IS学園、この学園はIS、『インフィニット・ストラトス』と呼ばれる特殊なパワードスーツの候補生を育てる教育機関である。
その特殊な学園の職員室に2人の教員がお茶を飲みながら会話をしていた。
二人共女性で一人は黒髪のロングで眼つきが鋭いスーツ姿の女性、二人目は緑の髪をショートにした眼鏡をかけた女性だ。
2人の共通点があるとするならば、2人はこの学園の教師であり、スタイルが良く美しいといった所だろうか。
緑髪の女性、山田 真耶が黒髪の女性、織斑 千冬と談笑を楽しんでいた。
「ソレにしても、あのニュースには驚きました」
真耶の言葉に千冬も頷く。
「ああ、例の……」
二人が話題にしているのは女性しか動かせないISを男が動かしたと言うニュースである。
二人が談笑を一通り終えた頃、突如、警報が鳴り響く。
『第1アリーナにて侵入者あり。侵入者は2名の模様。当直の教員は即時対応されたし。繰り返す』
それを聞くと2人は教員の顔から歴戦の戦士の顔に変身する。
「山田先生、第1アリーナに急行しましょう。ISは常時機動状態の方がいいでしょう」
「はい!」
そう言い2人は現場に急行した。
上空からアリーナの地面に着地した2人は自分達が1番乗りだと理解すると武装を装備しながら侵入者達に迫る。
侵入者達は気を失っているのか地面に寝転んだままピクリとも動かなかった。
2人は油断無く近づくと侵入者達を覗き込む。
真耶が油断無く倒れている侵入者達に銃口を向けながら千冬が侵入者達の所有している物を検める。
(何かのパイロットスーツだな。しかし、こんなパイロットスーツは見たことが無い。ISの物とも違う。武器は所持していないみたいだ)
そう思いながら千冬はヘルメットを取ろうとする。
(首の所にロックがあるな。ここをこうして……取れた……)
ヘルメットを取り侵入者達の顔を拝む。
(男か……16、17歳といった所か……ん? ドッグタブ? 英語か? ザフト軍ヤマト隊、キラ・ヤマト? コッチの男はオーブ軍、アスラン・ザラ? コイツ等軍人か? ソレに、ザフト? オーブ? 聞いた事が無い組織だ)
そう思いながらもふとキラの胸元を見ると蒼い8枚の羽をあしらったネックレスを発見する。
「コレは……もしや!?」
そう言いながらアスランの体を念入りに検めると右指の中指に赤い剣をあしらった指輪を発見する。
「織斑先生……こ、これって……」
真耶の驚きの問いかけに千冬は頷きながら肯定した。
「ええ……間違いなくIS、『インフィニット・ストラトス』ですね」
その肯定に真耶は驚きの否定を言う。
「そ、そんな!? 男性でISを保有しているなんて……ソレにこのIS見たことありません!!」
そう、IS、『インフィニット・ストラトス』は原因は不明であるがISは女性にしか動かせない代物なのだ。
例外として千冬の弟の織斑 一夏がいる。
更に、ISには謎が多く、その全容は明らかにされていない。特に心臓部であるコアの情報は自己進化の設定以外は一切開示されておらず、完全なブラックボックスでありロストテクノロジー扱いだ。数にも限りがあり、開発者である篠ノ之 束がそれ以上の開発を行わなかった為、現存するISは467機しか存在しない。
つまりこの2機はナンバリングがされていない事からも篠ノ之 束以外の開発した機体に分類される。
それを男が保有しているのだ。
真耶の驚きも納得がいく。
「とりあえず二人を医務室に運び、ISを取り外し調査しよう。何か解るかもしれない」
千冬の言葉に真耶も頷いた。
キラはふと目を醒ますと知らない天井をその目に映し出す。
キラは飛び起きるように掛けられていた布団をどかし辺りを見回す。
「ここは……」
キラの呟きに隣のベッドに座っているアスランが答える。
「どうやら此処は医務室らしい」
アスランの声にキラは安堵の溜息を肺から吐き出しアスランに語りかける。
「アスラン、無事だったんだね。よかった……所でここは?」
キラの質問にアスランは答える。
「解らない。調べたいんだが監視カメラが俺達を見張っているし、扉は鍵が掛かっている。ソレに窓から外に出ようとしてもこの高さじゃあ……」
そう言いながらアスランは外を見やる。
キラは窓まで歩み寄り景色を見やる。
キラの眼下には遙か彼方に地上を確認する事が出来た。
ざっと50メートルはあるだろうか。
「……成る程、コレは無理だね」
キラの言葉と同時に医務室の自動ドアが開く。
「どうやら起きたようだな」
黒髪の女性がそう言いながら入室する。
「貴女は?」
キラの質問に女性は静かに答える。
「私の名は織斑 千冬という」
キラとアスランは軍人の癖で千冬に敬礼しながら自己紹介をする。
「ザフト軍フェイス、ヤマト隊所属、キラ・ヤマトです」
「オーブ国防軍、総参謀作戦司令部所属、アスラン・ザラです」
その返答に千冬は納得した様に頷く。
「成る程、軍人とは思っていたが、本当に軍人なのだな。敬礼が様になっている」
キラとアスランはその言葉に生返事をかえした。
「ハア……」
「どうも……」
ソレを聞きながら千冬が質問をする。
「おまえ達にとりあえず聞きたいのは2つ。我々に敵意があるのか、そしてどうやってここに侵入したのかだ」
その質問にアスランが答える。
「私達に敵意はありませんし、如何して此処にいるのか解りません。私達は任務中に突如重力異常に遭遇、気が付けば此処にいました」
その言葉を聞き、千冬はキラとアスランの目を見つめながら問いかける。
「本当だな?」
キラは千冬の眼を見つめ返しハッキリと答える。
「そうです」
暫く睨み合いをしていると千冬は溜息を吐きながら答える。
「その眼は嘘はついていない様だな。だが、まだ隠し事がある眼だ。まあいいとりあえずは信じよう」
その言葉にキラとアスランは内心安堵の溜息を吐きながらお礼を言うのだった。
そして、キラとアスランは自分達の身の上を語る。
ヤキンドゥーエ戦役、メサイア攻防戦、簡単な歴史の話、MSの事などだ。
千冬も語りだす。
この世界の事を……
話を聞き終わりキラとアスランは自分達が元の世界に帰れない事を知り激しく落ち込んだ。
正直、キラとアスランはこの世界の不条理を呪いそうになった。
「しかし、まさか、異世界に来るとは……」
「しかも、16、17歳くらいの年齢の体になってるし……僕達、19だよね?」
アスランの唸るような声にキラも頭を抱えたい衝動を押さえ込みながら言葉を吐き出す。
「これから僕達はどうなるんだろうか……」
「解らない……」
「ラクス達、心配してるかな?」
「だろうな……」
呟くキラも答えるアスランも気力なく答えるしか無かった。
キラとアスランが落ち込んでいる頃、千冬と真耶はキラ達から没収したISの解析を進めていた。
「な、な、な、な、な、何なんですか!? このISは!?」
真耶の悲鳴にも似た驚きに千冬も同意する。
「ああ、全くふざけたISだ。シールドエネルギーがほぼ無限とはな……ソレを可能にしているシステムが、『ハイパーデュートリオンエンジン』か……更に装甲はシールドエネルギーを消費する事によりある一定の物理攻撃を無視する『VPS装甲』、かすめただけで装甲が熔解し、気象条件に左右されないほどの大出力ビーム兵器や特殊兵装、更に多数の敵を同時ロックが可能な『マルチロックオンシステム』にビームシールドのオマケつきときている」
千冬も呆れの言葉に真耶も答える。
「しかも、フリーダムとジャスティスは全領域の戦闘を可能としている機体で、フリーダムは砲撃戦や殲滅戦が得意分野でジャスティスは1対多数の接近戦が得意のコンセプトと言う設計ですね……」
その解説に頷きながら答える千冬。
「全く、コレを開発した奴はイカレているとしか思えん。国家とでも戦争する気か?」
「如何します? 正直、こんなデータを提出したら……」
真耶の言葉を繋げるように千冬は言い放つ。
「国家や企業が放って置く訳が無い。彼等共々独占を狙うだろうな。最悪戦争だ」
彼女等とてそんな愚は犯さないだろうが人の口に戸は出来ない。
更に彼女達には報告の義務がある。
「……彼らと話をする必要があるだろうな……」
そう言うと千冬はキラ達のいる医務室に向かって歩き出すのだった。
あとがき
この物語は以前、私がにじファンで投稿した物となっております。
にじファンに出したものと多少相違点はあるかも知れませんが大体は同じです。
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