何だってんだよ、あの日向ネジとか言う奴。森ん中であいつに睨まれた時に嫌な予感はしていたが、あんなにヤバい奴だったとはな。…全く、伊達に昨年の木ノ葉No1ルーキーじゃねぇって事か?

 キバは結果的に負けちまったが、相手がアイツじゃなかったら勝っていたと思うのは、俺だけじゃねぇ筈だ。

 というか、あと残ってんのは俺、ナルト、サクラ、全身タイツっつう変な格好したリーっていうネジと同じ班の馬鹿。

 それから、砂のくの一にカブトって奴の班員。それから、草隠れの奴らが2人…正直、ナルトとリーって奴とはやりたくねぇ。絶対に実力が違うからな。それから、女ともめんどくせぇから当たりたくねぇ。

 はぁ…何だってこんな後の方にやらねぇとなんねぇんだよ。めんどくせぇ。

 そんな風に俺が考えていると、ボンッって音が近くでした。ったく…。

「おせぇ〜よ、馬鹿。んで、ヒナタは大丈夫なのか?」

「馬鹿はひでぇってのシカマル。ヒナタは大丈夫だ。いのもそんな不安そうな顔すんなって」

「ふ、ふん!あんたが血相変えて飛び出して行くんだから心配するに決まってるでしょうがッ!でも、大丈夫なのよね?」

 ナルトが俺の軽口に乗って返し、直ぐにいのの頭に手を乗せる。こんなやり取りを、俺達はずっとガキの頃から続けて来ている。

「ナルト。さっきキバの試合が終わったんだけど、キバは負けちゃったよ」

 チョウジがもう何袋目か分からないポテチを食べながらナルトに言う。こいついつまで食うんだよ…。

「へぇ…相手は誰だったんだ?」

「相手はウチのネジだよん♪」

 いのの頭に手を置いているナルトの背中に負ぶさるテンテン。ナルトも大変だよな。

 いつの間にかこの人にも好かれてんだからよ。ま、こいつの場合顔がいいから仕方ねえか。実力もアカデミーん時と比べられねぇくらい強いしな。

「ネジ先輩が相手かよ…けど、善戦したんじゃねぇのキバの奴」

「あぁ、あいつは強くなってたぞ。アカデミー卒業してから、めちゃくちゃ修行したんだろうな」

「…そうか。あいつも強くなってんだな。ッし!!シカマルッ俺達も頑張ろうな!!てか、俺と当たってめんどくせぇっつって棄権すんの無しだから」

 ナルトの質問に返した俺に、めんどくせぇ事を言って来る。

「まぁ、そん時の気分によるわ」

「…何言ってんのよ、シカマル!あんたも男なら、当たって砕けなさいよ!!」

 いやいや、いの。お前は黙ってナルトに撫でられてろって。お前が喋り出すとめんどくせぇんだからよ。

「シカマル君、頑張って!」

「頑張るも何も、まだ俺とナルトが当たると決まったわけじゃねぇんすけど…」

 このテンテンって先輩、何でも面白ければいいって感じなんだよなぁ。

「お、次の組み合わせが表示されるみたいだぞ」

 ナルトのその言葉に皆が顔を電光掲示板に向ける。それは、俺も例外じゃねぇ。ナルトと当たるにしても、当たらないにしても、表示されるまで分からねぇからな。

 残り8人の名前がランダムに表示されていき、2人の名前が表示された。やっと俺みたいだが、相手は…女かよ。

「ゴホゴホ…では、表示された2人は下に降りて来て下さい」

『ナラ・シカマル』VS『カリン』

▼ ▼ ▼ ▼

 糞変態野郎から貰った薬を医療班に渡して、皆がいるここに戻ってきた俺の前で、親友のシカマルがめんどくさそうに溜め息を出しているのが目に入ってくる。

「俺とじゃねぇみたいだな、残念」

「馬〜〜鹿、言ってろ」

 シカマルに軽口を言って慰めるじゃねぇけど、気を紛らわせてやる。ま、頑張ってこいシカマル。おそらく、簡単に勝てるぞ。シカマルは、俺達に背を向けて階段の方に歩いて行く。

「シカマルぅ〜私とチョウジの分も頑張って来なさいよ!!」

「へぇ〜〜い」

 いののそれに、後ろ手で以って応えるシカマルの声は、本当にめんどくさそうなモノだ。

 しかし、シカマルの相手が香燐とはな…。原作と違ってキンって音の奴とはシノが戦ったし、殆んど原作と違うからなぁ。

 なんとはなしに近くでカカシ達の方に目をやると、カカシとガイ先生と目があった。

 2人と目が合うって変な表現だと思うが、本当にそうなんだから仕方ねぇじゃん。

 んで、カカシとガイ先生がサスケ達に何か言って俺の方に歩いてきた。何かめんどくさそう…。シカマルの気持ちが少しだけ分かったかも。

「両手に花の状態だな、ナルト」

「華だなんて…もう、カカシ先生ったら♪」

「金髪君、私も華だって。エへへ♪」

 おぉい、カカシ。なぁに調子付かせる事言ってんだよ、この野郎。こちとら、シカマルの試合観てぇってのに。

「勘弁してくれってばよ、カカシ先生。てか、何の用?」

 ヒナタを助けに行くときに、蹴った事を怒ってるわけじゃねぇのは分かる。じゃなけりゃ、ガイ先生も一緒に来るわけねぇしな。

「お前の事については、後で聞くと約束した。だから、ここでは聞かない。ただ、ヒナタを運んでからここに戻ってくるまで、少しだけ遅かったな。…何があった?」

 やっぱり、そこか…。いの達にはヒナタが心配だから、離れられなかったって言えば納得してくれると思ったけど…。

『大蛇丸か?』

 そう、口だけで聞いて来るカカシ。ガイ先生も、同じ質問だったらしい。ま、大蛇丸がここにいるって教えちまってたし、警戒してても仕方ないよな。現に、変態と会って来たんだし。

『そうです』と口だけを動かして、カカシとガイs…もう、呼び捨てでいいな。カカシとガイに答える。続けて、『だけど、あいつは何もしてきていません。ただ、話をしてきただけです』とも答えておく。

「そうか…ナルト、お前は一人じゃない。俺やこいつらがいるんだ。少しは頼れ、いいな」

「分かってるってばよ、カカシ先生。あ、それから、さっきは蹴ってごめんだってばよ」

 カカシのそれに笑顔を作り、さっき蹴った事を謝る。それを聞いて、カカシにも笑みが浮かんだ。ガイに至っては「青春だ、これは青春だぁ!!リー、我々も青春だぁあああ!!!」とか言って、リーと一緒に腕立てを始めた。

 それを見たいのとテンテン、サクラのくの一達だけでなく、サスケとカカシも嫌なものでも見るかのような視線を向ける。俺は苦笑を、チョウジとシノは無関心…シカマルがここにいたら、めんどくせぇとか言いそうだな、とか思ったりした。

 そんなこんなしている間に、シカマルの試合は終わってしまったみたいで、ハヤテに「勝者、奈良シカマル!」って言われていた。

 てか、原作での試合よりも簡単に勝ったみたいだな、シカマルの奴。

 そして、ポケットに手を突っこんだまま階段を上がってくるシカマルに、いのとチョウジが歩み寄って行く。そこには、おじさん達みたいな関係の「いの・しか・ちょう」の姿がある。

 シノが俺の隣にやって来て、テンテンを負ぶった状態で俺はシカマルが歩いて来るのを待つ。そして、いのに「よくやったわよ!」とか言われてめんどくさそうにしているシカマルがやっと俺の目の前に来て、ポケットに突っ込んでいた右手だけを出して俺の前に突き出してくる。

「めんどくせぇ〜って言ってたわりに、ちゃんと勝ってきやがったな、こいつ!」

「ッけ。めんどくせぇけど、女に負けるのだけは嫌なんでな」

 そう言って、俺はシカマルのその右手にパシンッと自分の右手を合わせた。ま、これもガキん時からつづく俺達なりの良くやったなって事を表わすモノだったりする。

 そうして、シカマル達と談笑していると、次の試合の組み合わせを表示するために電光掲示板が動き出した。

「あと、残ってるのはあんただけね、ナルト」

「お前なら余裕だろうけど。ま、頑張ってこい」

「応援してるよ〜」

「ナルト、俺はお前と戦いたい。キバも同じ気持ちだった筈。…絶対に勝てよ」

「ウチのリーも残ってるんだよね。でも、もしリーと金髪君が戦うことになっても私は金髪君を応援するよ♪」

 そんな事を言ってくる5人。ここにヒナタやキバも居たら、絶対にこいつらと同じことを言ってくれると思う。

 あ、今更だけどキバの奴はネジにやられた傷のせいで医療班に運ばれていったらしい。

 ま、次の試合が俺の試合だったら勿論勝ってくるけどな。

 そして、電光掲示板が動きを止めて、表示されたのは…。

『テマリ』VS『ウズマキ・ナルト』

 本当に俺になったし…てか、テマリと試合かよ。

「テマリって…あの砂の人?」

「みたいだな。あの瓢箪の傍にいやがるし」

 いのとシカマルの言葉通り、テマリは我愛羅の隣で腕を組んでいたが、俺を見ると手摺に足を掛けて一気に下に降りていった。

「やる気満々みたいだね、あの砂の女(ひと)ってば」

「…気を付けろ。あの砂の奴らだけは俺達とはどこか違う」

 テンテンが言うように、テマリってば階下で腕を組んで俺を睨み上げてきた。

 何かテマリにしたっけか俺?それからシノ、もうちょいテンション上げようぜ!!

「分かってるってばよ、シノ。んじゃ、お呼びのようだし行って来るわ!」

 テマリと同じように手摺に足を掛けて一気に下に降りる。そして試合場の中心、テマリのいるところから2〜3mくらい離れた所で足を止めた。

「一次試験の時に会ってからだから…5日ぶりか?」

「フンッ慣れ合いはしないと言った筈だ」

 おうおう、つれないねぇ〜テマリってば。そんじゃまぁ、まずはお手並み拝見って事で…。

「それでは予選第10試合、はじめてください」

 ハヤテのその言葉で、俺達は二人とも後ろに跳んで距離を取った。

 テマリって自分から攻撃してくるような奴だっけ??まぁ、俺から攻撃してみますか!ホルスターから手裏剣を3枚取り出し、2枚を先に投擲して1枚をその後に投擲。

「はッそんなもん効かないよ!」

 身の丈ある扇で身体を隠して、手裏剣を防ぐテマリ。そういや、あの扇って堅いんだっけか。

「今度はこっちから行くよ!!」

 扇を振りかぶって繰り出すのは…やっぱりあれだよな。

≪カマイタチの術!!≫

 風が見えない刃となって襲って来るってか?ホント、良い術だ。でも…。

 印を結んで、テマリの風遁と同程度のチャクラを練りこんだモノで相殺する。

≪風遁・大突破!!≫

 風の刃と突風が塔の内部に吹き荒れる。テマリを見てみると、自分の風が相殺された事に驚いているみたいで、何も行動を起こしていない。おいおい、それじゃ駄目だってテマリ。

 忍びたるものいつ何時も、緊張を解くべからず…ってね!

 俺は一気にテマリに向かって駆けて行き、そのままの勢いで体術勝負に持って行く。

 回し蹴り…扇で防がれる。

 突き…回避される。

 肘鉄…扇の堅いところで防がれるが、罅を入れる事に成功。

 膝蹴り…扇が上に浮いた所に放ったから、テマリの水月に入る。

 そしてラスト。掌底を放ち、テマリを後方に吹き飛ばす。

 テマリがギリギリ反応出来る速さで繰り出したんだけど、自慢の風遁が防がれて動揺したのかね。

「く…」

 テマリが腹に手を当てながら、立ち上がるなり俺を睨んでくる。お、目ぇ覚めたかな。そんじゃまぁ、こっからが本当の勝負ってことで。

『ナルト。遊ぶのはいいが、火影やその他の奴らに見られているのを忘れるな』

 うーん…でもなぁ。これくらいの体術ならネジの日向流柔拳の方がレベル高いと思うし、さっき使った大突破の術にしたって今更じゃね?サスケの千鳥の方が難易度は上なんだし。

『……お前がいいなら、我はもう何も言うまい。ただ、遊びすぎるのも程々にな』

 はいはい、ありがとな九尾。

 九尾と話している間に、テマリは回復したみたいだな。扇を支えにして立ち上がって、口からペッと血を吐き出した。

「なぜ、攻撃してこない?あのまま、追撃していたらお前の勝ちだった筈だ」

「同じ風遁使いとして、もっとあんたの術を見てみたいっていうのはおかしいかな?」

「……お前は変な奴だな」

「変な奴は余計だってばよ」

 テマリが顔を引き締め、支えにしていた扇を持ち直す。さらに、持ち直した扇を瞬時に開くと術を唱えた。

≪風砂塵!!≫

 扇を振って風を巻き起こすのはさっきと一緒だが、これはただ砂塵を起こし俺の目を封じるだけの補助の術。

 腕を顔の前でクロスさせて目を閉じ、その風が収まるのを待つ。このくらい待ってやっても罰は当たらない。

「あたしは…砂隠れの風使い」

 チャクラの気配からテマリは俺の後ろにいる。砂塵を巻き起こした瞬間には、移動してたからな。ポーチからクナイを取り出して逆手に構える。風はまだ止んでいない。

「風勝負なら……あたしは誰にも負けない!!」

 言うねぇテマリってば。…でも、上には上がいるって事を教えてやらないと、俺はお前が成長しないと思うんだ。……ってことで、大蛇丸相手に荒んだ俺の心ん中を癒してもらいましょうかね。

 風遁のチャクラを纏わせたクナイを一振りし、周りの風を切り開く。っと、そうやって直ぐにカマイタチの術に頼っちゃ駄目なんだって。

≪風遁・真空波≫

 口から一筋のカマイタチを出して、テマリの術の中心を切り裂いて進ませる。術の威力はチャクラの量で変わるんだぞ、テマリ。

「くぅッ!!」

≪大カマイタチの術!!≫

 ん??テマリってこの試験中に大カマイタチの術って使えたっけか?自分の術を更に上の術で底上げし、俺の術をも飲み込んで向かってくる台風刃とも呼べるその風は、テマリの風使いとしての意地にも見えた。

「はぁあああああ!!!」

 テマリの吠えるような声を聞きながら、俺は笑みを浮かべる。テマリの持ち札を全部見た訳じゃねぇけど、テマリが原作よりも強いってのは分かった。

 それは同時にカンクロウや我愛羅の強さも跳ね上がってるって事だろ。我愛羅と戦いたい俺としては嬉しい事に違いはない。

 塔の内部で巻き起こる風の暴力。それをさっきみたいに相殺させることは可能か不可能かでいったら、勿論可能だ。

 でも、それをやって今度こそ自信失っちゃったら可哀想だし、ここは無難に喰らった振りして後ろから首にトンッで決まりかな。

 そうと決まったら話は早い。瞬身の術を用いて向かってくる風の暴力を跳んで回避する。リーとかガイみたいに、足に力を入れすぎて石床ボンッはしてません。音を立てずにスっと跳ぶのが良いんです。

 天井に足を付けて下を見てみる。俺が元いた場所はテマリと俺の術でボロボロに崩れている。テマリは術の反動があるみたいで、扇を支えにして肩で息をしている。よし、ここだな。

 足に流していたチャクラを切り、下に向かって頭から落ちて行く。空中でくるっと回転してテマリの背後に着地して口を開いた。

「術を放った後が一番無防備になる。それを理解したら、またもっかい勝負しようってばよ」

「おま…がッ」

 驚いて後ろを振り返ろうとしたテマリの首に手刀を落として、意識を刈り取る。倒れそうになったテマリを抱えて、ハヤテの方に顔を向けると咳をしながら俺の名前を宣言してくれた。

「ゴホ…予選第10試合、勝者うずまきナルト」

 我愛羅達のところにテマリ運んでやろうっと。




あとがき
しばらく更新できませんでしたが、こらからちょくちょくしていきたいと思います。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.