躍的に上昇している。
開いてしまったコブランダーとの距離も、カブタックはあっと言う間に詰めてしまった。
「うげっ!? カブタック! お前もスーパーチェンジしたのか!」
「これで互角だコブランダー! 勝負はまだこれからだぞ!」
「こざかしい奴め……コブラビュート!!」
走りつつ、コブランダーは左腕に取り付けた尻尾型の鞭をカブタックに向けて振るう。
身体を打ち付け、腕を打ち付け――最終的に鞭はカブタックの両足へと絡まった。
「うわっ!?」
両足の自由を奪われ、カブタックは思わず転倒してしまった。
それをしてやったりと言わんばかりにコブランダーが見下す。
「はははっ! 大人しくそこで寝てるんだな!」
「お前がその気なら俺も……ビリットスティック!」
ノーマルモード時から外された頭部が変形し、棒状の武器へと変わった。
「ビリットショック!」
カブタックがそれをコブラビュートに向けて振るい、電気を流した。
その電流は容赦なくコブランダーの身体を伝わり、彼を痺れさせる。
「ぬああ……! し、痺れた……!」
「これでお相子だ。先に行くぞコブランダー」
「ま、待て〜……!」
――ゴール地点――
「見えたわ! お〜い!」
「カブタックッ! 頑張って下さい!」
「兄貴〜ッ!!」
ゴール地点へと差し掛かったカブタックとコブランダー。
両者ともスーパーモードだが、コブランダーの方は若干フラ付き気味だ。
どうやらまだ先程のビリットショックのダメージが残っているらしい。
「ラストスパートだッ!」
「く、クソォ! 負けるかぁぁぁ!」
1歩、2歩、3歩――ゴール。
カブタックが走り抜き、コブランダーが転倒した。
トンボーグが勝敗を判定、胸の得点盤を回転させた。
「カブタックの勝利ッ! よって2対1で、ネギチームの優勝!」
ネギ達から歓声が上がり、ガニランとスパイドンから不満の声が上がった。
それと同時にカブタックとコブランダーがノーマルモードへと戻っていく。
「やったカブ! 僕等の勝ちカブ!」
「ま、負けた……くそぉ」
「「兄貴〜……」」
トンボーグが敗者(コブランダーチーム)の方へ向き、キャプテンスティックを振るった。
彼の「敗者は速やかに退場」との掛け声と共に3人組の姿は煙のように消えてしまった。
そしてトンボーグはスターピース本を持ち、ネギ達の元へとゆっくり歩いて行った。
「良い勝負を見させてもらった。これが優勝者へのスターピースだ」
「あ、ありがとうございます!」
「うむ。では諸君、また会おう!」
高笑いと共にトンボーグもまた、煙のように姿を消した。
後に残ったネギ達は呆然としつつも、手に入れたスターピース本を見つめる。
「それで、これが何でも1つだけ願い事を叶えてくれるスターピースって奴なの?」
「そうカブ。本からスターピースを剥がせば、願い事を叶えてくれる筈だカブ」
何でも願い事が1つだけ叶う――何とも魅力的な言葉である。
ネギは恐竜に会いたい、明日菜はタカミチと親密に、のどかは図書館にあるボロボロの本を新品に――。
皆それぞれ願いの思惑を張り巡らす中、突然スターピースが端から砂へと変わっていった。
「あ、あれ!? スターピースが……」
「砂になっていってますよ〜……」
「ちょ、ちょっと! これってどう言うことよ!?」
カブタックが3人の疑問に答える間に、あっと言う間にスターピースは砂の山になった。
ちなみにスターピースが張り付いていた本は元に戻っていた。ネギ達は呆気に取られた表情を浮かべる。
「カブ〜……どうやらスターピース“モドキ”みたいだったカブ」
「「「スターピースモドキ?」」」
3人が首を傾げた。
「スターピースの力を受けて、そこら辺の石がスターピースのようになった物のことカブ。願いを叶える力は無い真っ赤な偽物カブ」
「え〜ッ!? それじゃあ骨折り損のくたびれ儲けじゃない。ガッカリ……」
「簡単にお願い事は、叶わないってことなんですね……はうう」
明日菜とのどかが落胆する中、ネギとカブタックだけは反応が違っていた。
「スターピースは残念でしたけど、僕は皆さんとこうして頑張れたから満足ですよ」
「先生……」
「はあ……まっ、良いわ。軽い運動が出来たと思えばね」
ネギがカブタックに向けて微笑む。
カブタックもまた、微笑んで返した。
「それはそうと先生、また次の機会にカブタックを交えてジックリ話を聞かせてもらうからね?」
「あ、あの……その時は私も混ぜて下さいね……?」
「は、はい……あははは」
「カブ〜……」
――学園長室
「ネギ君遅いのぉ……一体何しとるんじゃろ」
烏の鳴き声をバックに、近右衛門が哀愁を漂わせながらネギを待っていた。
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