トリステイン軍の突撃から1日、ガリア軍は塹壕の第一線を完全に放棄した。
だが、それは何も負けたからではない。
防備を固める上で、必要なことであったから、である。
当然、ド・ポワチエ大将もそれに気づき、即座にサイトの用意していた作戦案に修正を加えながら動き始めた。
夜の闇をかけるマティアス中佐の率いる隊は、苦もなく障害物を避けながら進む。
彼等は北の(遊牧)民、ゆえに視力がとてもよく、夜間であっても平然と移動ができた。
マティアスももともとは北の民、しかももとはその北の民の長の息子であるからこそ、この別働隊1万騎を任された。
マティアスがサイトに初めて会ったのは四年前のこと、同じ軍隊の中であった。
噂に聞いていた稀代の天才、ラ・ヴァリエールと双璧をなす男がどのような者なのか、興味はあった。
しかし、マティアスが抱いたサイトへの第一印象は「何のことはない、普通の青年」だった。
黒い髪に、茶色の双眸は、北の民には割合多くある人体的特徴であったし、何より天才の双璧と呼ばれているわりには、謙虚であった。
何が凄いのか、それがマティアスには分からず、噂は単なる噂に過ぎなかったのか、とやや落胆した。
それだけにマティアスならびに、他の者たちも当初は、サイトのことを過小評価していたところがあった。
だが、後に『辺境』と馬鹿にされ続けた北部軍管区内へと溶けこんでいったサイトの姿を見て、少なくない人々が「こいつはいつもの中央の人間ではないぞ」と思った。
マティアスもその1人であったが、彼がサイトに心酔した最もたる理由は『大侵攻』のおりに見せたその指揮ぶりだった。
味方が総崩れになり、混乱する中でその冷静な指揮ぶりで味方の大半を引き上げさせたこと、そして何よりその中でサイトが見せた「人命救助」の姿勢に心打たれたといえる。
――サイトのこの姿勢は美談となっており、後にガリア軍学校の教科書にも『愛の将軍』として書かれ、紹介されている――
仲間を大切にしてくれ、戦いでも陣頭に立ち指揮をする。
皆、この指揮官のことを死なせてなるものかと奮い立った。
それが、今までサイトの率いる部隊の損耗率が3割を越えなかった、精神的な理由になるのだろう。
皆、いつの間にかサイトのことを慕っていた。
しかし、今。
そのサイトが、自身を含め12万の兵を捨て石となすことに決断した。
マティアスも、サイトの心境を慮るに考え抜いてのことであったのだと思う。
サイトは攻撃決行前夜、隷下の指揮官たちに『場合により、降伏せよ。ポワチエ大将にも言ってある』と告げた。
玉砕を覚悟していたサイトであったが、それでおいてやはり最後に、サイトの優しさが勝った結果が、その言葉であったとマティアスは考えた。
そうでなければ、彼がその後涙を流しながら『すまない』と言葉にするわけがない。
さて戦況の変化、と言えば2日目は派手な見ものから始まったといえるかも知れない。
ついに、マティアス率いる別働隊1万騎がガリア軍の側面を夜明け――まだはっきりと人影が分からない――に乗じて奇襲した。
マティアスに課せられた使命は敵司令部の襲撃、またそれが不可能だった場合に敵後方の撹乱であった。
退路は想定されていない。
もしも、彼等が生き残れる道があるとすれば、それは敵司令部を落とした時だけだろう。
だが、マティアスは分かっていた、それが無理であると言うことを。
敵の司令部にたどり着くまでに突破しなければならない兵力は、昨日の攻撃で分派されていたが、少なく見積もっていまだ20万を超えている。
たった1万騎で突破できるわけがない、しかしそれでもマティアスの率いる者たちは晴れ晴れとした気分であった。
『才』の字が書かれた軍旗が揺らめく。
彼等は、長らくサイトの下で戦ってきた兵で構成されていた。
そして、この重要な任務をサイトが自分たちにまかせてくれたことを、誇りに思っていた。
今、塹壕の向こうにいる味方を救うことができるのは自分たちしかいないのだと。
己の軍人の矜持が、意地が彼等を突き動かす。
敵にも既に、トリステイン騎馬隊の群は見えているだろう。
だが、攻撃はまだない。それはつまり、敵がまだ体勢を整えていない証拠だ!
「弓構え!」
マティアスの声に応じて、隷下の騎馬隊が矢を番える。
馬乗ではあるが、誰も落馬の心配はない。
彼等はすべて、幼い頃から馬と生活を共にしてきた者だからだ。
「放てっ!」
号令により、一斉に矢が放たれた。
まだ薄暗い中、視界は当然きかずこの攻撃は不意打ちになった。
敵の陣地内で多数の人影が倒れる。
この機を逃す手はない。
マティアスは次の手を講じることにした。
「火計を行う! 各自、火矢構え! 照準は敵営舎! 放てぇ!」
次にマティアスは火矢を手当たり次第に撃たせた。
馬乗でどうやって火を灯したのかといえば、サイトの隊でも少なからず魔法の使える者をマティアス隊に寄越したからである。
彼等は、弓を持たないかわりに、火をつける役目を負っていた。
だが、こんな芸当ができる隊がトリステイン軍を見渡してどれほどいたことか。
そう言った意味で、マティアス隊は再精鋭であったと言える。
その再精鋭の一撃を持って敵の陣地が混乱になるだろうと踏んだのだが……
火災に見舞われる営舎の周りを通り抜けた先には敵が鶴翼陣を敷いて待ち構えていた。
敵も混乱はしていた、が。
名将カナンのもとにいる将軍たちは即座に後方に引いて陣を立て直していたのだ。
流石に奇襲によって兵は集まりきっていなかったが、それでも5万程度は揃っていた。
これに対してマティアス隊は敵司令部を一撃で突くべく陣形を長蛇陣にしていた。
このままでは、敵は数に物を言わせて包囲殲滅するのは明らかである。
そう思い、部隊を散開させるようマティアスは指示を出す。
部隊は2分もしないうちに長蛇陣から鶴翼陣へと変わった。
これならば、まず包囲殲滅だけは免れる。
そうマティアスが思った矢先、敵の一斉射撃が開始され、即座に数十名が落馬、または馬と共に地に倒れる。
騎馬隊も反撃をするべき弓を放つが、どうしても殺傷力の点では劣るし、何よりも敵の濃密な弾幕の前に数を大きく減じる。
「ぐ、こちらも銃を積み込めたならば……!」
マティアスは歯噛みした。
そうは言っても、敵への奇襲を成功させるためには、迅速に敵陣に近づくこと、何より塹壕を攻撃する部隊との呼応が最重要であったために、最小限の装備のみしか、今の騎馬兵は持っていない。
ずるずると味方兵が倒れてゆく中、マティアスもまた騎射を続ける。
それから敵陣に肉薄する1秒1秒が、酷く長く感じられた。
だが、ついに最両翼の兵がガリア軍に衝突し、戦況に変化を生じさせた。
両翼の騎馬隊は弓を捨て抜剣し、そのまま敵陣の中央に向けて、駆け抜ける。
敵は誤射を恐れて駆け抜ける彼等に対応できない。
その隙をマティアスは見逃さなかった。
「この機を逃すな! 敵陣内を徹底的に擾乱せよ!」
中央のマティアス本隊もついに敵陣を突破し、いよいよ乱戦になってきた。
銃剣を突き刺そうとする敵兵を一刀両断し、踏み潰し、敵司令部をただ目指す。
既に騎馬隊は2000名足らずになっていたが、もう少し、もう少しで目的を達成できる。
自分たちが司令部を落とせば、この戦いの犠牲も少なくすむのだ、誰もが思った。
そしてついに彼等は1000名ほどになったが、開けた場所にたどり着いた。
目の前には敵の司令部を表す建物、軍旗。
これで勝った、と思った。
しかし――
敵の司令部前まで到達したマティアスたちの前に、間に合うはずのない敵の増援3万が、待ち構えていた。
「散か――」
マティアスが言うよりもはやく、銃火がきらめき、ついにマティアス騎馬隊の足並みは止まった。
ここまで奮戦し、到達した者たちがばたばたと倒れる。
マティアスはそれでも、諦めずに前進しようとした。
敵の将軍はそのすぐ後ろにいるのだから。
だが、そう思った矢先、マティアスは今まで感じたことのない衝撃を身体に受けた。
不気味な飛翔音が耳先をかすめ、銃弾が数発、身体にめり込み、目の前が真っ赤に染まる。
マティアスは自分の視界が赤く染められ、今にも倒れそうな中、故郷を、仲間を、そして敬愛する指揮官のことを思い出し、そのまま急速に意識は暗転した。
一方、塹壕線の方の戦いでも進展があった。
マティアス隊の決死攻撃によって流石のガリア軍にも動揺が走った。
その動きを見逃さず、即座に敵第2塹壕線へと突撃した連中がいた。
「今こそ左翼部隊の精強さを見せる時が来たぞ! 野郎ども、俺に続け!」
自身の銃にトリステイン国旗をたなびかせ、塹壕から一番のりで飛び出したのはあろうことかロレーヌだった。
昨日の攻撃の時点で最終的に兵力が7000名を減じていたその部隊だが、士気の点では一番旺盛だったのはどう考えてもあまりにも無鉄砲な指揮官ロレーヌのせいだろう。
ロレーヌに続き部下は一斉に第2線へと攻撃を開始した。
今も先頭で走るロレーヌは格好の的であるが、ロレーヌが全力かつ巧妙に風の魔法を駆使しているので敵弾は逸れるばかりである。
その隙に銃剣突撃を敢行した一部隊がいたが、機関銃によってなぎ倒された。
続いてその後ろの部隊も大半をやられたが、ついに1人が機関銃座に手榴弾を投げ込むことに成功した。
3秒後、爆発音とともにおもち人形のように敵兵が吹き飛ばされると、砲座は完全に沈黙した。
「よし、今のうちに第4、第5連隊はそこから塹壕を占拠! 第2、第9連隊はこのまま俺に続けぇ! 次の塹壕まで行くぞ!」
「待て! それよりこの塹壕を――」
「今この勢いを失うわけにはいかん! それよりここは同じ階級のお前に任せたからな!」
追いついたレイナールの制止も聞かず、ロレーヌはまたしても敵の塹壕目掛けて突撃を開始した。
事実、この時のガリア軍の第3塹壕線には兵があまり存在していなかった。
それもこれも、マティアス隊が擾乱したおかげである。
司令部を守るために、第3塹壕線から急遽兵を回していたのだ。
「あの馬鹿やろう……! だが、確かに今のうちに第3線は制圧したい……ああもう! 各員、急いでこの塹壕内の敵を一掃しろ! 今なら砲撃もない!」
そうとは知らないレイナールは毒づきながらも小銃を担ぎ、塹壕に浸透すべく行動を開始した。
寡兵の左翼が敵第3塹壕線を突破!
その報がトリステイン軍を駆け巡り、即座中央助攻隊、右翼助攻隊と後詰部隊は勢いづいて敵の陣地を攻撃する動きを見せた。
当然、浮いていた攻撃兵力は左翼の突破した陣より突入を開始している。
ベアトリスも当然、右翼の仮陣地から部隊員とともに攻撃を始める。
運の良いことに既に第2塹壕線の敵は攻撃するにも半包囲されたためにどうすることもできず、散発的な抵抗のあと、すぐにトリステイン軍の手に落ちた。
しかし、ここまで来てまだ敵には第3の長大な塹壕線がある。
これは、ちょっとやそっとの攻撃で落ちるとは思えなかったし、縦令落としても変わらず、主な右翼の主目的はパッシェール基地なのだ。
ベアトリスは気を引き締めた。
今、別働隊のおかげで敵は混乱しているが、もしかしたらこんな好機はもうないかもしれない。
おそらく、いや確実に敵に別働隊の動きは分かっていただろうから、敵の右翼陣地では3万騎のトリステイン軍別働隊の屍が転がっていると考えられた。
もしかしたら、もっと多いかもしれないし、間違えればサイトも、と考えてベアトリスはゾッとした。
ベアトリスがいくら高貴なる家柄であっても、軍の中での階級は大尉にすぎない。
だから別働隊の仔細は聞かされていないのだ。
しかして聡明であるベアトリスだけに、戦力の逐次投入などはしないだろうと考えていたので、サイトが死んだと考えるのも無理はない。
だから余計に、ベアトリスは力を入れて声を上げる。
「パッシェールは目前! 今ここで戦功を上げ、私たちの部隊の名を馳せるのよ!」
ここにロレーヌと同じく、ベアトリスは第3塹壕線へと突撃を開始した。
占領したと言っても、それが点では意味が無い。
ならば自分たちの部隊が先陣を切って最翼端から占領し、左翼助攻隊と繋げようではないか。
ベアトリスは炎弾を打ち込み、滑りこむように塹壕へと突入した。
右翼、左翼とトリステイン軍が第3塹壕線を繋げる作戦に出たので、ド・ポワチエ大将は中央助攻隊に進撃を停止させ、第1、第2塹壕線内の自軍陣地化のために送り込んだ工兵部隊の護衛に回すことを決定した。
朝方の静寂は既に破られて久しく、小銃のみのらず、大砲も目を覚ましていた。
その中で工作をする工兵には頭が上がらないものだと、護衛をしながらギムリ少佐は頬を掻いた。
彼は昔、輜重兵や工兵を馬鹿にしていた。
いや、ギムリに限らず彼の同期の大半は皇軍の華は当然貴族の率いる魔法部隊、または歩兵部隊だと思っていたのだ。
そんな彼の考えが180度変わったのは同期の中にいた天才、ルイズの存在が大きい。
また、その彼女の使い魔であるサイト。
ギムリは今まで自分が生き残ってこられたのは、常にルイズが口にしていたことを実行しているからに過ぎないと思っていた。
大柄な体格であるが、それに見合わず臆病だった彼は、何とか周りの皆にバレないようにと気の大きいふりをしていた。
だが、ひょんなこと(模擬戦闘)からルイズにそして皆に自分が臆病であったことを見破られた。
よもや士官候補生が臆病者では誰もついては来るまい、それに発覚してしまったからには。
軍学校をやめるしか無い。
一度はそう覚悟したが……
ルイズはギムリのそのことを攻め立てたりしなかった。
それどころか「むしろ、その臆病さが戦場では役に立つわ。貴方は、戦場に立つ弱き者を理解できる。それは立派な指揮官としての素質よ」とまで言ったのだ。
それから常にギムリは慎重に慎重を重ねて戦いに従事し、時には部隊の中で弱音を吐く者を慰めたりもした。
だから、今も自分は生き残っているとはっきり分かるのだ。
今、この現場にて弱き者は武器も持たずに作業をする工兵だ。
彼等の立場を慮り、ギムリは護衛に当たっていた。
その中で彼もまた、サイトのことを気にかけている。
一度見つめられれば引き込まれるような、黒い双眸を持つ男。
実力はあるくせに謙虚で、礼儀正しくて、容姿もよくて、それでも憎めない奴。
「最初は嫌いだったけどな」
ギムリは虚空に息を吐いた。
ああそうだ、奴は憎めないがキュルケ嬢の心まで奪ったことまでは許せない。
ギムリの唯一、認められなかったことと言えばそれだけ。
今、この場にサイトがいなければ、当然キュルケ嬢もいない。
彼女は戦争が始まるとともに、祖国ゲルマニアに帰ってしまったのだ。
ただ、サイトは今も戦場のどこかを駆けているのだ。
そうサイトに関して確信がもてる自分がおかしくてギムリは笑った。
近くにいた工兵が怪訝な顔をしたが、ギムリの笑いは少しの間だけ、続いた。
直後、付近に砲撃の雨が降り注ぎ始める。
ギムリは、気を引き締め、今はもう工兵を守ることに集中することにした。
中央、占領した敵第1塹壕線にはトリステイン軍による急速な自軍陣地化が進められ、ほぼ形は出来上がった。
それもこれも、敵の武装と弾の規格を一緒にしていたので鹵獲、乃至放置されていた武器を即陣地に据え付けられたことが大きい。
だが、ド・ポワチエ大将は司令部で表情を曇らせていた。
今、他の者は出張らっており、あとは作戦参謀しかいない。
現在のトリステイン軍の侵攻地点は地図上で表しているが、それを見てより険しい顔をポワチエはした。
今、占領したのは敵の第1、第2塹壕線。
その2つは今、送り込んだ独立工兵部隊が陣地化し、中央助攻隊並びに別途後方から兵を送っている。
また、左翼助攻隊ならびに右翼助攻隊と後詰20万が敵第3塹壕線を攻略中。
敵の司令部とパッシェール基地まであと僅か。
それだけ聞けば、トリステイン軍はこのまま敵を撃退できるのでないかと思えるが、それは無理である。
今、占領した地域はこの戦場の一部でしかなく、全体を見れば未だに敵の右翼には大多数の兵が控えている。
それが攻撃をしかけてきていないのは、絶え間なく砲撃をそちらにしかけているのと、騎馬別働隊が捨て身の攻撃をして後方を撹乱したからだ。
おそらく、敵は明日までには完全に体勢を立て直す。
それまでに残る1つの塹壕は何とかできたとしても、敵の司令部ならび基地を落とすことは不可能に近い。
サイトが言った布石とは、何も無謀な攻撃だけでないことは分かっている。
サイトがアニエスに渡した書簡には、女王を動かしゲルマニアを仲介にし、ガリアとの講話を図るように書いてあったし、それ以前に水面下で反マザリーニ一派は接触を続けていた。
だからこそ、一時的でいいから敵の攻勢を挫き、講話へのテーブルにつかせなければならないのである。
ただ、ポワチエは講話になるかどうかは五分五分であると思っていた。
宮廷内で絶大な権力を握るマザリーニがいる限り、ことあるごとに講話の道は閉ざされかけよう。
それこそ、軍が……
「待てよ」
ポワチエは自分で考えておきながら、はたと気づいた。
考えてみれば、講話の話をするなら反マザリーニ派に接触するだけでいいはずだ。
それが、どうして近衛隊のアニエス中将に話を通したのか……
「そうか……そう言うことか……!」
頭の中である1つの結論にたどり着き、ポワチエは確信した。
サイトが出陣する際に書簡を渡されたとしたら、既に王都ではことは始まっているかもしれない。
ならば、こちらも必ず敵の基地を奪取しなければならない。
後1日、その間にパッシェールを陥落せしめる。
「作戦参謀! 現状でひねり出せる戦力はどれだけだ!」
いきなり呼ばれて参謀は驚いたが、答える。
「詳しいことは参謀長に聞かなければなりませんが、おそらく今の戦力で無理して20万が限度かと」
作戦参謀の読みはあくまで攻者3倍の法則にそってのことだ。
現在攻勢中の兵員はサイト直率別働隊を含めず40万。
実際にはもう、30万を割っているだろうが、あと20万を投入すれば一時的に50万近くの兵力をパッシェール基地へ向けさせることができる。
「よし、直ちに参謀長ならびに他のスタッフを集めるんだ。何としても、今の流れを断つわけにはいかん。このままパッシェールを落とすための作戦を立てる」
「了解しました」
作戦参謀は敬礼するとすぐに司令部を出、従卒に伝令に走るように命じ自分も参謀長を呼びに走った。
この後、集まったスタッフとの会議ではポワチエの計画を骨子に一挙に組み立て、戦力の逐次投入はなるべくさけるために、30万の兵力を基地攻撃部隊とすることに決めた。
ついにパッシェールをめぐる、いや国運をかけた戦闘も集結へと向かいつつあった。
されどまだ、サイトは戦場へと姿を表さない。
サイト別働隊はいずこにありや、いずこにありや。
あとがき
物語も終わりに近づき、私も一抹の寂しさを覚えます。
ですが後少し、サイト君の奮闘にお付き合い下さい。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m