3時間目の休み時間、キラ、アスラン、一夏は一夏の机を囲みながら話していた。

「災難だったね。一夏」

キラの慰めの言葉に一夏は項垂れて答える。

「いや、まったくだ。しかし、お前らよく覚えていたな」

その言葉にアスランが事もなく言い放つ。

「いや、1日あればアレくらい簡単に暗記できるだろ?」

その言葉にキラはウンウンと頷くが一夏はありえないと言う様に返す。

「ソレはお前らだけだろ?」

その言葉にキラがすかさず反論する。

「覚えて理解したいと思う気持ちの問題だと思うけどな。一夏だって好きなものに熱中すると自然と覚えるでしょ? 様は覚えたい理解したって思って初めて勉強できると思う。テストでいい点数取りたかったらカンニングした方が早いから」

キラの物言いに呆れながらもアスランが付けくわれる。

「キラの最後の言葉はどうかと思うが、確かにキラの言葉にも一理ある」

その言葉に考えを巡らす一夏。

彼はキラやアスランの様に成り行きでこの学園に入学した。

しかし、ソレはあくまで状況に流されて入学したに過ぎない。

キラやアスランの場合は状況の中で自分が選択できる限られた選択肢の中から選び、決断してここに来ている。さらに、自分の一定の自由と権利を得る為にこの学園に入学した。

立ち位置からして歴然の差が生まれるのも無理はないだろう。

キラ達の決断力や行動力が優れているのは、あくまで経験に裏打ちされた実績の積み重ねが今のキラとアスランを支えているに過ぎない。

キラやアスランは過酷な戦場の最前線で生き残ってきた兵(つわもの)なのだ。

それと一般人である一夏を比べるのは間違っている気がする。

その時だった、突如、金髪のロングヘアーの女子が歩み寄ってきた。

「ちょっとよろしくて?」

その可愛らしい声にキラ、アスラン、一夏はそれぞれ反応する。

「え?」

「ん?」

「はぁ?」

その反応に少女はありえないと言わんばかりに言い放つ。

「まあ!? 何ですの、そのお返事!? 私に話しかけられるだけでも光栄なのですからそれ相応の態度と言うものがあるのではないのかしら?」

3人は突如現れた少女に戸惑いつつ、一夏が代表して質問する。

「悪いな……俺、君の事知らないし……」

その一夏の言葉が癇に障ったのか少女は喚く。

「まあ!? 私を知らないのですの!? イギリス代表候補生、セシリア・オルコットを!?」

しばらく一夏は熟考した後、セシリアに問いかけた。

「なあ、一つ質問いいか?」

「ハン、下々の者の要求に答えるのは貴族の務めですわ。よろしくてよ」

セシリアは優雅な振る舞いで一夏の質問に答えようとする。

「代表候補生って……何?」

その瞬間、聞き耳を立てていた周囲の女子は盛大にすっ転び、セシリアは転びそうな状態を自前の優雅さで押しとどめた。

キラは苦笑いをしながら右人差し指で頬を掻き、アスランは顔に右手をやりながらヤレヤレと言いたげに頭を左右に振った。

代表候補生を知らない一夏にキラが耳打ちで補足説明を行う。

「代表候補生って言うのはね、各国のIS操縦者の候補生として選出される人達で、国家やスポンサーたる企業から専用ISを与えられる。その国の代表選抜に参加することができる人達の事だよ」

その補足説明を聞いて一夏は理解した。

「そいつは凄いな……」

感心する様に言う一夏にセシリアは優雅な振る舞いで自慢する。

「そう!! 限られた、一握りのエリートですわ!!」

そういい終わった瞬間、チャイムが鳴り響く。

「お話はまたの機会に……」

そう言いながらセシリアは自分の席に戻った。




LHRの時間、クラス対抗戦のクラス代表を決める事になった。

「先生、代表は織斑君がいいと思います!」

一人の女子の発言に他の女子も同意した。

「い!? 何で俺!?」

一夏が慌ててそう言うが周りの雰囲気が一夏が代表でいいだろうと言う雰囲気になっていた。

そこで慌てた一夏はこう言った。

「先生! 俺はキラかアスランを推薦します!!」

突如振られたキラとアスランは困惑する。

周りの女子もソレもアリかも、と言う雰囲気になる。

そんな雰囲気を打ち破る様にセシリアが叫ぶ。

「納得がいきませんわ!!」

そう言いセシリアは勢いよく立ち上がり言い放つ。

「その様な選出は認められませんわ! 男がクラス代表なんていい恥曝しですわ」

その言葉にキラとアスラン、一夏はムスッとする。

「この様な屈辱をこのセシリア・オルコットに1年間味わえとおっしゃるのですか!? 大体、文化としても後進的な国で過ごさなければならない事事態、耐えられない苦痛ですわ!!」

なおも続くセシリアの言葉に一夏が言い放とうとした時だった。

「い……」

「イギリスにも大した国の自慢なんか無かったと思うけど? 不味い料理位しか自慢が無いでしょ? 後、あるのは無駄に高いプライドくらいですか?」

キラの言葉を付け足すようにアスランが続けざまに言う。

「後、有名なのがローバー位か? 思った以上に少ないな?」

その言葉にセシリアが切れた。

「あ、あ、あ、貴方達!? 我が祖国を侮辱しますの!?」

その言葉にキラは冷静に言い放つ。

「最初に日本を侮辱したのは貴方でしょう? 侮辱を侮辱で返されるのが嫌なら侮辱を口にしなければいい」

アスランもまた言い放つ。

「ソレにな、友が侮辱されているのを黙って見ている程、俺達は大人しくも優しくも無い」

思わぬ反撃にセシリアはワナワナ体を震わせながら高らかに3人を指差し言い放つ。

「決闘ですわ!!」

その言葉に一夏が負けじと言い放つ。

「おお、いいぜ。四の五の言うより解りやすい」

セシリアはズカズカと歩み寄り一夏の前で止まる。

「もし、勝負に手を抜いたら小間使い! いいえ、奴隷にして差し上げますわ!!」

「ハンディはどの位つける?」

一夏の質問にセシリアは間の抜けた声を出し、鼻で笑い飛ばしながら言う。

「あら、早速お願いかしら?」

一夏はその言葉を否定する様に言う。

「あ、いや、俺がどの位ハンディをつけるのかなと」

一夏の言葉に教室中の女子が笑い出す。

「織斑君、それ本気で言っているの?」

「男が女より強かったのって大分昔の話よ」

その言葉にキラとアスランが柔らかく切り捨てる。

「それはISが女性しか使えないからでしょ? でも、ここにはISを使える男が3人いるよ」

「後は経験と努力と発想力が勝敗の差になってくる。その固定した考えは捨てた方がいい」

その言葉に女子が押し黙った。

柔らかく否定された筈なのに、キラやアスランからは何か得体の知れない物を感じたからだ。

ソレは、キラやアスランが抑えていた戦う者の姿勢、戦士としての闘気がにじみ出ていたからに他ならない。

ソレを正確に理解できていたのは千冬位だろう。

一夏の幼馴染の篠ノ之 箒は何となく理解していると言った所だろうか。

「じょ、上等ですわ!! で、3人の誰が相手をなさいますの? 何なら3人同時にかかって来ても宜しくてよ?」

それに若干、恐れながらも言い放つセシリアは中々勇気があるだろう。

何せ、押さえているとは言え、最前線で戦い続けた歴戦の勇士の闘気を正面から浴びているのだ。実戦経験があるとは言え、殺し合いの戦場を体験したこと無いセシリアがソレに耐えているのだ。評価に値する。

そこで突如、提案したのが千冬だった。

「織斑、お前がオルコットと戦え。ヤマトかザラではオルコットの勝率は億に一つもありえない」

その言葉にセシリアが千冬に詰め寄る。

「そ、ソレはどう言う事ですか!?」

その言葉を千冬は冷静にかつ冷酷切り捨てた。

「ヤマトとザラの実力は全盛期の私と互角の実力だ。今の私では勝率が4割にまで落ち込む。正直、今のお前では荷が重い。相手にすらならん。瞬殺だ」

ここまで言われればいっそ清々しい言い方で切り捨てる千冬。

周りは爆弾を投げ込まれた様な動揺が支配する。

「う、ウソ……あの千冬様の全盛期と互角?」

「あの公式試合で負けたことがなく、大会で総合優勝を果たした世界最強のIS操縦者、織斑先生と互角?」

その中で一番の衝撃を受けたのが一夏と箒だった。

彼らは千冬の強さを一番良く知っている人物だ。

その千冬自身の口から互角の実力者と称されるキラとアスランを見て千冬に質問する。

「それは本当か!? 千冬姉!?」

「織斑先生だ、馬鹿者」

そう言いながら一夏の頭に拳骨をくれながらセシリアに質問する。

「オルコット、ターゲットシューティングのレベル5での記録は?」

ソレを聞かれたセシリアは胸を張って高らかに宣言する。

「15秒で50機、全機撃墜ですわ」

ため息を吐きながら千冬は更なる爆弾を投げかける。

「ヤマトのタイムは3秒で全機撃破だ。正確には3.25秒。ザラの場合は5秒で全機撃破だ。因みにヤマトとザラが挑戦したのはレベル10、最高難易度。モンド・グロッソの大会基準設定だ。私ですら6.54秒はかかる代物だ」

ソレを聞いた瞬間、オルコットは千冬に噛み付く。

「そんなのあり得ませんわ!!」

「証拠はあるぞ。その時の映像が残っている。更に管制を行ったのは私と山田先生だ。お前にウソをついても徳にはならん」

「な、な、な、な、な、」

言いよどむセシリアに止めを刺す言葉を千冬は放つ。

「ならオルコット、お前、50機もいるシーカー全ての動きを把握し、かつシーカーの予測進路を計算、そこから導き出される最適な砲撃位置に誘導兵装の移動と同時に全シーカーにロックオンを行いつつ自分も砲撃に最適な位置に高速移動し砲撃を超高速同時進行で行う事ができるか? コレがどれだけ出鱈目でふざけた事か射撃戦の得意なお前なら理解できると思うが? ソレが無理なら乱戦の中、全シーカーの動きを把握しつつ双刃剣を的確に敵に当て、シーカーの攻撃タイミングすら予測し攻撃と回避を同時に行えるか?」

ついにセシリアは諦めた。

正直、人間業では無いのだ。

「まあ、いいですわ」

こうして、一夏対セシリアの戦いが実現した。




あとがき
キラとアスランの強さは私的には
本気を出した(クルーぜを倒した時のような気迫)のキラ=殺す覚悟を持ったアスラン=天帝に乗ったクルーゼ>刺し違えても相手を倒すと誓ったシン>キラ>アスラン>シン>レイでしょうかね……


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